不死鳥の素材屋さん

淡墨

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1.イチノセ素材店

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 妖精の鱗粉、二角獣の角の粉末、千年茸、そしてここトリューシカ王国の聖獣でである不死鳥が落とした羽。そんな珍しい素材を取り扱う我が『イチノセ素材店』は、王都ラッセルの下町の中でも貴族街に近い富裕層向けの商店街という一等地に店を構えている。取り扱っている商品の都合上、家賃の安い平民向けの商店街だと逆に売れないためだ。
 魔術国家であるトリューシカでは、それらの素材はさまざまな魔術具や薬に使える貴重な素材であり、なかなか手に入れられないものばかり。それらを取り扱っているためか、新規オープンしてから今まで赤字にはなっていない。
 珍しい素材を集めるのは、わたしにとっては難しいことではない。むしろ非常に簡単で、これで商売をしているのが申し訳なくなるくらいだ。それでも止めないのはこの生活を楽しんでいるからだったし、珍しい素材なのに定期的に補充できるとありがられているから、というのが理由だった。

(人々のためなんだし、わたしはちゃんと役目を果たしてるよ、うん)

 そう言い聞かせて、仄かな明かりに照らされた店内をカウンター越しにぐるりと見渡した。真紅のローブを身に纏った人間が二人、じっくりと素材を見比べながら、財布と相談している。ローブは布の縁をなぞるように金糸で複雑な刺繍が施されており、右胸部分には同じく金糸で不死鳥を模したこの国の紋章が縫われている。
 まさかその不死鳥が人間に混ざって素材屋を営んでいるとは、きっと誰も思うまい。
 
 
 はるか昔、トリューシカが建国したその時から、ずっとこの国を見守り続けている聖獣、不死鳥。それはトリューシカの象徴であり、守り神であり、架空ではなく現実に存在するものだ。
 不死鳥に関して様々な言い伝えがトリューシカには存在するが、覚えておけばいいのは、魔術国家であるトリューシカにとって守り神とも言える聖獣であること、五百年に一度自ら集めた木の枝の巣で命を再生させずっと生き続けているということ、不死鳥の涙にはあらゆる傷を治す力があり、その血には不死鳥と同じく不老不死の力が宿されているということ。そのくらいだ。

 そしてなんと、わたしこそがその不死鳥なのである。そして同時に、もう一つ。人間としての記憶も持ち合わせている。

 わたしが『一ノ瀬朝緋』であるということを思い出したのは、四百年の間ずっと見守ってきたトリューシカ王国のはるか上空を飛んでいた時だった。
 成人前に命を落とした可哀想な子ども。毎日を楽しんで生きていた彼女が事故によって突然の死を迎えたことに、悲しんでくれた人はきっと多い。当時のことを思い出しているのに、どこか客観的にしかなれないのは、それ以上の年月を人間ではなく不死鳥としてこの国で生きているからに他ならなかった。

 不死鳥はその名の通り、不死の鳥である。しかしそれは肉体に関して言えるだけで、精神はおおよそ五百年に一度、灰の中から蘇る際にリセットされる。生まれ変わった精神は先代の不死鳥の精神を記憶として受け取り、新たな不死鳥としてまた五百年生きることになる。
 わたしは何代目かも分からない不死鳥だが、不死鳥としての生き方を迷わずにすんだのはその先代の記憶のおかげだった。

 不死鳥として生きていくならば、わたしの生活は今までと何も変える必要がなかった。国内にいくつもある魔力に満ちた森を転々として、その土地で羽を休めながら不死鳥の魔力を分け与え精霊たちの糧としてもらい、次の代に肉体と記憶を引き継ぐに相応しい土地を探す。時折不死鳥の涙や羽、血を求めて荒事を企む人間はどうしてもいるが、そんなもの無視して気ままに過ごせばいい。何代も何代も、わたしは……不死鳥としてのわたしの肉体を繰り返し再生させてきた過去の不死鳥たちは皆、そうやって過ごしてきた。

