43 / 57
辿り着いたのは?
しおりを挟む
「実はな、ニホンには一度早々に行かねばならぬと思っていたところだったのだ」
続けてそう言うたフレンに、あたしが首を傾げると、
「お前がしょっちゅう持ち歩いて磨いていた石版があったろう。お前がこちらに来てからもアレだけはこちらで反応が感じられただがな、それがここ数日どんどんと弱まってきているんだ」
しょっちゅう持ち歩いてるんであっちに置いてきたもんっちゅうたら……スマフォ。にしても、フレンにしたら、電子端末は全部石版やねんな(苦笑)
それは置いとくとして、スマフォのGPS機能がここまで届いてたなんて驚きや。アレ、こっちに来る直前に機種変したやつやったけど、そんでもあたしがこっちに来てから三年半も経つんやもん。細目に充電してもうてたとしても、そろそろ充電池も寿命のはずや。古なった充電池ってあっと言う間になくなってまうもんなぁ。
ホンマギリギリのとこやったんや。あと何日かデニスさんが来んのが遅かったらと思たらあたしは寒気がした。
呪文強化の魔法陣のある部屋にきたあたしは、その真ん中に立って、予めフレン教えてもろた詠唱文言をフレンと一緒に唱えた。それは、[位置を教えてくれてる機械に向かって飛べ]という拍子抜けするほどシンプルなものやった。けど、もちろんそれは魔道語やし、フレンがスマフォの電波に気づいてなかったらどこに飛んでええんかもわからんかったんやから、やっぱしあたし一人では還られへんかったやろなと思た。
ぐにゃんと目の前の景色が歪んで闇とに混ざって溶けていく。次元をすり抜けるためなんか、それに併せて体が作り替えられていくみたいで、身の置き所がないし、一気に疲れる感じがする。セルディオさんって、こんな気色悪いことようしょっちゅうやっとるんやろ? ある意味感動するわ。
「ここは、どこだ?」
ほんで、あたしらがたどり着いたのは、人っ子一人おらん、
「お墓……」
「墓? ここは墓所か。そう言われればそこここに花があるな。しかし、ニホンという国はあの建物と言い、皆塔のように四角く細長く建てるのだな」
あたしのつぶやきににフレンが辺りを見回してそう言う。
「うん、ここ神部家のお墓だよ」
そう、出てきたんはばーちゃんの代に住んどった京都にある神部家の菩提寺。しかもウチのお墓の真ん前やった。スマフォのGPSがここ数日で弱ったことと、ここに出てきたってこと。それが意味すんのは……
けど、あたしがそれを確かめようと骨入れに手を伸ばした時、あたしらに近づいてくる人がおったんで、あたしは慌ててその手を引っ込めた。
【お厨主さん……】
それはこの寺の住職さんやった。
【神部さんとこの千鶴さんにお参りどっか。ご苦労さんどす】
お厨主さんはそう言うてあたしに頭を下げる。
ホンマはあたしがその本人やねんけど。今それをこのあたしのじーちゃんほどのお厨主さんに言うても理解してもらわれへんやろから黙って頷いとく。
ほしたら、こっちが聞いてへんのに、お厨主さんの方からあん時の経緯を話してくれた。
【ホンマ、大変な事故どしたなぁ。
行ってたカラオケボックスの従業員がガス漏れてんのにも気付かんと煙草吸うたのが爆発して、吸うたその本人さんはもちろん真上におった千鶴さんも亡くなってしもたんどしたな。
『携帯は残ってんのに、骨も残らんほど黒こげになるなんてありえへん』て、親御さんは頑として、千鶴さんが死んだことを認めはらへんどしたんやけど……】
確かに生きてここにおんねんから、お父やお母が正しいねんけど、ホントやったら死んどるかもしれんねんもんなぁ。それでも、やっぱり認めへんのやろなと思たら、鼻の奥がつんと痛となった。あかん、泣いたらお厨主さんに変やて思われてまう。
【今も、おと……おじさん、おばさんは認めてはらへんのですか?】
せやからあたしはそう言うた。そしたらお厨主さんは静かに首を横に振った。
【長いこと認めてはらへんどしたんやけどな、それがおとつい急に『ええ加減ふんぎりつけなあかんやろ』て言いはって、最後に残された携帯持ってきはったんで、お勤めさしてもうてここに納めたんどす】
そうか、良かった。それに、やっぱりスマフォ、ここに来てたんや。
三年半も経った今更着信もメールもあらへんやろうけど、充電を満タンにしてこっちに持ってきたとしても、それが持つんはせいぜい丸四日。ホンマギリやった。そう思たらあたしはその場で座り込みそうになった。それに気づいたフレンが慌ててあたしの肩を支えてくれた。せやから顔を上げてフレンを見ると、言葉解らんから、泣きそうな顔してるあたしを心配そうに見てた。
