4 / 6
第4話「現実世界に、王子様がログインしました」
しおりを挟む
あの不思議な体験から、一週間が過ぎた。
俺――悠真の生活は、表向きには何一つ変わっていない。相変わらず大学の講義には誰とも話さず出席。
コミュ障の根暗大学生。それが俺だ。
しかし、たった一つ。世界が決定的に変わってしまったことがある。
毎晩、恐る恐るパソコンを起動すると、デスクトップの右下に、あの時と同じデフォルメされたリオネルのアイコンがちょこんと表示されているのだ。クリックすると、ふきだしがポップアップする。
『ユウマ、今日も一日お疲れ様。君を愛しているよ』
「~~~っ!」
そのメッセージを目にするたび、俺は一人、薄暗い四畳半の部屋で顔を真っ赤にして身悶える。心臓はうるさいくらいに鳴り響き、口元はだらしなく緩みっぱなしだ。
――夢じゃ、なかった。
あの甘い言葉も、温かい腕も、すべてが本物だった。その事実だけが、味気ない毎日に鮮やかな色を与えてくれていた。俺はもう、ただのモブじゃない。異世界の王子様に愛されている、特別な存在なんだ。そんな、誰にも言えない秘密を抱きしめるだけで、明日を生きる活力が湧いてくる気がした。
そんなある日の夜だった。
いつものようにリオネルからのメッセージに胸をときめかせた後、『セレスティア・ハート』にログインしようとした、その瞬間。
ブツンッ、と音を立てて、画面が真っ暗になった。
「え?停電……いや、パソコンの電源は入ってる?」
次の瞬間、ディスプレイがバグったように激しく点滅し始める。意味不明の文字列が滝のように流れ落ち、耳障りなノイズがスピーカーから鳴り響いた。
【SYSTEM ERROR: World parameter unstable】
【WARNING: Coordinate axis XXX is overflowing...!!】
「なんだこれ、完全にイカれてる……!」
パニックになる俺の目の前で、画面に無理やりこじ開けられたようにウィンドウが出現した。そこに映し出されていたのは、血相を変えたミリアとノアの姿だった。
「大変ですわ、プレイヤーさん!とんでもないことになりました!」
「殿下の『悠真に会いたい』という想いが、ついにサーバーの許容量を超えて暴走を始めました!このままでは、時空座標が完全に歪んで、こちらの世界とそちらの世界の境界線が……!」
ノアの悲鳴じみた声と同時に、部屋の蛍光灯がバチバチと火花を散らしている。パソコン本体がガタガタと揺れ、ファンが悲鳴のような轟音を立て始めた。
「ちょ、え、爆発するの!?」
俺が身構えた瞬間――ディスプレイから、凄まじい光が溢れ出した。
視界が真っ白に染まる。何も見えない。何も聞こえない。
どれくらいの時間が経ったのか。
やがて光が収まり、恐る恐る目を開けた俺の目に飛び込んできたのは、信じがたい光景だった。
俺の、狭くて散らかった四畳半のアパートのど真ん中に、立っていた。
ゲームの中からそのまま抜け出してきたかのような、寸分の違いもない、本物のリオネル王子が。
陽光を編み込んだようなプラチナブロンド。空を閉じ込めたような碧眼。現実味のない完璧な美貌。
そしてその手には――なぜか、俺がさっきまで夕食としてかじっていた、コンビニのクリームパンが握られていた。
王子は、床に散らかった漫画雑誌も、積み上げられたエナジードリンクの空き缶も気にする様子なく、ただ、俺を見て完璧な笑顔でこう告げた。
「ユウマ、やっと会えたね」
あまりにもシュールすぎる光景。あまりにも場違いな推しの降臨。
感動よりも、驚きよりも先に、俺の口から飛び出したのは、魂からの絶叫だった。
「なんで俺のクリームパン持ってんだよぉぉぉぉぉ!!!!」
俺――悠真の生活は、表向きには何一つ変わっていない。相変わらず大学の講義には誰とも話さず出席。
コミュ障の根暗大学生。それが俺だ。
しかし、たった一つ。世界が決定的に変わってしまったことがある。
毎晩、恐る恐るパソコンを起動すると、デスクトップの右下に、あの時と同じデフォルメされたリオネルのアイコンがちょこんと表示されているのだ。クリックすると、ふきだしがポップアップする。
『ユウマ、今日も一日お疲れ様。君を愛しているよ』
「~~~っ!」
そのメッセージを目にするたび、俺は一人、薄暗い四畳半の部屋で顔を真っ赤にして身悶える。心臓はうるさいくらいに鳴り響き、口元はだらしなく緩みっぱなしだ。
――夢じゃ、なかった。
あの甘い言葉も、温かい腕も、すべてが本物だった。その事実だけが、味気ない毎日に鮮やかな色を与えてくれていた。俺はもう、ただのモブじゃない。異世界の王子様に愛されている、特別な存在なんだ。そんな、誰にも言えない秘密を抱きしめるだけで、明日を生きる活力が湧いてくる気がした。
