天明繚乱 ~次期将軍の座~

ご隠居

文字の大きさ
131 / 197

意知は表番医師の遊佐信庭が小野章以の共犯者だといよいよもって確信する。そして多紀元悳の「やんわり」とした脅し

しおりを挟む
 それにしても依田よだ政次まさつぐは一体、何ゆえに一橋ひとつばし治済はるさだと手を結ぶことにしたのか、その理由が意知おきともには分からなかった。

 もっとも、どんなに考えたところで今、ここで結論は出まいと、意知おきともは目の前に横たわる問題、さしずめ本題ほんだいへともどることにした。

 目の前に横たわる問題…、本題ほんだいとは他でもない、家基いえもとの死の真相、もっと言えば殺害の真相である。

「ともあれ、元悳もとのり先生たちは西之丸にしのまる御側おそば御用ごよう取次とりつぎ小笠原おがさわら殿や、それに野々山ののやまなる書院しょいん組頭くみがしらはばまれて、大納言だいなごん様の療治りょうじ断念だんねんされたわけですね?」

 意知おきとも元悳もとのり確かめるように尋ねたわけだが、元悳もとのりからは予期よきせぬ返答があった。

「いえ、実はその後で我らおく…、本丸ほんまるおくそろうて御膳ごぜんばん小納戸こなんど大久保おおくぼ殿と吉川よしかわ殿のもとへと押しかけまして、おそれ多くも大納言だいなごん様の療治りょうじに我ら本丸ほんまるおくくわえていただくことが無理なれば、せめて当代とうだい随一ずいいちと申しても過言かごんではない寄合よりあい岡本おかもと玄治げんじ大納言だいなごん様の療治りょうじくわえていただたく、このむね上様うえさまにお取り次ぎをと…」

 本丸ほんまるおく医師いし差配さはいする本丸ほんまるにて小納戸こなんどとして御膳ごぜんばん兼務けんむする大久保おおくぼ半五郎はんごろう吉川よしかわ一學いちがくの二人にそう陳情ちんじょうし、大久保おおくぼ半五郎はんごろう吉川よしかわ一學いちがくの二人はそれを受けて、二人にとっての直属ちょくぞくの上司とも言うべき小納戸こなんど頭取とうどりしゅうに話を、元悳もとのりたち本丸ほんまるおく医師いしのこの陳情ちんじょうを上げ、さらに小納戸こなんど頭取とうどりしゅうから彼らのやはり直属ちょくぞくの上司、それも中奥なかおくの支配者とも言うべき御側おそば御用ごよう取次とりつぎにこの陳情ちんじょうを上げて、御側おそば御用ごよう取次とりつぎから上様うえさまこと将軍・家治へとこの陳情ちんじょうが伝えられたということらしかった。

「それで結果は?」

 意知おきとも単刀たんとう直入ちょくにゅうに尋ねた。

「さればおそれ多くも上様うえさまにおかせられましては、我ら本丸ほんまるおく願出ねがいで至当しとうと認められ…」

「それで天の声が降り、岡本おかもと先生の療治りょうじ入りが認められたと?」

 意知おきともがそう水を向けると、「そればかりではありません」との元悳もとのりからの返答があったので、

「と言うことは…、元悳もとのり先生たち、本丸ほんまるおく医師いし療治りょうじ入りも認められたと?」

 意知おきともはさらにそう水を向け、元悳もとのりうなずかせた。

「それで…、さしもの小笠原おがさわら殿も岡本おかもと先生は元より、元悳もとのり先生たち本丸ほんまるおく医師いし大納言だいなごん様の療治りょうじくわわることを拒否できず、元悳もとのり先生たちの西之丸にしのまる入りが…、すなわち、大納言だいなごん様への療治りょうじを認められたと…」

 天の声、それも将軍・家治の「声」ともあらば、如何いか小笠原おがさわら信喜のぶよし家基いえもと御側おそば御用ごよう取次とりつぎであろうとも、この将軍・家治の「声」を拒絶することは不可能であっただろう。

もっとも、2月24日の朝のことでござりましたが…」

 元悳もとのりはそう自嘲じちょう気味ぎみに付け加えた。2月24日とは他でもない、家基いえもとの命日に当たり、家基いえもとはその日のこくなかば…、すなわち昼の四つ半(午前11時頃)過ぎに薨去こうきょしたのであり、つまり元悳もとのりたち本丸ほんまるおく医師いしくわえて岡本おかもと松山しょうざん家基いえもと治療ちりょうチーム入りが認められたのは家基いえもとが死ぬほんの少し前ということになる。

