131 / 225
魔王国アディス~アライズ連合国
準備期間六日目③
しおりを挟む魔王国アディス
魔王城 大食堂
応接室でのやり取りを終えたのだが思ったより時間が経過しており、すっかりお昼になってしまった。
ルシファスは午前中に終わらせるはずの仕事があるようで、昼食も摂らずに仕事に戻っていった。
また過労やらなんやら言われるとアレなので某バー状の栄養食品を購入して渡しておいた。
ルシファス以外の俺、先輩、女神様、そして…何故か創造神様を含めた四人は魔王城の大食堂で昼食を摂ることになった。
「ワシもこの世界のモノが食べたい」
正に鶴の一声である。
そして…
「美味いのう美味いのうっ!」
最近の魔王城では料理の技術………というより知識や材料が革命的に変化し、料理法や香辛料の使い方などは現代日本に近付いてきている。
もちろん俺と先輩のせいである。………が、魔王ルシファスを含め幹部連中もその味の虜となり、ソレは魔王城の中に留まらず国中へと広がりをみせた。
農作物の変更や拡大、料理教室の開催(これはいずれ料理学校に変わるだろう)、香辛料の拡充など、本気になった魔王城の連中の動きは早かった。
香辛料はこの世界では大抵シンジケートが独占しているのだが即時解体。流通を見直し安価で一般に出回るようにしていた。
コレには異世界モノのテンプレなら反対する組織や繋がりのある貴族が邪魔をしそうなものだが、今回の貴族連中は違った。
貴族派と呼ばれるルシファスに敵対するような貴族達もやはり美味い料理が良いのだろう、積極的に協力し反対する組織を潰して回り、自領の香辛料の充実などに動いていた。
やはり美味い飯は正義か…。
俺と先輩がそう思ったのは言うまでもない。
ちなみにこの件で魔王国の犯罪件数が二割近く減ったらしい。
スパイスシンジケートろくでもねえな…。
「ごちそうさま」
そう言いお茶を啜る創造神様。
いや食ったなしかしっ!
優しそうなお爺さんの見た目からは想像できない食いっぷりでしたけどっ!
………で、隣で未だにケーキ食ってる女神様はもう食べるの止めなさい。何個目だソレッ!?
もきゅもきゅ頬張っているのは可愛いけれども…。
~~~~~~~~~~~~~~~~
魔王城 応接室
夕方になりルシファスが仕事を終わらせ、朝いたメンバーにヴィーネさん、リディアを加え再び応接室に集まる。
今度こそ神界?に還るらしい。
「ほっほっほっ、では世話になったのう。もう会うことはないだろうが、いつも見守っているよ」
うんうん、神様らしい言葉だ。
その優しい言葉に、声に、皆笑顔になった。
「………うぅ、あとちょっとでランキングトップ10に入れたのに…」
「おいちょっと待て。また課金しやがったな」
「ティア………おぬしはいつからそんな残念な感じに…」
台無しである。
もちろん俺と創造神様で拳骨を落としておいた。
「トーイチ君、最後までティアがすまんかったのう…」
「あぁ………いえ、騒がしくて楽しかったのも事実ですから…」
俺がそう話すと優しい目で見られた…。
悪い気はしない…。
でも周りの人達の生温い目は止めてねっ!?
悪い気しかしないよっ!?
そして…
杖が輝き始め、創造神様を中心に黄金の魔法陣が描かれていく。
「では帰るとするのかの。あ、トーイチ君、お礼はしておいたからの。ではな」
その言葉で魔法陣は一際激しく輝き、創造神様と女神様の姿が光に飲まれていった。
「トーイチさん、私のアカウント残し」『シュン』
「………………」
女神様が何か言おうとしている途中で転移完了。黄金の魔法陣も消えていた。
周りには…
「………トーイチ」
分かってるな、というような視線の先輩。
「………………」
何か困ったような苦笑を浮かべるルシファス。
「トーイチ」
「トーイチ君」
分かってるわよね、というようなリディアにヴィーネさん。
「………ふっ」
俺はコクリと頷き、そっとアプリをアンインストールした…。
「「分かってないじゃないっ!?」」
「えぇっ!?」
リディアとヴィーネさんからはツッコミが入るも先輩はウンウンと頷いているし、ルシファスは明後日の方を見ている。
どうしろって言うんですかね?
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
女神様帰還。
準備期間②の引きから飛ばしたのはワザとです。
次回もよろしくお願いします。
20
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。