幼馴染が勇者になって、桜井さんも大変そう。

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05.勇者、自分の力に恐怖する

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 一時間目の授業が終わって、勇は今一度、朝起きた出来事を思い出す。

 自分の手から、火炎放射のような炎が出た。そして、その炎はコンクリートを焼き、破壊した。

 その出来事の後、結菜とは会話を交わすことなく学校まで来てしまった。互いに、何と声をかけていいのかわからなかったのだ。

 結菜があの出来事をどう思ったか、勇には想像もつかない。何かの見間違えだと思ってくれていたらいいが、あの反応からして、それはないように勇は思った。

 勇には、この力が何なのか、ある程度の見当はついていた。

 恐らく、昨日見た夢だ。異世界を旅する夢。それが、この力に関係しているに違いない。というより、それ以外に心当たりがなかった。

 異世界で何があったのだろうか?

 思い出そうとしても、頭に浮かぶのは奇怪な呪文の数々のみ。それ以外は、勇者であったことと仲間がいたこと以外は、ほとんど思い出せない。

 ――――厄介なことになった。

 勇はとりあえず、頭に浮かんだ呪文を手当たり次第にノートに書き写した。

 朝、手から炎を出した呪文が、ブランダーンバール。

 次に頭に浮かんだのは、ブズ・クラリカーシと言う呪文。

 シムセーク・セーフリに、クレーク・タフルカース。

 勇は、次々と呪文を書き出していく。

 ノートに呪文を並べてみても、その言葉の意味はまったくわからない。どんな効果の呪文なのかも、見当が付かなかった。 

 とにかく、この呪文を口にしてはいけない。それはだけは確かだ。

 幸い、これらの言葉を日常で誤って口にすることはなさそうだった。言語が日本語とはかけ離れている。

「冬樹、何してんの?」

 隣の席の背が高いリーゼント頭、舞島マイジマが、冬樹のノートを覗いてきた。

「ブランダーンバール? ……なにこれ?」

「うわああ!? 読むなよ、舞島!」

 勇はノートを自分の腕で隠す。しかし、もう遅かった。彼は炎の呪文を口にしてしまったのだ。その手から、炎が放たれてしまう。

 大変なことになる――――!

 勇は目の前で起こるであろう惨事を想像し、目を固くつむった。

 ――――しかし。

「……いや、冬樹。何してんの?」

 何かが起きた気配はない。勇はゆっくりと目を開けた。

「……へ?」

 そこにはいつもと変わらぬ教室の光景が広がっているだけだった。舞島の手から炎が出たような様子はない。

 舞島はニヤニヤと笑ってる。

「え。もしかしてそれ、自分で考えた魔法の呪文か何か? やべえぞ、冬樹。それ黒歴史確定じゃん」

 舞島は自分の机にカバンを置き、中から体操服を取り出した。

「それよりさ、冬樹。早く着替えないとやばくね? 次、体育じゃん」

 ――――そうだ。忘れていた。

 勇はカバンを机の上に置き、自分も体操服に着替え始めた。
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