バグった恋愛ルートは、君だけを選ぶ

なの

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第4話「現実世界に、王子様がログインしました」

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あの不思議な体験から、一週間が過ぎた。
俺――悠真の生活は、表向きには何一つ変わっていない。相変わらず大学の講義には誰とも話さず出席。
コミュ障の根暗大学生。それが俺だ。

しかし、たった一つ。世界が決定的に変わってしまったことがある。

毎晩、恐る恐るパソコンを起動すると、デスクトップの右下に、あの時と同じデフォルメされたリオネルのアイコンがちょこんと表示されているのだ。クリックすると、ふきだしがポップアップする。

『ユウマ、今日も一日お疲れ様。君を愛しているよ』

「~~~っ!」

そのメッセージを目にするたび、俺は一人、薄暗い四畳半の部屋で顔を真っ赤にして身悶える。心臓はうるさいくらいに鳴り響き、口元はだらしなく緩みっぱなしだ。

――夢じゃ、なかった。
あの甘い言葉も、温かい腕も、すべてが本物だった。その事実だけが、味気ない毎日に鮮やかな色を与えてくれていた。俺はもう、ただのモブじゃない。異世界の王子様に愛されている、特別な存在なんだ。そんな、誰にも言えない秘密を抱きしめるだけで、明日を生きる活力が湧いてくる気がした。

そんなある日の夜だった。
いつものようにリオネルからのメッセージに胸をときめかせた後、『セレスティア・ハート』にログインしようとした、その瞬間。

ブツンッ、と音を立てて、画面が真っ暗になった。

「え?停電……いや、パソコンの電源は入ってる?」

次の瞬間、ディスプレイがバグったように激しく点滅し始める。意味不明の文字列が滝のように流れ落ち、耳障りなノイズがスピーカーから鳴り響いた。

【SYSTEM ERROR: World parameter unstable】
【WARNING: Coordinate axis XXX is overflowing...!!】

「なんだこれ、完全にイカれてる……!」

パニックになる俺の目の前で、画面に無理やりこじ開けられたようにウィンドウが出現した。そこに映し出されていたのは、血相を変えたミリアとノアの姿だった。

「大変ですわ、プレイヤーさん!とんでもないことになりました!」

「殿下の『悠真に会いたい』という想いが、ついにサーバーの許容量を超えて暴走を始めました!このままでは、時空座標が完全に歪んで、こちらの世界とそちらの世界の境界線が……!」

ノアの悲鳴じみた声と同時に、部屋の蛍光灯がバチバチと火花を散らしている。パソコン本体がガタガタと揺れ、ファンが悲鳴のような轟音を立て始めた。

「ちょ、え、爆発するの!?」

俺が身構えた瞬間――ディスプレイから、凄まじい光が溢れ出した。

視界が真っ白に染まる。何も見えない。何も聞こえない。
どれくらいの時間が経ったのか。

やがて光が収まり、恐る恐る目を開けた俺の目に飛び込んできたのは、信じがたい光景だった。

俺の、狭くて散らかった四畳半のアパートのど真ん中に、立っていた。
ゲームの中からそのまま抜け出してきたかのような、寸分の違いもない、本物のリオネル王子が。
陽光を編み込んだようなプラチナブロンド。空を閉じ込めたような碧眼。現実味のない完璧な美貌。

そしてその手には――なぜか、俺がさっきまで夕食としてかじっていた、コンビニのクリームパンが握られていた。

王子は、床に散らかった漫画雑誌も、積み上げられたエナジードリンクの空き缶も気にする様子なく、ただ、俺を見て完璧な笑顔でこう告げた。

「ユウマ、やっと会えたね」

あまりにもシュールすぎる光景。あまりにも場違いな推しの降臨。
感動よりも、驚きよりも先に、俺の口から飛び出したのは、魂からの絶叫だった。

「なんで俺のクリームパン持ってんだよぉぉぉぉぉ!!!!」


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