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第2話 最強ライバル登場!?

Chapter-12

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「それにしても……」

 爽風が言う。

「ここも左文字家うちの城下町って言って良いんだし、どうせ使うんなら、KED製うちのロボット使ってくれればいいのにね」

 自分達を案内してくれた個体を含めて、店内を動き回るフラットヘッドシリーズを見て、爽風が、そう言った。

「まぁ、KED製うちの主力商品は、ウェイターロボットより、鉄道客のポーターロボットや、駅とかの一般施設での障害者介助ロボットだからな」

 朱鷺光が、そう言った。
 実際、グループの中核企業が、鉄道会社ということもあって、必然的にそうなるのだが、それだけではない。
 そのジャンルは、JR東日本という、超巨大な安定顧客が、存在するのだ。

「それに、神鳥谷精密も、一応うちとは資本関係、あるし」

 安定的上位株主ではなかったが、左文字JEXホールディングスも、神鳥谷精密工業株式会社の株式を、数%保有していた。元々、神鳥谷精密工業も、茨城じもとの企業なのだ。

「しっかしあれだな……出始めた頃は、スカイネットの再現だの何だのと言われてたけど、今やすっかり、普及しちまったな」

 弘介が、呟くようにそう言った。

「マスコミは、変に煽り過ぎなんだよ。MAaMモデルで、そんな高度なA.I.、簡単に再現できるもんか」

 朱鷺光が、苦笑しながら、そう言った。

 そう、現在普及している、こうした自律型ロボットは、MAaMをモデルにした、人工ニューラルネットワークコンピューターを使用している。
 KEDの製品も、例外ではなかった。

 だが、朱鷺光に言わせると、

「圧倒的に遅い! 処理能力不足!」

 と、なってしまう。

 事実、MAaMモデルで、知性と人格と呼べるものまでを再現したロボットは、まだいない。

 もっとも、従来型の、データベース型疑似ニューラルネットワークによる人工知能である、朱鷺光のR.Seriesのそれが、知性と人格を持っているのかということに対しては、朱鷺光自身は、間違いなくそう作った、と断言しているものの、世界的にも、異議も多いのだが。

「さて、俺は注文、決めてあるけど、お前らは?」

 朱鷺光は、弘介や爽風を見て、そう訊ねるように言った。

「あ、私も決まってる」
「俺も大丈夫だぞ」

 爽風と弘介が答えた。
 オムリンは、もちろん食物は、必要としない。

「よし、じゃあ、呼ぶぞ」

 朱鷺光が、注文用呼び出しボタンを押す。
 しばらくすると、ロボットではなく、人間の店員が、注文を聞きに来た。

「お待たせしました、ご注文がお決まりでしたら、お伺いいたします」
「チーズロースカツ定食2つと、ヒレカツ定食の大をひとつ、お願いします」

 朱鷺光が、オーダー端末を片手に対応してくる店員に、そう言った。

「了解しました、ご飯とお味噌汁は、いかが致しますか?」
「えーと……」

 訊き返されて、朱鷺光は、弘介と爽風に視線を向ける。

「3つとも白米のご飯に、豚汁で」

 爽風が、ぱっと反応したように、そう言った。

「かしこまりました。ご注文は以上でしょうか?」


「あー、食った、食った、と」
「満腹になったし、これで明日からのスタミナもついたな」

 食後、会計を済ませて店内から出ると、朱鷺光は腹を押さえながら言い、弘介が、それに続いた。

「さて、と……」

 朱鷺光は、出発するときと同じように、コルトの運転席に乗り込むと、助手席のロックを外す。
 そして、やはり同じように、オムリン、弘介の順で、コルトに乗り込む。

 すると、そこへ、ライダースーツに身を包んだ、爽風が、すでにエンジンのかかったRG250Γにまたがって、運転席に近寄ってくる。
 朱鷺光は、手動の回転ハンドルで、窓を開けた。
 爽風も、ヘルメットのシールドを上げる。

「私、ちょっとアイスクリームかなんか欲しいから、コンビニ寄るね」
「おう」

 爽風の言葉に、朱鷺光が返事をする。

「あ、俺もちょっと甘いもの欲しいかな」
「了解。じゃ、こっちもコンビニな」

 弘介の言葉に、朱鷺光がそう、反応した。

 爽風のRG250Γが先行して、朱鷺光のコルトが後から駐車場を出る。
 爽風は、そのまま大通りへと出たが、朱鷺光は、一旦裏道を走った。

 すると、コルトの目の前に、真っ黒なシボレー アストロが、割り込むように、入ってきた。

「なんだ、邪魔くせぇなぁ」

 助手席の弘介が、そう言った。

 次の瞬間、シボレーのミニバンは、急ブレーキをかけて、停車した。
 当然、朱鷺光も、急ブレーキを踏む。

「ぐえっ」

 シートベルトに、食べたばかりの腹部を圧迫されて、弘介が、くぐもった声を上げた。

「なんだよ、こいつら……喧嘩売ってんのか?」

 悪質運転者、そのつもりで、弘介は言ったのだが。

「どうやら、そうみたいだな」

 朱鷺光は、深刻そうな表情で、そう言った。

「え?」

 弘介が、キョトン、としている間に、朱鷺光はシートベルトを外し、車外に出た。

 すると、朱鷺光のコルトの、後ろ側にも、真っ黒なシボレー アストロが、停まっていた。
 周囲は、日が落ちて、裏道ということもあり、人気はなかった。
そこで、2台の黒塗りのアメリカミニバンに、朱鷺光達は挟まれた形だ。

