1000字以下の掌編集

よつば 綴

文字の大きさ
上 下
8 / 26

懺悔したいんだ

しおりを挟む

 僕はこの罪を、いつ君に伝えればいいのだろうか。悩んでいるうちに、こんな戦いに巻き込まれてしまった。
 ただの傭兵の僕と、優秀な魔術師の君。もしも、前線で戦う君に再び会えたなら、その時には必ず伝えよう。


「魔術部隊は敵のシールドを壊せー!」
『シールド破壊魔法式、ワレローヤ!!』
「砲撃部隊、放てー!!」


 放たれた弾は、敵に届かなかった。阻害魔法陣が張られていたようだ。
 指揮官様は慌てて陣を建て直そうとしたが、もうなす術はなかった。このまま、我々は全滅を待つだけだった。
 全隊捨て身で特攻するよう命じられたが、この時ばかりは指揮官様の命令には従えなかった。
 勝手に持ち場を離れ、一目散に君を探した。おそらく、最前線で傷ついているであろう君を。

 ようやく見つけた君は、既に虫の息だった。仲間のヒールも効果をなさない程に。僕は、今しかないと思った。
 こんな時にって君は思うかもしれないね。けれど、これきり会えなくなってしまうなら、伝えなくてはいけないんだ。


「聞いておくれ。僕はね、ロザリー。ずっと君に打ち明けなければと思っていたんだ。こんな事になって····償う機会を失ってしまうなんて、本当に悔しいよ。」

「なぁに、早く言って。もう、時間がないわ······」

「あぁ、ロザリー。僕はね、実は──────」



 僕は洗いざらい懺悔した。血にまみれた、それでもなお美しいロザリーの顔を見る勇気が、僕にはなかった。

「待って、それは······さすがに······死······ねな······」


 そう言い残して、君は光の粒へと姿を変えた。
 天へ昇る君を見送り仰いだ空は、どんよりと雲に覆われ稲光りが君の怒りを伝えている。
 僕は言うタイミングを間違えたのだろうか。

しおりを挟む
1 / 2

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

怖い夢を見た(一話完結)

ホラー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

異世界転生局の裏仕事

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:2

僕らは笑っている

ライト文芸 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

龍の契り〜身代わりのとりかえ神和ぎ〜

キャラ文芸 / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:6

処理中です...