7 / 29
7しわ寄せがきたんですが!
しおりを挟む
蒼白な顔で、陛下に向き合うアイリッド殿下。
まぁ、蒼白通り越して、透明になりかけている人が殿下の隣にいるけど。
「そんな…酷い」
いや、何で男爵令嬢まで落ち込むかね?
婿に来てくれるんだよ?
好きなんでしょ?「彼個人」が。
<いいじゃないですか?……フフッ>
男爵家に婿入りするか、それとも、王家の人間という肩書だけで、令嬢と結婚するか…。
どちらにしても、殿下には何のメリットもないけどね。
あるとしたら、メリッサ嬢の家だけだ。
唯一の跡取りであるメリッサのため、殿下が男爵家に婿に入ったら、男爵家は存続出来る。
しかも殿下は、廃嫡したとはいえ、王家の直系だし。ブランド力はある…けど。
今回のせいで汚点まみれだし、正直、対外的にはどうかな?
あー、でもメリッサ嬢が王太子と結婚してたら、家は親戚筋から養子縁組してたんだよね…跡取りいなくなっちゃうもん。
そう考えると、メリッサ嬢って、別にいてもいなくても、男爵家から見たらどちらでもいい感じ?
騒いでるのは本人と、その母親だけなんだろうなぁ…。
……やめた。
他人の家の事だし、手を差し伸べる気もないし。
アイリッド殿下とメリッサ嬢がどうなろうが関係ないや。
まぁ、あれだけやらかしたんだから、落ちる方に一票だけどね。
本当、家共々消えてもよかった……ゴホン。
思わず黒い物が外に出かかり、誤魔化すために咳払いをする。
それを見たエリオット様が、不思議そうに私を見ていた。
「どうかしましたか?」
美しい仕草で小首を傾げる彼女に、頬が染まる。
本当に、ゲンキンなものだ。
一瞬で意識が彼女に向いてしまった。
どれだけ彼女の事が好きなんだか…。
自分の感情なのに、毎回制御に苦労する。
流れる様に巻かれた金の髪も、深い泉の色をした緑の透き通る瞳も、全て美しい。
ご本人は、何時も「シルビアの様な可愛らしい容姿が良かったわ!男のくせにズルいわよ!」と、可愛らしく頬を膨らませるが、自分の容姿が嫌いな私にとっては、エリオット様の方が何倍も素晴らしいと思う。
一族の血の影響で、美少女とも見間違う容姿の自分など、男として受け入れられるものではない。
しかも、身長も低く、ヒールを履いた彼女と並ぶと、あまり高さが変わらないのが、本当に嫌になる。
「それより」
若干現実逃避していると、エリオット様が神妙な面持ちで口を開いた。
「アイリッドの件はどうでもいいですわ。落ちるなり、婿に行くなり好きにすればいいと思います。………ただ、お父様、現在お父様の直系の子供は私達二人だけ。すなわち……」
エリオット様がそこまで言うと、陛下が申し訳なさそうに口を開いた。
まぁ、言われる内容は予想できるかな…。
「エリオット、すまないが、次期王に…」
「嫌です」
陛下が言い終える前に、エリオット様の言葉が被った。
……彼女の事だから言うと思ったけど。
「お父様!私、幼少期にお父様と契約いたしましたよね?シルビアの元へ嫁ぐから家は何があっても継がないと。私はサフィール家の姓を名乗るのを今までずーーーっと夢みていましたのよ?今更次期王など、なりたくはありません!一族内の継承権を持つ方々を当たってくださいませ!」
側からみたら我儘でしかない発言だが、エリオット様が、ずっと王家という立場を煩わしく思っていたのを知っている手前、下手に口が出せない。
それに、エリオット様がここまで言うのには理由がある。
「だが、エリオット。お前にも帝王学は一通り教えたはず。なんら問題はなかろう?」
陛下のその言葉を聞いた瞬間、エリオット様の視線は一気に、弟であるアイリッド殿下へと向けられた。
はっきり言うと、視線だけで人が殺せそうだ。
「この愚弟が!貴方がバカなせいで…。なぜ私が貴方なんかの尻拭いをしなくてはならないの!貴方と双子と言うだけで、こんなにも自分が嫌になったのは初めてよ!」
そして、王女としては失格。
彼女は両方の瞳から大粒の涙を流した。
「シルビアの……シルビィのお嫁さんにもぉなれないじゃない!」
ここで愛称で呼ばれるとは、そこは想定外だった。
と、それは置いといて、私の家では男子が生まれると、必然的に次の跡取りとして決まる。
男子のみに受け継がれる血統魔法のせいだ。
そのため、エリオット様が言った言葉が正しい。
王位に着く彼女に対し、私は家を継がなくてはならない。
婿として王家に行く事はできないのだ。
「エリオット様……」
悲しみを堪えきれない彼女に対し、私はそっと彼女を自分に抱き寄せる事しか出来なかった。
<クソ王子…お前のせいだ!>
その時、一人の男性から声が掛かった。
今まで空気だった人物……。
「そう悲観するには早くないかい?」
声の主はこの学園の学園長だった。
まぁ、蒼白通り越して、透明になりかけている人が殿下の隣にいるけど。
「そんな…酷い」
いや、何で男爵令嬢まで落ち込むかね?
婿に来てくれるんだよ?
好きなんでしょ?「彼個人」が。
<いいじゃないですか?……フフッ>
男爵家に婿入りするか、それとも、王家の人間という肩書だけで、令嬢と結婚するか…。
どちらにしても、殿下には何のメリットもないけどね。
あるとしたら、メリッサ嬢の家だけだ。
唯一の跡取りであるメリッサのため、殿下が男爵家に婿に入ったら、男爵家は存続出来る。
しかも殿下は、廃嫡したとはいえ、王家の直系だし。ブランド力はある…けど。
今回のせいで汚点まみれだし、正直、対外的にはどうかな?
あー、でもメリッサ嬢が王太子と結婚してたら、家は親戚筋から養子縁組してたんだよね…跡取りいなくなっちゃうもん。
そう考えると、メリッサ嬢って、別にいてもいなくても、男爵家から見たらどちらでもいい感じ?
騒いでるのは本人と、その母親だけなんだろうなぁ…。
……やめた。
他人の家の事だし、手を差し伸べる気もないし。
アイリッド殿下とメリッサ嬢がどうなろうが関係ないや。
まぁ、あれだけやらかしたんだから、落ちる方に一票だけどね。
本当、家共々消えてもよかった……ゴホン。
思わず黒い物が外に出かかり、誤魔化すために咳払いをする。
それを見たエリオット様が、不思議そうに私を見ていた。
「どうかしましたか?」
美しい仕草で小首を傾げる彼女に、頬が染まる。
本当に、ゲンキンなものだ。
一瞬で意識が彼女に向いてしまった。
どれだけ彼女の事が好きなんだか…。
自分の感情なのに、毎回制御に苦労する。
流れる様に巻かれた金の髪も、深い泉の色をした緑の透き通る瞳も、全て美しい。
ご本人は、何時も「シルビアの様な可愛らしい容姿が良かったわ!男のくせにズルいわよ!」と、可愛らしく頬を膨らませるが、自分の容姿が嫌いな私にとっては、エリオット様の方が何倍も素晴らしいと思う。
一族の血の影響で、美少女とも見間違う容姿の自分など、男として受け入れられるものではない。
しかも、身長も低く、ヒールを履いた彼女と並ぶと、あまり高さが変わらないのが、本当に嫌になる。
「それより」
若干現実逃避していると、エリオット様が神妙な面持ちで口を開いた。
「アイリッドの件はどうでもいいですわ。落ちるなり、婿に行くなり好きにすればいいと思います。………ただ、お父様、現在お父様の直系の子供は私達二人だけ。すなわち……」
エリオット様がそこまで言うと、陛下が申し訳なさそうに口を開いた。
まぁ、言われる内容は予想できるかな…。
「エリオット、すまないが、次期王に…」
「嫌です」
陛下が言い終える前に、エリオット様の言葉が被った。
……彼女の事だから言うと思ったけど。
「お父様!私、幼少期にお父様と契約いたしましたよね?シルビアの元へ嫁ぐから家は何があっても継がないと。私はサフィール家の姓を名乗るのを今までずーーーっと夢みていましたのよ?今更次期王など、なりたくはありません!一族内の継承権を持つ方々を当たってくださいませ!」
側からみたら我儘でしかない発言だが、エリオット様が、ずっと王家という立場を煩わしく思っていたのを知っている手前、下手に口が出せない。
それに、エリオット様がここまで言うのには理由がある。
「だが、エリオット。お前にも帝王学は一通り教えたはず。なんら問題はなかろう?」
陛下のその言葉を聞いた瞬間、エリオット様の視線は一気に、弟であるアイリッド殿下へと向けられた。
はっきり言うと、視線だけで人が殺せそうだ。
「この愚弟が!貴方がバカなせいで…。なぜ私が貴方なんかの尻拭いをしなくてはならないの!貴方と双子と言うだけで、こんなにも自分が嫌になったのは初めてよ!」
そして、王女としては失格。
彼女は両方の瞳から大粒の涙を流した。
「シルビアの……シルビィのお嫁さんにもぉなれないじゃない!」
ここで愛称で呼ばれるとは、そこは想定外だった。
と、それは置いといて、私の家では男子が生まれると、必然的に次の跡取りとして決まる。
男子のみに受け継がれる血統魔法のせいだ。
そのため、エリオット様が言った言葉が正しい。
王位に着く彼女に対し、私は家を継がなくてはならない。
婿として王家に行く事はできないのだ。
「エリオット様……」
悲しみを堪えきれない彼女に対し、私はそっと彼女を自分に抱き寄せる事しか出来なかった。
<クソ王子…お前のせいだ!>
その時、一人の男性から声が掛かった。
今まで空気だった人物……。
「そう悲観するには早くないかい?」
声の主はこの学園の学園長だった。
10
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる