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純平の初恋
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「純平、そのほっぺどーしたの?」
学校に行く途中で会った同じオメガの郁人がふわふわの髪を靡かせながら聞いてきた。
「ぶつけた」一言だけ返すと郁人から疑いの目で見つめられた。
その視線から逸らすように純平は俯いたまま学校への道を歩きだした。
もう少しで学校に着きそうな頃、後から奏が走ってきた。
「寝坊したー」少し長めの前髪を掻き上げながら純平と郁人の間に入ってきた。
純平の左側に来た奏は俯いて歩く純平の顔を覗き込んだ。
「腫れてる」 「施設でやられたのか?」「何があった?」純平の頬を撫でながら奏が心配そうに聞いてきた。
「ぶつけたんだって…」郁人が横から答えた。
奏は郁人の事を横目で見ながら…「郁に聞いてないよー」と言っていた。
「大したことないから…」そう一言だけ返して純平は2人から足早に離れた。
純平の初恋は奏だった。
人見知りで、大人の男の人が苦手な純平…勉強も運動も苦手
得意な事がないけど、本を読むことだけは昔から大好きだった。
奏は運動も勉強も学年トップ。
同じアルファだけじゃなく、ベータやオメガからも人気物だ。
友達のいない純平と違って奏の周りにはたくさんの友達が集まってくる。
中でも4年生から転校してきた郁人は見た目も可愛いくて話も上手。あっという間に友達がたくさんできた。
僕と一緒にいた奏とも仲良くなった。郁人に出会い僕なんかじゃ奏に釣り合わないと思うようになってきた。
僕たちはあと少しで小学校の隣の中学校にほとんどの子は行くことになっている。
奏も純平ももちろん一緒だ。
でも中学校からはオメガクラス、ベータ・アルファクラスと別れてしまう。
一緒の学校でも今みたいに会うことが難しくなる。
早い子は、そろそろヒートが起こる頃だ。学校で万が一の番事故が起きないように玄関の出入口から別々だ。
もちろん登下校、一緒にいることも許されなくなるだろう。
奏と番になりたいと言ってるオメガがいるのも知ってるし、告白してる現場を見たこともある
でも奏は決まって
「好きな子がいるんだぁー可愛くて守ってあげたい子。もっと強くなって、どんな事からも守ってあげたいんだー」という返事をする。
奏本人から聞いたことないけど、きっと郁人の事だ。
郁人は守ってあげたいと思う見た目の子だから。
僕はそんな見た目ではないし、可愛くもないんだから…
それに僕は…
施設での事が他のみんなに知られたら絶対に嫌われる。気持ち悪いと思われる。
いつか自分の身体は小川の好きにされるのだから…あとどれくらいだろう?
中学校のお兄さん、お姉さんから聞いた事がある。
ヒートがきたら小川の物になる。だからヒートにならないように薬で抑えてるんだって。
でも僕はその薬もまだ貰えていない。貰わなくちゃいけないのに…誰も教えてくれないんだ。
学校に行く途中で会った同じオメガの郁人がふわふわの髪を靡かせながら聞いてきた。
「ぶつけた」一言だけ返すと郁人から疑いの目で見つめられた。
その視線から逸らすように純平は俯いたまま学校への道を歩きだした。
もう少しで学校に着きそうな頃、後から奏が走ってきた。
「寝坊したー」少し長めの前髪を掻き上げながら純平と郁人の間に入ってきた。
純平の左側に来た奏は俯いて歩く純平の顔を覗き込んだ。
「腫れてる」 「施設でやられたのか?」「何があった?」純平の頬を撫でながら奏が心配そうに聞いてきた。
「ぶつけたんだって…」郁人が横から答えた。
奏は郁人の事を横目で見ながら…「郁に聞いてないよー」と言っていた。
「大したことないから…」そう一言だけ返して純平は2人から足早に離れた。
純平の初恋は奏だった。
人見知りで、大人の男の人が苦手な純平…勉強も運動も苦手
得意な事がないけど、本を読むことだけは昔から大好きだった。
奏は運動も勉強も学年トップ。
同じアルファだけじゃなく、ベータやオメガからも人気物だ。
友達のいない純平と違って奏の周りにはたくさんの友達が集まってくる。
中でも4年生から転校してきた郁人は見た目も可愛いくて話も上手。あっという間に友達がたくさんできた。
僕と一緒にいた奏とも仲良くなった。郁人に出会い僕なんかじゃ奏に釣り合わないと思うようになってきた。
僕たちはあと少しで小学校の隣の中学校にほとんどの子は行くことになっている。
奏も純平ももちろん一緒だ。
でも中学校からはオメガクラス、ベータ・アルファクラスと別れてしまう。
一緒の学校でも今みたいに会うことが難しくなる。
早い子は、そろそろヒートが起こる頃だ。学校で万が一の番事故が起きないように玄関の出入口から別々だ。
もちろん登下校、一緒にいることも許されなくなるだろう。
奏と番になりたいと言ってるオメガがいるのも知ってるし、告白してる現場を見たこともある
でも奏は決まって
「好きな子がいるんだぁー可愛くて守ってあげたい子。もっと強くなって、どんな事からも守ってあげたいんだー」という返事をする。
奏本人から聞いたことないけど、きっと郁人の事だ。
郁人は守ってあげたいと思う見た目の子だから。
僕はそんな見た目ではないし、可愛くもないんだから…
それに僕は…
施設での事が他のみんなに知られたら絶対に嫌われる。気持ち悪いと思われる。
いつか自分の身体は小川の好きにされるのだから…あとどれくらいだろう?
中学校のお兄さん、お姉さんから聞いた事がある。
ヒートがきたら小川の物になる。だからヒートにならないように薬で抑えてるんだって。
でも僕はその薬もまだ貰えていない。貰わなくちゃいけないのに…誰も教えてくれないんだ。
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