キミと2回目の恋をしよう

なの

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2話

部屋に入るなり
「先輩、どこか痛いんですか?」
顔を顰めてまるで自分も痛いみたいな顔をして聞いてきた。

「いや…少し頭が…」
と言った途端、起きてたらダメじゃないですか横になってくださいねとリクライニングを元に戻された。
「あの……」
と声をかけた俺の声を遮って

「ごめんね。康太くんこの子、記憶がないみたいなの」

「えっ?記憶が?」

「うん。自分の名前も、もちろん私のことも康太くんのことも何も覚えてないみたいで…だから…」
俺の今の現実を聞かされると康太くんと呼ばれた彼は一気に顔面蒼白になって絶望した顔に変わった。

「悪いけど何も分からなくて…」
そう声をかけたが康太くんと呼ばれた男はただ肩を落として冷たそうな床をただ見つめていた。

「康太くん、昴は家に連れて帰るから、こんなんじゃ辛いでしょ?悪いけど職場には言っておいてくれる?いつ記憶が戻るかわからないけど、こんな状態じゃ仕事だっていけそうもないから…」
なんとなく察するに、この康太くんは俺の後輩?そして職場が一緒なのだろう。そういえば…俺は手を伸ばしてファイルを手にして康太くんに差し出した。

「なんだかわからないけど、康太くんわかる?」
康太くんはそのファイルを開くと先輩が持ってたっんですね。とホッとした笑顔を見せてくれた。その笑顔に俺は目が離せなくなった。

「お母さん、先輩は俺が連れて帰ります。元いた場所の方が思い出す可能性もあると思うし…荷物もたくさんあるんで…」

「そう?もし大変なら言ってね。連れて帰るから」

「先輩、あっ…俺の名前もわからないですよね。相澤 康太って言います。健康の康に太いって書きます」

「相澤康太…悪いが何も思い出せないわ」

「いえっ…いいんです。すみません」

「いや…こっちこそ」
そんなお互いに言ってると母親が
「あとは2人で話しなさい。いつ記憶が戻るのかもわかんないけどさ。じゃあまたあとで来るから。康太くんよろしくね」
「わかりました」
そう言って俺の母親が部屋を出て行くときに康太くんは何か話してから戻ってきた。

「座ったら?」
ずっと部屋の隅で立っている彼に声をかけると近づいてきて椅子に座った。俺もさっきよりは痛くなくて起き上がった。
「大丈夫ですか無理して起き上がらなくても……」

「大丈夫。さっきよりはマシだから、それよりも何も知らないいしわからないから教えてくれる?」

「あっはい」
そう言って彼は話出した。

高校が一緒だったらしい。俺の2個下しかも俺の弟と同級生だった。俺は水泳部で彼も水泳部で入ってきたと。
「新入部員への部活紹介の時に先輩が泳いだんです。その時、とっても気持ちよさそうに泳いでて…上がってきたらカッコよくてみんな憧れてたんですよ。俺も小さい頃から水泳やってたんで元々水泳部に入ろうと思ってたんですが先輩の泳ぎ見てやる気が出たっていうか…」

「そうなんだ。でも俺…水泳やってた身体には見えないな。康太くん……いや相澤くんって呼んでもいいかな?なんか何も分からないのに下の名前っていうのも……」
そう言うと、そうですよねっと肩を落としてしまった。

「ごめん……なんか…」

「大丈夫です。あぁそうそう先輩は元々水泳をやってたわけじゃなかったみたいなんです。同じクラスにいた水泳部の部長に存続の危機だって言われて多少なら泳げるからって入ってあげたって聞いたことがあります」
相澤くんはワイシャツの上から見てもわかるほど肩幅も広くて胸板も厚そうだ。それに比べて俺は…触ったみた感じだがなんだこの身体、細いし背もそれほど高くは見えない。

「お人よしなんだな俺って」

「はい…ってすみません」

「…で?職場も一緒なのか?」

「はい。大学も先輩と一緒のとこに行ったんです。先輩とは高校の時から仲良くさせてもらってたんで、俺が就職先で悩んでたとき先輩が会社のこと教えてくれて…応募したら受かったんです。今ゲームを作ってる会社で働いてるんですが先輩はその中でもプロジェクトリーダーでもあって会社になくてはならない存在で…ってごめんなさい」
シュンと声が聞こえてきそうなほど肩を落として項垂れていた。

「悪いな。今の俺には何もできないわ。何も思い出せないからさ。ところで俺はどうして病院にいるかわかる?」

「あっはい。昨日、歩道橋から落ちてしまってその時に足を捻挫して少し頭を打ったみたいで意識がなかったって聞いてます」

「そうなんだ。でも今の俺には何の用事だったのかわからないわ」

「そうですよね…あの先輩と俺は一緒に住んでたんですけど退院したら、また共同生活になりますがいいですか?」

「一緒に……住んでた?」
すると相澤くんは教えてくれた。
「それは…俺が住んでたマンションが大学と会社の中間なんです」
大学生になって両親の離婚をきっかけに相澤くんは1人暮らしを始めたらしい。俺は大学の頃からちょくちょく遊びには行っていたらしく就職すると実家より乗り換えなしで職場に行けることを知ってそのまま相澤くんの家に転がり込んで一緒に住んでいたらしい。

「図々しいやつなんだな俺って…でも一緒に住んでたんなら行くしかなんだよな?」

「はい。荷物もあるし…って嫌ですよね。実家に帰りますか?」
置いて行かれた子どものように寂しそうな顔をした相澤がなんだか可愛いと思ってしまってつい笑ってしまった。

「いや、荷物の移動するのも面倒だからさ。いいよそのままで」
そう言うと人懐っこそうな笑みを浮かべて退院したらお祝いしましょうね。先輩は何食べたいですか?と言い出したが、俺は正直、食欲がなくて苦笑いをしてしまった。

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