9 / 33
暴れる魔力と、掴まれた手
しおりを挟む
火球の魔法を使ったその日、俺はすっかり興奮していて、家に帰ってからもライガに質問攻めだった。
「じゃあ風の魔法って、扇風機みたいなこともできる?」
「できる」
「土を操れるってことは、耕したりも?」
「できる」
「水は……シャワーにもなる?」
「……なるが、風呂場は濡れる」
「なるほど、限界が見えた」
そんなやりとりをしながら、どこか子どもみたいにワクワクしていた。
翌朝。ライガの提案で、森の中の開けた場所に来ていた。
「今日は少し、応用に挑んでみるか」
「おお、ついに中級者編!?」
「……基本に忠実であれ。中級者こそ、足元をすくわれる」
真顔で言われて、ちょっと背筋が伸びる。
俺が挑戦するのは――“圧縮型風刃魔法”。
風を鋭く圧縮して、木の枝を切る程度の魔法。生活にも使えるけど、少し危ない。
「集中しろ。風は、ただの空気の流れではない。意志で形を与え、力を持たせろ」
「うん……わかった……!」
風の流れを感じる。手のひらに、イメージを集める。
するすると空気が集まってくる感覚。次第に、腕の奥が重く、熱を持ち始め――
「……っ!」
ドクン。
次の瞬間、魔力が弾けた。
風の刃が暴走し、木々の枝を無差別に斬り払っていく。
「やば――!止まれ、止まれっ!!」
焦れば焦るほど風が荒れ、
風圧で身体ごと後ろに持っていかれそうになる。
「――危ないッ!」
ドン、と何かが俺にぶつかる感触。次の瞬間、地面に倒れ込んでいた。
「……大丈夫か」
ライガの腕が、俺の身体を庇うように包んでいた。
「ご、ごめん……!」
「大丈夫だ。だが、今のは本当に危なかった。お前の魔力、思った以上に……圧が強い」
悔しかった。怖かった。
そして……自分が、自分じゃないみたいだった。
「……使いたくないかも。魔法」
「なぜだ」
「自分が制御できなくて、誰かを傷つけたらって思ったら……。俺、また……」
また、誰かを泣かせるかもしれない。あの日の、会社の上司の顔が頭をよぎる。
そのとき、ライガが俺の手をそっと握った。
「お前は、優しい。その優しさを恐れに変えるな」
「……でも」
「魔力は暴れる。だが、お前の心までは暴れていない。怖がってもいい。だが逃げるな。……お前の手は、俺が握ってる」
ぎゅっと、強く、でも壊さないように握られた手。
温かくて、まっすぐで、俺の中の震えを、少しずつ静めてくれた。
「……ありがと。もうちょっとだけ、頑張ってみる」
「それでいい。焦らず、進めばいい」
その日、魔法の訓練はそこで終わった。
でも……心のどこかで確信していた。
この村での生き方が、少しずつだけど、俺の中に根を張り始めているって。
「じゃあ風の魔法って、扇風機みたいなこともできる?」
「できる」
「土を操れるってことは、耕したりも?」
「できる」
「水は……シャワーにもなる?」
「……なるが、風呂場は濡れる」
「なるほど、限界が見えた」
そんなやりとりをしながら、どこか子どもみたいにワクワクしていた。
翌朝。ライガの提案で、森の中の開けた場所に来ていた。
「今日は少し、応用に挑んでみるか」
「おお、ついに中級者編!?」
「……基本に忠実であれ。中級者こそ、足元をすくわれる」
真顔で言われて、ちょっと背筋が伸びる。
俺が挑戦するのは――“圧縮型風刃魔法”。
風を鋭く圧縮して、木の枝を切る程度の魔法。生活にも使えるけど、少し危ない。
「集中しろ。風は、ただの空気の流れではない。意志で形を与え、力を持たせろ」
「うん……わかった……!」
風の流れを感じる。手のひらに、イメージを集める。
するすると空気が集まってくる感覚。次第に、腕の奥が重く、熱を持ち始め――
「……っ!」
ドクン。
次の瞬間、魔力が弾けた。
風の刃が暴走し、木々の枝を無差別に斬り払っていく。
「やば――!止まれ、止まれっ!!」
焦れば焦るほど風が荒れ、
風圧で身体ごと後ろに持っていかれそうになる。
「――危ないッ!」
ドン、と何かが俺にぶつかる感触。次の瞬間、地面に倒れ込んでいた。
「……大丈夫か」
ライガの腕が、俺の身体を庇うように包んでいた。
「ご、ごめん……!」
「大丈夫だ。だが、今のは本当に危なかった。お前の魔力、思った以上に……圧が強い」
悔しかった。怖かった。
そして……自分が、自分じゃないみたいだった。
「……使いたくないかも。魔法」
「なぜだ」
「自分が制御できなくて、誰かを傷つけたらって思ったら……。俺、また……」
また、誰かを泣かせるかもしれない。あの日の、会社の上司の顔が頭をよぎる。
そのとき、ライガが俺の手をそっと握った。
「お前は、優しい。その優しさを恐れに変えるな」
「……でも」
「魔力は暴れる。だが、お前の心までは暴れていない。怖がってもいい。だが逃げるな。……お前の手は、俺が握ってる」
ぎゅっと、強く、でも壊さないように握られた手。
温かくて、まっすぐで、俺の中の震えを、少しずつ静めてくれた。
「……ありがと。もうちょっとだけ、頑張ってみる」
「それでいい。焦らず、進めばいい」
その日、魔法の訓練はそこで終わった。
でも……心のどこかで確信していた。
この村での生き方が、少しずつだけど、俺の中に根を張り始めているって。
364
あなたにおすすめの小説
異世界へ下宿屋と共にトリップしたようで。
やの有麻
BL
山に囲まれた小さな村で下宿屋を営んでる倉科 静。29歳で独身。
昨日泊めた外国人を玄関の前で見送り家の中へ入ると、疲労が溜まってたのか急に眠くなり玄関の前で倒れてしまった。そして気付いたら住み慣れた下宿屋と共に異世界へとトリップしてしまったらしい!・・・え?どーゆうこと?
前編・後編・あとがきの3話です。1話7~8千文字。0時に更新。
*ご都合主義で適当に書きました。実際にこんな村はありません。
*フィクションです。感想は受付ますが、法律が~国が~など現実を突き詰めないでください。あくまで私が描いた空想世界です。
*男性出産関連の表現がちょっと入ってます。苦手な方はオススメしません。
僕だけの番
五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。
その中の獣人族にだけ存在する番。
でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。
僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。
それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。
出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。
そのうえ、彼には恋人もいて……。
後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。
【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件
表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。
病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。
この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。
しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。
ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。
強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。
これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。
甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。
本編完結しました。
続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください
小学生のゲーム攻略相談にのっていたつもりだったのに、小学生じゃなく異世界の王子さま(イケメン)でした(涙)
九重
BL
大学院修了の年になったが就職できない今どきの学生 坂上 由(ゆう) 男 24歳。
半引きこもり状態となりネットに逃げた彼が見つけたのは【よろず相談サイト】という相談サイトだった。
そこで出会ったアディという小学生? の相談に乗っている間に、由はとんでもない状態に引きずり込まれていく。
これは、知らない間に異世界の国家育成にかかわり、あげく異世界に召喚され、そこで様々な国家の問題に突っ込みたくない足を突っ込み、思いもよらぬ『好意』を得てしまった男の奮闘記である。
注:主人公は女の子が大好きです。それが苦手な方はバックしてください。
*ずいぶん前に、他サイトで公開していた作品の再掲載です。(当時のタイトル「よろず相談サイト」)
【完結】僕の異世界転生先は卵で生まれて捨てられた竜でした
エウラ
BL
どうしてこうなったのか。
僕は今、卵の中。ここに生まれる前の記憶がある。
なんとなく異世界転生したんだと思うけど、捨てられたっぽい?
孵る前に死んじゃうよ!と思ったら誰かに助けられたみたい。
僕、頑張って大きくなって恩返しするからね!
天然記念物的な竜に転生した僕が、助けて育ててくれたエルフなお兄さんと旅をしながらのんびり過ごす話になる予定。
突発的に書き出したので先は分かりませんが短い予定です。
不定期投稿です。
本編完結で、番外編を更新予定です。不定期です。
小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~
朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」
普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。
史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。
その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。
外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。
いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。
領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。
彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。
やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。
無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。
(この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)
2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。
ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。
異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。
二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。
しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。
再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。
最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。
はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。
2023.04.03
閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m
お待たせしています。
お待ちくださると幸いです。
2023.04.15
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
更新頻度が遅く、申し訳ないです。
今月中には完結できたらと思っています。
2023.04.17
完結しました。
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます!
すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる