61 / 105
お義母さんに伝えたい
しおりを挟む
「はじめまして、いらっしゃい」
奥から華奢な男性が紅茶を持って入ってきた。
「私の公私ともにパートナーの晃です。彼も手伝ってくれてるんです」
「よろしくお願いします」
堂々としている2人を見て羨ましくもあり、僕もいつかは透さんの横に堂々と並びたいと思った。
それから生地の見本を見たり、色を選んだり、ボタンを選んだりと…初めてのことばかりで僕は緊張していた。採寸をしてもらうことになったのだが、少し広めのフィッティングルームに林さんと晃さんと3人でいて、僕は緊張のあまり肩に力が入ってしまった。林さんが、緊張しないでも大丈夫だよと声をかけてくれたが、どうにも肩に力が入ってしまった。ちょっと待ってね。と言われ待ってると、2人の替わりに入ってきた透さんにギュッと抱きしめられた。
「林さんが海斗を抱きしめてやれって。緊張でガチガチで、いい採寸ができないってさ」
「すみません」
「そりゃ慣れてないし、緊張してるだろうけど大丈夫だから。心配しなくていいよ。まぁ俺も心配だったんだけどな」
唇にそっと口づけを落としてもらって結局、透さんも一緒に中にいてもらった。雑談しながらも林さんは僕の肩幅や首周り、太ももなど図ってくれて、その寸法を晃さんがメモしていく。
「2人はお似合いですね。出来上がりが楽しみです」と晃さんに声をかけてもらい嬉しかった。
透さんもおそろいのスーツを作ってもらうことになり、そのまま採寸してもらった。
「最終調整は来月中旬ころに来てください」と林さんに声をかけられた。
透さんがオーダーメイドのスーツは身体にフィットして着心地がぜんぜん違うから、出来上がりが楽しみだな。と言われて、初めてのフルオーダーメイドスーツが嬉しかった。
「お義母さん、ありがとうございます」
「海斗くんのためだもの。楽しみだわ。透、先に車戻ってて」
林さん、晃さんにお礼を言って、透さんと先に車に戻った。
「次は叔父さんの所だけど海斗、大丈夫か?もし色々思い出すんだったら違う店でも…」
「透さん、あれからハンバーグも作ってますし大丈夫ですよ。本当にあの時は子供みたいですみません」
「悪い、思い出させてしまったな」
その時ドアが開いて、お義母さんが車に乗ってきた。
「なになに、何の話?海斗くん大丈夫?」
「大丈夫です。里中さんのお店ハンバーグが有名ですよねって話てて…」
「ハンバーグ…ね。私はオムライスのほうが好きよ。デミグラスがかかったのとか、チーズソース、そうそうエビのトマトクリームソースっていうのもあったわね。でも一番はデザートのクレームブリュレかしら」
「お袋、そんなに食べに行ってるのか?」
「たまによ。でもあそこの雰囲気が好きなよ」
そんな話しをしていたら、あのログハウス風の建物が見えてきた。そういえばあの時、透さんが社長の息子だと教えてもらったんだ。あの時と同じように、たくさんのお花が咲いていた。
「いらっしゃい」里中さんが出迎えてくれた。この前、会ったばかりだけど、お店で見る里中さんは別人のように生き生きしていた。
前に来たときにも座った奥の席に座ると、メニュー表と、レモン水を持って来てくれた。
お義母さんの言っていたオムライスも美味しそうだし、前回食べれなかったハンバーグも食べてみたい。つい悩んでいると
「両方乗ってるのがあるぞ」と透さんに言われてみるとハンバーグ・オムライスというメニューが…
「僕、これにします」
「海斗くんデザートは?色々あるけど」
「クレームブリュレにします」
「飲み物は紅茶?ジュース?」
「オレンジジュースにします」
里中さんはみんなの注文を聞くと厨房に戻っていった。
「そういえば海斗くんはパーティーの実行委員なんだって?みんな透との関係を知らない人ばかりだけど、なにかあったら角谷さんに報告していいからね。1人で抱えちゃ駄目だからね」
本当にお義母さんは優しくて、つい自分の母親の姿を思い出してしまう。
僕はまだ、自分の生い立ちを透さんの両親に伝えていない。タイミングを逃してしまったのもあるが…
「お義母さん…僕の話を聞いてもらえますか?」
「え?海斗くんの?どうしたの?」
「僕の両親は…」
「海斗、無理しなくても」
「ううん。だってお義母さんは僕のお義母さんだから…僕のこと全部知ってほしい。ほしくなった。だから…」
僕はお義母さんに話始めた。
小学校の副校長の父と養護教諭の母に可愛がられて育ったこと。
でも6年生の時、海で父と溺れて僕は助かったけど、父は意識不明で次の年に亡くなったこと。母はお酒に溺れ、身体を壊し病院で亡くなったこと。
「僕が、海に行きたいって言わなければ…父は死なずにすんだかもしれません。母もお酒に溺れることも…だから僕は幸せになっちゃいけないって思ってました。でも…透さんが幸せになっていいって…言ってくれて…」
「辛かったね。そんな小さい頃から…でもね、海斗くんは私の大事な子供よ。透と変わらないくらい。だからいつでも私に甘えてくれていいんだからね。透、本当に海斗くん幸せにしないと許さないからね。でも辛いのに話してくれてありがとう。無理させちゃったかしら」
「いえ…すみません。こんな話…でもお義母さんには僕のこと知っててほしくて…」
両親の話をしてから、ずっと背中を撫でてくれる透さんの手が温かくて涙が溢れた。
奥から華奢な男性が紅茶を持って入ってきた。
「私の公私ともにパートナーの晃です。彼も手伝ってくれてるんです」
「よろしくお願いします」
堂々としている2人を見て羨ましくもあり、僕もいつかは透さんの横に堂々と並びたいと思った。
それから生地の見本を見たり、色を選んだり、ボタンを選んだりと…初めてのことばかりで僕は緊張していた。採寸をしてもらうことになったのだが、少し広めのフィッティングルームに林さんと晃さんと3人でいて、僕は緊張のあまり肩に力が入ってしまった。林さんが、緊張しないでも大丈夫だよと声をかけてくれたが、どうにも肩に力が入ってしまった。ちょっと待ってね。と言われ待ってると、2人の替わりに入ってきた透さんにギュッと抱きしめられた。
「林さんが海斗を抱きしめてやれって。緊張でガチガチで、いい採寸ができないってさ」
「すみません」
「そりゃ慣れてないし、緊張してるだろうけど大丈夫だから。心配しなくていいよ。まぁ俺も心配だったんだけどな」
唇にそっと口づけを落としてもらって結局、透さんも一緒に中にいてもらった。雑談しながらも林さんは僕の肩幅や首周り、太ももなど図ってくれて、その寸法を晃さんがメモしていく。
「2人はお似合いですね。出来上がりが楽しみです」と晃さんに声をかけてもらい嬉しかった。
透さんもおそろいのスーツを作ってもらうことになり、そのまま採寸してもらった。
「最終調整は来月中旬ころに来てください」と林さんに声をかけられた。
透さんがオーダーメイドのスーツは身体にフィットして着心地がぜんぜん違うから、出来上がりが楽しみだな。と言われて、初めてのフルオーダーメイドスーツが嬉しかった。
「お義母さん、ありがとうございます」
「海斗くんのためだもの。楽しみだわ。透、先に車戻ってて」
林さん、晃さんにお礼を言って、透さんと先に車に戻った。
「次は叔父さんの所だけど海斗、大丈夫か?もし色々思い出すんだったら違う店でも…」
「透さん、あれからハンバーグも作ってますし大丈夫ですよ。本当にあの時は子供みたいですみません」
「悪い、思い出させてしまったな」
その時ドアが開いて、お義母さんが車に乗ってきた。
「なになに、何の話?海斗くん大丈夫?」
「大丈夫です。里中さんのお店ハンバーグが有名ですよねって話てて…」
「ハンバーグ…ね。私はオムライスのほうが好きよ。デミグラスがかかったのとか、チーズソース、そうそうエビのトマトクリームソースっていうのもあったわね。でも一番はデザートのクレームブリュレかしら」
「お袋、そんなに食べに行ってるのか?」
「たまによ。でもあそこの雰囲気が好きなよ」
そんな話しをしていたら、あのログハウス風の建物が見えてきた。そういえばあの時、透さんが社長の息子だと教えてもらったんだ。あの時と同じように、たくさんのお花が咲いていた。
「いらっしゃい」里中さんが出迎えてくれた。この前、会ったばかりだけど、お店で見る里中さんは別人のように生き生きしていた。
前に来たときにも座った奥の席に座ると、メニュー表と、レモン水を持って来てくれた。
お義母さんの言っていたオムライスも美味しそうだし、前回食べれなかったハンバーグも食べてみたい。つい悩んでいると
「両方乗ってるのがあるぞ」と透さんに言われてみるとハンバーグ・オムライスというメニューが…
「僕、これにします」
「海斗くんデザートは?色々あるけど」
「クレームブリュレにします」
「飲み物は紅茶?ジュース?」
「オレンジジュースにします」
里中さんはみんなの注文を聞くと厨房に戻っていった。
「そういえば海斗くんはパーティーの実行委員なんだって?みんな透との関係を知らない人ばかりだけど、なにかあったら角谷さんに報告していいからね。1人で抱えちゃ駄目だからね」
本当にお義母さんは優しくて、つい自分の母親の姿を思い出してしまう。
僕はまだ、自分の生い立ちを透さんの両親に伝えていない。タイミングを逃してしまったのもあるが…
「お義母さん…僕の話を聞いてもらえますか?」
「え?海斗くんの?どうしたの?」
「僕の両親は…」
「海斗、無理しなくても」
「ううん。だってお義母さんは僕のお義母さんだから…僕のこと全部知ってほしい。ほしくなった。だから…」
僕はお義母さんに話始めた。
小学校の副校長の父と養護教諭の母に可愛がられて育ったこと。
でも6年生の時、海で父と溺れて僕は助かったけど、父は意識不明で次の年に亡くなったこと。母はお酒に溺れ、身体を壊し病院で亡くなったこと。
「僕が、海に行きたいって言わなければ…父は死なずにすんだかもしれません。母もお酒に溺れることも…だから僕は幸せになっちゃいけないって思ってました。でも…透さんが幸せになっていいって…言ってくれて…」
「辛かったね。そんな小さい頃から…でもね、海斗くんは私の大事な子供よ。透と変わらないくらい。だからいつでも私に甘えてくれていいんだからね。透、本当に海斗くん幸せにしないと許さないからね。でも辛いのに話してくれてありがとう。無理させちゃったかしら」
「いえ…すみません。こんな話…でもお義母さんには僕のこと知っててほしくて…」
両親の話をしてから、ずっと背中を撫でてくれる透さんの手が温かくて涙が溢れた。
