DIYと異世界建築生活〜ギャル娘たちとパパの腰袋チート

みーくん

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第九章

第十二話

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天高く立ち昇ったポリゴン片の竜巻は──
粒子のように粉々になって消え去った。

ヒュンヒュン…と、竹蜻蛉たけとんぼの惰性のようにゆっくりと着陸する二人。

視界を塞ぐ大きな鬼は居なくなり、
遠くには立派な城が見えていた。

竜巻の消え去った上空から、クルクルとメダルが降ってきて、それを、両手で優しくキャッチするパステル。

メダルに刻まれていた文字は【 F 】だった。

トゥティパの三人で手を合わせてメダルを包み込めば……

何処からか吹いてきた強い風が、
背景の岩山、雲、そして三人をも──

微細な三角形のポリゴン片を吹き飛ばし、
その下から現れたのは──

現実世界の三人と変わりない姿であった。



➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

舞い上がる土埃に、匂いがある。
照りつける日射は、肌をヒリヒリと焦がし始める。

「あの妙な絵のダンジョンは終わりってワケ?
 なーんか……体に違和感ね?」

ドット絵、ポリゴン姿で冒険をしていた時、
自分の本体が何処にいたのかは謎であり、
こうして魂と身体が一致して身を動かすのは久し振りである。

三人は、指を動かしたり、軽く跳ねたりして調子を確かめる。

「あれー?、ええっとー……こうかなー?
   ──とぅにっくぶーん!」

突然、体をクネクネとさせたトゥエラは、
斧を持ち軽く素振りをした。

すると──先程までのポリゴンゲーム世界でのような、斬撃が射出され、遠くの岩山に突き刺さった。

「ちょ!トゥー!アンタなんでソレ出るワケ!?
  ………ぁ、出るかも?」

その瞬間、テティスの姿が一瞬消え、3メートル程先に現れた幻影のテティスが──

ギャ←→→P+K最強鉄山靠!!」

ズドン!!と地響きを鳴らし、肩から突っ込む鋼鉄タックル技を繰り出した。

大地を揺らした幻影はフワッと立ち消え、
元いた場所に本物のテティスが現れる。

「あの、おかしな絵の世界での修行は、
  無駄ではなかったということなのですわね」

首元を飾る王家の証のはずが、パステルが腕を振ればショットガンのように広がったり、
7本の鎖が絡み合い、太いワイヤーの鞭になったりして、地上を薙ぎ払い、上空に弾幕を張っていた。

「もーおなかすいたー!かえりたーい!」

トゥエラに言われて気がつく二人。
ゲーム世界では空腹も疲労もなく数日間ぶっ通しで戦闘をしていたような感覚があるのに、

今はお腹も空き、疲れもある。

「とりま──帰っけ?パーパ風w」
「うふふ、そうですわね、帰りましょう」
「さけのじかんだっぺーよー!」

トゥティパの三人はおっさんのモノマネに腹を捩りながら、王宮へと転移してゆくのだった。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

その頃、おっさんは──
ワリ太郎を構いながらゴロゴロしていた。

                                             ~fin~
➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

「無事に戻ったか!パステルよ!」

何度も謁見の間に飛び入りするのは悪いと思い、
テティスの集中力でピンポイントにパステルの私室への転移に成功したトゥティパの三人。

お茶にするか、メシか風呂かと話し合っていると、パパーパパステルのパパ…。もとい、国王が飛び込んできた。

「御父様?前触れを出すか、
 せめてノックくらいしてくださいまし!」

着脱に手間のかかる、『魔蝶蘭のチェーンメイル』を──
半分ほど解いていたパステルはオコであった。

「す…すまぬ!半刻ほどしてから出直そう!」

そそくさと退出した王を尻目に、普段着へと衣装を変えてゆく三人。

よく見れば、黒薔薇のローブも、紫陽花のワンピースも、魔蝶蘭のチェーンメイルも──
あちこちがほつれ、傷つき傷んでいた。

あのバーチャル的な世界では、ダメージを受けても生身には傷がつかない。
──国王はそう言っていたはずだったのだが……
装備にはきちんと激戦の痕が残されていた。

「あー背中んとこ破けてるし~?ショック~!
 わりと気に入ってたのに~!?」

思い返せば、ポリゴンステージで技を編み出し、鬼の大群と戦っていた時…

空中↓溜め↑K回転蹴りサマーソルトキックのタイミングを誤り、躱されてしまったのだ。
その時背中に受けた鬼の棍棒は相当に痛かった。

背中が、というより魂に響く…というのか…
上手く表現ができないのだが、もしアレを、
無防御で脳天に喰らったとしたら──
あの世界の中のテティスは弾け飛んでいたかもしれない。

「これでは、あの先に見えた城のような場所に向かうには不安ですわね…」

パステルも、チャラリとチェーンメイルを持ち上げると胸の辺りの花が取れそうになっていたのに気がついた。

「トゥエラのも壊れそうー…あ、とれちゃった…」

三人の中で飛び抜けて多くの技を発見し、暴れ回っていたトゥエラのワンピースは、
艶がなくなるほど細かい傷がついており、
ポロリとおへその辺りの花びらが取れてしまった。

「あのワニにおっさん、ひと月って言ってたっしょ~?まーだ完成してないっぽいよねー」

素材を預けたアリガーターヤ防具店の店主、ダイルの顔を思い出したテティスであったが、
約束の期日までにはまだ二週間程あり、それが出来上がるまでは冒険は一時中断せざるを得ない状況となった。

しばらくすると、ドアが叩かれ、パステルの返事を待たずに開かれた戸から、晩餐の乗ったワゴンを押して国王が入ってきた。

王様が自ら、娘達の夕食をテーブルに配膳し始めたのを見て、苦笑の漏れたパステルは、おっさんから預かっていたフレコンバッグからよく冷えた赤ワイン山脈ゴブリンの血のボトルを取り出し、父の分も含めグラスに注いだ。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

「──なんと!あの山脈の大鬼を倒しただと!?
……首が三つ?雷を?──」

かつて若かった王が挑んだ時の記憶と、パステル達の報告する内容がだいぶかけ離れているため、顔色を変えて驚きを見せる父は、よく無事で戻った。と、胸を撫で下ろすのであった。

話を擦り合わせてみれば、王がまだ王子であった時代、どうにか山脈ステージのボスまでは辿り着いたが、歯が立たずに敗走し、命からがらダンジョンを脱出したのだそうだ。

だがその時にいたのは、身の丈八尺2㍍40㌢程度の大鬼で、首は一つで剣を振り回すだけであったそうだ。

それでも、『トゥニックブーム』のような飛び道具を発現出来なかった王には荷が重く、接近戦では何度も死にかかったらしい。

トゥティパが討伐した三つ首は、二階建ての家くらいの大きさがあったし、口から雷撃を飛ばしてきた。

「アレじゃね?あーしら三人で行ったじゃん?
その分敵も気合い入ってたパターン?みたいな」

核心をついたテティスの発言に、皆は納得するが、

「では──あの古城のような建物も相当に厳しいのでしょうか?」

パステルの不安げな予想に言葉を噤むしかなかった。

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

「ぬ?虫がおるのか?」

食事も終えて、明日からの行動をどうしようかと話し合っていた三人に、いつまでも退出しない王が声を上げた。

指差す方に目をやれば、パステル達のベッドの上で、モゾモゾと動く玉蟲色の──ビートル君が数匹いた。

彼らは、一見……Gのようにも見えるが、れっきとしたドワーフ族の従者であり守護者でもある。

つまり、トゥエラを護衛するために荷物の中に紛れ込んでいたわけなのだ。

「御父様、彼らはビートルさん。トゥエラの従者ですわ」

と言い、ハッと顔を上げる。

恐らく三人とも、同じタイミングで同じ事を思いついたらしく、顔を見合わせて────

『装備完成すんじゃん(しますわ)(するねー)!』

と声を揃えるのだった。
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