盗みから始まる異類婚姻譚

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23. 奔流

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 蘇芳に二度も精液を搾り取られ、リュカは肉体的にも精神的にも疲れていた。今は赤鬼に腕枕をしてもらっている状態で彼の懐に抱きこまれ、もう片方の手で尻穴を弄られている。潤滑剤を纏った人差し指が浅い部分を出入りしていた。

「リュカ、お前の中、あっちぃな。…指が火傷しちまいそうだ」
「…じゃ、ぁっ…抜けば、いぃ、だろ…ぉっ…」
「…そうだな。指は抜いて、もっと太いものをさっさとぶちこむか」

 もっと太いもの、が何なのかリュカは言われずとも分かっていた。ろくに慣らされもしていない尻穴に蘇芳の巨根を受け入れたらどうなるか、身をもって知っている。条件反射で、涙が溢れ出る。

「ひ、ひどいことしない…って言った、ぁ…!」
「冗談に決まってるだろ。ちゃんと慣らしてから突っ込むって」

 冗談にしては全く面白くないし、結局あの凶器を突っ込まれるのだから安心できるはずもない。
 顔を涙でぐしゅぐしゅにしつつ、リュカは赤鬼をじとりと睨みつける。だが蘇芳は愉快だと言わんばかりにくつくつとのどを鳴らして笑っているだけだ。口角が上がったままの唇が、少年の唇を啄む。抱きこまれている体勢のせいで、逃げ場がなく口づけを受け入れるしかない。

「んンっ!」

 人差し指を奥に押しこまれ、少年は体を震わせた。弱い部分を指の腹で執拗に撫でられ、漏れる喘ぎ声もすべて蘇芳の口の中に吸い込まれてしまう。

「…ん、ふぅ…く、ン…ーッ」

 舌で翻弄されている間に、体内に埋められた指の数も増えていく。下半身から聞こえる水音が生々しくて、できることなら耳を塞ぎたいと少年は思っていた。

「…も、くるし…」

 唇が離れた一瞬を逃さず、リュカは蘇芳の口に指をあてて抑止した。酸素を取り込んで、乱れる呼吸を整える。上からも下からもバラバラの動きで責められ、うまく呼吸ができずにいたのだ。

「鼻で息すればいいだろ」
「してる、けど、くるし…っ。ぁ、な、なんで指、食うんだよ…っ!?」
「指も性感帯なんだよ。娼館で働いてたくせに、そんなことも知らねえのか。抱かれた経験あるっつってたよなあ?」
「…そ、れは…」

 蘇芳はにやりと笑みを浮かべて、言葉に詰まるリュカの反応を窺っている。意地の悪い表情に、自分が性行為をしたことがないのを確信しているのを少年は悟った。その通りではあるが、赤鬼のにやついた顔が何故だか腹立たしい。

「そんなことする奴、いなかっただけだし!」
「…へえ?」
「…そもそも!指舐めるとか、…ばっち、ぃぁ…っ!」

 含み笑いを浮かべたままの蘇芳の舌が指を這う。舌先で関節部分をなぞられ、びりっと痺れのようなものが指から伝わってくる。指先を甘噛みされた時は、下肢に挿入されている赤鬼の指をぎゅうと締め付けてしまった。

「ひ、…ん、あ、ァ…」

 指が性感帯と言うのは本当らしい。尻の中をかき回されながら指を咥えられて、酷く気持ちが良かった。二度も射精した陰茎は再び腹にくっつく程に反り立ち、布団を先走りで濡らしている。

「…そろそろいいだろ。すげえ柔らかくなってるぞ、ここ」
「ゃ…、ひろげ…な…ッ」

 そう言いながら蘇芳は挿入したままの指で、リュカの尻穴をぐっと広げた。抗議の声を上げる彼を無視し、赤鬼は上体を起こし、少年を転がしてうつ伏せにさせた。
 大きな両手で尻をわしづかみにされ広げられる感覚に、リュカはひゅっと息を呑んだ。以前手酷く犯された時のことがフラッシュバックし、恐怖が蘇る。

「いや…、嫌だっ嫌だ!」
「リュカ?」
「嫌だっ…この体勢、やだ…っ!後ろからするの、嫌だあ…っ!」
「リュカ、落ち着け」

 リュカはパニックになり腕を振り回して暴れ始めた。怯える少年の反応に蘇芳は驚きに目を丸くしたが、彼を優しく膝の上で抱きしめた。息切れのように浅く速い呼吸を繰り返し、震えて涙を流すリュカの背中を優しく撫でる。

「リュカ、大丈夫だ」
「後ろ、…こわ、…嫌だ…!」
「後ろからは入れねえから、落ち着け。言っただろ。酷いことも怖いこともしねえって」
「…っ、ぅん…」

 落ち着いた声音でなだめながら、蘇芳はリュカの唇を啄む。柔らかな口づけを受け、少年は次第に平静を取り戻した。目を閉じ、口内に侵入する舌を受け入れる。

「ん、うう゛…っ!?」

 尻穴をこじ開けて中へと入り込む熱塊の存在に、リュカは目を見開いた。一息にではなく、ゆっくりと確実に入ってくる。

「ほら、深呼吸しろ」
「…は、あ…うぅ…っ」

 リュカは蘇芳の言葉に従い、ゆっくりと息を吸い込み、大きく吐いた。両手を取られて、赤鬼の首に回される。太いモノで中を押し上げられる感覚に、違う意味で涙がこぼれる。赤鬼も苦しいのか、耳元で息を詰まらせているのがわかる。だが、少年に彼を気にかける余裕などなかった。圧迫感から何とか気を紛らわせようと、リュカは無意識に蘇芳の背中に爪を立てていた。

「…っはぁ、…あ、はっ…」

 長い時間をかけた後、リュカの体は布団の上へと横たえられた。お腹の中は異物感でいっぱいで、屹立を受け入れている尻穴は広がってジンジンと熱を持っている。だがゆっくりしてもらったおかげで、尻は切れていなくて、リュカは内心ほっとしていた。

「リュカ、平気か」
「へーき…なわけ、ない…だろお…っ。ばかぁ…!」

 涙の浮かんだ目で赤鬼を睨みつける。苦笑する蘇芳の手が額を撫で、汗に濡れて貼りついた前髪を指でよけてくれた。

「これでも、半分しか入れてねえんだけどな」
「ヒッ…!?無理、むり…っ!」
「分かってるっつの。全部突っ込んだりしねえよ」

 今はまだ、な。恐ろしい囁きを耳にしたリュカだったが、聞こえてないふりをした。蘇芳が前に身を乗り出すのを見て、ぎゅっと布団を握りしめる。

「…ん、ぐ…っ!」
「きっつ…」

 陰茎がずるりと引き抜かれたかと思えば、奥まで押しこまれる。今までと違い、蘇芳の腰遣いは荒々しく乱暴なものではなく、緩慢なものだった。圧倒的な質量の塊がどくどくと脈動を打っているのが分かる程だ。

「っは、…ぁぅ、う゛…」

 痛みはないが、圧迫感と異物感で苦しい。酒の力を借りたあの夜は激しい快楽に呑まれたというのに。

「…萎えちまってるな」

 蘇芳は少年を見下ろしながら、ぽつりと呟いた。指での愛撫の時には勃起していたリュカの性器は、長い挿入と苦しさですっかり縮こまっていた。芯のない柔らかな陰茎を指で撫でる。少年は何も答えることができず、ただぼんやりと汗が一筋、赤鬼の顎の先を伝っていくのを見ていた。
 蘇芳は潤滑剤をリュカの股間へと垂らした。くすぐったさに、少年が身を震わせる。粘度のある液体をまんべんなく塗りつけ、赤鬼は大きな手で小ぶりな性器を包み込んだ。

「い、あ゛っ!?」

 手で扱かれるのと同時に中を突かれ、リュカは背中をのけぞらせた。先程とは違って、指で触られて気持ちよかった部分を的確に貫かれる。性器からの直接的な刺激も相まって、全身に電気のような快感が走った。

「やっ、あ、…あー…っ!」
「はっ…いい声で啼くじゃねえか」

 赤鬼の男根の大きく張り出した部分が、肉襞をえぐるように擦る。強烈な快楽に恐怖を感じて体を丸めようとすると、すかさず蘇芳の手が伸びて足を開かされる。リュカは指を伸ばして扱く手を止めようとしたが、多量の潤滑剤で滑ってしまい、うまくいかない。それどころか滑った指先が自分の陰茎に触れてしまい、余計に気持ちよくなってしまう。

「…ひっ、う、…ン、んうぅ…っ」
「だから、声抑えるなって」

 布団を手繰り寄せて口元を押さえるが、それも取り上げられてしまう。蘇芳は口角を上げて、意地の悪い笑みを浮かべていた。縋るものもなく、はしたない声で喘ぐリュカを見下ろしている。約束に違わず気持ちいいことしかされていないが、みっともない自分の姿を見て愉しんでいるのだと分かって、やっぱり意地悪な奴だとリュカは思った。

「…ぃぁ、も…むり、…ぃく…っ!」
「…えっろ」

 指と肉棒で追い立てられ、為す術もないリュカは達した。三度目の射精で、尿道からこぼれる精液は少量だった。絶頂に全身を震わせた後、少年の体は弛緩する。目を閉じたまま荒い呼吸をする彼の頬を撫でた。
 息が整うと、リュカはゆっくりと目を開けた。こめかみを伝って涙がこぼれていく。少年の全身は倦怠感に包まれ、気を抜けば容易く意識が夢の中へと旅立っていきそうだった。

「リュカ、まさかこれで終わりだとは思ってねえよな?」
「…んぐ…!?」
「俺まだ一回もイってねえからな。もう少し付き合ってもらうぞ」
「ぎゃーっ死ぬー!」
「死なねえように加減してやるよ」

 尖った歯を見せて笑う蘇芳に、リュカは硬直した。確かに自分だけが射精させられて、蘇芳は一度も達していない。笑いながら腰を使う赤鬼に、少年は絶望に近い気持ちに陥った。だが、疲弊した体では満足に抵抗することもできず、蘇芳に体を揺さぶられるがままとなった。
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