DIYと異世界建築生活〜ギャル娘たちとパパの腰袋チート

みーくん

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第九章

第五十三話

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数日の余暇を堪能したおっさんは、いよいよ手水舎の建築に取り掛かった。

造りについては、また娘たちの力を借りて行う「コンクリート一発打ち工法」である。

八角堂の本殿からやや離れた場所に、一般的な神社の手水舎とは比べものにならないほど巨大な建物を建てる予定だ。

これは単に手を清めるための施設ではなく、荒地と砂漠化が進むカリファールの大地を潤すための重要な施設である。

大きさや構造などを相談したくて、おっさんは女神様の住む貝の前まで足を運んだのだが──。
相変わらず殻はわずかに数ミリしか開かず、聞こえるのはヒソヒソとした小さな声で、内容を聞き取るのも難しい。

そこで試しにスープチーズカレーブリトーをお供えしてみたところ──

「美味しいじゃないの!
今度からお供えはこれにして頂戴!」

と女神様は上機嫌。
こうして S   TスープチーズC   Bカレーブリトー は、パール巨大貝神社の献上銘菓として正式に認定されることになった。

女神様の返答は、池くらいの水量があれば、あとはどうでもいい。だそうで……
おっさんの、漲る創作意欲に小さな影を落とすのであった。

リリは、「雑務です」と言って出かけて行ったが──
ブリトーと七色カクテルで国勢を盛り返すという大事業のサポートである。

そんな大任が雑務な筈がないのだが……

「旦那様に関わりのない仕事は、わたくしにとって等しく雑務でございます」

と微笑まれてしまったので、「…んだか」と言って送り出すほか、手はなかった。

セーブル夫婦はまだ帰ってこない。

あまりにも派手なエキシビジョンを繰り広げてしまった二人は、支配人に懇願されて技術指導を行う羽目になっていた。

セーブルの動きは、参考にはならんと思うのだが……と、おっさんは首を傾げながら、手水舎の作業に取り掛かった。

「まぁ、本殿に比べたら小さいもんだし、
 パパッとやっちまうけ?」

「別にいーけど?あの『ヤベーだる…気屋根垂木』?とかゆーやつと?
   なんだっけ?『超~こき彫刻』とか?必要なん?
   結界型枠細かすぎてめんどーなんですケド?」

簡単なイラストを見せるだけで、その通り以上にカッコよく枠を組んでくれるテティスが、本当は楽しんでいる癖に、ダルそうに文句を言ってくる。

ぶっとい柱を四本、そして化粧造りの立派な屋根。
風呂桶の10倍くらいデカい手水石──

……の、鉄筋を組んでコンクリートを打つ。
嘘みたいな出来栄えだが、木材は一本も使っていない。

今回は、パステルの宙吊り技術のお陰もあって、仮設足場すらかける事なく、半日くらいで完成してしまった。

仕上げ間近となり、瓦屋根が並べられている凹凸のデザインに、流石のテティスも面倒くさそうに手こずっていた所、

「トゥエラがねー彫ってあげるよー!」

と言って、何とテティスの張った結界にノミを入れ始めたのだ。

カツコツ、カツコツと、マグマですら物ともしない結界を、ノミとハンマーで瓦の模様に削り出してゆくトゥエラ。

「あん…!ちょ!うぅ…くすぐったい…っつーの!」

どうやら、己の張った魔法を加工されるのは、全身をよじるほどにこそばゆいらしく、息を荒げてクネクネと快がるテティスは──

昼間だというのに妙に艶かしかった。



➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

海底キャンプから戻った三人は、それぞれURウルトラレアランクの宝石を入手できたらしく、既に完成していたリング部分と合わせてリリに預けてある。

それを国王オルテメのもとへ届け、全員の指輪を完成させてもらうようお願いしていたのだが──。

途中、リリから携帯に連絡が入った。
「……私達の石を見たオルテメ陛下が、泡を吹いて気絶しました」

とのことだった。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

指輪が完成し、披露宴の準備が整うまで──
おっさん達には、島国でのやる事がすっかり無くなっていた。

妖精女王に頼めば、王国の国王……つまりパステルの親父さんも参列できるだろう。

もっとも、シェリーの事情もあってセーブルの騎士仲間や貴族たちを招くわけにはいかない。
だが、カリファールの国民たちは、きっと彼らを英雄のように祝福してくれるはずだ。
それで十分なのかもしれない。

──今更の話ではあるが、セーブルの任務は本来「王女パステリアーナの護衛」である。
だが、トゥティパという冒険者チームが出鱈目なほど強大な実力を持ってしまった今、その任務にどれほどの意味があるのかは、もはや誰にも分からなかった。

夕方になると、リリも帰ってきた。

「輸出に関わる雑務は、すべて片付きました」

そう報告してくれる。

何でも、宝石加工職人の世界というのはなかなか厳しいらしい。
腕の良さ、意匠デザインのセンス、良い宝石を仕入れてくれる海女とのパイプ──
そういった要素が揃わなければ、店を維持することすら難しい。
行き詰まれば、露天商となって薄利多売に走るしか道は残されないのだという。

そこで、そうした職人や、漁の不得手な女性たちを集め、ブリトー工場を立ち上げることになったらしい。

本来なら、冷めずに腐らない食品など、この世に存在するはずがない。
だが──出来てしまったのだから仕方がない。

一個の単価で言えば、安い昼飯一食分程度の売り上げでしかないSCBスープカレーブリトー
だが、木箱にぎっしり詰めて海運に乗せ、熟成度合いに応じてプレミア価格を付けていけば──
やがて宝石に次ぐ、一大事業へとのし上がるに違いない。

そして、披露宴の日取りは──この国の暦で最も縁起が良いとされる、一週間後に決まった。

国民へはビラを配って周知し、おっさんが建てた八角堂の外で、立食パーティー形式で開催される運びとなった。

異世界ゆえ、縁起云々は正直よく分からない。
だが、その日に合わせて──哀れな子供たちの弔いも執り行うことになったそうだ。

料理に関しては、「パサパサの肉や干物しかない」と言われたので、おっさんが担当することに。
……というより、ダンジョンコアのサンちゃんに頼めば、一時的にホテルのビュッフェを丸ごと出すくらい、容易い話である。……多分だがな。

そして肝心の指輪。
──おっさん的には「どうでもいい」と、つい口をつきそうになったが、いや、そんな事を考えてはいかん。
リリの最高の笑顔を見るための、大切な指輪なのだ。

それについては、オルテメが不眠不休で作業しているらしい。
口の端に泡をつけながら、必死で加工を続けてくれているという。

「アレじゃね?ワニのおっさん、服出来てんじゃね?」

「そ、そういえば──そろそろかもしれませんわね…
   控えめに出来ていればいいのですが……」

「たっのしみだねー!お魚の服ー!」

などとみんなが騒ぎ出したので──

「んでは、一旦王都にでも帰って、
 出直す事にすっぺかね」

と、おっさん家族はカリファールの地からフワリと消え去るのであった。

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