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遠い旋律
人の傷は……
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-高広のノートから2-
オレはさくらと別れようと思う。本当は、最後の一瞬まで一緒にいたい。でも、守りきれないとわかった以上、オレの最期を見せることによって、あいつをオレに一生縛り付けることになりやしないかと思うからだ。
正直に書こうと思う。
あいつが家に来てギターを弾き終わった後のホッとした笑顔で、オレの頭の中はあいつを抱くことで一杯になった。こらえようとしても体が正直に反応するので痛かった。コーヒーを用意しに行ったりして、気を取り直して部屋に戻ったけど、2人っきりで家にいると思っただけでダメだった。
でも、オレは何にも用意なんてしてなかったから、勢いだけであいつをモノにして、後でもしもなんてことになっても、今のオレじゃ責任取れないなって思ったから。
あいつ…そんなオレを見てどう思ったんだろう。ずいぶん不機嫌だと思ってただろうな。
「オレはあの時、お前に腹立てた訳じゃなくて、そんな自分に腹立ててたんだからな。」
本当にあいつをその手に収めた時、そう言うつもりだった。
あの後、しばらく会ってくれなくなったから、正直へこんだ。オレ、何か嫌われるようなことしたかなって考えた。考えても思い当たらなくて、余計落ち込んだ。
だからクリスマスの日に、痩せてるあいつを見たとき、胸がつぶれそうになった。隠さなきゃならない大変なことって何だって。じゃなきゃ、好きだと本気で思ってるのはオレだけなのかと思って、男のクセに泣きそうになった。
でも、オレのためにダイエットしたって言ってくれた。『高広のためにきれいになりたい』って言われた。めちゃくちゃ嬉しかった。
もう、こいつしかいない! 絶対に誰にも渡したくない、一生守ってやりたい……そう思った。
そう、本気で思ってたのに……
高広が不機嫌になったのは、ノエの言うのが正しかったんだ。それに、私が高広の病気に気付いたあの痛みの顔は、実は病気ではなかった。私にはそれだけでも救いだった。
あの時、ひどい痛みに耐えていたんじゃなきゃそれでいいと思った。
-高広のノートから3-
守れないなら、そばにいない方が良い。バカなオレは、あいつの笑顔を見続けると、今度は本当に抑えられなくなってしまうのが目に見えてる。もう、最後なんだからいいじゃんって…
そう、守れないからと思っている一方で、オレはどっかあの時、思い切ってヤってしまわなかったことを後悔してる。そしたら、オレはもっと自分に正直になってあいつをそばに置くという選択ができたんじゃないかって。
だけど、オレには先はないけど、あいつには…あいつはずっと先まで生きていかなきゃならない。オレの一時の感情であいつにもしに子供ができていたとしたら…あいつはそれでオレとのつながりを一生絶てない、そう思った。
人の傷は…心の傷でもいつかは癒えるものだ。あいつは『そんなこと言ったって、私だって次の瞬間事故って死ぬかもしんないよ!』って反論するかもしれない。そういうこともあるのは認める。
でも、あいつは生きる…生きていく方が可能性として高いんだから。だから、もしもなんて考えちゃいけない。オレのことが完全に思い出になったその時、前にすんなり踏み出せるようにしてやろう…
そう決心がついたら、なんか気が抜けたみたいに楽になった。男としては情けなくてふがいないけれど、ずっと明日のあいつの笑顔が見えたような気がした。
(バカな高広…こんなにも思われてるって分かったら、そんなつながりなんてなくったって私は一生あんたの思い出にすがりつくかもしれない…そんな選択肢は考えなかったの?)
私は…あんたからの最後のプレゼントを受け取りたかったわ。
オレはさくらと別れようと思う。本当は、最後の一瞬まで一緒にいたい。でも、守りきれないとわかった以上、オレの最期を見せることによって、あいつをオレに一生縛り付けることになりやしないかと思うからだ。
正直に書こうと思う。
あいつが家に来てギターを弾き終わった後のホッとした笑顔で、オレの頭の中はあいつを抱くことで一杯になった。こらえようとしても体が正直に反応するので痛かった。コーヒーを用意しに行ったりして、気を取り直して部屋に戻ったけど、2人っきりで家にいると思っただけでダメだった。
でも、オレは何にも用意なんてしてなかったから、勢いだけであいつをモノにして、後でもしもなんてことになっても、今のオレじゃ責任取れないなって思ったから。
あいつ…そんなオレを見てどう思ったんだろう。ずいぶん不機嫌だと思ってただろうな。
「オレはあの時、お前に腹立てた訳じゃなくて、そんな自分に腹立ててたんだからな。」
本当にあいつをその手に収めた時、そう言うつもりだった。
あの後、しばらく会ってくれなくなったから、正直へこんだ。オレ、何か嫌われるようなことしたかなって考えた。考えても思い当たらなくて、余計落ち込んだ。
だからクリスマスの日に、痩せてるあいつを見たとき、胸がつぶれそうになった。隠さなきゃならない大変なことって何だって。じゃなきゃ、好きだと本気で思ってるのはオレだけなのかと思って、男のクセに泣きそうになった。
でも、オレのためにダイエットしたって言ってくれた。『高広のためにきれいになりたい』って言われた。めちゃくちゃ嬉しかった。
もう、こいつしかいない! 絶対に誰にも渡したくない、一生守ってやりたい……そう思った。
そう、本気で思ってたのに……
高広が不機嫌になったのは、ノエの言うのが正しかったんだ。それに、私が高広の病気に気付いたあの痛みの顔は、実は病気ではなかった。私にはそれだけでも救いだった。
あの時、ひどい痛みに耐えていたんじゃなきゃそれでいいと思った。
-高広のノートから3-
守れないなら、そばにいない方が良い。バカなオレは、あいつの笑顔を見続けると、今度は本当に抑えられなくなってしまうのが目に見えてる。もう、最後なんだからいいじゃんって…
そう、守れないからと思っている一方で、オレはどっかあの時、思い切ってヤってしまわなかったことを後悔してる。そしたら、オレはもっと自分に正直になってあいつをそばに置くという選択ができたんじゃないかって。
だけど、オレには先はないけど、あいつには…あいつはずっと先まで生きていかなきゃならない。オレの一時の感情であいつにもしに子供ができていたとしたら…あいつはそれでオレとのつながりを一生絶てない、そう思った。
人の傷は…心の傷でもいつかは癒えるものだ。あいつは『そんなこと言ったって、私だって次の瞬間事故って死ぬかもしんないよ!』って反論するかもしれない。そういうこともあるのは認める。
でも、あいつは生きる…生きていく方が可能性として高いんだから。だから、もしもなんて考えちゃいけない。オレのことが完全に思い出になったその時、前にすんなり踏み出せるようにしてやろう…
そう決心がついたら、なんか気が抜けたみたいに楽になった。男としては情けなくてふがいないけれど、ずっと明日のあいつの笑顔が見えたような気がした。
(バカな高広…こんなにも思われてるって分かったら、そんなつながりなんてなくったって私は一生あんたの思い出にすがりつくかもしれない…そんな選択肢は考えなかったの?)
私は…あんたからの最後のプレゼントを受け取りたかったわ。
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