 弘介も、そしてオムリンも、コルトから降りる。

「Dr.左文字、大人しくついてくるネ、身のためヨ」

 後ろのアストロから降りてきた、チャイニーズ風のアジア人が、いかにもなアジア訛りの日本語で、そう言うが、

「中共とも別に仲良かないが、罪をなすりつけようとか、ちょっとセコいんじゃないかな、カンパニーCIAさんよ」

 と、朱鷺光は、目元で険しくしつつも、呆れたように、そう言った。

「我々についてくる、怪我しない、それだけヨ」
「お断りだな」

 チャイニーズ風の男の言葉に、朱鷺光は、低い声で、しかしはっきりと聞こえるように、そう言った。

「ならば仕方ナイ、ちょっと痛い目、見てもらうネ」

 チャイニーズ風の男がそう言うと、アストロのリアゲートが開き、そこから、見覚えのあるゴリラのような二足歩行のロボットが、姿を表した。

 ──DR28号! やっぱり、繋がってやがったか……

 朱鷺光は、そう思いつつも、

「オムリン、ちょっと相手してやれよ。但し往来だ、速攻でやっちまえ」

 と、オムリンをけしかけた。

 2台のシボレー アストロから、それぞれ1体ずつ、DR28号……に、少し改良を加えているようなロボットが、それぞれ1体ずつ、合計2体、現れた。

 後ろのアストロから降りてきたDR28号改が、朱鷺光めがけて、突進してくる。
 オムリンは、コルトの屋根に手をついて、跳躍する形で、朱鷺光と、DR28号改の間に、割って入った。
 突進してきたDR28号改の、突進してくる巨体を、クロスさせた腕を顔の前面に出して、受け止め、押し止める。
 DR28号改は、そのまま、オムリンにパイルバンカーを向けようとしたが、それより速く、オムリンは、そのDR28号改の頭を押さえるようにして飛び上がり、両膝で、頭部に打撃を入れた。
 そのまま、DR28号改が次のアクションを起こすより速く、すでに手に持っていたスタン電磁スティック警棒を、DR28号改の、頸部の隙間にねじ込み、トリガーを押し込む。

「オムリン!」

 1体の動きを止めたオムリンに、もう1体のDR28号改が、左肩部のアレスティングフックつきワイヤーを、射出してくる。
 それは、オムリンの左脚を絡め取った。
 が、オムリンは、それとほぼ同時に、両足で、動きを止めた方のDR28号改を蹴飛ばし、もう1体の方へ向かって、跳躍する。
 瞬時に懐に飛び込み、その右肩関節部に、スタンスティックを押し込むと、トリガーを押し込んだ。

 DR28号改は、2体とも、ブスブスと煙を吹きながら、その場に擱座した。

「ちぃぃっ、このまま、済むと思わないアルヨ!」

 典型的な負け惜しみのセリフを吐いて、チャイニーズの男は、アストロの助手席に逃げ込んだ。アストロはそのまま、半ば強引にバックをかけて、向きを変え、走り去ろうとする。

「忘れもんだよ、お前らで片しておきな!」

 朱鷺光が言うと、オムリンは、DR28号改の残骸を一体、持ち上げて、逃走しようとしたアストロに、投げつけた。

 ドゴン!

 アストロは、後ろからDR28号改の残骸をぶつけられて。変形しながら、転がった。

「さて、と」

 朱鷺光は、コルトの前の方を塞いだ、アストロに乗っていた、黒いサングラスをかけた、ややいかついが明らかにモンゴロイドの男に、向き直った。

「あんたらもああなりたい?」

 朱鷺光が問いかけるように言うと、男は両手を上げるようにしつつ、ぶんぶんと首を横に降った。

「じゃ、とりあえず身分証くらいは、見せてもらおっか」

 と、朱鷺光は、手のひらを差し出して、そう言った。

 男は拳銃を手にしていたが、オムリンが威嚇のポーズをとっていたこともあって、すでに戦意喪失状態だった。

「…………、!」

 男が、素直に差し出した身分証を見て、朱鷺光は、一瞬表情を険しくした。

「なるほどねぇ……カンパニーにしちゃやり方が、ちょっと強引なわけだ」

 朱鷺光はニヤリとしながら、そう言いつつ、その身分証を、自分のズボンのポケットにしまった。

「ま、どうでもいいや。命までとってもしょうがないから、ここまでにしとくけど、後片付けは、しっかり、自分でやってくれよ」

 朱鷺光がそう言うと、後部座席に移っていた弘介に代わり、オムリンが助手席に、朱鷺光が運転席にのって、コルトを発車させる。
 呆然とする男を取り残すようにしたまま、朱鷺光はアストロを追い抜くようにして、そのまま、大通りへと出る道を、走っていってしまった。
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