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訪問
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当日、最寄り駅に着いた加奈子は、未来の母夏海に迎えられた。
「わざわざお出でくださってありがとうございます」
「いいえ、こちらこそ押し掛けまして」
「とんでもない、板倉さんがいなかったら、未来や子供たちはどうなっていたことか」
恐縮して頭を下げる加奈子に、夏海はそう返した。
未来には自殺する意思はなかったようだが、何かとリスクの多い双子だ。あのまま妊娠していることをひた隠しにして仕事を続けていたら、母子共に危険にさらされることも往々にしてあっただろう。
そして、案内されたどり着いた飯塚家のリビングはそれ自体がおもちゃ箱のようだった。聞くと両親や妹、さらには妹の彼氏までが何かというと双子のものを買ってきてしまうのだという。
未来はこれから彼氏のマンションに行くという明日香に、
「ねぇ、明日香。いくら何でも一ヶ月の子供にこの知育玩具は早すぎるよ。秀一郎にそう言っといてよ」
と言って、こめかみを押さえる。
「良いじゃん、その内すぐ使えるようになるんだから」
だが、明日香は笑顔で未来にそう返す。
「でも秀一郎まだ学生じゃん。こんな高いもの……」
明日香の彼氏、結城秀一郎は明日香と同い年の大学4回生だという。確かに、学生が送る祝いにしては値が張りすぎていると加奈子も思った。ただ、この秀一郎は日本有数の大企業の御曹司だというので、おそらく金銭感覚が世間とはずれているのだろう。
「いいじゃん、出産祝いなんだから」
「出産祝いって……志穂さんからもらったし」
因みに志穂というのは、秀一郎の母の名。
「お祝いなんだから、いくつあっても良いじゃん。それに、みんなお姉ちゃんじゃなくって、たっくとほのちゃんにあげてるの」
そして、そんな姉妹の会話を聞いていると、この小さな命がどれほど周囲の人々に愛されているかが分かる。二股男を婚約者からもぎ取って形だけ夫婦で収まったとしても、未来はここまでいい笑顔をしてなかったかもしれない。知らないフリをしていて良かったのだ、加奈子はそう思った。
「わざわざお出でくださってありがとうございます」
「いいえ、こちらこそ押し掛けまして」
「とんでもない、板倉さんがいなかったら、未来や子供たちはどうなっていたことか」
恐縮して頭を下げる加奈子に、夏海はそう返した。
未来には自殺する意思はなかったようだが、何かとリスクの多い双子だ。あのまま妊娠していることをひた隠しにして仕事を続けていたら、母子共に危険にさらされることも往々にしてあっただろう。
そして、案内されたどり着いた飯塚家のリビングはそれ自体がおもちゃ箱のようだった。聞くと両親や妹、さらには妹の彼氏までが何かというと双子のものを買ってきてしまうのだという。
未来はこれから彼氏のマンションに行くという明日香に、
「ねぇ、明日香。いくら何でも一ヶ月の子供にこの知育玩具は早すぎるよ。秀一郎にそう言っといてよ」
と言って、こめかみを押さえる。
「良いじゃん、その内すぐ使えるようになるんだから」
だが、明日香は笑顔で未来にそう返す。
「でも秀一郎まだ学生じゃん。こんな高いもの……」
明日香の彼氏、結城秀一郎は明日香と同い年の大学4回生だという。確かに、学生が送る祝いにしては値が張りすぎていると加奈子も思った。ただ、この秀一郎は日本有数の大企業の御曹司だというので、おそらく金銭感覚が世間とはずれているのだろう。
「いいじゃん、出産祝いなんだから」
「出産祝いって……志穂さんからもらったし」
因みに志穂というのは、秀一郎の母の名。
「お祝いなんだから、いくつあっても良いじゃん。それに、みんなお姉ちゃんじゃなくって、たっくとほのちゃんにあげてるの」
そして、そんな姉妹の会話を聞いていると、この小さな命がどれほど周囲の人々に愛されているかが分かる。二股男を婚約者からもぎ取って形だけ夫婦で収まったとしても、未来はここまでいい笑顔をしてなかったかもしれない。知らないフリをしていて良かったのだ、加奈子はそう思った。
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