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そうだ、新しい私になればいいのよ!
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「あんたね、死神がイヤなら悪魔って呼んであげようか。
デビッドって名前なんだよね。デビッドとデビル。同じデビちゃんつながりで、どう?」
死神には神が付くから呼ぶなという自称『お迎え天使』のデビッドに、私がそう言うと、
「まぁ、悪魔は被造物ですから悪くはないですけどね」
と言いながら彼は心底イヤそうな顔をした。ま、天使からしたら悪魔なんて永遠のライバルだろうし、良い気はしないだろうね。
「大体ね、何が悲しくて自殺願望もないのに、自分で死にに行かなきゃならないのさ」
「それは、あなたが既に亡くなってらっしゃるからで……」
「もう死んでる? 私、現に歩いて走って、モノ食ってんじゃないさ。一体、コレのどこを死んでるっていうのよ」
しどろもどろ言うデビッドに、私はペットの紅茶をわざと音を鳴らしながら飲んで、そう返す。
「それは、その……では、あなたをご存じの方が居ないのをどう説明するんですか」
「そんなのあんたに解らないもの私に解る訳ないじゃん。
それにさ、誰も私のことが解らないなら、新たに私が解る人を作る、それで解決よ、違う?」
そうよ、さっきのコンビニでバイトして、ネッカフェで寝泊まりしてでも、きっちり生き抜いてやるわよ。
私はおろおろと言葉をなくしてしまったデビッドを後目にそう言ってさっさと先を歩き出した。後ろから妙な格好の外人が
「田中様、田中一子様」
と遠慮がちに言いながらちょこちょこ付いてくるけど、そんなの無視だ。
そして、コンビニの前で、その『うるさいハエ』に
「絶対、付いてこないでね」
と牽制をかけてコンビニの中に入った。
「いらっしゃいませ」
「アルバイトって、まだ募集してますか?」
「ああ、アルバイト希望? 良かった、今までいた子が急に2人も辞めちゃってね、困ってたんだよ。君、今までバイトの経験ある?」
たまたま、店にいたのは店長(オーナー?)らしく、余程困っているのか、すぐに食いついてきた。ま、どんな子かは知らないけど2人いっぺんはキツいだろなぁと何となく想像できるし。
「アメリカンバーガーで……」
そう、ホントなら仕事も良く解ってるし、そのアメリカンバーガーに行けばいいんだろうけど、私のことを忘れてるだろうかつての仲間のとこで働くのは正直凹むから。
そうよ、私は新しい私になるんだから。
「君、学生?」
続いて、店長らしい人は私が普段着なので、大学生だと思ってそう聞いた。私は、
「いいえ」
と言って首を振る。昨日まで高校生だったけど、今はは入りたくても入れてくれないんだもんね。
「フリー? じゃぁ夜も入れる?」
「ええ、別に希望の時間はないです」
そうよ、夜中に仕事したってもう誰にも叱られない。そう考えたらちょっと鼻の奥が痛かったけど。店長らしい人は、私がくしゃっと顔を歪めたのにも気づかず、ウキウキしながら、
「助かった。じゃぁ、履歴書かいてくれる? それから住民票も添えてね。すぐ本部に登録するから」
と言った言葉に、今度は私が固まった。えーっ、何で住民票なんているのさ!
「はい……解りました」
私はとりあえずそう言って、そそくさとコンビニを出た。
「あの……田中一子様 バイトの方は上手くいきましたか?」
外に出た途端、そう聞いてきたデビッドを私は思いっきり睨んで返事しなかった。そしたら奴は、
「どうだったんですか?」
とさらに聞いてくる。この表情見て察しろってんだ、バーカ。
でも、一人で生活するくらいバイトしようと思ったら、ここじゃなくても住民票とか要るんだろうな
やっぱり私、死ぬしかないのか……
私はとびっきり大きなため息を吐くと、
「決めたっ! ねぇ悪魔もどき、私あんたについて行くわ」
と言った。
「ホントですか! ありがとうございます!!」
もちろん、それを聞いたデビッドは小躍りして喜んだ。だけど私は、
「では早速……」
と、取った手を払いのけて、
「たーだーし、今持ってるお金使ってからよ。せっかくこの夏休みにせっせと働いたのに、それを遣わずになんて、死んでも死にきれないもん」
と言って、えっ、と固まっちゃったデビッドを置いて歩き出した。
デビッドって名前なんだよね。デビッドとデビル。同じデビちゃんつながりで、どう?」
死神には神が付くから呼ぶなという自称『お迎え天使』のデビッドに、私がそう言うと、
「まぁ、悪魔は被造物ですから悪くはないですけどね」
と言いながら彼は心底イヤそうな顔をした。ま、天使からしたら悪魔なんて永遠のライバルだろうし、良い気はしないだろうね。
「大体ね、何が悲しくて自殺願望もないのに、自分で死にに行かなきゃならないのさ」
「それは、あなたが既に亡くなってらっしゃるからで……」
「もう死んでる? 私、現に歩いて走って、モノ食ってんじゃないさ。一体、コレのどこを死んでるっていうのよ」
しどろもどろ言うデビッドに、私はペットの紅茶をわざと音を鳴らしながら飲んで、そう返す。
「それは、その……では、あなたをご存じの方が居ないのをどう説明するんですか」
「そんなのあんたに解らないもの私に解る訳ないじゃん。
それにさ、誰も私のことが解らないなら、新たに私が解る人を作る、それで解決よ、違う?」
そうよ、さっきのコンビニでバイトして、ネッカフェで寝泊まりしてでも、きっちり生き抜いてやるわよ。
私はおろおろと言葉をなくしてしまったデビッドを後目にそう言ってさっさと先を歩き出した。後ろから妙な格好の外人が
「田中様、田中一子様」
と遠慮がちに言いながらちょこちょこ付いてくるけど、そんなの無視だ。
そして、コンビニの前で、その『うるさいハエ』に
「絶対、付いてこないでね」
と牽制をかけてコンビニの中に入った。
「いらっしゃいませ」
「アルバイトって、まだ募集してますか?」
「ああ、アルバイト希望? 良かった、今までいた子が急に2人も辞めちゃってね、困ってたんだよ。君、今までバイトの経験ある?」
たまたま、店にいたのは店長(オーナー?)らしく、余程困っているのか、すぐに食いついてきた。ま、どんな子かは知らないけど2人いっぺんはキツいだろなぁと何となく想像できるし。
「アメリカンバーガーで……」
そう、ホントなら仕事も良く解ってるし、そのアメリカンバーガーに行けばいいんだろうけど、私のことを忘れてるだろうかつての仲間のとこで働くのは正直凹むから。
そうよ、私は新しい私になるんだから。
「君、学生?」
続いて、店長らしい人は私が普段着なので、大学生だと思ってそう聞いた。私は、
「いいえ」
と言って首を振る。昨日まで高校生だったけど、今はは入りたくても入れてくれないんだもんね。
「フリー? じゃぁ夜も入れる?」
「ええ、別に希望の時間はないです」
そうよ、夜中に仕事したってもう誰にも叱られない。そう考えたらちょっと鼻の奥が痛かったけど。店長らしい人は、私がくしゃっと顔を歪めたのにも気づかず、ウキウキしながら、
「助かった。じゃぁ、履歴書かいてくれる? それから住民票も添えてね。すぐ本部に登録するから」
と言った言葉に、今度は私が固まった。えーっ、何で住民票なんているのさ!
「はい……解りました」
私はとりあえずそう言って、そそくさとコンビニを出た。
「あの……田中一子様 バイトの方は上手くいきましたか?」
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とさらに聞いてくる。この表情見て察しろってんだ、バーカ。
でも、一人で生活するくらいバイトしようと思ったら、ここじゃなくても住民票とか要るんだろうな
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