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真実の足音
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【デニスさん、デニスさんて日本から来たんですよね。それって、東京? それとも千葉とか埼玉?
ほんでどないしてこのオラトリオにたどりついたんですか? あたしはカラオケしてる時に床が抜けたんですけど、一体どんな経緯で……
それと、還る方法とか知ってるんですか?】
夢にまで見たデニスさんとの対面に、あたしは聞きたいことを思いっきりまくし立てると、今度はデニスさんの方が目をまん丸にして固まってしもた。けど彼は、あたしをじっと眺めると、ああ、と納得したように、
「ああ、ミセスロッシュはニホンの方なんですね」
い、今ニホンって言うた! ニホンて! あたしのテンションは一気にマックスに。けど、デニスさんは、
「がっかりさせて申し訳ありませんが、残念ながら私はニホンからきたのではありません。ニホンゴもまったく解らないです」
そう申し訳なさそうに言った。デニスさんやと思ただけで、何も考えんと日本語で話しかけてしもたけど、じっくり顔見たら、デニスさんの顔は日本人の要素なんて欠片もないオラトリオ人そのもの。けど、がっくりきたあたしを見たデニスさんは、
「でも、私があなたをニホンの方だと思ったのは、私が知ってるニホン人と同じしゃべり方をしていたからです。若干語尾は違う気もしますが」
と付け加えた。
「えっ、このオラトリオで日本人を見たことあるんですか!」
驚いたあたしに、ゆっくり頷くデニスさん。
「ええ、それどころか、あの『異世界とりかえばや物語』は実話です。もちろん、こちらに都合の悪い部分は若干書き換えてありますが。ニホンのことは、誰はばかることもないので、名前もそのまま使っていますよ」
「じ、実話! じゃぁ、デニスさんって、あの魔法使いの……」
「ははは、私はパトリックじゃありませんよ。あなたも魔法使いならお分かりでしょうミセスロッシュ、私には魔力すらないことを」
確かに、デニスさんからは魔力の一欠片も感じられなかった。けど、あたしも含めて魔力が高いほど結構上手く隠せたりする。来た頃ダダ漏れやったあたしも今は、持ってる魔力の半分以下にしか見せてへんと思う。けど、100%隠すのは大変やし、またそこまでする必要もないから、デニスさんは本当に魔力を持ってないんやと思う。
それに、言うたらなんやけど、実際にはだいぶ経ってんのかもしれんけど、デニスさんはパトリシア(こう言うたら女とちゃうってパトリックがめっちゃ怒るんや、これがまたおもろい)より大分年上のような気がする。
「で、ミセス・ロッシュ、あなたはどうしてこのオラトリオに?」
「あたしはカラオケで歌ってる時、大きな音がしたと思ったらここに来てました」
「そうですか。あなたが自分で界渡りしたのではないと」
「はい。それで、リアルパトリックは、ホントに自由にトリップ……いえ、界渡りができるんですか」
「パトリックは『界渡りは後がきつい』とか言いながら、時々あっちに行ってるようですよ。この間などは、こっそりあちらの『サケ』を隠し持ってましたからね、取り上げて呑んでやりましたよ」
ほ、ホンマに日本とこことを行き来してんのや。しかも、お酒とか持ってきたりしてんのん?
「『サケ』ってお酒? どんな奴ですか!」
「……確か、セルディオは『ダイギンジョウ』とか言ってたかな」
だ、大吟醸! うわっ、思いっきり日本酒! 間違いない、リアルパトリックさんにあわせてもろたら、あたし還れる! けど……今デニスさん、セルディオって言わへんかった?
「セルディオさんっていうのがパトリックの本名なんですか」
あたしがそう聞き返すと、デニスさんはバツが悪そうに頷いてため息をつくと、
「どうせあなたは還るためにどうしてもあやつに会いたいとおっしゃるでしょうから正直に言いましょう。パトリック・デューナの本名はビクトール・スルタン・セルディオ、ガッシュタルト王国の王女の婿で現宰相です」
が、ガッシュタルトの宰相? しかもお姫様の旦那!
