5 / 11
2話 バーファーの息子
しおりを挟む
バーファー・グルマには1人息子がいる。
名前はベルゾル・グルマ。
バーファーが汚れ切った黒なら、ベルゾルは全く逆の汚れを知らない白である。
その立場や地位に驕らず、自責の念を持ってただひたすらに努力を惜しまない。
そのまっすぐな性格は人心を得て、彼は疎む者は皆無、尊敬さえされている。
ベルゾルは学園から長期休暇を利用して屋敷に戻ってきた。
学園と言っても勉強は二の次。
将来のため、婚姻相手や人脈形成を主な使命とした貴族が通う学び舎である。
ベルゾルも次代の当主となるため、人脈形成に勤しんでいる。
「久しいなベルゾル。どうだ学園の方は?」
「お久しぶりです父上。何も問題ありません。学友とも良好な関係を築いております。この縁が必ずグルマ家の繁栄に繋がるでしょう」
「それは素晴らしいな。ではあちらの方はどうだ?サーマ王女との関係は?」
それを聞かれた瞬間、ベルゾルの顔が真っ赤になり、湯気が立ち上る。
サーマ王女はこの国の第3王女であり、ベルゾルの婚約者なのだ。
しかも貴族の間では珍しく自由恋愛。
サーマ王女がベルゾルに惚れ、婚約を申し出たのだ。
バーファーはベルゾルの姿を見て、少し肩を落とす。
この調子ではまだ全くと言っていいほど進んでいないな。
全く、事恋愛に関してベルゾルは奥手が過ぎる。
サーマ王女が婚姻の申し出をして来た時は神に愛されていると思うほどの幸運だと感じた。
王族との繋がりがあれば、私の地位はさらに強固なものとなるからな。
ベルゾルには何としてもサーマ王女と結婚してもらわねば。
グルマ家の家族団欒の最中、誰かがドアをノックする。
「誰だ?」
「レナでございます。お呼びとのことで紅茶をお持ちしました」
「レナか。入れ」
入ってきたのはメイドの姿をしたレナ。
絶世の美女であるその姿は誰の目でも一度は奪う。
それはベルゾルも例外ではなかった。
「紹介しようベルゾル。新しく雇ったメイドのレナだ。彼女の入れる紅茶は格別でな。お前にも飲ませてやりたいと思ってな」
「お褒めに預かり光栄でございます。腕によりをかけてご用意させていただきました。どうぞ召し上がりください」
「……」
「ベルゾル様?いかがいたしましたか?」
「ああ!すまない!少しぼーとしてしまって」
紅茶を差し出しても受け取らないベルゾルにレナが声をかけた途端、ベルゾルは慌てながら紅茶を1口。
そのあまりの美味しさに虚を突かれる。
「美味しい。この紅茶は今までに飲んだことが無いほど美味しい!」
「ありがとうございます」
これまで人前で見せたことのないレナの笑顔。
先程とは違い、まるで天使のような優しさを含む笑顔にベルゾルは心を奪われてしまう。
いけない!
僕にはサーマという婚約者がいるのに!
それなのになんだこの気持ちは。
名前はベルゾル・グルマ。
バーファーが汚れ切った黒なら、ベルゾルは全く逆の汚れを知らない白である。
その立場や地位に驕らず、自責の念を持ってただひたすらに努力を惜しまない。
そのまっすぐな性格は人心を得て、彼は疎む者は皆無、尊敬さえされている。
ベルゾルは学園から長期休暇を利用して屋敷に戻ってきた。
学園と言っても勉強は二の次。
将来のため、婚姻相手や人脈形成を主な使命とした貴族が通う学び舎である。
ベルゾルも次代の当主となるため、人脈形成に勤しんでいる。
「久しいなベルゾル。どうだ学園の方は?」
「お久しぶりです父上。何も問題ありません。学友とも良好な関係を築いております。この縁が必ずグルマ家の繁栄に繋がるでしょう」
「それは素晴らしいな。ではあちらの方はどうだ?サーマ王女との関係は?」
それを聞かれた瞬間、ベルゾルの顔が真っ赤になり、湯気が立ち上る。
サーマ王女はこの国の第3王女であり、ベルゾルの婚約者なのだ。
しかも貴族の間では珍しく自由恋愛。
サーマ王女がベルゾルに惚れ、婚約を申し出たのだ。
バーファーはベルゾルの姿を見て、少し肩を落とす。
この調子ではまだ全くと言っていいほど進んでいないな。
全く、事恋愛に関してベルゾルは奥手が過ぎる。
サーマ王女が婚姻の申し出をして来た時は神に愛されていると思うほどの幸運だと感じた。
王族との繋がりがあれば、私の地位はさらに強固なものとなるからな。
ベルゾルには何としてもサーマ王女と結婚してもらわねば。
グルマ家の家族団欒の最中、誰かがドアをノックする。
「誰だ?」
「レナでございます。お呼びとのことで紅茶をお持ちしました」
「レナか。入れ」
入ってきたのはメイドの姿をしたレナ。
絶世の美女であるその姿は誰の目でも一度は奪う。
それはベルゾルも例外ではなかった。
「紹介しようベルゾル。新しく雇ったメイドのレナだ。彼女の入れる紅茶は格別でな。お前にも飲ませてやりたいと思ってな」
「お褒めに預かり光栄でございます。腕によりをかけてご用意させていただきました。どうぞ召し上がりください」
「……」
「ベルゾル様?いかがいたしましたか?」
「ああ!すまない!少しぼーとしてしまって」
紅茶を差し出しても受け取らないベルゾルにレナが声をかけた途端、ベルゾルは慌てながら紅茶を1口。
そのあまりの美味しさに虚を突かれる。
「美味しい。この紅茶は今までに飲んだことが無いほど美味しい!」
「ありがとうございます」
これまで人前で見せたことのないレナの笑顔。
先程とは違い、まるで天使のような優しさを含む笑顔にベルゾルは心を奪われてしまう。
いけない!
僕にはサーマという婚約者がいるのに!
それなのになんだこの気持ちは。
253
あなたにおすすめの小説
3歳児にも劣る淑女(笑)
章槻雅希
恋愛
公爵令嬢は、第一王子から理不尽な言いがかりをつけられていた。
男爵家の庶子と懇ろになった王子はその醜態を学園内に晒し続けている。
その状況を打破したのは、僅か3歳の王女殿下だった。
カテゴリーは悩みましたが、一応5歳児と3歳児のほのぼのカップルがいるので恋愛ということで(;^ω^)
ほんの思い付きの1場面的な小噺。
王女以外の固有名詞を無くしました。
元ネタをご存じの方にはご不快な思いをさせてしまい申し訳ありません。
創作SNSでの、ジャンル外での配慮に欠けておりました。
新妻よりも幼馴染の居候を優先するって、嘗めてます?
章槻雅希
恋愛
よくある幼馴染の居候令嬢とそれに甘い夫、それに悩む新妻のオムニバス。
何事にも幼馴染を優先する夫にブチ切れた妻は反撃する。
パターンA:そもそも婚約が成り立たなくなる
パターンB:幼馴染居候ざまぁ、旦那は改心して一応ハッピーエンド
パターンC:旦那ざまぁ、幼馴染居候改心で女性陣ハッピーエンド
なお、反撃前の幼馴染エピソードはこれまでに読んだ複数の他作者様方の作品に影響を受けたテンプレ的展開となっています。※パターンBは他作者様の作品にあまりに似ているため修正しました。
数々の幼馴染居候の話を読んで、イラついて書いてしまった。2時間クオリティ。
面白いんですけどね! 面白いから幼馴染や夫にイライラしてしまうわけだし!
ざまぁが待ちきれないので書いてしまいました(;^_^A
『小説家になろう』『アルファポリス』『pixiv』に重複投稿。
王家の賠償金請求
章槻雅希
恋愛
王太子イザイアの婚約者であったエルシーリアは真実の愛に出会ったという王太子に婚約解消を求められる。相手は男爵家庶子のジルダ。
解消とはいえ実質はイザイア有責の破棄に近く、きちんと慰謝料は支払うとのこと。更に王の決めた婚約者ではない女性を選ぶ以上、王太子位を返上し、王籍から抜けて平民になるという。
そこまで覚悟を決めているならエルシーリアに言えることはない。彼女は婚約解消を受け入れる。
しかし、エルシーリアは何とも言えない胸のモヤモヤを抱える。婚約解消がショックなのではない。イザイアのことは手のかかる出来の悪い弟分程度にしか思っていなかったから、失恋したわけでもない。
身勝手な婚約解消に怒る侍女と話をして、エルシーリアはそのモヤモヤの正体に気付く。そしてエルシーリアはそれを父公爵に告げるのだった。
『小説家になろう』『アルファポリス』に重複投稿、自サイトにも掲載。
てめぇの所為だよ
章槻雅希
ファンタジー
王太子ウルリコは政略によって結ばれた婚約が気に食わなかった。それを隠そうともせずに臨んだ婚約者エウフェミアとの茶会で彼は自分ばかりが貧乏くじを引いたと彼女を責める。しかし、見事に返り討ちに遭うのだった。
『小説家になろう』様・『アルファポリス』様の重複投稿、自サイトにも掲載。
試した心算などなかった
章槻雅希
恋愛
拙作『試し行為なんて、馬鹿ですか』の元婚約者サイド。
試し行為をした結果、延々と後悔するだけの話で、最後まで自分が悪かったと気づくことはありません。
ネタだしから書き上げるまでに間が空いたので今更感ありますが、勿体ない精神で書き上げて投稿。
【完結】あなた方は信用できません
玲羅
恋愛
第一王子から婚約破棄されてしまったラスナンド侯爵家の長女、ファシスディーテ。第一王子に寄り添うはジプソフィル子爵家のトレニア。
第一王子はひどい言いがかりをつけ、ファシスディーテをなじり、断罪する。そこに救いの手がさしのべられて……?
ある愚かな婚約破棄の結末
オレンジ方解石
恋愛
セドリック王子から婚約破棄を宣言されたアデライド。
王子の愚かさに頭を抱えるが、周囲は一斉に「アデライドが悪い」と王子の味方をして…………。
※一応ジャンルを『恋愛』に設定してありますが、甘さ控えめです。
彼女が望むなら
mios
恋愛
公爵令嬢と王太子殿下の婚約は円満に解消された。揉めるかと思っていた男爵令嬢リリスは、拍子抜けした。男爵令嬢という身分でも、王妃になれるなんて、予定とは違うが高位貴族は皆好意的だし、王太子殿下の元婚約者も応援してくれている。
リリスは王太子妃教育を受ける為、王妃と会い、そこで常に身につけるようにと、ある首飾りを渡される。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる