存在、証明できません!?

神山 備

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わかってくれない

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「何、言ってんのよ。私、一子よ。自分の娘忘れてどーすんのよ、お母さん」
エイプリルフールでもないし、いくら何でも冗談が過ぎるよと、笑いながら私が言うと、
「どこの一子さんですか。ウチにはそんな娘(こ)はいません」
とお母さんから返ってくる。その顔に笑いは微塵もなく、真剣だ。それで私は、
「どこって、ここのだよ。田中一子、17歳。ここの住所は中町1丁目5-36だよね。家電(いえでん)は04XX-38-2XXX」
と私がこの家の子であることをアピールする。けど、それを聞いてもお母さんの態度は冷ややかだった。
「ここの住所や電話番号は聞けば分かるでしょ」
そりゃそうだけど、フツー他人様のそういうのなんて、こんな風に即答なんてできないと思うよ。
「じゃぁ、これはどう? お父さんの名前は田中茂45歳、今はS県に単身赴任してる。お母さんの名前は田中敦子41歳、妹の田中|二美(つぐみ)は中学三年生」
それで慌てて私がそう伝えると、お母さんはそれも鼻で笑った。これも調べれば分かるネタだと言いたげに。

「ママ、朝から何騒いでんの」
そこに、二美が二階から降りてきた。
「おはよ、二美。ねぇ、ちょっとお母さんに言ってやってよ。お母さんたら私のこと知らないって言うんだよ。まだボケる歳でもないでしょって」
アレ? 二美ってお母さんのことママって呼んでたっけ、私と一緒でお母さんだよねと、二美の言葉に若干の違和感を感じつつ、私は彼女に助け船を求める。だけど……
「あんた、誰」
返ってきたのはお母さん同様の冷たい一言だった。
「みんなどうしたんだよ。私一子だよ。ここの娘だよ、あんたの姉だよ」
なおも、食い下がって言う私に、
「あたしはあんたのこと知らない」
二美はそう言いきって私の手を払いのけた。 その格好をよくよく見てみると、二美はちょっと離れたところにあるお嬢様女子中の制服を着ていた。おかしいな、二美は私が通っていたのと同じ、近くの公立中に行ってるはずなのに。 
 でも、制服……身分証明、生徒手帳! 私は洗面所まで持って下りてきていたスクール鞄の中を漁って生徒手帳を探した。だけど、生徒手帳はおろか、定期も見つからない。生徒手帳はともかく、定期は昨日も使ったんだから、絶対に入ってるはずなのに。
 じゃぁ、部屋に置き忘れてきた? 私は洗面所の入り口に仁王立ちになっているお母さんと二美をかき分けて、2階に急いで上がった。
 でも、そこで私が見たものは、なんかごちゃごちゃっといろんな物が入っている、物置みたくなっている部屋だった。部屋も心なしか少し狭くなっているような気がする。
「そんなバカな……」
私はさっきからずっと持っているスクール鞄を抱えて廊下にへたり込んだ。 
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