 しかし、わたしは人間としての記憶を取り戻してしまった。

 それは不死鳥が滅多に抱かない好奇心というものを大いに刺激した。朝緋にとってはここは魔術に満ちた不思議な土地で、まるでファンタジー映画を見ている気にもなったからだ。不死鳥であるわたしが、人間に混ざって生きてみたいと思ったのも至極当然なことだった。
 人間としての記憶を持ちながらも不死鳥であるわたしが、人間に混ざって生きていくためには何をすればいいのだろうか。
 人間であった頃の記憶と、不死鳥である自分の記憶。その二つの記憶を必死に引っ張り出して、その方法を探して。まず行ったのは、人間の容貌を手に入れる練習だった。

『アサヒ』というかつての名前をそのまま使い、魔力を巡らせて人間の容貌を取ることは難しくはなかった。取り戻した記憶のおかげで、人間がどのように動くのか大雑把ではあるが理解できていたからかもしれない。不死鳥の姿とは違う関節の動きによって何かをするというのは、朝緋としての記憶がなければ非常に難しかっただろう。その記憶を頼りにしたためか、人間であるわたしの姿は二十歳で死んだ一ノ瀬朝緋のものに固定されてしまったが。不死鳥の体毛の影響か、朝緋と違って真っ黒だった髪は燃えるような赤色であったし、瞳は金色をしていた。

 次に、王都ラッセルに住むために必要な手段を考えた。居を構えるのならば少しでも人間らしい生活をしなければ怪しまれるし、何よりわたしが人間に混ざりながら生活してみたかったのだから、真剣に考えもする。住み込みで雇ってもらうという手段も考えたが、流石に不死鳥の涙と血の価値はわたしが誰よりも知っていたので、怪我は絶対にできないし、共同生活はバレるリスクが増えるだけであまりメリットはない。何度かこっそりラッセルを見学して、素材屋を見つけたときは「これだ」と思ったものだ。

 トリューシカには牛や豚、鶏といった普通の生物とは別に、幻想生物というものが存在する。不死鳥であるわたしも大枠ではそこに区分されるし、各種属性を持った精霊や妖精、グリフォン、バイコーンやユニコーンなども含まれる。

 人間の姿を模していても元が不死鳥なので他の幻想生物たちからも協力してもらいやすく、珍しい素材だって荒事なしに集めやすい。集めやすいというか、譲ってもらえるというか。
 他の素材屋と品物が競合しないのも魅力的だった。幻想生物の素材は珍しい。それを常に品物として揃えられるのは、恐らく自分自身が幻想生物であるわたしくらいなものだろう。
 それに幻想生物の素材は高く売れる。資金調達のために森で得た素材を町の素材屋に売り、お金を貯めて、そして空き家だった今の家を借りた。購入ではなく賃貸契約にしたのは、流石に短期間で購入出来るほどの資金を貯めるのは難しかったからだ。
 こうしてわたしは無事『イチノセ素材店』を開店したのだった。
 


「アサヒさん、会計お願いします」

 そう言ってカウンターに差し出されたのは、サラマンダーの尻尾だった。差し出してきたのは先程まで連れと一緒に財布を覗き込みながら、購入する素材を吟味していた少年だ。王宮魔術師と言ってもまだまだ見習いのようで、年齢はおそらく十五歳前後。もう一人も同じくらいの年齢の少年だ。高位の魔術師に比べるとまだまだローブは真新しく、そして位があがるにつれて増える刺繍はまだ少なかった。

「ありがとうございます。こちらですと、銀貨一枚ですね」

 サラマンダーはトリューシカの南にある森に多く生息している。不死鳥であるわたしや高位の幻想生物が住む森ではなく、人間でも入れる少し深い森でも入手が可能だ。サラマンダーは敵に襲われると自ら尻尾を切りそれを囮とすることで逃げ延びる種族である。そのため森を注意深く探索すれば見つけるのは難しくない。
 ただ、周りに森のないラッセルでは十分貴重品だ。わたしの場合は不死鳥であることを最大限利用して、何人もの商人を経由する流通経路を大幅短縮しているのと、わたしが不死鳥であるためかサラマンダーたちの魔力の残滓を辿って見つけるのが容易なため、銀貨一枚……日本円にして千円ほどだろうか。そこまでの値下げに成功している。新米と言えど王宮魔術師であれば十分手が届く程度のものだ。ちなみに余談ではあるが、平民の一般的な一月の収入は金貨三枚、おおよそ三万程度である。

 乾燥して崩れやすくなっている尻尾を丁寧に包む。連れの魔術師も同じくサラマンダーの尻尾を持ってきたので、それも個別に包みそれぞれに手渡した。わたしは素材を売るだけで、調合によってどのような効果が得られるのかまでは詳しくないが、これまで得た知識ではどうやら炎属性の魔術具に使えば魔術具自体が長持ちしたり効果が上がったりするし、魔術で受けた火傷を治す薬を作成するのにも使えるらしい。

「二人ともサラマンダーの尻尾をお求めということは、もう少し仕入れておいた方がいいかしら?」
「そうですね。実は、今年の見習いの課題が火傷なおしの作成で……王術院の素材を使っての練習は講義の時以外できないし、先輩方がここのお店を紹介してくださっているので、我々以外にも求める客が来ると思います」

 わたしの上客が誰かもよく分かっているのだろう。清潔で整えられた身なりは貴族のご令息そのものであるが、一応表向きは平民であるわたしに対して丁寧に答えてくれた。

「そうなのね。教えてくれてありがとう。お礼に、もう一本尻尾をおまけするわね。良ければ二人で分けて使ってちょうだい」
「いいんですか? ありがとうございます!」

 二人してキラキラとした目でわたしを見てくる。悪くない。若い芽は育てるべきというのが持論だ。サラマンダーの尻尾の一つくらい、おまけにしても利益に痛手はない。……普通の素材店だと、大赤字だろうが。
 もう一つの尻尾も紙に包んでから更に紙袋に包んでそれぞれに手渡す。「また来ます」と笑顔で店を出た彼らは、将来の常連になってくれることだろう。
 カランコロン、と店の戸口の鐘が鳴る。彼らと入れ違いに入ってきた人物に、少年たちは「あ」と驚いた顔をして、その場に硬直をした。まるで熊のように大柄で見るからに荒々しく、野盗といわれても納得しそうな風貌だ。灰色の髪に同色の瞳を持ち、頬に大きな傷が一つ。出来るだけ質素な服を選んだのだろうが、それでも十分上質ない服を着ており、平民にはなかなか出せない貫禄すらある。

「お、魔術師見習いか。いい買い物はできたか?」
「は、はい! ドルガー団長も買い物ですか?」
「まぁな。そんなかしこまらなくても、今日は非番だから取って食いやしねぇって」
「非番なのに取って食いそうと思われるのがおかしいんですよ」

 見慣れた顔につい口出しすると、ドルガー団長と呼ばれた彼はニヤリと笑った。

「威厳がある、ってことだろ? いいことじゃねぇか」
「そういうことにしておきますね」

 適当に受け流すと、ドルガーは「お前たちも非番なら、早く帰って休めよ」と立ち尽くしていた少年たちを追いやった。慌てて、それこそ逃げるように帰る彼らに思わず同情する。せっかくの休日に未来の自分の上司になるかもしれない人物に出会ってしまったら、気も休まらないだろう。
 ドルガー・ルッツェはトリューシカ王宮騎士団の団長である。具体的な年齢は知らないが、三十代後半に差し掛かったのではと思える見た目より、実際のところ若いらしい。魔術師団と双璧を成す騎士団団長としては若くして就任しているが、相応の武勲は上げていると専らの噂だ。

 そして、彼こそがわたしの上客のお使いである。

「本日は何をお求めですか?」
「いつも通り、ここに書いてあるものを頼む」

 そう言って差し出されたのは手のひら程度の大きさの紙だった。びっしりと文字が並んでおり、どれもラッセルでは手に入れるのが困難な、しかしわたしならば幻想生物にちょっとお願いすればすぐに手に入れられるものばかりだ。

