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意趣返し
病院に入った幸太郎さんは受付にも寄らずまっすぐエレベーターホールに向かった。着いたエレベーターに乗った幸太郎さんは、迷わず7階を押す。あれっ、あの電話の口振りでは、あわてて奥さんが電話してきたっぽかったんだけど、なんで部屋まで知ってるの?
「ふふふ、何で部屋まで知ってると思ったでしょ」
すると、幸太郎さんがそう言っていたずらっぽく笑った。で、でも何で私の考えてること分かるの? 実は幸太郎さんってエスパー?? そう思った途端、幸太郎さんは私の顔を見て吹き出した。
「今、俺のことエスパーと思ったでしょ」
そして、また私の思っていたことを言い当てる。
「な、なんで分かるんですか」
「月島さんって分かりやすすぎです。ま、そこがあなたのいいところなんですけどね。
でも、これは超能力でも魔法でもありません。言わばちょっとした手品かな」
「手品……ですか」
「コレですよ」
幸太郎さんはそう言って私に携帯を見せた。そして、メニューキーからアラーム画面を出す。そこには2番目のアラーム設定に、ウチにいた時間が表示されていた。あれって、かかってきたんじゃなくてただのアラーム音だったんだ。
「じゃぁ、マイケルさんが倒れたって言うのはウソだったんですか?」
それを見て私は、プリプリ怒りながらそう言った。内心ではウソで良かったって思ってたけど。でも、幸太郎さんは私に、
「いや、ウソではありません。ウソだったら病院になんて来る必要なんてないですよね」
と返した。
「本当……なんですか?」
「ええ、実際に倒れたのは昨日の夜ですが」
「じゃぁ、何故こんな芝居みたいなことをしたんですか」
普通に昨日倒れたからきてくださいで良いじゃない。私がそう言って怒ると、
「えっ、それはほんの意趣返しですよ。それと、再確認もあるかな」
幸太郎さんは、そう言って笑顔で答えた。それにしても笑顔で『意趣返し』って何? く、黒い……黒すぎる。正巳も黒いけど、負けてない。幸太郎さんは、
「意趣返し?」
と聞き返した私の言葉には返事せず、
「さぁ、着きました」
と言って病室のドアを叩いて開いた。
冷蔵庫にクローゼットとソファー、窓際に置かれているベッドこそ病院仕様だけれど、それ以外は病室というよりどっかのワンルームマンションのような部屋。おそらくは特別室ってやつなのだろう。
ソファーにはマイケルさんと同じ栗毛の髪の若い女性が憔悴した様子で座っていて、私たちが入ってきたのを見ると顔を上げて、
「パパ、遅いよ。たった今……」
と言って、うるうるの瞳を幸太郎さんを見てから、マイケルさんのベッドに目を移した。その仕草に私の脳は一瞬でフリーズした。
……えっ、たった今って何? 幸太郎さん、笑って『意趣返し』だって。マイケルさん、ホントに死んじゃったの? それって、何かの悪い冗談だよね。 ウソ、ウソだって言って!!
「ま……マイケルさん死んじゃイヤぁ~! お願い、もう一回目を開けて! また、一緒にカラオケ行って!!」
私は松葉杖を投げ捨てて、マイケルさんのベッド際に倒れ込むように縋りついて泣いた。
「ふふふ、何で部屋まで知ってると思ったでしょ」
すると、幸太郎さんがそう言っていたずらっぽく笑った。で、でも何で私の考えてること分かるの? 実は幸太郎さんってエスパー?? そう思った途端、幸太郎さんは私の顔を見て吹き出した。
「今、俺のことエスパーと思ったでしょ」
そして、また私の思っていたことを言い当てる。
「な、なんで分かるんですか」
「月島さんって分かりやすすぎです。ま、そこがあなたのいいところなんですけどね。
でも、これは超能力でも魔法でもありません。言わばちょっとした手品かな」
「手品……ですか」
「コレですよ」
幸太郎さんはそう言って私に携帯を見せた。そして、メニューキーからアラーム画面を出す。そこには2番目のアラーム設定に、ウチにいた時間が表示されていた。あれって、かかってきたんじゃなくてただのアラーム音だったんだ。
「じゃぁ、マイケルさんが倒れたって言うのはウソだったんですか?」
それを見て私は、プリプリ怒りながらそう言った。内心ではウソで良かったって思ってたけど。でも、幸太郎さんは私に、
「いや、ウソではありません。ウソだったら病院になんて来る必要なんてないですよね」
と返した。
「本当……なんですか?」
「ええ、実際に倒れたのは昨日の夜ですが」
「じゃぁ、何故こんな芝居みたいなことをしたんですか」
普通に昨日倒れたからきてくださいで良いじゃない。私がそう言って怒ると、
「えっ、それはほんの意趣返しですよ。それと、再確認もあるかな」
幸太郎さんは、そう言って笑顔で答えた。それにしても笑顔で『意趣返し』って何? く、黒い……黒すぎる。正巳も黒いけど、負けてない。幸太郎さんは、
「意趣返し?」
と聞き返した私の言葉には返事せず、
「さぁ、着きました」
と言って病室のドアを叩いて開いた。
冷蔵庫にクローゼットとソファー、窓際に置かれているベッドこそ病院仕様だけれど、それ以外は病室というよりどっかのワンルームマンションのような部屋。おそらくは特別室ってやつなのだろう。
ソファーにはマイケルさんと同じ栗毛の髪の若い女性が憔悴した様子で座っていて、私たちが入ってきたのを見ると顔を上げて、
「パパ、遅いよ。たった今……」
と言って、うるうるの瞳を幸太郎さんを見てから、マイケルさんのベッドに目を移した。その仕草に私の脳は一瞬でフリーズした。
……えっ、たった今って何? 幸太郎さん、笑って『意趣返し』だって。マイケルさん、ホントに死んじゃったの? それって、何かの悪い冗談だよね。 ウソ、ウソだって言って!!
「ま……マイケルさん死んじゃイヤぁ~! お願い、もう一回目を開けて! また、一緒にカラオケ行って!!」
私は松葉杖を投げ捨てて、マイケルさんのベッド際に倒れ込むように縋りついて泣いた。
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