 元悳もとのり自嘲じちょう気味ぎみに付け加えたのもうなずけた。

「それでも…、大納言だいなごん様が薨去こうきょされるまでの間、元悳もとのり先生たちは必死で大納言だいなごん様の救命きゅうめいに当たられたわけでしょうから…」

 意知おきともはフォローするようにそう言った。

「ええ、それは勿論もちろん。なれど…」

 元悳もとのりはそこで言葉を区切くぎると、その先を言いよどむ様子をのぞかせたので、「なれど、何です?」と意知おきともがその先をうながした。

 すると元悳もとのりはまだ若干じゃっかん躊躇ちゅうちょを見せつつも、その先を続けた。

「なれど、遊佐ゆさ先生の冷笑れいしょうにあいながらの救命きゅうめいでござったが…」

冷笑れいしょう…」

 元悳もとのりたち本丸ほんまるおく医師いしくわえて、岡本おかもと松山しょうざんが必死で家基いえもとを救おうと奮闘ふんとうしていた最中さなかに、こともあろうに遊佐ゆさ信庭のぶにわ冷笑れいしょうを浮かべていたとは、これで最早もはや遊佐ゆさ信庭のぶにわ家基いえもと殺害の共犯者…、家基いえもと殺害に使われたとおぼしき兇器きょうきとも言うべき毒キノコであるシロテングタケ、あるいはドクツルタケを用意したに違いない小児しょうに小野おの章以あきしげの共犯者であることは疑いようのない事実だと、意知おきともはそう確信した。

 遊佐ゆさ信庭のぶにわにしても小野おの章以あきしげ同様、一橋ひとつばし家と…、治済はるさだと何らかの関わりがあり、そこで治済はるさだ実子じっしである豊千代とよちよを将軍にすべく、治済はるさだに手を貸したのではあるまいか。

 すなわち、次期将軍たる家基いえもとの殺害である。将軍・家治の嫡男ちゃくなんである家基いえもとがいる限りは未来みらい永劫えいごう豊千代とよちよに将軍職が回ってくることはあり得なかった。

 そこで治済はるさだ家基いえもとの殺害を決意、だが家基いえもとにただ一服いっぷくるだけでは芸がないと、清水重好しげよしに疑いがかかるような細工さいくを思いついたのだろう。

 それこそが遅効ちこう性にして致死ちし性のある毒をもちいての殺害であった。すぐには毒の効果が現出げんしゅつしないのがポイントであった。

 いや、理想としては家基いえもとがあくまで病死として処理されることであり、重好しげよし家基いえもと殺害の疑いがかかる細工さいくが効力を発揮はっきするのは家基いえもとは実は殺害されたものとバレた時のための、

「保険」

 そのような意味合いであったのだろう。

 ともあれ治済はるさだはかねてより付き合いがあったに違いない、小児しょうに小野おの章以あきしげに話を持ちかけたのではあるまいか。

 すなわち、遅効ちこう性にして致死ちし性のある毒を作るか、見つけてこいと、治済はるさだ小野おの章以あきしげに対してそう持ちかけたのだろう。

 それに対して小野おの章以あきしげは多額の報酬ほうしゅうとひきかえにこれを受けたか、あるいは治済はるさだの方から多額の報酬ほうしゅうとのセットで話を持ちかけたか、ともあれ小野おの章以あきしげ治済はるさだより多額の報酬ほうしゅうとひきかえに家基いえもとを殺害するための道具として使用されるその、遅効ちこう性にして致死ちし性のある毒を見つけることにした。

 だが小野おの章以あきしげ一人の力では中々なかなかにそのようなある意味、

都合つごうの良い…」

 毒を見つけることは出来ず、そこで小野おの章以あきしげ本草ほんぞう学に通じている田村たむら善之よしゆきを頼ったのであろう。

 小野おの章以あきしげ善之よしゆきに対して、

小児しょうに誤飲ごいん事故の防止ぼうし…」

 などと如何いかにももっともらしい口実こうじつにて善之よしゆきに対して教えをうたに違いない。

 それに対して善之よしゆき薄々うすうす、「ヤバイ」と知りつつ、それでも小野おの章以あきしげの頼みとあらば断り切れず、これに応ずる格好かっこうで、遅効ちこう性にして致死ちし性のある毒として、シロタマゴテングタケとドクツルタケの存在を教えたのであろう。何しろ小野おの章以あきしげはこの躋寿せいじゅかんに毎年50両もの醵金きょきん…、資金援助を行っているのである。その出処でどころ勿論もちろん治済はるさだより受け取った、それも毎年保証されている「報酬ほうしゅう」の一部であったが、しかし、金に「色」がついているわけではない。