【大丈夫どっか? そう言うたら顔色悪おすなぁ。何やったらちょっとそこで休んでいきはったら】
お厨主さんにもそう言われたけど、
【いえ、大丈夫です。
ほな、そろそろ行きますわ】
あたしはそう言うて、後ろ髪引かれるようにお厨主さんを見るフレンの服の裾を引っ張って寺の外に向こて歩き出した。
「解ったのか、界渡りの真相は」
歩きながらそう聞くフレンに、
「うん……神官(あっちにお坊さんに対応する言葉もあるんやろけど、あたしは知らんから)さんが知ってた。帰ったらちゃんと話すよ」
あたしが言葉少なにそう答えると、フレンはそれ以上聞かんかった。
けど、とりあえずお厨主さんの目から見えへんとこへ……と思て寺の入り口を目指したあたしの足が止まった。それは、ここで今会うと思てへんかった人がそこにおったから。
「お姉……」
それは、あたしの四つ年上の姉、中川晴海やった。
続けてそう言うたフレンに、あたしが首を傾げると、
「お前がしょっちゅう持ち歩いて磨いていた石版があったろう。お前がこちらに来てからもアレだけはこちらで反応が感じられただがな、それがここ数日どんどんと弱まってきているんだ」
しょっちゅう持ち歩いてるんであっちに置いてきたもんっちゅうたら……スマフォ。にしても、フレンにしたら、電子端末は全部石版やねんな(苦笑)
それは置いとくとして、スマフォのGPS機能がここまで届いてたなんて驚きや。アレ、こっちに来る直前に機種変したやつやったけど、そんでもあたしがこっちに来てから三年半も経つんやもん。細目に充電してもうてたとしても、そろそろ充電池も寿命のはずや。古なった充電池ってあっと言う間になくなってまうもんなぁ。
ホンマギリギリのとこやったんや。あと何日かデニスさんが来んのが遅かったらと思たらあたしは寒気がした。
呪文強化の魔法陣のある部屋にきたあたしは、その真ん中に立って、予めフレン教えてもろた詠唱文言をフレンと一緒に唱えた。それは、[位置を教えてくれてる機械に向かって飛べ]という拍子抜けするほどシンプルなものやった。けど、もちろんそれは魔道語やし、フレンがスマフォの電波に気づいてなかったらどこに飛んでええんかもわからんかったんやから、やっぱしあたし一人では還られへんかったやろなと思た。
ぐにゃんと目の前の景色が歪んで闇とに混ざって溶けていく。次元をすり抜けるためなんか、それに併せて体が作り替えられていくみたいで、身の置き所がないし、一気に疲れる感じがする。セルディオさんって、こんな気色悪いことようしょっちゅうやっとるんやろ? ある意味感動するわ。
「ここは、どこだ?」
ほんで、あたしらがたどり着いたのは、人っ子一人おらん、
「お墓……」
「墓? ここは墓所か。そう言われればそこここに花があるな。しかし、ニホンという国はあの建物と言い、皆塔のように四角く細長く建てるのだな」
あたしのつぶやきににフレンが辺りを見回してそう言う。
「うん、ここ神部家のお墓だよ」
そう、出てきたんはばーちゃんの代に住んどった京都にある神部家の菩提寺。しかもウチのお墓の真ん前やった。スマフォのGPSがここ数日で弱ったことと、ここに出てきたってこと。それが意味すんのは……
けど、あたしがそれを確かめようと骨入れに手を伸ばした時、あたしらに近づいてくる人がおったんで、あたしは慌ててその手を引っ込めた。
【お厨主さん……】
それはこの寺の住職さんやった。
【神部さんとこの千鶴さんにお参りどっか。ご苦労さんどす】
お厨主さんはそう言うてあたしに頭を下げる。
ホンマはあたしがその本人やねんけど。今それをこのあたしのじーちゃんほどのお厨主さんに言うても理解してもらわれへんやろから黙って頷いとく。
ほしたら、こっちが聞いてへんのに、お厨主さんの方からあん時の経緯を話してくれた。
【ホンマ、大変な事故どしたなぁ。
行ってたカラオケボックスの従業員がガス漏れてんのにも気付かんと煙草吸うたのが爆発して、吸うたその本人さんはもちろん真上におった千鶴さんも亡くなってしもたんどしたな。
『携帯は残ってんのに、骨も残らんほど黒こげになるなんてありえへん』て、親御さんは頑として、千鶴さんが死んだことを認めはらへんどしたんやけど……】
確かに生きてここにおんねんから、お父やお母が正しいねんけど、ホントやったら死んどるかもしれんねんもんなぁ。それでも、やっぱり認めへんのやろなと思たら、鼻の奥がつんと痛となった。あかん、泣いたらお厨主さんに変やて思われてまう。
【今も、おと……おじさん、おばさんは認めてはらへんのですか?】
せやからあたしはそう言うた。そしたらお厨主さんは静かに首を横に振った。
【長いこと認めてはらへんどしたんやけどな、それがおとつい急に『ええ加減ふんぎりつけなあかんやろ』て言いはって、最後に残された携帯持ってきはったんで、お勤めさしてもうてここに納めたんどす】
そうか、良かった。それに、やっぱりスマフォ、ここに来てたんや。
三年半も経った今更着信もメールもあらへんやろうけど、充電を満タンにしてこっちに持ってきたとしても、それが持つんはせいぜい丸四日。ホンマギリやった。そう思たらあたしはその場で座り込みそうになった。それに気づいたフレンが慌ててあたしの肩を支えてくれた。せやから顔を上げてフレンを見ると、言葉解らんから、泣きそうな顔してるあたしを心配そうに見てた。
【大丈夫どっか? そう言うたら顔色悪おすなぁ。何やったらちょっとそこで休んでいきはったら】
お厨主さんにもそう言われたけど、
【いえ、大丈夫です。
ほな、そろそろ行きますわ】
あたしはそう言うて、後ろ髪引かれるようにお厨主さんを見るフレンの服の裾を引っ張って寺の外に向こて歩き出した。
「解ったのか、界渡りの真相は」
歩きながらそう聞くフレンに、
「うん……神官(あっちにお坊さんに対応する言葉もあるんやろけど、あたしは知らんから)さんが知ってた。帰ったらちゃんと話すよ」
あたしが言葉少なにそう答えると、フレンはそれ以上聞かんかった。
けど、とりあえずお厨主さんの目から見えへんとこへ……と思て寺の入り口を目指したあたしの足が止まった。それは、ここで今会うと思てへんかった人がそこにおったから。
「お姉……」
それは、あたしの四つ年上の姉、中川晴海やった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
レオナルド先生創世記
ポルネス・フリューゲル
ファンタジー
ビッグバーンを皮切りに宇宙が誕生し、やがて展開された宇宙の背景をユーモアたっぷりにとてもこっけいなジャック・レオナルド氏のサプライズの幕開け、幕開け!
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ
鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。
それが約50年前。
聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。
英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。
俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。
でも…英雄は5人もいらないな。
企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する
namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。
転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。
しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。
凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。
詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。
それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。
「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」
前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。
痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。
そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。
これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる