DIYと異世界建築生活〜ギャル娘たちとパパの腰袋チート

みーくん

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第九章

第十五話

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コッテリラーメンを大量に作り終えたおっさんは、
娘達と共に地下牢へと続く道を歩いていた。

道すがらに聞いた話では、件のダンジョンに入ると体が落書きみたいな雑な絵に変わるのだとか?

だが、それらのステージは既にクリアしているため、
これから遠くに見える古城のような場所を目指すのだと言う。

薄暗い鉄格子の並ぶ通路を抜けて、隠し扉から中に入り、モヤモヤとした──ミニブラックホールみたいな所へ皆で手を繋いで飛び込む。

高速エレベーターに乗ったような浮遊感の後、地上に足がついて視界が開けるが……

「…なんじゃコリャ、まんず本当にゲームみてぇな世界だごどじゃありませんか!」

まず目に入ったのは、自分の手足。
5本ある筈の手の指は……
肌色の⚪︎になっていた。

それから、目の前にいるトゥエラとテティスとパステルの三人。

「ちょ!?なんでまたここなワケ~!?
  あ、パーパ連れて来たから戻されたってこと?
  最悪……マジダルいんですケド~?」

どうやら、部外者が一人加わった所為で、せっかく踏破した娘達まで、ダンジョンの入り口に戻されてしまったようだ。

「我々も強くなりましたし、攻略は問題ないとは思いますが……長い道のりになってしまいましたわね…」

「ここおもしろいからトゥエラはいいよー!」

興味本位でついて来てしまったおっさんは、
皆の足を引っ張ることになってしまい、なんだか申し訳なくなってしまった。

「んだば、おめ貴女達のいた所まで一気に行ってみっぺか?」

このドット絵風の世界での、体の動かし方すら解ってないおっさんが、気楽な事を言うのを聞いて、

「パーパ、そんな簡単じゃないんだってば~
  ここ、縦横しか動けないし~まj……」

苦言を言おうとしたテティスの目の前に──



巨大な重機が現れた。

そのスケールの大きさは、
テティスが以前金縛りに合い、不慮の事故失禁をおこしてしまったこのステージのボスの──

ゆうに、四倍はあった。

「ほれ、みんな乗りっせ乗って下さい

現実的に考えれば、重機のオペレーター室に何人もの人間が入れるわけなどないのだが、
勇者ドラクエの馬車だって8人くらい入れたのだから、多分大丈夫だろう。
というおっさんの浅はかな考えで──

普通に四人とも乗り込めた。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

確かに、移動は上下左右にしか出来なく、画面斜め上のほうから敵が襲ってくるのだが……

接触しただけで鬼は消滅し、おっさんはノーダメージであった。

キュラキュラと、しばらく進むと前回のボスよりも一回り大きな鬼が登場したのだが、

おっさんが攻撃を意識すると、画面半分程もある重機のバケットアームがボコッと伸びて……

一撃でボスを消し飛ばしてしまった。

「あーしらの苦戦…返せし…」

ポリゴンステージになると、さらに凶悪だった。

娘達に技を出すイメージを聞いたおっさんは、

「要するに格ゲーけ」

と即座に納得し、頭の中で何パターンかのコマンドを試し、
あっという間に──
重機↙→↘↓↙←↘P+KアタPK+←↘︎PK +←Pチメ←↙↓↘→↗↑↓+Kントを交換した。

元々装着されていたのは、地面の土を掘削する、どデカいシャベルのようなものだったのだが、

交換された先端は、尖っていた。

これは『ブレーカー』と呼ばれるアタッチメント先端機械で、
超重量の尖った杭が強烈に振動し──

主にコンクリートや、石材を割って解体するためのものだ。
現れた目標物大きな鬼に先端を当てて攻撃したが最後──

パパパパパパパパパパパパパパパパパパパパ!!!

【HIT!HIT!HHHHHHHH……HIT!100COMBO!!】

ポリゴンの鬼は粉々に消え去るのだった。



「わ…わたくし達の幾日もの修行は……?」

「うっわー!!おとーさんすっごいー!♪」

「あ゛~マジ理不尽……」

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

──おっさんは、若かりし二十代の頃……

いわき福島県いわき市ケン』などと呼ばれていたのだ。

全国的に大ヒットした、路上喧ストリート嘩遊戯ファイター2
金髪、赤柔道着のキャラを使い熟し、100円玉一枚で一日中ゲーセンの格闘ゲームに居座り続けた。

行列の出来る対戦相手達を、『キャンセル技』と当時呼ばれた、一撃くらえば回避不能の鬼畜のようなテクニックで沈めていった。

別に、ケンしか扱えない訳ではなく、全キャラクターを満遍なくこなしていたおっさんにとって、

魂の重心移動コマンド入力などというものは児戯だった。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

荒野ステージの大鬼が消えると、以前のように強風が吹きポリゴンが吹き飛ばされ、現実世界の肉体が戻って来た。

「パーパ?あーし達ね!?ここまでくんのに
  半月かかったワケ!それをなんなん!?
  コレどーゆー状況!?」

「まだ…一時間程度……ですわね…」

目をキラキラさせて喜んでいるトゥエラと、
何故かキレているテティス。
そして、遠くの方を見つめているパステル。

足を引っ張って邪魔しちゃイカンと思い、存分にゲームオタクスキルを発揮したおっさんであったが、

──どうやら、やり過ぎてしまったようだった。

「ま、まぁよ、俺はこうゆうゲームみてぇなヤツは昔から得意でよ」

ゲーム?と聞き馴染みのない言葉に皆は首を傾げる。

テレビもラジオもねぇ異世界で、格闘ゲームについて説明することなど不可能なので、適当にはぐらかしておいた。

「そんでよぉ、あっこあそこに見える古そうな城にラスボスがいんのけ居るのですか

「らす?」
「ぼす?」

いかんいかん、何十年ぶりにゲームなんかやったせいで、頭がゲーム脳になっていた。
と、思い直し言葉を改める。

「その…アレだ。あの城に行けばよ、この迷宮の目的が達せられるんだっぺか?」

何百年という歴史のある、このどデカい王宮の最深部にひっそりと存在するダンジョン。

そして、王様もパステルも具体的なことは何も把握していないのだが、
この迷宮には、大昔のセリオン一族──まぁパステルの苗字な訳だが。

それがなにか間違いを起こしてしまい、王家が滅びかけた時代があったとか、なかったとか……

それらの謎が、この迷宮を踏破する事で明らかになる。
かもしれない、という話だった。

わたくしは、セリオン家の過去に何があったのか…そして、何故我々は純粋な人族ではないのか、
それを知ってみたいのですわ」

ゆらゆらと、サソリの尻尾を揺らしながら、真面目な顔でパステルが語る。

「ま、あーしとトゥーは?パーパいないし暇だったから潜ってるだけなんだけど?
ここまで来たらクリアしたいっつーか?」

──テティスは優しい子なのだ。
普段から人を煽ったり、嘲るような事ばかりを言うのだが、
それはなんというか、染みついた人見知り故の照れ隠しというか…
まぁ、『キャラ作り』みたいなものなのだ。

「おとーさんも一緒に行くんでしょ!?
トゥエラねー!バーベキューもケーキもアイスも食っべたいの~♪」

この子はまぁ。天然の天使だ。
てんてんだ。

めんごい愛おしいから何の問題もない。

んだばそれでは行ってみっけ参りましょうか?」

暑苦しい着ぐるみのトゥエラを天ぐるまっこ肩車し、両脇の美人と手を繋ぎ、
遠くに見える古びた城に向け歩き出すのであった。

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