【う、ウソ……】
「件の『とりかえばや物語』で、パトリックを助けた跳ねっ返りの商家の娘ジェシカ、あれが実はガッシュタルト王女で、あの一件がきっかけで、あやつは婿養子に入る羽目になったんです」
正直、私ならあんな跳ねっ返りはごめんだと、デニスさんは笑う。
「で、界渡りの呪文は教えてもらえるんでしょうか」
ごく普通の人ならまだしも、よその国の中枢にいる人に教えを請うことなんてできるんやろか。
「あやつは立場上国を離れることはできないので、ガッシュタルトに一緒に来てくれるんであれば、私の知り合いとして紹介しますよ」
「ホントですか! お願いします」
やった! あたし、やっと日本に還れるんや。あたしは、デニスさんの両手を掴んでブンブン振り回しながら握手した。
けど、そこにちょうど出かけてたフレンが戻って来た。フレンは、握手しているあたしたちをみるなり、
「貴様、俺の妻に何をする!」
と、目ん玉つり上げて、魔法詠唱の姿勢をとる。
「ちょ、ちょっと待ってよフレン、この人はデニス・ガーランドさん、あの『異世界とりかえばや物語』の作者の。
ねぇねぇ聞いて、アレやっぱり実話だったんだって。それでね、デニスさんが界渡りのできる人を紹介してくれるって。あたし、日本に還れるんだよ」
あたしは慌てて、フレンとデニスさんの間に立って、この嬉しいニュースをフレンに伝えたんやけど……
「必要ない」
「へっ?」
「だから、必要ないと言ってるんだ!
ということで、お客様には即刻お帰りいただきたい」
フレンはまるで鬼みたいな顔をして、デニスさんに出口を示してそう言うた。
「そ、そんなのいくら結婚したからって横暴だよ! やっと、やっと還れるんだよ。何でそんな風に言うのさ!」
「それは……」
「どうしてっ!」
一方的に帰還を阻止しようとするフレンにブチ切れたあたしが詰め寄ると、フレンは一旦顔を逸らして口ごもったけど、
「お前をこのオラトリオに界渡りさせたのはこの俺だからだ。だから、他の奴に指南する必要などない」
と、少しの間の後、フレンはあたしが一番予想してなかった答えを吐いた。
ほんでどないしてこのオラトリオにたどりついたんですか? あたしはカラオケしてる時に床が抜けたんですけど、一体どんな経緯で……
それと、還る方法とか知ってるんですか?】
夢にまで見たデニスさんとの対面に、あたしは聞きたいことを思いっきりまくし立てると、今度はデニスさんの方が目をまん丸にして固まってしもた。けど彼は、あたしをじっと眺めると、ああ、と納得したように、
「ああ、ミセスロッシュはニホンの方なんですね」
い、今ニホンって言うた! ニホンて! あたしのテンションは一気にマックスに。けど、デニスさんは、
「がっかりさせて申し訳ありませんが、残念ながら私はニホンからきたのではありません。ニホンゴもまったく解らないです」
そう申し訳なさそうに言った。デニスさんやと思ただけで、何も考えんと日本語で話しかけてしもたけど、じっくり顔見たら、デニスさんの顔は日本人の要素なんて欠片もないオラトリオ人そのもの。けど、がっくりきたあたしを見たデニスさんは、
「でも、私があなたをニホンの方だと思ったのは、私が知ってるニホン人と同じしゃべり方をしていたからです。若干語尾は違う気もしますが」
と付け加えた。
「えっ、このオラトリオで日本人を見たことあるんですか!」
驚いたあたしに、ゆっくり頷くデニスさん。
「ええ、それどころか、あの『異世界とりかえばや物語』は実話です。もちろん、こちらに都合の悪い部分は若干書き換えてありますが。ニホンのことは、誰はばかることもないので、名前もそのまま使っていますよ」
「じ、実話! じゃぁ、デニスさんって、あの魔法使いの……」
「ははは、私はパトリックじゃありませんよ。あなたも魔法使いならお分かりでしょうミセスロッシュ、私には魔力すらないことを」
確かに、デニスさんからは魔力の一欠片も感じられなかった。けど、あたしも含めて魔力が高いほど結構上手く隠せたりする。来た頃ダダ漏れやったあたしも今は、持ってる魔力の半分以下にしか見せてへんと思う。けど、100%隠すのは大変やし、またそこまでする必要もないから、デニスさんは本当に魔力を持ってないんやと思う。
それに、言うたらなんやけど、実際にはだいぶ経ってんのかもしれんけど、デニスさんはパトリシア(こう言うたら女とちゃうってパトリックがめっちゃ怒るんや、これがまたおもろい)より大分年上のような気がする。
「で、ミセス・ロッシュ、あなたはどうしてこのオラトリオに?」
「あたしはカラオケで歌ってる時、大きな音がしたと思ったらここに来てました」
「そうですか。あなたが自分で界渡りしたのではないと」
「はい。それで、リアルパトリックは、ホントに自由にトリップ……いえ、界渡りができるんですか」
「パトリックは『界渡りは後がきつい』とか言いながら、時々あっちに行ってるようですよ。この間などは、こっそりあちらの『サケ』を隠し持ってましたからね、取り上げて呑んでやりましたよ」
ほ、ホンマに日本とこことを行き来してんのや。しかも、お酒とか持ってきたりしてんのん?
「『サケ』ってお酒? どんな奴ですか!」
「……確か、セルディオは『ダイギンジョウ』とか言ってたかな」
だ、大吟醸! うわっ、思いっきり日本酒! 間違いない、リアルパトリックさんにあわせてもろたら、あたし還れる! けど……今デニスさん、セルディオって言わへんかった?
「セルディオさんっていうのがパトリックの本名なんですか」
あたしがそう聞き返すと、デニスさんはバツが悪そうに頷いてため息をつくと、
「どうせあなたは還るためにどうしてもあやつに会いたいとおっしゃるでしょうから正直に言いましょう。パトリック・デューナの本名はビクトール・スルタン・セルディオ、ガッシュタルト王国の王女の婿で現宰相です」
が、ガッシュタルトの宰相? しかもお姫様の旦那!
【う、ウソ……】
「件の『とりかえばや物語』で、パトリックを助けた跳ねっ返りの商家の娘ジェシカ、あれが実はガッシュタルト王女で、あの一件がきっかけで、あやつは婿養子に入る羽目になったんです」
正直、私ならあんな跳ねっ返りはごめんだと、デニスさんは笑う。
「で、界渡りの呪文は教えてもらえるんでしょうか」
ごく普通の人ならまだしも、よその国の中枢にいる人に教えを請うことなんてできるんやろか。
「あやつは立場上国を離れることはできないので、ガッシュタルトに一緒に来てくれるんであれば、私の知り合いとして紹介しますよ」
「ホントですか! お願いします」
やった! あたし、やっと日本に還れるんや。あたしは、デニスさんの両手を掴んでブンブン振り回しながら握手した。
けど、そこにちょうど出かけてたフレンが戻って来た。フレンは、握手しているあたしたちをみるなり、
「貴様、俺の妻に何をする!」
と、目ん玉つり上げて、魔法詠唱の姿勢をとる。
「ちょ、ちょっと待ってよフレン、この人はデニス・ガーランドさん、あの『異世界とりかえばや物語』の作者の。
ねぇねぇ聞いて、アレやっぱり実話だったんだって。それでね、デニスさんが界渡りのできる人を紹介してくれるって。あたし、日本に還れるんだよ」
あたしは慌てて、フレンとデニスさんの間に立って、この嬉しいニュースをフレンに伝えたんやけど……
「必要ない」
「へっ?」
「だから、必要ないと言ってるんだ!
ということで、お客様には即刻お帰りいただきたい」
フレンはまるで鬼みたいな顔をして、デニスさんに出口を示してそう言うた。
「そ、そんなのいくら結婚したからって横暴だよ! やっと、やっと還れるんだよ。何でそんな風に言うのさ!」
「それは……」
「どうしてっ!」
一方的に帰還を阻止しようとするフレンにブチ切れたあたしが詰め寄ると、フレンは一旦顔を逸らして口ごもったけど、
「お前をこのオラトリオに界渡りさせたのはこの俺だからだ。だから、他の奴に指南する必要などない」
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