443
あなたにおすすめの小説
今日もBL営業カフェで働いています!?
卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ
※ 不定期更新です。
借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます
なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。
そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。
「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」
脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……!
高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!?
借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。
冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!?
短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。
黒の執愛~黒い弁護士に気を付けろ~
ひなた翠
BL
小野寺真弥31歳。
転職して三か月。恋人と同じ職場で中途採用の新人枠で働くことに……。
朝から晩まで必死に働く自分と、真逆に事務所のトップ2として悠々自適に仕事をこなす恋人の小林豊28歳。
生活のリズムも合わず……年下ワンコ攻め小林に毎晩のように求められてーー。
どうしたらいいのかと迷走する真弥をよそに、熱すぎる想いをぶつけてくる小林を拒めなくて……。
忙しい大人の甘いオフィスラブ。
フジョッシーさんの、オフィスラブのコンテスト参加作品です。
アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました
あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」
穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン
攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?
攻め:深海霧矢
受け:清水奏
前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。
ハピエンです。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
自己判断で消しますので、悪しからず。
猫カフェの溺愛契約〜獣人の甘い約束〜
なの
BL
人見知りの悠月――ゆづきにとって、叔父が営む保護猫カフェ「ニャンコの隠れ家」だけが心の居場所だった。
そんな悠月には昔から猫の言葉がわかる――という特殊な能力があった。
しかし経営難で閉店の危機に……
愛する猫たちとの別れが迫る中、運命を変える男が現れた。
猫のような美しい瞳を持つ謎の客・玲音――れお。
彼が差し出したのは「店を救う代わりに、お前と契約したい」という甘い誘惑。
契約のはずが、いつしか年の差を超えた溺愛に包まれて――
甘々すぎる生活に、だんだんと心が溶けていく悠月。
だけど玲音には秘密があった。
満月の夜に現れる獣の姿。猫たちだけが知る彼の正体、そして命をかけた契約の真実
「君を守るためなら、俺は何でもする」
これは愛なのか契約だけなのか……
すべてを賭けた禁断の恋の行方は?
猫たちが見守る小さなカフェで紡がれる、奇跡のハッピーエンド。
若頭の溺愛は、今日も平常運転です
なの
BL
『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』続編!
過保護すぎる若頭・鷹臣との同棲生活にツッコミが追いつかない毎日を送る幼なじみの相良悠真。
ホットミルクに外出禁止、舎弟たちのニヤニヤ見守り付き(?)ラブコメ生活はいつだって騒がしく、でもどこかあったかい。
だけどそんな日常の中で、鷹臣の覚悟に触れ、悠真は気づく。
……俺も、ちゃんと応えたい。
笑って泣けて、めいっぱい甘い!
騒がしくて幸せすぎる、ヤクザとツッコミ男子の結婚一直線ラブストーリー!
※前作『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』を読んでからの方が、より深く楽しめます。
ハイスペックストーカーに追われています
たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!!
と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。
完結しました。
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる