REED

いずみたかし

文字の大きさ
8 / 9

7章

しおりを挟む
 物心ついたときからあいつに毎日言われ続けてきた。完璧な人間であれと。ほんのわずかな欠陥も許されなかった。
 あいつは大手金融機関に勤めるサラリーマンで母は専業主婦。周りからは優しい両親の元ですくすくと育った子供だと思われていたが、実態は違った。外ではいい顔をするあいつだが、家の中では自分を神様だとでも思っているかのような振る舞いだった。
「疲れて帰ってきたのになんだこの料理は。食えたもんじゃない」
 内弁慶なあいつが母に威張り散らすことは日常茶飯事。母はあいつよりも一回り年が若く、美しい容姿をしていたが、とても気が弱く、ひどく引っ込み思案だった。そんな母だからあいつにどんなひどい暴言を吐かれても、ごめんなさいごめんなさいと謝るばかりだった。
 あいつは学歴、能力共に突出したものはなく、会社ではもう出世の芽はないと見限られていたようだった。だからこそあいつは息子である俺を自分の理想とする人間に仕立て上げようと必死だった。
「お前は負け組になりたいのか」
 母に似て引っ込み思案だった俺は幼稚園の友達と馴染めず、一人で遊んでいることが多かった。その現場をあいつに目撃された日、あいつの怒号が飛んできた。そして水が溜まった浴槽に何度も何度も顔を押し付けられた。おそらく殴る蹴るでは体に痕が残ってしまうことを考慮したのだろう。あいつが俺にする仕打ちはいつもそれだった。
「いいか、今の社会は総合的な人間力が重要なんだ」
 俺の頭を押さえつけながらあいつが叫んだ。苦しい。
「人とまともにコミュニケーションすら取れないでどうする。そんな奴は人間とは呼べない。ただの出来損ないだ。いいか、約束しろ。もう二度とこんな失態は犯すな」
 俺はそんなに悪いことをしたのだだろうか。そんな疑問が浮かんではいたが、それよりも水中に顔を沈められて呼吸ができない苦しさが何倍も優っていた。だから俺はこう答えるしかなかった。
「ごめんなさい。次からちゃんとやるから。ちゃんとやるから許して下さい。ごめんなさい」
 俺はあいつから受ける虐待があまりにも恐ろしく、必死で自分を改善しようとした。常に明るく振る舞うことを心がけ、誰からも好かれる人物像がどんなものなのかを探りながら、皆の人気者としての地位を確立していった。
 小学校に入ってからもおれは明るいいい子を演じることを続けた。だが、あいつはそれだけでは満足しなかった。
「なんだこの点数は。こんな学力でどうする」
 学校のテストの点数が悪かった時も浴槽に顔を沈められる。
「なんで一番になれないんだ」
 運動会の徒競走で一等を取れなくても浴槽に顔を沈められる。
「なんだあの文章は。論理的思考ができてない証拠だ」
 作文が上手くできなくても浴槽に顔を沈められる。
「お前は何度言ったら分かるんだ。今の社会はありとあらゆる能力を身に付けていないとだめなんだ。学力、コミュニケーション能力、運動能力、リーダーシップ、論理的思考力、行動力、想像力。それらを身に付けろと言っているだろう」
 毎日俺という人間についてのダメ出しをくらい、水の入った浴槽に何度も顔を沈められた。俺の精神は段々限界に達していった。そんな時、おれはあれをすることを覚えたのだ。
 ある日、家の庭に生えている雑草にとんぼが止まっていた。俺はとんぼの後ろから慎重に忍び寄り、素早い動きでとんぼの羽を捕まえた。そして両方の羽を毟り取った。羽を毟り取ってからはとんぼの体を何度も引きちぎり、これ以上分裂できないぐらいまでそれを続けた。それは普通の子供が好奇心で虫を殺してしまう様とは明らかに異なっていた。バラバラになったとんぼの死骸を何度も何度も足で踏みつけた。それをやってから襲ってくる強烈な後ろめたさ。その後ろめたさが心地よく、俺の精神を安定させた。とんぼ以外の虫も何度も殺した。虫だけでは飽き足らず、野良猫や学校で飼っているウサギもカッターナイフで何度も突き刺して殺した。誰にも見られないように細心の注意を払っていたので俺のその行動を知っている者は一人もいなかった。それをしないともう自分を保っていられなかった。

