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第九章
第三十五話
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翌朝──部屋を出てロビーまで来てみると、
昨日このホテルまで道案内をしてくれた騎士さんが待機していた。
「お早う御座います、閣下。本日は私めが案内を務めさせて頂きます」
鮮やかな赤紫、まるでドラゴンフルーツのような髪色の凛々しい女性の騎士であった。
急ぐ旅でもないのでと、客間へと連れて行き、全員分のベーコンエッグトーストを焼く。
おっさんの目玉焼きにはこだわりがあって、
火が入る前に黒胡椒を全体に塗し、
焼き加減は、齧ったときに黄身がトロっと出るのだが──タレ落ちはしない絶妙な固さである。
ボタボタと皿に落ちる時は、おっさんの中では失敗作なのだ。
醤油派とソース派では戦争が起こるので、両方とも用意する。
そしておっさんは、ケチャップ派閥の議員だ。
ベーコンも、おっさんが厳選してブレンドしたウッドチップで燻したドラゴンのバラ肉なので──
食べ慣れている家族は良いとして、女騎士さんは椅子から崩れ落ちそうになる。
こういう場面はもう何度も経験済みなので、テティスが気付魔法をキュッとかけて回復させた。
今度はパンを齧りながら号泣し始めたので……
精神安定魔法で気を落ち着けさせる。
「こ、このような美味しい食べ物は……生まれて初めて口にしました……!」
──たかがベーコンエッグでコレである。
おっさんが本気ラーメンを作ったら、間違いなく死んでしまうだろう。
いくらテティスでも、蘇生魔法は使えないはずだ。……たぶん。
空き物件について尋ねてみると、各地にいくつもあるのだが、
おっさんが家を建てるに相応しい土地は一つしかないとのことだった。
食事を終え、コーヒーで口を濯いでから「では行くか」と街中にバスを召喚する。
セーブル達は乗合馬車で移動するそうなので、ここで別れる。
車移動ならあっという間に着きそうなものだが、そうもいかない。
トゥエラもテティスもパステルも、服屋だの雑貨屋だの、アクセサリー屋だのと、
『次停まります』ボタンを押しまくるのだ。
その度にバスを仕舞い、店の隅々まで散策するものだから──
おっさんは我慢できずに、とうとう酒を飲み始めてしまった。
珍しく、おっさんが飲んでいるのは焼酎ではなかった。
ここ現地で造られている酒で、食材の乏しいこの国であっても、サボテンやら木の実などは採れるらしく、それに独特なスパイス類を絶妙に配合したカクテルのような酒は、爽やかにおっさんの喉を潤した。
昨夜初めて出会った、ミントドンパッチみたいなスパイスが恐らく配合されてると思われる酒は、ブルーハワイのように美しいスカイブルーで、炭酸水のように気が抜けることもなく、それでいて酒精が強いのである。
ジュエルモヒート──そう呼ばれるその酒は、
帰国後のおっさん蒸留所に、新たな風を吹き込むことになるだろう。
色合いも実にカラフルで、店先に並べばまるで宝石箱。
注文の仕方は単純で、すべてがジュエルモヒート。
その中から「サファイア」「ルビー」といった名を告げて選ぶのだ。
ルビーは、やはり昨夜舐めたあの異様に酸っぱいスパイスがわずかに入っているようで、
スモモ、アンズ、梅──そんな果実の良さを凝縮したかのような、鼻に抜ける清々しい酒だった。
トパーズは、マンゴーを思わせる甘みが最初に広がる。
だが実際は甘すぎず、喉を通った瞬間に体温をわずかに冷ますようで、
汗ばんだ身体に、海から吹く山瀬のような爽快さをもたらす。
そして、ダイヤモ──
「パーパ、いつまで呑んでるし!? 早く行くよ~!」
……待っていた筈の娘たちに怒られてしまった。
──解せぬ。
➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖
強い酒を三杯もあおってしまったため、運転はリリに代わってもらうことになった。
ミニクーパーしか乗ったことのないリリが、いきなりマイクロバス──と思ったが、やはり問題はなかった。
そういえば、地球の乗り物はすべて操縦できるのであった。
そしてようやく辿り着いた、おっさんに相応しい土地。
……そこは、ヒビ割れた窪地だった。
面積はかなり広く、野球場ほどはあるだろうか。
ただし地形は全体的に中心へ向かってゆるやかに傾斜しており、恐らくはかつて池か沼だったと推測できた。
「此方は──今はこのような状態ですが、百年ほど前までは清らかな聖水が湧き出るオアシスであったと伝えられております」
この国の地盤が脆弱でないことは、道すがらに見た建物で理解していた。
傾いた家など一軒も見当たらなかったからだ。
──ならば、この窪地を水平に埋めて、そのまま基礎コンクリートを一気に打ってしまえば問題はないだろう。
……ん?基礎?
おっさんはもともと「広い平地を買って、ハイテク古民家をドドンと召喚して竣工!」──そう計画していたはずである。
なのにいつの間にか「家を建てる段取り」に話がすり替わっていた。
スパイスがユニーク過ぎたせいか?
ジュエルモヒートが独特すぎたせいか?
あるいは家族が買い物を楽しんでいたからか?
……もしかすると全部なのかも知れない。
古民家をポンと置くのは、いつでも仕舞える別荘感覚。
だが基礎を打って家を建てれば、それはもはや「邸宅」である。
「あぁ、あの宮殿みてぇな城さ見て、なーんか対抗意識が湧いたんだっぺかねぇ……?」
と、おっさんは酔った頭で自己分析するのであった。
無意識に、「基礎打てば~」とか言っていたおっさんであるが、
そも酔って少し揺れている視界の先には、もう完成した邸宅が見えてしまっていた。
本来のおっさんは、血がAの形をしており、
100%完璧な図面を描き上げないと作業に取りかかりたく無いという、変な所だけ潔癖なズボラ人間であった筈なのだが……
異世界の超常現象に慣れてしまったせいか、今回の邸宅は、まるで即興でカレーでも作るかの如く、パパッと手早く出来てしまう。
そんな予感がしていた。
「そうそう、そーゆーふーにやっておきゃ、アイツらもアレ出来っぺした」
細かい間取りと内装の仕上がりまで、もう視えてしまったようだった。
工事は後日始めるとして、地鎮祭だけは今やってしまうことにした。
そうすれば、もう王都と此処をワープ出来るようになるからだ。
窪地の中心地まで降りて行き、荷造り用のビニール紐を地面に釘で打ち付ける。ビーーーっと伸ばしながら歩き、同じことを8回やれば──
家の大きさと同じ区画が、紐で囲われた。
この作業だって、普通なら細かく測量したり、
コンパスで方位を確かめたりしなければ、
適当に張ったのでは『地縄』にならない。
何故それがダメかと言えば、その紐を目安に重機で穴を掘って鉄筋を組むからだ。
しかし、酔ったおっさんが一周回って戻ってきたその紐は、5ミリと狂いのない正八角形であった。
そして家の中心部分の土を軽くクワで均して、
一升瓶の酒を注ぎ、生米を撒き、塩を盛る。
家の八隅にそれぞれ供えをして清める。
最後に、二礼──、二拍手──、一礼。
──その時ゴソリと、何かが地の底で蠢いたような音がした。
➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖
地鎮祭を──
以前に一度見たことのあるリリは、おっさんに習い、
超感覚派のトゥエラは教えなくても同じようにモノマネし、
テティスは若干ダルそうにだが、大体似た動きをした。
案内役の女騎士も、それが何なのかは理解できないまでも、相手の挙動を予想して真似ること容易であった。
パステルだけは、うっかりおっさんに見惚れていて、気がつけば拝礼が終わっていた。
「よし、これでいいべね。
あとは海さ案内して貰うけ?」
赤紫髪の女騎士さんを見れば、どこかポーッとした顔で、不思議そうに儀式の跡地を眺めていた。
「あ、…す、すみません!私の知らない文化だったもので…ですが……なんだか胸が暖かくなりました」
とても凛々しくて、小さなズルを見逃さないような雰囲気の人に思えたのだが、慌てた時は年相応の可愛らしい少女であった。
「えっと……海はですね! 宮殿より奥にさえ向かわなければ、どの道でも突き当たりまで進めば潜水できる海岸に辿り着きますよ」
宮殿の向こうは馬車も走れない砂漠になるそうで、決して足を踏み入れぬよう釘を刺された。
「それで、この地所の代金なのですが──。閣下におかれましては、我が国の悪渦に巻き込んでしまい……その、お詫びと致しまして……」
「それは結構です。──きちんと、全額を一括でお支払いすると、陛下にお伝え下さい」
突然リリが、少し大きめの声で騎士の言葉を遮った。
おっさんは「?」と首を傾げたが、きっと何か理由があるのだろうと、深く考えることはなかった。
そして、土地も海も自由に使えるとわかったおっさんは、
「んでは、今日のところは帰っけ?」
と皆の了承を得て、煙のように姿を消したのだった。
昨日このホテルまで道案内をしてくれた騎士さんが待機していた。
「お早う御座います、閣下。本日は私めが案内を務めさせて頂きます」
鮮やかな赤紫、まるでドラゴンフルーツのような髪色の凛々しい女性の騎士であった。
急ぐ旅でもないのでと、客間へと連れて行き、全員分のベーコンエッグトーストを焼く。
おっさんの目玉焼きにはこだわりがあって、
火が入る前に黒胡椒を全体に塗し、
焼き加減は、齧ったときに黄身がトロっと出るのだが──タレ落ちはしない絶妙な固さである。
ボタボタと皿に落ちる時は、おっさんの中では失敗作なのだ。
醤油派とソース派では戦争が起こるので、両方とも用意する。
そしておっさんは、ケチャップ派閥の議員だ。
ベーコンも、おっさんが厳選してブレンドしたウッドチップで燻したドラゴンのバラ肉なので──
食べ慣れている家族は良いとして、女騎士さんは椅子から崩れ落ちそうになる。
こういう場面はもう何度も経験済みなので、テティスが気付魔法をキュッとかけて回復させた。
今度はパンを齧りながら号泣し始めたので……
精神安定魔法で気を落ち着けさせる。
「こ、このような美味しい食べ物は……生まれて初めて口にしました……!」
──たかがベーコンエッグでコレである。
おっさんが本気ラーメンを作ったら、間違いなく死んでしまうだろう。
いくらテティスでも、蘇生魔法は使えないはずだ。……たぶん。
空き物件について尋ねてみると、各地にいくつもあるのだが、
おっさんが家を建てるに相応しい土地は一つしかないとのことだった。
食事を終え、コーヒーで口を濯いでから「では行くか」と街中にバスを召喚する。
セーブル達は乗合馬車で移動するそうなので、ここで別れる。
車移動ならあっという間に着きそうなものだが、そうもいかない。
トゥエラもテティスもパステルも、服屋だの雑貨屋だの、アクセサリー屋だのと、
『次停まります』ボタンを押しまくるのだ。
その度にバスを仕舞い、店の隅々まで散策するものだから──
おっさんは我慢できずに、とうとう酒を飲み始めてしまった。
珍しく、おっさんが飲んでいるのは焼酎ではなかった。
ここ現地で造られている酒で、食材の乏しいこの国であっても、サボテンやら木の実などは採れるらしく、それに独特なスパイス類を絶妙に配合したカクテルのような酒は、爽やかにおっさんの喉を潤した。
昨夜初めて出会った、ミントドンパッチみたいなスパイスが恐らく配合されてると思われる酒は、ブルーハワイのように美しいスカイブルーで、炭酸水のように気が抜けることもなく、それでいて酒精が強いのである。
ジュエルモヒート──そう呼ばれるその酒は、
帰国後のおっさん蒸留所に、新たな風を吹き込むことになるだろう。
色合いも実にカラフルで、店先に並べばまるで宝石箱。
注文の仕方は単純で、すべてがジュエルモヒート。
その中から「サファイア」「ルビー」といった名を告げて選ぶのだ。
ルビーは、やはり昨夜舐めたあの異様に酸っぱいスパイスがわずかに入っているようで、
スモモ、アンズ、梅──そんな果実の良さを凝縮したかのような、鼻に抜ける清々しい酒だった。
トパーズは、マンゴーを思わせる甘みが最初に広がる。
だが実際は甘すぎず、喉を通った瞬間に体温をわずかに冷ますようで、
汗ばんだ身体に、海から吹く山瀬のような爽快さをもたらす。
そして、ダイヤモ──
「パーパ、いつまで呑んでるし!? 早く行くよ~!」
……待っていた筈の娘たちに怒られてしまった。
──解せぬ。
➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖
強い酒を三杯もあおってしまったため、運転はリリに代わってもらうことになった。
ミニクーパーしか乗ったことのないリリが、いきなりマイクロバス──と思ったが、やはり問題はなかった。
そういえば、地球の乗り物はすべて操縦できるのであった。
そしてようやく辿り着いた、おっさんに相応しい土地。
……そこは、ヒビ割れた窪地だった。
面積はかなり広く、野球場ほどはあるだろうか。
ただし地形は全体的に中心へ向かってゆるやかに傾斜しており、恐らくはかつて池か沼だったと推測できた。
「此方は──今はこのような状態ですが、百年ほど前までは清らかな聖水が湧き出るオアシスであったと伝えられております」
この国の地盤が脆弱でないことは、道すがらに見た建物で理解していた。
傾いた家など一軒も見当たらなかったからだ。
──ならば、この窪地を水平に埋めて、そのまま基礎コンクリートを一気に打ってしまえば問題はないだろう。
……ん?基礎?
おっさんはもともと「広い平地を買って、ハイテク古民家をドドンと召喚して竣工!」──そう計画していたはずである。
なのにいつの間にか「家を建てる段取り」に話がすり替わっていた。
スパイスがユニーク過ぎたせいか?
ジュエルモヒートが独特すぎたせいか?
あるいは家族が買い物を楽しんでいたからか?
……もしかすると全部なのかも知れない。
古民家をポンと置くのは、いつでも仕舞える別荘感覚。
だが基礎を打って家を建てれば、それはもはや「邸宅」である。
「あぁ、あの宮殿みてぇな城さ見て、なーんか対抗意識が湧いたんだっぺかねぇ……?」
と、おっさんは酔った頭で自己分析するのであった。
無意識に、「基礎打てば~」とか言っていたおっさんであるが、
そも酔って少し揺れている視界の先には、もう完成した邸宅が見えてしまっていた。
本来のおっさんは、血がAの形をしており、
100%完璧な図面を描き上げないと作業に取りかかりたく無いという、変な所だけ潔癖なズボラ人間であった筈なのだが……
異世界の超常現象に慣れてしまったせいか、今回の邸宅は、まるで即興でカレーでも作るかの如く、パパッと手早く出来てしまう。
そんな予感がしていた。
「そうそう、そーゆーふーにやっておきゃ、アイツらもアレ出来っぺした」
細かい間取りと内装の仕上がりまで、もう視えてしまったようだった。
工事は後日始めるとして、地鎮祭だけは今やってしまうことにした。
そうすれば、もう王都と此処をワープ出来るようになるからだ。
窪地の中心地まで降りて行き、荷造り用のビニール紐を地面に釘で打ち付ける。ビーーーっと伸ばしながら歩き、同じことを8回やれば──
家の大きさと同じ区画が、紐で囲われた。
この作業だって、普通なら細かく測量したり、
コンパスで方位を確かめたりしなければ、
適当に張ったのでは『地縄』にならない。
何故それがダメかと言えば、その紐を目安に重機で穴を掘って鉄筋を組むからだ。
しかし、酔ったおっさんが一周回って戻ってきたその紐は、5ミリと狂いのない正八角形であった。
そして家の中心部分の土を軽くクワで均して、
一升瓶の酒を注ぎ、生米を撒き、塩を盛る。
家の八隅にそれぞれ供えをして清める。
最後に、二礼──、二拍手──、一礼。
──その時ゴソリと、何かが地の底で蠢いたような音がした。
➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖
地鎮祭を──
以前に一度見たことのあるリリは、おっさんに習い、
超感覚派のトゥエラは教えなくても同じようにモノマネし、
テティスは若干ダルそうにだが、大体似た動きをした。
案内役の女騎士も、それが何なのかは理解できないまでも、相手の挙動を予想して真似ること容易であった。
パステルだけは、うっかりおっさんに見惚れていて、気がつけば拝礼が終わっていた。
「よし、これでいいべね。
あとは海さ案内して貰うけ?」
赤紫髪の女騎士さんを見れば、どこかポーッとした顔で、不思議そうに儀式の跡地を眺めていた。
「あ、…す、すみません!私の知らない文化だったもので…ですが……なんだか胸が暖かくなりました」
とても凛々しくて、小さなズルを見逃さないような雰囲気の人に思えたのだが、慌てた時は年相応の可愛らしい少女であった。
「えっと……海はですね! 宮殿より奥にさえ向かわなければ、どの道でも突き当たりまで進めば潜水できる海岸に辿り着きますよ」
宮殿の向こうは馬車も走れない砂漠になるそうで、決して足を踏み入れぬよう釘を刺された。
「それで、この地所の代金なのですが──。閣下におかれましては、我が国の悪渦に巻き込んでしまい……その、お詫びと致しまして……」
「それは結構です。──きちんと、全額を一括でお支払いすると、陛下にお伝え下さい」
突然リリが、少し大きめの声で騎士の言葉を遮った。
おっさんは「?」と首を傾げたが、きっと何か理由があるのだろうと、深く考えることはなかった。
そして、土地も海も自由に使えるとわかったおっさんは、
「んでは、今日のところは帰っけ?」
と皆の了承を得て、煙のように姿を消したのだった。
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