 その毎年50両もの醵金きょきんのおかげでこの躋寿せいじゅかんが成り立っていると言っても過言かごんではないだろう。そしてその恩恵おんけい善之よしゆきも受けているはずであった。

 それと言うのも善之よしゆき本草ほんぞう学をさらきわめるべく、この躋寿せいじゅかんに講師の立場として通っていた。講師として医者の卵に本草ほんぞう学をさずけつつ、己自身もさら本草ほんぞう学をきわめる…、そのためにはこの躋寿せいじゅかん所蔵しょぞうされているであろう本草ほんぞう学の「テキスト」は善之よしゆき本草ほんぞう学をきわめる上で、そして若い医者の卵に本草ほんぞう学をさずけるためにもまさに、

「必要不可欠」

 と言えたが、その「テキスト」にしても、躋寿せいじゅかんが少なくない額でもって購入こうにゅうしたものであり、そしてその購入こうにゅう原資げんしは他ならぬ小野おの章以あきしげからの毎年50両にものぼ醵金きょきんであった。

 そうであれば善之よしゆきとしてもその小野おの章以あきしげからの頼み、それもただの質問とあらば、答えないわけにはゆかなかっただろう。

 ともあれそうして遅効ちこう性にして致死ちし性のある毒としてシロタマゴテングタケとドクツルタケの存在を知った小野おの章以あきしげただちにその存在を治済はるさだに対して告げたと思われる。それも主に、越前えちぜんにおいて自生じせいしていることも合わせて。

 それに対して治済はるさだは、

「これはこう都合つごう…」

 そう思ったに違いない。何しろ越前と言えば福井、そして福井藩主は治済はるさだ実兄じっけい重富しげとみである。協力を求めるのにこれほどこう都合つごうなことはないだろう。

 治済はるさだは恐らく、重富しげとみに対して何もかも打ち明けた上で協力を求めたのではあるまいか。すなわち、

家基いえもとを殺す道具として毒キノコであるシロタマゴテングタケか、あるいはドクツルタケ、それを兇器きょうきもちいようと思っている。幸い、その毒キノコは兄者あにじゃが治めている越前えちぜんにおいて自生じせいしているとのことなので、ついては領内りょうないにてシロタマゴテングタケか、あるいはドクツルタケをらせてはもらえまいか…」

 治済はるさだ重富しげとみに対してそのように頼んだのではあるまいか。

 それに対して重富しげとみも弟のためならばと、それに弟・治済はるさだの子である豊千代とよちよが将軍になれれば己も栄達えいたつが期待できると、そんな打算ださんも働いたに違いない。

 ともあれ重富しげとみ実弟じってい治済はるさだが望む通り、領内にて毒キノコであるシロタマゴテングタケ、あるいはドクツルタケの収穫しゅうかくを許したのではあるまいか。

 いや、もしかしたら重富しげとみの方でそれらを用意して治済はるさだに渡したのやも知れぬ。

 ともあれそうして毒キノコを…、シロタマゴテングタケか、あるいはドクツルタケを手に入れた治済はるさだはそれを今度は小野おの章以あきしげと同じく一橋ひとつばし家…、治済はるさだと縁があるおもてばん医師いし遊佐ゆさ卜庵ぼくあん信庭のぶにわへと渡してこれで実験を…、まずは将軍・家治の正室せいしつ倫子ともこ被験ひけんしゃとしての人体実験を命じたのではあるまいか…。

 意知おきともはそこまで考えて、はたと気付いた。それは、将軍、あるいは次期将軍の食事について小納戸こなんど毒見どくみをするように、将軍の正室せいしつや、あるいは息女そくじょの食事についても、

毒見どくみをする女中がいるのではあるまいか…」

 意知おきともはそのことに気付いたのであった。だとするならば、大奥にも治済はるさだの「共犯者」がいると考えるべきであった。そう考えないことには将軍正室せいしつ倫子ともこや、あるいはその息女そくじょ萬壽ます姫に毒入りの…、シロタマゴテングタケか、あるいはドクツルタケを食べさせることは不可能だからだ。

「どうかされましたか?」

 善之よしゆき意知おきともの様子を案じて尋ねた。

「いえ…、御台みだい様や、それに姫君ひめぎみ様のお食事について…、果たして誰が毒見どくみをするものかと、それを考えておりまして…」

 意知おきともがそう答えると、善之よしゆきは、それにこの場にいる他のすべての者も意知おきともの今の言葉の意味するところを察した。

「されば…、大奥の中にも一橋ひとつばしの息のかかった者がいるとお考えで?」

 元悳もとのりがズバリ尋ねた。

「ええ」

「それでしたら…、毒見どくみをせしは確か、ちゅう年寄どしよりではなかったかと…」

 元悳もとのり流石さすが広敷ひろしき…、大奥における病人の治療ちりょうをもつかさどってきたことがあるだけにくわしかった。

ちゅう年寄どしより…、ですか…」

 意知おきともが聞き返すと元悳もとのりうなずいた。

「それでそのちゅう年寄どしよりですが…、御台みだい様が薨去こうきょされる前、それも直前のちゅう年寄どしよりが誰であったかは…」

 意知おきともがさらにそう尋ねると、元悳もとのりは申し訳なさそうな表情を浮かべて、

「そこまでは…」

 そう応じて知らないことを示唆しさした。

 それでも元悳もとのりは、「当時の留守居るすい様にけば、あるいは分かるやも知れませぬ」と答えた上で、

「されば萬壽ます姫様が薨去こうきょされる直前の、萬壽ます姫様附のちゅう年寄どしよりが誰であったのかも…」

 そう付け加えた。

萬壽ます姫様附…、と言うことは御台みだい様附のちゅう年寄どしよりもいるというわけですか?」

 意知おきともは新たに浮かんだ疑問を元悳もとのりにぶつけて己の無知むちさらした。

 それに対して元悳もとのりはしかし、意知おきとも無知むちわらうことなく丁寧ていねいに説明してくれた。

 すなわち、大奥においては将軍とその正室である御台所みだいどころ、この両者が存在する場合には将軍附の女中と御台所みだいどころ附の女中が存在し、つまりは将軍附の年寄としより御台所みだいどころ附の年寄としよりといった具合ぐあいにそれぞれ女中が存在するというわけだ。

 さてそこでちゅう年寄どしよりだが、これは将軍附の女中にはない役職とのことであり、御台所みだいどころ附、あるいは将軍の姫君ひめぎみ附の女中にのみ存在する役職とのことであった。将軍の姫君ひめぎみにしても御台所みだいどころと同様、姫君ひめぎみ附の女中が存在するとのことであり、つまり将軍・家治の正室せいしつ倫子ともこやその息女そくじょ萬壽ます姫が生きていた頃には倫子ともこ附、萬壽ます姫附のそれぞれ女中が存在したわけだ。

 そして倫子ともこ萬壽ます姫が食するものについても当然、それぞれのちゅう年寄どしよりが行うこととなる。

「されば大奥を監督かんとくせし留守居るすい様なれば覚えておいでかも…」

 元悳もとのりはそう繰り返した。

「されば…、高井たかい土佐守とさのかみ様か、あるいは依田よだ豊前守ぶぜんのかみ様にけば分かるやも知れぬ、と?」

 意知おきともが確かめるようにそう尋ねると、元悳もとのりうなずいた。

 無論むろん一橋ひとつばし治済はるさだの共犯者である可能性が高い依田よだ政次まさつぐくなど、さしずめ自殺行為であり、意知おきともとしてはもう一人の留守居るすいである高井たかい直熙なおひろにそのこともあわせてくつもりであった。

 最早もはや、この躋寿せいじゅかんにて聞きむべきことはとりあえず聞きんだと、そう判断した意知おきともは腰を上げた。

「もう、お帰りになられるので?」

 元悳もとのり意知おきともを引きめるようにそう声をかけてきた。

「ええ、きたいことはとりあえずき申したゆえ…、それに小野先生は本日もここへ…、この躋寿せいじゅかん往診おうしんに参られるのでござろう?」

 家基いえもとを死に追いやった毒キノコであるシロテングタケ、あるいはドクツルタケを用意したとおぼしき小野おの章以あきしげと今、顔を合わせるのは如何いかにもまずい。

 無論むろん小野おの章以あきしげの方は意知おきともの顔を知らず、いや、意知おきともとて小野おの章以あきしげの顔を知らず、それなら別段べつだんはちわせしたところで問題はないだろうが、それでも出来ればそれはけたいというのが意知おきともの本音であり、それゆえ意知おきともはまだ小野おの章以あきしげが来ないうちに腰を上げたのであった。

