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第7話 「永遠に触れた朝」(翼視点)
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あれから何度か夜を共にして、僕と蒼佑さんの関係は、思っていた以上に深いものになっていた。
彼の存在は、僕にとってただの「大切な人」ではなく、空気のように、心の中で息をするすべてのものに変わりつつあった。
毎日がどこか非現実的に感じがするけれど、彼といるだけで世界が幸せに満たされる。
言葉では到底表せないその感情が、ひたすら強く、そして温かく僕を包んでいた。
彼と交わすすべての時間が、まるで心の底から求めていたものを全て与えられているような錯覚をもたらしていた。
目を覚ますと、蒼佑さんが静かに隣で眠っていた。
その寝顔は、普段の彼の冷徹な一面とは裏腹に、無防備で、どこか温かく、心を締め付けられるような安心感を与えてくれる。
……こんなにも彼の存在が大きくなっていることに気づいた瞬間、胸の奥が、じんわりと熱を帯びた。
あぁ、もう俺は、この人に依存している。
でも、それが怖くない……それどころか、今この瞬間こそが、自分の帰る場所なんだと、心の底から思える。誰にも触れられたくない、誰にも邪魔されたくない。
蒼佑さんの腕の中が、俺の居場所なんだって、ようやく素直に思えた。
「……おはよう、蒼佑さん」
俺の声に、彼はゆっくりと目を開けた。
微笑むその顔が、眩しいほどに優しくて……嬉しくて、息が詰まりそうだった。
「……僕、たまに思うんです」
布団の中で、小さく呟いた。
「もしあのとき……蒼佑さんに出会わなければ、きっと今も、誰かを信じることなんてできなかった」
蒼佑さんは何も言わず、僕の手をそっと取って、自分の胸に当てる。
その鼓動が、静かに、でも確かに伝わってくる。まるで彼の想いそのものみたいに。
「お前のためなら、何度でも繰り返すよ。……逃げられたって、何度でも、見つけてやる」
低く、確かな声。その言葉が、僕の心の中に静かに根を張っていく。
それでも、不安は消えなくて。
「蒼佑さん……僕、これからも一緒にいていいですか?」
聞き慣れたはずの答えなのに、胸が不安になるたび、また聞いてしまう。
でも彼は、変わらぬまっすぐな目で僕を見つめて、ゆっくりと言った。
「ずっと、俺のものだろ?……離せるわけない」
その言葉に、ふっと笑ってしまった。
安心して、嬉しくて、こんなふうに心から笑える自分がいることに、少し驚いた。
そのときだった。
枕元に置かれていた、小さな箱を蒼佑さんが手に取った。
「これ、渡そうと思ってた。……返事は急がなくていい。でも、俺はもう決めてる」
差し出された箱には、静かに並ぶ小さなペアリング。
一瞬、息が止まった。
「永遠なんて言葉、信じないって思ってた。でも……翼となら、信じてみてもいいって、思えたんだ」
胸の奥から、熱が溢れてくる。言葉にならなくて、ただ頷くしかなかった。
「……僕も、そう思います。……蒼佑さんとなら、きっと永遠に繋がっていられるって」
蒼佑さんは静かに笑って、僕の薬指にそっと指輪を通してくれた。
ぴたりと収まるその重みが、どこまでも優しくて、どこまでも深かった。
それは、「誓い」の瞬間だった。
心も身体も、全部を預けたその先に……僕たちは、ひとつの愛の形に、たどり着いたんだ。
彼の存在は、僕にとってただの「大切な人」ではなく、空気のように、心の中で息をするすべてのものに変わりつつあった。
毎日がどこか非現実的に感じがするけれど、彼といるだけで世界が幸せに満たされる。
言葉では到底表せないその感情が、ひたすら強く、そして温かく僕を包んでいた。
彼と交わすすべての時間が、まるで心の底から求めていたものを全て与えられているような錯覚をもたらしていた。
目を覚ますと、蒼佑さんが静かに隣で眠っていた。
その寝顔は、普段の彼の冷徹な一面とは裏腹に、無防備で、どこか温かく、心を締め付けられるような安心感を与えてくれる。
……こんなにも彼の存在が大きくなっていることに気づいた瞬間、胸の奥が、じんわりと熱を帯びた。
あぁ、もう俺は、この人に依存している。
でも、それが怖くない……それどころか、今この瞬間こそが、自分の帰る場所なんだと、心の底から思える。誰にも触れられたくない、誰にも邪魔されたくない。
蒼佑さんの腕の中が、俺の居場所なんだって、ようやく素直に思えた。
「……おはよう、蒼佑さん」
俺の声に、彼はゆっくりと目を開けた。
微笑むその顔が、眩しいほどに優しくて……嬉しくて、息が詰まりそうだった。
「……僕、たまに思うんです」
布団の中で、小さく呟いた。
「もしあのとき……蒼佑さんに出会わなければ、きっと今も、誰かを信じることなんてできなかった」
蒼佑さんは何も言わず、僕の手をそっと取って、自分の胸に当てる。
その鼓動が、静かに、でも確かに伝わってくる。まるで彼の想いそのものみたいに。
「お前のためなら、何度でも繰り返すよ。……逃げられたって、何度でも、見つけてやる」
低く、確かな声。その言葉が、僕の心の中に静かに根を張っていく。
それでも、不安は消えなくて。
「蒼佑さん……僕、これからも一緒にいていいですか?」
聞き慣れたはずの答えなのに、胸が不安になるたび、また聞いてしまう。
でも彼は、変わらぬまっすぐな目で僕を見つめて、ゆっくりと言った。
「ずっと、俺のものだろ?……離せるわけない」
その言葉に、ふっと笑ってしまった。
安心して、嬉しくて、こんなふうに心から笑える自分がいることに、少し驚いた。
そのときだった。
枕元に置かれていた、小さな箱を蒼佑さんが手に取った。
「これ、渡そうと思ってた。……返事は急がなくていい。でも、俺はもう決めてる」
差し出された箱には、静かに並ぶ小さなペアリング。
一瞬、息が止まった。
「永遠なんて言葉、信じないって思ってた。でも……翼となら、信じてみてもいいって、思えたんだ」
胸の奥から、熱が溢れてくる。言葉にならなくて、ただ頷くしかなかった。
「……僕も、そう思います。……蒼佑さんとなら、きっと永遠に繋がっていられるって」
蒼佑さんは静かに笑って、僕の薬指にそっと指輪を通してくれた。
ぴたりと収まるその重みが、どこまでも優しくて、どこまでも深かった。
それは、「誓い」の瞬間だった。
心も身体も、全部を預けたその先に……僕たちは、ひとつの愛の形に、たどり着いたんだ。
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※執着王子様攻めがメインですが、総受け、愛され要素多分に含みます
朝or夜(時間未定)1話更新予定です。
1話が長くなってしまった場合、分割して2話更新する場合もあります。
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