DIYと異世界建築生活〜ギャル娘たちとパパの腰袋チート

みーくん

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第七章

第六話

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終わったのか……。

全身から汗と加齢臭を噴き出しながら、
石段の上にドスンとへたり込むおっさん。

こんな運動、若い頃に喧嘩ストⅡに明け暮れた頃ぶりだ。
腰が……膝が……いや、もう全部痛ぇ。

くたびっちゃ疲れた~……何だったんでぇこれ?」

声に力が入らず、ため息混じりに天を仰ぐ。

そのすぐ後ろで、トゥエラとテティスもついに
“ステージクリア”したらしい。

トゥエラはぴょんと跳ねて、
ニコニコとおっさんに駆け寄ってくる。

「おもしろかったー!もっとしたいねー!」

その無邪気な笑顔に、
さっきまでの地獄のような階段地帯が、
まるでレジャー施設にでも見えてくるから不思議だ。

一方、
息を切らしつつもドヤ顔で髪をかきあげるのは、
ギャル化したテティス。

「てかパパ、エグすぎなんデスけど!? 
  あーしあんなパーフェクト見たの初だわ~!マジ、リスがペクトっしょ~~!」

どうやら本気で感心してくれているようだ。
若干、何を褒められてるのか微妙な気持ちになるが──まあ悪い気はしない。

「んで、リリは……どうしたんだっぺ?」

周囲を見回すおっさん。
さっきまで一緒にいた受付嬢の姿が見当たらない。

するとテティスが、
心底呆れた顔でぼそりと吐き捨てた。

「あの人マジ無理~~~。センス皆無すぎてウケるんだけど!え、逆にどこで育ったらあの動き出んの?ってレベル~~!」

──ギャル語でのディスが、なかなかに酷い。

「……戻されたんけ?」

「あー、なんか途中でBAD出しまくってたから、たぶんまたリトライ部屋ってやつ?に飛ばされたんじゃね~?」

もごせなぁ可哀想に……」

「いやマジで本人が一番かわいそうだから。
  ってかさ~、あの人ビートにすら乗れてなかったし、マジでBGMに謝ってほしいレベル」

──これが、ギャル流の同情らしい。

やがて、闇の階段の奥に、小さく光が灯る。

あの異常な“跳舞遊戯”を超えた者にだけ──その先が開かれる。

おっさんは、腰を押さえつつ、立ち上がる。

「……よし。行くべ」

今度こそ、この階段の終わりへ。

全身に残るダンスの余韻と、痛む関節を抱えながら──
おっさんと娘たちは、ふたたび歩き出した。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

一歩、また一歩と進むたびに──
周囲の闇が、少しずつ薄れていく。

足元の黒い石段は、やがて静かに終わりを告げ──
そこには、真っ白な床が広がっていた。

壁があるのか、天井なのか、それすらもわからない。
まるで空気そのものが“白”に染まっているような──
無機質で、静寂な空間。

おっさんは、ふと思った。

──これはたぶん、死んだ直後に来るやつだ。

死後の世界っていうか、転生の待合室っていうか……
そういう“俗っぽい認識”が脳裏に浮かぶ。

だが、神も、天使も──何者も現れる気配はない。

ただ、ひたすらに──白。

……だったはずなのに。

耳に届いた。

ボソ……ボソ……と、どこか遠くから、声が。

「……マジかよティーじゃん……なんでいんの? ありえないんだけど~~」

「てかさ~、あいつこの前シフト押し付けたくせにバックれたってマ? 信じらんないんだけど~~」

ボソボソとした女の声──しかも複数。

しかも、どっかで聞き覚えがあるような、
ないような──
ギャル特有の“ダル絡み”のイントネーション。

おっさんは思わず立ち止まり、目を細める。

真っ白な空間の先に、うっすらと見えてきた──

人影?

いや……違う。人ではない。

まるで枯れた木のような──
ボロ布をかぶせたマネキンのような──

朽ちて、ひび割れて、それでも“喋っている”──
そんな“人型のナニカ”が、空間いっぱいに──
無数に“生えて”いた。

「…………うわ……」

おっさんの背後で、トゥエラが一歩引く音がした。
テティスは、表情を消し、腕を組んだまま黙っている。

リリは……いない。多分まだリトライ中だ。

──異形の影たちは、こちらを見ていない。

けれど、
声だけは、確実にテティスへ向けられていた。

「ねぇ、マジでなにしに来たの? ってか、まだいたの? だる~~」

「え~? あーしらがどんだけ頑張って“代わり”やってたかわかってるワケ?」

「マジ空気読んでほしいんだけど~」

その口調は、どこか“友達ごっこ”のような、歪な馴れ馴れしさ。

けれど──そこには確かな“憎悪”が含まれていた。

おっさんはそっと、娘たちの前に一歩出た。

「……テティス。ここ、なんなんだ?」

テティスはほんの少しだけ、口元をゆるめ──

「──あー……たぶんここ、“アタシがいた場所”の、残りカスっぽいかも」

その声は、いつもよりほんの少し──冷たかった。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

どうせ、この空間にいても──
腹は減らない。
のども乾かない。
おまけに、たぶん──時間も進んでいない。

だが、上に置いてきたリリは、別だ。

(あいつ……一人で、寂しくしてっかもな)

泣きべそかいて、腹ペコで、
きっとまた「んはあぁぁぁん」とか言ってるに違いない。

おっさんは、そっとテティスに目配せする。

そして──指で、ちょいと“飲みたい”ジェスチャー。

その仕草に、テティスが「ぷっ」と噴いた。

それは、おっさんが今まで見たことのないような──
少女らしい、いたずらっぽい笑みだった。

彼女はすっと立ち上がり、枯れ木のような影の群れへ歩み寄っていく。

「……あーしさー、もうココ卒業すっから。
この腐った地脈も、もう余裕で直せっから。
先輩方~、マジでお疲れちゃん様~~~」

軽く、手を振る。

異形たちは黙ったまま、まるで塩をかけられたナメクジのように、
静かに、白い霧へと溶けていった。

テティスは振り返り、おっさんを手招きする。

「パーパ~?、あと一回だけお願い」

その指が向く先には──

ズドン。

まるで千葉の望海観音様ばりの、
巨大なダークエルフの石像が──七体。

それぞれが、異なる表情と姿勢で並び立ち、
空間そのものに威圧感を与えていた。

その足元には、
畳ほどのサイズの──いや、“座布団”くらいか?
九枚の石板が、整然と並べられている。

おっさんは眉をひそめ、
しばらくそれを見つめてから、ボヤいた。

「……ファイナルステージってやつけ?」

テティスは、肩をすくめて笑う。

「ここマジえぐいから。
 ガチで覚悟しといてね、パ~パ?」

そして二人は──
何かを知っている者と、何も知らない者のまま、
そろって石板の上に、足を踏み出した。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

石板の前に立つ二人に、

数十メートルはある女神像の目から…
レーザー光線が突き刺さる。

不思議と体を貫通し、床を照らし、
複数の絡み合うビームが五芒星、六芒星を作る。
そしてどこからもなく、

「イヒヒヒ」



という少女の笑い声と共に…

ゲリラ豪雨のような矢印が降ってくる。

とてもじゃないが、おっさん一人では無理だ。

だって、四つ以上の矢印が塊で落ちてくる。

手足は4本しかないのだ。

しかし、同じ舞台にテティスもいる。
二人は一瞬目を合わせ、
仕事にかかる。

おっさんは腰袋から、
トラックの荷台シートを縛るゴム紐を取り出し、
両手に構える。

足捌きだけではどうしても間に合わない石板を、鞭のようにバシィ!と叩く。

テティスはおっさんに密着し、
シャンプーティセラの甘い香りの汗を振り撒きながら、
矢印の塊を処理する。

もう、これは、音楽なのかもわからない。

──たった数分。

その地獄が終わった。


最難関葬送曲パラノイアハーデスPERFECT! 】
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