彼を取り戻すためにすべてを捧げ…なくても別に良い気がしてきた闇落ち令嬢は、美食家の悪魔と契約をする

hosiiimo

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レイン、悪魔と冬休みを過ごす。

マクマノアクマ③

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七不思議というのは、非常に興味深い。郷土料理のコースのようなものだろうか。土着の民のみが知る食文化、地域の宴会料理『七不思議』が、僕を待っていてくれるのだ。

実に胸が高鳴る。

せっかくの機会なので、レインちゃんも誘ったのだが、断られてしまった。

非常に、残念だ。

「あのような不浄の土地には、必要がない限り近寄らないに限る。『ぼっち』が深夜に人のいない学園などに行けば、必ずテロ目的だと疑われる。そして、誹謗中傷を受け、苛められ、冤罪を着せられ、やがては逮捕か追放をされてしまうのだよ。あぁ、なんと恐ろしいことだろう。きっと新年を迎えるのは檻の中となるのだ 」

なんという過剰な自意識。そしてあふれんばかりの妄想力、ブルブルと震える様も、実に愛らしい。
レインちゃん、本当に可愛い。

冬休みの間は、この屋敷で過ごしてしているけど、普段はその学園の寮でぼっちで暮らしていたんだって。

それなら、これからは僕が、学園でも日常生活でも、可愛がってあげよう。

さっそく手続きもしてこようね。

レインちゃんの食への関心が絶望的に低いのは、おそらく環境が原因なのだろう。市場の品揃えの悪さに加え、学園でも適切な食育を受けられていないに違いない。

これだから未『界』は、と嘆きたくもなるが、僕が頑張ればいい話だ。むしろ、お世話のし甲斐があるというもの。

今夜は街の粗悪な食材のみで調理する羽目になったが、急激な変化も体に負担がかかるよね。食材は徐々に良いものに切り替えていこう。

大切なのは下ごしらえと味付け。しばらくは僕の腕だけが、頼りかなぁ。ここでまともな食材を手に入れるには、自分で用意するしかなさそうだ。地産地消ってやつだね。

新鮮な野菜を育てるためにも、手頃な笹耳族エルフの森でも焼いてこようかな。焼き畑で栄養価の高い良い野菜を作るんだ。きっと苦手な野菜も、パクパク食べてくれるようになる。

これからの生活について2人で盛り上がった後で、レインちゃんは研究室に籠ったので、僕は戸締りをしてから、学園へと向かった。


◇◆◆◇


少女漫画「不思議少女サニー☆サンシャイン」では学園が舞台となる事が多い。

『7不思議』編は、冬休み明けに、真冬の怪談話の噂を聞く所から始まる。

マスコットのハミングが気になる気配があると囁くので、サニーとクラウドくんは深夜の学校に探検に向かう。そこで不思議な出会いと不思議な武器を手に入れて…という2人にとって、初めての冒険の話だ。

学園は、他の章でも、ペガサス(移動手段)や月夜の晩に湖に現れるローレライ(セクシーなお姉さんでアドバイスをくれる)など2人が様々な運命に、巡り合う場所でもある。


◆◆◆◆

ガッカリだよ・・・・・・。
郷土料理のコースなどではなく、ただの・・・雑魚のごった煮、だったよ。

『しっぽく』と聞いて卓袱料理と卓袱うどんを、勘違いしたようなものかな。うどんだって、悪くない。悪くなんだが…、なんというか…そう、ガッカリだ。期待をし過ぎた僕が悪いんだけどさ。

それでも今取れる旬の食材だ。この地の恵みだ。堪能しよう。他の章で仲間になる、魔獣も含めてしっかりと、頂こう。

この『界』は、今はだ寒い季節らしいので、鍋料理が良いだろう。

チャウダーなら、レインちゃんも飲んでくれるかな。

明日の朝が楽しみだ。スープ続きだが、これからは毎朝そうしようと思うんだ。レインちゃん、食が細いし関心が低すぎるから、手軽に飲めるスープで栄養を取ってもらわないと。

それに、どれもこれも、素材を生かした調理には、どうにも…なんだ。だから、他の素材と共に食す方がいいだろう。

まったく、寂れているのは、市場だけじゃなかったのかな。狩場でもこのありさまとは、貧弱な土地に少し悲しくなってきた。

レインちゃんが言っていた通り、世知辛い、ね。

もちろん、ザコはザコでも、幽霊と益虫、地元が同じ『怠惰』と『嫉妬』のは、避けたよ。

あぁ、昨夜の鳥と比べてはいけないな。あれは女神からの聖夜のお恵みだ。あれのせいで、余計に、物足りなさを感じてしまう。

魚は、身が締まっていたが淡白すぎ・・・。魔力も今一つ。

馬肉も、バイコーンと違って童貞馬は臭みが強いだけ。歯ごたえも弾力もまったくない。

ハマグリはぼやけた大味。風味が薄い。本当、かなりの肩透かしだった。


けれど、すごくいい物との、出会いがあったんだ。

アダマンタイト!! それも祝福を受けている奴だよ。

ちょうどよかった。キッチンツール、欲しかったんだよ!!

レインちゃんはパンケーキを焼くためだけの粗悪なターナーと、果物のジャム…じゃなくてゲルを作るための使い辛いヘラしか持ってなくて…、困ってたんだ。

タナ―と、スープレードル、横口レードルに、パスタレードル、それとトング。泡だて器も欲しいから、足りるといいなぁ。

さっそく、鍛冶の得意な地元の奴の所に送ったよ。元は魔法剣だから仕上がりにも期待出来そうだよね。

こういう思わぬところでの、思わぬ出会いって、すごくテンション上がるよね。

これも遠回しなお恵みで、勘違い小僧が手にする流れが、予定されてたんだよ。

けど、別にいいだろう。こうして、ここに落ちていたんだから。誰が拾っても。

あの『界』の連中は、いつもそうなんだ。『ものだけ与えて後は現場で』と放置する。
良くってせいぜい一回こっきりの天啓が付くぐらいのもの。

「常に心に寄り添い囁き続ける」僕らのような真面目で丁寧な仕事は、できない連中なのさ。

あぁ、せっかくなら、もっとたくさんくれないかな。お鍋やフライパン、ボウルやざるも、せっかくなら同じ素材で揃えたいんだ。

剣には何か緑色の石が付いていて、髪留めについていた赤い石と似た気配があったので、これも解析に回した。

今後も、学園での旬の素材には期待しないが、こういう事はあるかもしれないな。

脇の甘い成金に感謝を捧げつつ、ホクホクしながら僕は帰宅した。
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