「グリフォンの爪と、バイコーンの角の粉末と……水妖精の鱗粉なら、すぐにご用意できますよ。サラマンダーの尻尾は数が多いですね。手持ちじゃ足りないですが、一週間後であれば揃えられると思います。他のも同じですね。すぐには無理ですが、お時間いただけるのでしたらご用意できますよ」
「一週間か、そりゃ早いな。じゃあいつも通りそれで頼む」
「分かりました。お代は本日ご用意出来る分のみいただいて、残りは後日でよろしいですか?」
「問題ない」

 満足そうに頷いたドルガーに少し待ってもらって、カウンターの奥にある倉庫に赴いた。倉庫には展示するには数が少なく、より希少なものを整理してある。グリフォンの爪とバイコーンの角の粉末はそれに該当するもので、水妖精の鱗粉は日当たりの少ない、できれば湿度も高めのところのほうが保存に向いているので、その状況を保った魔術具である箱に仕舞っていた。

 グリフォンの爪は、幻想生物が多く暮らす特殊な森に住み着いているグリフォンに伸びてきた爪を削って分けてもらったものだし、バイコーンの角も生え変わりに合わせて古い角を分けてもらったものだ。これらはわたしでも常に在庫を揃えておくのは難しいものだが、表に出していないのであることを知っている人も少ないし、何より気安く手出しできる値段ではないので結局いつも同じ人に買われている。
 倉庫からそれらを取り出してカウンターに持っていき、必要以上に傷をつけないよう注意しながら包んでいく。その間にするのは世間話だ。

「また魔術師団長様のお使いですか?」
「まぁな。暇なら行って来いって言われたんだが、非番は休みであって暇とは言わないと思わねぇか?」
「それは、まぁ、その通りなんですけど。わたしとしてはありあがたい収入源なので、お使いでもなんでもありがたいですけどね」
「おいおい、そこは直接会って礼がしたいっておねだりしてくるところだろ。なんてったって顔良し、家柄良し、性格難ありの今をときめく魔術師団長様だぜ?」

「性格に難ありの時点で出来たら関わりたくないです。それに、取り扱っている素材が珍しいんで貴族街からもお客様が来てくださいますけど、わたし自身は身寄りもいないただの平民ですし。筋金入りのお貴族様にお会い出来るような立場じゃありません」
「それをいうなら俺も筋金入りの貴族様のはずなんだがなぁ」
「自分の立場を隠しもしないくせに、服装だけは平民に寄せているドルガー団長が筋金入りっていうのは違和感あるじゃないですか」

 随分失礼なことを言っている自覚はあるが、こうして下町に遊びに来るのが趣味である彼がいてくれたからこそ、貴族にもイチノセ素材店の名が知れることになったし、顔こそ合わせたことはないが魔術師団長御用達にもなれたので感謝はしている。ちょっと親しみやすすぎるドルガーの人柄が悪いのだ。
 素材を包み終え金額を伝えると、きっちりその金額をドルガーはカウンターに置いた。キラリと輝く金貨が何枚もある。間違いないか数を数えてから革袋にしまい、素材を手渡した。

「確かに受け取った。残りはまた後日取りに来る」
「かしこまりました。魔術師団長様にもよろしくお伝え下さい」
「もちろん。普段滅多に感情を出さないあいつだが、アサヒのことには興味持ってたぜ。こんな素材を集められる、不死鳥の加護を受けた人間とは何者だってな」
「確かに自分でも珍しい素材を妙に集められるな、とは思いますけど。でも不死鳥の加護というのは大袈裟ですよ」

 何言ってるんだ、とばかりに笑ってみせる。実際のところは加護どころか、わたしが不死鳥ですし。とはもちろん言わない。
 また来る、と告げて去っていったドルガーを見送って、時計代わりの魔術具に目を向けると、間もなく閉店時間といった頃合いだった。
 人間生活は、順風満帆である。
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