そんなある日の夜だった。
いつものようにリオネルからのメッセージに胸をときめかせた後、『セレスティア・ハート』にログインしようとした、その瞬間。
ブツンッ、と音を立てて、画面が真っ暗になった。
「え?停電……いや、パソコンの電源は入ってる?」
次の瞬間、ディスプレイがバグったように激しく点滅し始める。意味不明の文字列が滝のように流れ落ち、耳障りなノイズがスピーカーから鳴り響いた。
【SYSTEM ERROR: World parameter unstable】
【WARNING: Coordinate axis XXX is overflowing...!!】
「なんだこれ、完全にイカれてる……!」
パニックになる俺の目の前で、画面に無理やりこじ開けられたようにウィンドウが出現した。そこに映し出されていたのは、血相を変えたミリアとノアの姿だった。
「大変ですわ、プレイヤーさん!とんでもないことになりました!」
「殿下の『悠真に会いたい』という想いが、ついにサーバーの許容量を超えて暴走を始めました!このままでは、時空座標が完全に歪んで、こちらの世界とそちらの世界の境界線が……!」
ノアの悲鳴じみた声と同時に、部屋の蛍光灯がバチバチと火花を散らしている。パソコン本体がガタガタと揺れ、ファンが悲鳴のような轟音を立て始めた。
「ちょ、え、爆発するの!?」
俺が身構えた瞬間――ディスプレイから、凄まじい光が溢れ出した。
視界が真っ白に染まる。何も見えない。何も聞こえない。
どれくらいの時間が経ったのか。
やがて光が収まり、恐る恐る目を開けた俺の目に飛び込んできたのは、信じがたい光景だった。
俺の、狭くて散らかった四畳半のアパートのど真ん中に、立っていた。
ゲームの中からそのまま抜け出してきたかのような、寸分の違いもない、本物のリオネル王子が。
陽光を編み込んだようなプラチナブロンド。空を閉じ込めたような碧眼。現実味のない完璧な美貌。
そしてその手には――なぜか、俺がさっきまで夕食としてかじっていた、コンビニのクリームパンが握られていた。
王子は、床に散らかった漫画雑誌も、積み上げられたエナジードリンクの空き缶も気にする様子なく、ただ、俺を見て完璧な笑顔でこう告げた。
「ユウマ、やっと会えたね」
あまりにもシュールすぎる光景。あまりにも場違いな推しの降臨。
感動よりも、驚きよりも先に、俺の口から飛び出したのは、魂からの絶叫だった。
「なんで俺のクリームパン持ってんだよぉぉぉぉぉ!!!!」
14
あなたにおすすめの小説
『君を幸せにする』と毎日プロポーズしてくるチート宮廷魔術師に、飽きられるためにOKしたら、なぜか溺愛が止まらない。
春凪アラシ
BL
「君を一生幸せにする」――その言葉が、これほど厄介だなんて思わなかった。
チート宮廷魔術師×うさぎ獣人の道具屋。
毎朝押しかけてプロポーズしてくる天才宮廷魔術師・シグに、うんざりしながらも返事をしてしまったうさぎ獣人の道具屋である俺・トア。
でもこれは恋人になるためじゃない、“一目惚れの幻想を崩し、幻滅させて諦めさせる作戦”のはずだった。
……なのに、なんでコイツ、飽きることなく俺の元に来るんだよ?
“うさぎ獣人らしくない俺”に、どうしてそんな真っ直ぐな目を向けるんだ――?
見た目も性格も不釣り合いなふたりが織りなす、ちょっと不器用な異種族BL。
同じ世界観の「「世界一美しい僕が、初恋の一目惚れ軍人に振られました」僕の辞書に諦めはないので全力で振り向かせます」を投稿してます!トアも出てくるので良かったらご覧ください✨
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
「お前を愛することはない」と言われたお飾りの妻ですが、何か?
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することはない!」「そんな事を言うために女性の寝室に押し入ったのですか? もう寝るつもりで化粧を落として髪をほどいて寝着に着替えてるのに! 最っ低!」
仕事大好き女が「お飾りの妻最高!」と恋愛感情無しで結婚したらこうなるよね、というお話。
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*本編完結しました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる