鬼上司と秘密の同居

なの

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お義母さんに伝えたい

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「はじめまして、いらっしゃい」
奥から華奢な男性が紅茶を持って入ってきた。

「私の公私ともにパートナーのひかるです。彼も手伝ってくれてるんです」

「よろしくお願いします」
堂々としている2人を見て羨ましくもあり、僕もいつかは透さんの横に堂々と並びたいと思った。

それから生地の見本を見たり、色を選んだり、ボタンを選んだりと…初めてのことばかりで僕は緊張していた。採寸をしてもらうことになったのだが、少し広めのフィッティングルームに林さんと晃さんと3人でいて、僕は緊張のあまり肩に力が入ってしまった。林さんが、緊張しないでも大丈夫だよと声をかけてくれたが、どうにも肩に力が入ってしまった。ちょっと待ってね。と言われ待ってると、2人の替わりに入ってきた透さんにギュッと抱きしめられた。
「林さんが海斗を抱きしめてやれって。緊張でガチガチで、いい採寸ができないってさ」

「すみません」

「そりゃ慣れてないし、緊張してるだろうけど大丈夫だから。心配しなくていいよ。まぁ俺も心配だったんだけどな」
唇にそっと口づけを落としてもらって結局、透さんも一緒に中にいてもらった。雑談しながらも林さんは僕の肩幅や首周り、太ももなど図ってくれて、その寸法を晃さんがメモしていく。

「2人はお似合いですね。出来上がりが楽しみです」と晃さんに声をかけてもらい嬉しかった。
透さんもおそろいのスーツを作ってもらうことになり、そのまま採寸してもらった。

「最終調整は来月中旬ころに来てください」と林さんに声をかけられた。

透さんがオーダーメイドのスーツは身体にフィットして着心地がぜんぜん違うから、出来上がりが楽しみだな。と言われて、初めてのフルオーダーメイドスーツが嬉しかった。

「お義母さん、ありがとうございます」

「海斗くんのためだもの。楽しみだわ。透、先に車戻ってて」
林さん、晃さんにお礼を言って、透さんと先に車に戻った。

「次は叔父さんの所だけど海斗、大丈夫か?もし色々思い出すんだったら違う店でも…」

「透さん、あれからハンバーグも作ってますし大丈夫ですよ。本当にあの時は子供みたいですみません」

「悪い、思い出させてしまったな」
その時ドアが開いて、お義母さんが車に乗ってきた。

「なになに、何の話?海斗くん大丈夫?」

「大丈夫です。里中さんのお店ハンバーグが有名ですよねって話てて…」

「ハンバーグ…ね。私はオムライスのほうが好きよ。デミグラスがかかったのとか、チーズソース、そうそうエビのトマトクリームソースっていうのもあったわね。でも一番はデザートのクレームブリュレかしら」

「お袋、そんなに食べに行ってるのか?」

「たまによ。でもあそこの雰囲気が好きなよ」
そんな話しをしていたら、あのログハウス風の建物が見えてきた。そういえばあの時、透さんが社長の息子だと教えてもらったんだ。あの時と同じように、たくさんのお花が咲いていた。

「いらっしゃい」里中さんが出迎えてくれた。この前、会ったばかりだけど、お店で見る里中さんは別人のように生き生きしていた。

前に来たときにも座った奥の席に座ると、メニュー表と、レモン水を持って来てくれた。
お義母さんの言っていたオムライスも美味しそうだし、前回食べれなかったハンバーグも食べてみたい。つい悩んでいると

「両方乗ってるのがあるぞ」と透さんに言われてみるとハンバーグ・オムライスというメニューが…
「僕、これにします」

「海斗くんデザートは?色々あるけど」

「クレームブリュレにします」

「飲み物は紅茶?ジュース?」

「オレンジジュースにします」
里中さんはみんなの注文を聞くと厨房に戻っていった。

「そういえば海斗くんはパーティーの実行委員なんだって?みんな透との関係を知らない人ばかりだけど、なにかあったら角谷さんに報告していいからね。1人で抱えちゃ駄目だからね」
本当にお義母さんは優しくて、つい自分の母親の姿を思い出してしまう。
僕はまだ、自分の生い立ちを透さんの両親に伝えていない。タイミングを逃してしまったのもあるが…

「お義母さん…僕の話を聞いてもらえますか?」

「え?海斗くんの?どうしたの?」

「僕の両親は…」

「海斗、無理しなくても」

「ううん。だってお義母さんは僕のお義母さんだから…僕のこと全部知ってほしい。ほしくなった。だから…」
僕はお義母さんに話始めた。

小学校の副校長の父と養護教諭の母に可愛がられて育ったこと。
でも6年生の時、海で父と溺れて僕は助かったけど、父は意識不明で次の年に亡くなったこと。母はお酒に溺れ、身体を壊し病院で亡くなったこと。

「僕が、海に行きたいって言わなければ…父は死なずにすんだかもしれません。母もお酒に溺れることも…だから僕は幸せになっちゃいけないって思ってました。でも…透さんが幸せになっていいって…言ってくれて…」

「辛かったね。そんな小さい頃から…でもね、海斗くんは私の大事な子供よ。透と変わらないくらい。だからいつでも私に甘えてくれていいんだからね。透、本当に海斗くん幸せにしないと許さないからね。でも辛いのに話してくれてありがとう。無理させちゃったかしら」

「いえ…すみません。こんな話…でもお義母さんには僕のこと知っててほしくて…」
両親の話をしてから、ずっと背中を撫でてくれる透さんの手が温かくて涙が溢れた。


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