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VS王国+勇者

カワルモノ

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 魔王国アディス
 魔王城 正門前



 俺は正門横の壁に背中を預け、ビールを片手に座り込んで敵の勇者とマサシの戦いを観せn………見ぶt………見守っていた。
 そうっ、見守っているのだっ!

 え?ビール持ってんじゃん?
 違う、言い間違えただけだ。
 これはアレだ………そう、泡立つ麦茶だ。

 そんな謎の言い訳をしながら、紙皿にさきいかと柿ピーを出し摘まむ。
 ………美味い。

 アレだな………日本のおつまみは世界一ィィィッ!!って感じだな…。
 と脳内で某将校を思い出しながら…






「いいぞっ、もっとやれっ!」

 野次………違う、応援する事にした。



~~~~~~~~~~~~~~~~


 魔王城 正門前



「いいぞっ、もっとやれっ!」

 それぞれに魔剣と聖剣を持ち、仕切り直して戦闘に入ろうかという二人は思った…。

「(ソウシさん、うるさい)」
「(五月蝿いな、あの人…)」

 とは思っても戦闘中でもあるので声には出さず、また視線もソウシの方に逸らすことはなかった。

「「(………………耳に入れない様にしよう)」」

 二人揃ってそう思ったのは仕方ないだろう…。




「………さて、仕切り直しといこうか」

「………そうだね」

 マサシの言葉にシュウヤが同意する。
 ソウシの野次が飛んできてはいるが、集中し始めた二人に届くことはなかった。
 
「「………すぅ………………ふうぅぅぅ」」

 偶然か必然か二人の呼吸が重なり…

「「………すぅ………………っ!!」」

 同時に動き出す。

『ギイィンッ!!』

 魔剣と聖剣が…

『ギィン………ギンギィン………ガギッ…ギギギ』

 勇者と勇者が…

「「………ふっ!………………はっ!」」

 激しく打ち合い、競り合い、かわし、流し、再び斬り合う…。

 しかし…

「(ほう………やるな、勇者の奴。だが…まだ若い。アレならマサシの勝ちだ)」

 一見、互いにダメージも無く、疲れも見えていない。
 だから互角に見える。
 見えるが…

「(それなりに修羅場は潜ってきたんだろうが…マサシと比べると圧倒的に経験が足りない)」

 経験または洞察力で圧倒的にマサシが上回っていた。
 その洞察力はある種の未来予測に近いレベルなのだろう、シュウヤの攻撃に対して後出しでも完璧に近く対応していた。

 シュウヤが速度を変え、手数を変え、フェイントを入れ…と変化をつけても、表情を変えず対応する。
 ソレは、先にマサシに攻撃されればシュウヤには対応しきれない事を意味していた。

「(………………クソッ、通じない)」

 そして十数合、数十合と打ち合い、シュウヤの額に滲んでいた汗が顔を流れる…。
 マサシは汗一つかいていないが…。

「(………………このままだと…負けるね)」

 シュウヤは敗北を悟り、逆に思考が冷静になる。
 
「(打ち合いは駄目、かといって距離を取っての魔法戦でも互角以上になることはないだろう…なら…)」

『ギイィンッ!!』

 弾かれる様に後ろにシュウヤが跳ぶ。
 マサシは特に追撃はせず、シュウヤの姿を見ている。
 まだ、『見』に徹しているようだ。
 そしてシュウヤは気付く…。

「(最初の一撃の場所からほとんど動いていない…?………………これほど差があったなんてね。替わる覚悟はさっきしたけれど、さすがにショックだね")」

 一瞬だけ項垂れた後、『キッ』とマサシを見る。

「………ん?」

 マサシも先ほどと様子が違う事に気が付いたが…

「………ふふ、マサシ・コバヤシ…どうやら『今のボク』では君には勝てないのは分かった…」

「………今のボク?」

「………だから………ここからは『もう一人のボク』に替わる。覚悟するんだね………『もう一人のボク』は出鱈目に…強………い」

「………おいっ?」

『ガクッ』と首だけ項垂れるシュウヤ。
 だが、次の瞬間…

『ブワアァァッ!!』

 シュウヤの纏っていた『黒い光』が激しく吹き出し、同時に神々しくも禍々しい力の奔流が辺りを覆い始めた………。






 
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最初に入れた先輩のネタが消えそうなほどのシリアスが到来。
主人公、マジで帰ってきて。

次回もよろしくお願いします。
 
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