 すると元悳もとのりにもそれが通じたらしく、「左様さようでござるか…」とそれ以上、意知おきともを引きめず、元悳もとのりはその上で、

左様さようで…、いや、また何かありましたら遠慮えんりょなく…」

 意知おきともに対してそう厚意こういを示してくれた。もっとも、それは純粋じゅんすいな親切心からでは決してなかった。

 元悳もとのりは続けて、

「されば仮にでござるが…、小野先生が捕縛ほばくされるようなことにあいりますれば、何卒なにとぞ、ご公儀こうぎよりのご支援しえんたまわたく…」

 そう付け加えるのを忘れなかった。要はこれまでこの躋寿せいじゅかん醵金きょきん…、資金援助をしてくれていた小野おの章以あきしげを捕まえるなら、これからは小野おの章以あきしげに代わって幕府の方で面倒めんどうを見て欲しい…、金を出してくれと、そういうことであった。

 元悳もとのりはさらに、

無論むろん、小野先生には意知おきとも様の探索たんさくにつきましては内聞ないぶんにしておきますゆえ…」

 やんわりとだが、しかし、しっかりとおどしをかけるのも忘れなかった。今、小野おの章以あきしげ探索たんさくのことが伝われば如何いかにもまずい。意知おきとも急所きゅうしょとも言え、元悳もとのりにしてもそれが分かっていたからこそ、そのようにおどしをかけてきたのだ。

 そして今の意知おきともには元悳もとのりおどしをかわすだけの力はなく、

「されば父・意次とも良く相談の上…」

 そう答えるのが精一杯せいいっぱいであり、一方、元悳もとのりにしてもとりあえずはそれで満足することにした。これ以上、意知おきともを追いめるような真似まねをすれば最悪、元も子もなくなる恐れがあると、本能的にそうさとったからだ。老獪ろうかい元悳もとのりらしい判断と言えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら

俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。 赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。 史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。 もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。

世界はあるべき姿へ戻される 第二次世界大戦if戦記

颯野秋乃
歴史・時代
1929年に起きた、世界を巻き込んだ大恐慌。世界の大国たちはそれからの脱却を目指し、躍起になっていた。第一次世界大戦の敗戦国となったドイツ第三帝国は多額の賠償金に加えて襲いかかる恐慌に国の存続の危機に陥っていた。援助の約束をしたアメリカは恐慌を理由に賠償金の支援を破棄。フランスは、自らを救うために支払いの延期は認めない姿勢を貫く。 ドイツ第三帝国は自らの存続のために、世界に隠しながら軍備の拡張に奔走することになる。 また、極東の国大日本帝国。関係の悪化の一途を辿る日米関係によって受ける経済的打撃に苦しんでいた。 その解決法として提案された大東亜共栄圏。東南アジア諸国及び中国を含めた大経済圏、生存圏の構築に力を注ごうとしていた。 この小説は、ドイツ第三帝国と大日本帝国の2視点で進んでいく。現代では有り得なかった様々なイフが含まれる。それを楽しんで貰えたらと思う。 またこの小説はいかなる思想を賛美、賞賛するものでは無い。 この小説は現代とは似て非なるもの。登場人物は史実には沿わないので悪しからず… 大日本帝国視点は都合上休止中です。気分により再開するらもしれません。 【重要】 不定期更新。超絶不定期更新です。

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

if 大坂夏の陣 〜勝ってはならぬ闘い〜

かまぼこのもと
歴史・時代
1615年5月。 徳川家康の天下統一は最終局面に入っていた。 堅固な大坂城を無力化させ、内部崩壊を煽り、ほぼ勝利を手中に入れる…… 豊臣家に味方する者はいない。 西国無双と呼ばれた立花宗茂も徳川家康の配下となった。 しかし、ほんの少しの違いにより戦局は全く違うものとなっていくのであった。 全5話……と思ってましたが、終わりそうにないので10話ほどになりそうなので、マルチバース豊臣家と別に連載することにしました。

処理中です...