「健常者でもどうしようもない出来損ないが大勢いるんだ。そんな欠陥品がまともな人間になるはずがないだろう」
 俺が小学校三年生の時に母は俺の弟を身ごもったが、出生前診断の結果、異常が見つかった。常軌を逸したパーフェクトベビー願望を持つあいつが産むことを許すはずがなかった。
「お願いします。産ませて下さい。」
 母は泣きじゃくり、あいつに頼み込んだが、無駄だった。俺の弟はあいつに殺された。
少しでも欠陥があったら生きてちゃいけないのか。そう思うと俺はどんどん不安定になっていった。学校でも家でもあえて明るく振る舞い、いい子でいるように努めたが、俺の心の中に生まれた怪物はどんどん大きくなっていった。この世の中にはなんの希望もない。生きているという実感が湧かない。だからあれを繰り返すしかなかった。どれだけの虫や動物を殺したか分からない。

 小学校四年生の頃、俺はあの少年を通して野球に出会った。野球、とりわけ投げることは俺を夢中にさせ、嫌なことを忘れさせてくれた。だから俺はあいつに少年野球チームに入りたいと頼み込んだ。思えばあいつに何かを頼むということをしたのはそれが最初で最後だった。
「野球は集団の中における社会性、協調性や忍耐力を鍛える上でいい経験になるな。社会に出て成功しているビジネスマンの中には昔野球をやっていた人も多いんだ。いいぞ、少年野球チームに入っても」
 社会性、協調性だの社会での成功という言葉にげんなりした。あいつの書棚は社会で成功するためのハウツー本や子供を出来のいい子にするための本で埋め尽くされている。あいつは野球というスポーツも俺を自分の理想とする人間にするための道具としか捉えていなかった。俺はただ純粋に野球がやりたかっただけなのに。だが、何はともあれ少年野球チームに入って本格的に野球が出来るようになったことは嬉しかった。俺の精神は安定するようになり、あれをする回数も減っていった。
 私立の中学に進学した俺は陸上部に入部した。野球はシニアリーグに入って続け、中学三年生の時に名門校である早大鶴ケ丘高校にスカウトされ、その誘いに応じた。
 高校一年生の夏。俺は一年生にして甲子園優勝投手となり世間の脚光を浴びた。マスメディアやそれに連なる大人達は俺を持ち上げに持ち上げた。
「早坂君は野球の実力だけでなく、人間性がとても素晴らしい。非の打ち所がない」
「きっとご両親の教育が良かったんでしょうね。今の若い子達にも彼を見習って欲しいですよ」
 たまたま出来のいい人間になれば親の育て方がいいと賞賛し、たまたま出来の悪い人間になれば親の育て方が悪いと非難する。どいつもこいつも見てるものは結果と上っ面だけだった。あいつは自分の息子である俺が甲子園優勝という結果を残して世間から注目を集め、評価されたことに鼻高々としていた。自分の所有物である俺の価値が上がることで、自分自身が評価されていると思い、酔いしれていたようだ。甲子園優勝後に「早坂俊介の軌跡」というあいつの書いた本が出版された。その本の内容はタイトルの通り、幼少時からの俺の軌跡を辿るものだった。もちろんあいつが俺にした虐待等は全て伏せてあり、嘘八百の内容が書き連なれていた。あの本を読んだ人間は早坂俊介の父親はかなりの人格者だと思うことだろう。気づくと俺は本をビリビリに引き裂いていた。ふざけるな。
 高校二年生の夏、早大鶴ケ丘高校は二年連続で甲子園出場を果たし、ベスト4という結果を残した。一年生の夏とは異なり、エースナンバーを付けていた俺にはとてつもなく大きなプレッシャーがのしかかっていた。それでも全国ベスト4にチームを導くことができた。チームメイトや周りの人間はその結果を評価したが、あいつだけは違った。
【去年よりも悪い結果とはどういうことだ。俺に恥をかかせるな】
 野球部の寮にいる俺に電話口であいつは怒鳴り出した。
【お前ちゃんと練習してるんだろうな。去年よりも球速が下がっているぞ】
 相変わらず目に見える分かりやすい結果だけを気にする男だ。野球のことを何も知らないくせに知った風な口を叩くなと俺は思った。
【ここから先の公式戦は全部勝て。分かったな?】
 電話を切った後、俺はあまりのフラストレーションに耐えられなくなってあれをした。全寮制の早大鶴ケ丘高校野球部に入ってもあいつの存在が俺を追い掛けてくる。イップスにかかったのはそれから少し経ってからのことだった。
 あいつの言動だけでもおかしくなりそうなのにイップスにかかり、投げるという唯一の希望を奪われた俺の心は荒れ狂っていた。おまけにどこかの週刊誌の内容が追い打ちをかけた。早坂俊介は一年生の夏の甲子園優勝に慢心している。監督から特別扱いを受け、いつも練習を早めに切り上げる。事実無根の内容に俺の中にいる怪物が暴れ出した。夜中にランニングに行ってくると偽り、虫や動物を殺しまくった。何十匹殺したか分からない。合宿所の部屋に戻ると例の週刊誌を手に持って俺は外に出た。アスファルトに体育座りをしてうずくまっていると声がした。
「早坂?」
 坂上大輔の声だった。坂上は頭が良く、観察眼も優れているが、名門早大鶴ケ丘高校野球部でやっていけるだけの身体能力を持ち合わせていなかったため、新チームが結成されてからマネージャーに転向していた。
「もう無理だよ」
 無意識の内に俺は本音を呟いていた。あいつにかけられるプレッシャー、デタラメな記事、そして投げることのできない状況に俺は絶望していた。
「早坂、こんなデタラメな記事は気にするなよ。俺達は皆、お前が誰よりも練習してることを知ってるよ。それにイップスだって必ず治るさ」
 坂上は俺を励ましてくれたが、俺の心は晴れなかった。だが、投げることまで完全に奪われたら、俺は死んだも同然だと思い、翌日からイップスの克服に向けて立ち上がった。坂上がほぼつきっきりという形で協力してくれたこともあり、俺のイップスは徐々に回復していき、三年生の春にはエースナンバーを取り戻すことができた。俺は坂上には本当に感謝していた。

 最後の夏の西東京大会が開始する直前に母から電話が掛かって来た。
「お父さんが胃癌だって診断されたの」
 母の声は震えていた。
「今手術を受けてるの。どうしようどうしよう」
 慌てふためいている母の声から俺は期待して心が躍った。これであいつが死んでくれれば俺は解放される。そんな気がした。
 その日はたまたま練習が休みだったため、俺は病院へ駆けつけた。だが、俺の期待は裏切られた。癌は初期の段階であり、手術で全て摘出したため、問題ないという。母はあわてふためいた先程の電話での様子とは打って変わって安心したような表情をしていた。母さん、何であんな奴の命が助かって喜ぶんだよ。あんな奴は消えてくれた方がいいじゃないか。母さんだって散々嫌な思いをしてきただろう。
「俊介」
 手術を終えたあいつが意識を取り戻し、俺を呼んだ。
「今年こそ結果を残せよ。俺が病気になったことでマスコミの注目度もアップだ」
 あいつの第一声に俺は呆れ果てた。こいつは何が起きても変わらない。病気にかかることで本当に大切なものは何なのかに気付き、いい人間に生まれ変わるなんてことが起こるのはテレビドラマだけの話だ。こいつは俺が結果を残すことで自分の価値を上げたいという思いだけでいっぱいなのだ。しかも自分が病気になったことすら利用しようとしている。
「うん、お父さん。無理しないでね。退院祝いに優勝の報告を持っていくから」
 俺は偽りの笑顔を作り、あいつに声を掛けた。その時俺は決意した。病気にかかっても何も変わらないのならもっといいものを俺が用意してやるよ。

* * *

「あれは僕が送りました」
 早坂俊介はこれから実行することへの覚悟を決めていた。この状況を作るためにあの時から準備してきたのだ。もう後に引くことはできないし、もとより後に引く気などない。
 早坂は高野連に送りつけた脅迫状を早大鶴ケ丘高校野球部の寮にあるパソコンのワープロで作成した。皆が寝静まった夜中にワープロを打ち、ワードファイルはすぐには見つからない場所にあえて保存しておいた。郵便ポストも寮から最寄りの場所を利用した。痕跡を残しておくことが重要なのだ。後から早坂俊介が行ったことが分かるような。
「早坂君。何を言っているんだ?」
「こんな時に冗談はよそうよ」
 マスコミがまくしたてる。
「うるさい!」
 早坂の怒号にざわついていたマスコミが静まり返る。坂上が放心した表情で早坂の方を見つめている。
 早坂はユニフォームの後ろポケットからハンカチを取り出す。そしてハンカチに包まれていた小型のカッターナイフをあらわにする。左手の親指を使って刃先を出すと、テレビカメラに向かってカッターナイフを向ける。試合終了後にベンチから球場の外に出る際にセカンドバッグの外ポケットからさりげなく移し換えておいた。
「嘘だろ?早坂君」
  嘘じゃないよ。これが俺の本当の姿だ。
 早坂は左手でカッターナイフを固く握りしめながら、父に言われた言葉を思い返していた。
  いいか、今の社会は総合的な人間力が重要なんだ。
 ソウゴウテキナニンゲンリョク。
  人とまともにコミュニケーションすら取れないでどうする。そんな奴は人間とは呼べない。ただの出来損ないだ。いいか、約束しろ。もう二度とこんな失態は犯すな。
 デキソコナイ。
  今の社会はありとあらゆる能力を身に付けていないとだめなんだ。学力、コミュニケーション能力、運動能力、リーダーシップ、論理的思考力、行動力、想像力。それらを身に付けろと言っているだろう。
 今まであいつが俺にしてきた要求の数々。一体なぜあいつはそんな要求を繰り返してきたのか。答えは分かりきっている。
 あいつは自分自身に出世の芽がないと分かり、所有物である俺の能力を高めることだけに注力した。高級な腕時計や高級な服をまとっている人間は社会的な地位が高いとみられる。それと同じように価値の高い所有物を持っておくことであいつはあいつ自身の社会的な価値を上げようとした。周囲から褒められたくて仕方がなかったのだ。早坂さんの所の息子さんは非常に優秀ですよね、早坂さんの育て方が良かったからでしょうね、と。俺はそんなあいつの歪んだ自己満足のためにこれまでずっと苦しめられてきたのだ。だが、それも今日で終わりだ。高級な腕時計だと思っていたものがもしも偽物だったらどうする?人間力の高い将来有望だと思っていた息子が不祥事となるような問題行動起こしたら?
 早坂はテレビカメラに向けていたカッターナイフの刃先を自分の喉元に近づけていく。
  でも、今日の試合は楽しかったな。
 最後だと決めた今日の試合、早坂は自分の全てをぶつけた。三鷹第二高校との試合は非常に切迫した緊張感のあるものだった。特に三番打者の芦田孝太郎という選手は非常に頭が切れ、早坂は芦田との狙い球の探り合いに夢中になった。最終回の勝負はたまらなく熱かった。
 だが、俺の投げる喜びすらもあいつは自分のエゴに利用して奪い取っていく。もう俺はこの先には何も見えない。真っ暗なトンネルからは抜け出せない。
 早坂はカッターナイフで自分の首を切りつけた。そして血しぶきが舞った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました

専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

処理中です...