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3話 ベルゾルの一日
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ベルゾルは自室で目を覚ます。
長期休暇中は特にやることは無く、学園に戻るまで勉強など穏やかな生活をしようと考えていたベルゾルだが、それはレナの存在によって変わってしまった。
目が覚めるとベルゾルは急いで着替え、意味もなく屋敷を歩き回る。
いや、本当の目的はレナに挨拶をするためだ。
途中声をかけてくるメイドを無視しながら歩き回ること、数分。
レナを見つける。
動いたことで少し上がっている息を整え、1呼吸置いて声をかける。
「おはよう、レナ」
「おはようございますベルゾル様」
レナの笑顔はまたもベルゾルの心を打ち抜いた。
周りのメイド達も動揺を隠しきれていない。
「あのレナが笑ってるわ!」
「嘘!この屋敷に来たときから一度も笑顔なんて見たこと無いのに。もしかしたらレナ、ベルゾル様に気があるのかも」
メイド達の小声の会話はベルゾルの耳にも届いていた。
レナのことを聞き、ベルゾルの気持ちはさらに高鳴る。
「レナ、その、もしよかったら食事を一緒にどうだ?」
「とても嬉しいお誘い、ありがとうございます。ですが私はただのメイド。私と食事などしていましたら次期当主であられるベルゾルの顔に泥を塗ってしまいます」
「構わない!いや、構わないわけではないのだが、、、誰にどう思われようとレナのことをもっと知りたい」
言いながら赤面しているベルゾル。
その言葉を咀嚼するように間を開けたレナは食事の件を承諾した。
それからはほぼ毎日、ベルゾルがレナを食事に誘っていた。
その話は屋敷内に瞬く間に広がり、ついにはバーファーの耳にも届く。
ベルゾルはバーファーの自室へと呼ばれた。
「ベルゾル、今後レナと会うのをやめなさい」
「っ!!何故ですか!」
「お前を見ていれば分かる。レナに恋をしたのだろう。だがお前にはサーマ王女と言う婚約者がいるだろう!!」
怒声を放つバーファーに少したじろぐベルゾル。
しかしベルゾルも負けじと牙をむく。
「その通りです。ですが僕は、、、彼女に恋をしてしまった」
「そうか、決意は固いということだな?」
「はい」
「分かった。ではレナを殺すしかないな」
バーファーの言葉にベルゾルは慌てふためく。
思わずバーファーの両肩に掴みかかった。
「どうしてそうなるのですか!?」
「当然のことだろう。貴族の、ましてや公爵の子息を誘惑した罪は重い。お前も聞いたことくらいはあるはずだ。貴族を篭絡し詰み問われたメイドの最後を」
「…僕は篭絡されてなどいません」
「そうかもしれん。だが相手は平民だ。例えこちらに非があろうとも罪を背を負うのは位が低い方だ」
バーファーの言葉に何も言えないベルゾル。
バーファーは言葉を続ける。
「少し早いが学園に戻れベルゾル。そうすれば今回のことは不問とし、レナも処罰されることは無い。賢い生き方を選べ」
「……分かりました」
ベルゾルはすぐに身支度を済ませ、学園に戻る準備を終わらせた。
その夜、密かに部屋を抜け出すとレナの住む寮へと足を運ぶ。
レナ部屋に着き、軽くノックをする。
「レナ、私だ。ベルゾルだ」
「どうしたのですかこの夜中に」
部屋から出てきたのは寝間着姿のレナだった。
普段とは違った印象を持つレナにまた見とれてしまうベルゾルだったが、すぐに気持ちを改める。
「明日僕はこの屋敷を発つ。その前に君の顔が見ておきたくて」
「……良ければ私の部屋に入りませんか?」
その言葉に耳を疑ったベルゾルだったが、無言の頷きと共に部屋の中へと姿を消す。
ベルゾルが自室に戻ったのは早朝のことだった。
長期休暇中は特にやることは無く、学園に戻るまで勉強など穏やかな生活をしようと考えていたベルゾルだが、それはレナの存在によって変わってしまった。
目が覚めるとベルゾルは急いで着替え、意味もなく屋敷を歩き回る。
いや、本当の目的はレナに挨拶をするためだ。
途中声をかけてくるメイドを無視しながら歩き回ること、数分。
レナを見つける。
動いたことで少し上がっている息を整え、1呼吸置いて声をかける。
「おはよう、レナ」
「おはようございますベルゾル様」
レナの笑顔はまたもベルゾルの心を打ち抜いた。
周りのメイド達も動揺を隠しきれていない。
「あのレナが笑ってるわ!」
「嘘!この屋敷に来たときから一度も笑顔なんて見たこと無いのに。もしかしたらレナ、ベルゾル様に気があるのかも」
メイド達の小声の会話はベルゾルの耳にも届いていた。
レナのことを聞き、ベルゾルの気持ちはさらに高鳴る。
「レナ、その、もしよかったら食事を一緒にどうだ?」
「とても嬉しいお誘い、ありがとうございます。ですが私はただのメイド。私と食事などしていましたら次期当主であられるベルゾルの顔に泥を塗ってしまいます」
「構わない!いや、構わないわけではないのだが、、、誰にどう思われようとレナのことをもっと知りたい」
言いながら赤面しているベルゾル。
その言葉を咀嚼するように間を開けたレナは食事の件を承諾した。
それからはほぼ毎日、ベルゾルがレナを食事に誘っていた。
その話は屋敷内に瞬く間に広がり、ついにはバーファーの耳にも届く。
ベルゾルはバーファーの自室へと呼ばれた。
「ベルゾル、今後レナと会うのをやめなさい」
「っ!!何故ですか!」
「お前を見ていれば分かる。レナに恋をしたのだろう。だがお前にはサーマ王女と言う婚約者がいるだろう!!」
怒声を放つバーファーに少したじろぐベルゾル。
しかしベルゾルも負けじと牙をむく。
「その通りです。ですが僕は、、、彼女に恋をしてしまった」
「そうか、決意は固いということだな?」
「はい」
「分かった。ではレナを殺すしかないな」
バーファーの言葉にベルゾルは慌てふためく。
思わずバーファーの両肩に掴みかかった。
「どうしてそうなるのですか!?」
「当然のことだろう。貴族の、ましてや公爵の子息を誘惑した罪は重い。お前も聞いたことくらいはあるはずだ。貴族を篭絡し詰み問われたメイドの最後を」
「…僕は篭絡されてなどいません」
「そうかもしれん。だが相手は平民だ。例えこちらに非があろうとも罪を背を負うのは位が低い方だ」
バーファーの言葉に何も言えないベルゾル。
バーファーは言葉を続ける。
「少し早いが学園に戻れベルゾル。そうすれば今回のことは不問とし、レナも処罰されることは無い。賢い生き方を選べ」
「……分かりました」
ベルゾルはすぐに身支度を済ませ、学園に戻る準備を終わらせた。
その夜、密かに部屋を抜け出すとレナの住む寮へと足を運ぶ。
レナ部屋に着き、軽くノックをする。
「レナ、私だ。ベルゾルだ」
「どうしたのですかこの夜中に」
部屋から出てきたのは寝間着姿のレナだった。
普段とは違った印象を持つレナにまた見とれてしまうベルゾルだったが、すぐに気持ちを改める。
「明日僕はこの屋敷を発つ。その前に君の顔が見ておきたくて」
「……良ければ私の部屋に入りませんか?」
その言葉に耳を疑ったベルゾルだったが、無言の頷きと共に部屋の中へと姿を消す。
ベルゾルが自室に戻ったのは早朝のことだった。
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