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第6話:守る夜
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魔物騒ぎの夜。
家に戻ると、暖炉の火がいつもより心細げに揺れていた。
ゼルは黙って薪をくべ、湯を沸かす。大きな手つきが、なんだか頼もしい。
俺は濡れた服を着替えて、毛布にくるまる。体は震えてるのに、心は少し浮ついてる。
「……寒いか?」
「少し。でも、大丈夫」
ゼルは湯気の立つカップを渡してくれる。ハーブの甘い香りがふわりと広がる。
「飲め。体が温まる」
「ありがと……」
カップを握ると、手のひらの温もりがじんわり伝わる。
今日の森でのこと――ゼルの咆哮、尻尾で引き戻される感触、共鳴の白い光――が頭をよぎる。
無意識に、手を握り返す。
「ゼル。あのさ……」
「ん?」
「俺、本当に役に立ったの?魔力共鳴って」
ゼルは静かにうなずき、カップを置いて隣に座る。
「おまえがいると、力が倍になる。……いや、それ以上だ。心まで繋がる気がする」
「心まで……」
少し嬉しい。でも、同時に胸がざわつく。言葉が、ぽろっとこぼれた。
「でもさ、守られるばっかりじゃ……俺、弱いままなんじゃないかって。昔、親に『守られるのは弱い証拠だ』って言われてて……」
声が震える。子どもの頃の記憶が、雪のように冷たく蘇る。
ひとりぼっちで泣いてた日々。誰も守ってくれなかった孤独。
ゼルは俺の手を両手で包み、金色の瞳をまっすぐ向ける。
「弱くなどない。おまえは俺を強くする。それが、おまえの力だ。……守るのは、愛だからだ」
「愛……?」
「おまえが大切だから、守りたい。弱さじゃない。一生の絆だ」
その言葉に、刺が溶けていく。涙がにじむ。
「ゼルは……いつも俺を守ってくれるよね。森でも、里でも、朝も……」
「当然だ。おまえがいなければ、俺の人生に意味はない」
声が低くて、優しい。無意識に、俺はゼルの胸に寄りかかる。
シャツ越しに伝わる鼓動が、速い。
「……あったかい。ゼルのここ、好き」
「もっと近くに来い」
ゼルは獣形に戻り、巨大白狼の姿で俺を包み込んだ。ふわふわの毛並みに埋もれて、今日の恐怖が全部消えていく。雪のような白毛が頬をくすぐる。
ゴロゴロ……喉鳴らしが響き、振動が胸に染みる。
「ゼル……今日、怖かったよ。あの魔物の目、牙……俺、役立たずで……」
「すまん。守れなかったらと思うと……俺も怖かった。おまえを失うなんて、考えられない」
白狼の前脚が、そっと俺を抱く。巨大な体躯なのに、繊細に。
尻尾が腰に巻きつき、体温が全身に染み渡る。指で毛を梳かすと、ゼルが嬉しげに身をよじる。
「もっと撫でていい?」
「好きにしろ。おまえの手は落ち着く」
ふさふさの耳をくにくに。鼻先を撫でる。ゼルの息が甘く漏れる。
「ユナ……おまえの匂い、魔力の共鳴より心地よい」
「バカ……照れるよ」
しばらく、もふもふタイムを満喫。心が溶けていく。
ゆっくり、人型に戻ったゼル。銀髪が火明かりに輝き、金瞳が優しく細まる。
「ユナ」
指先が頬に触れ、そっと引き寄せられる。息が混じり、唇が重なる。
柔らかくて、甘くて、丁寧なキス。最初は触れるだけ。
ハーブの香りと、ゼルの温もりが溶け合う。少しずつ深く、舌先が絡む。
「ん……ゼル……」
小さく声が漏れる。ゼルは少し離れて、額を合わせる。
「好きだ、ユナ。おまえが、運命の番だ。一生、守る」
顔が熱い。心臓が爆発しそう。魔力の光が、二人を優しく包む。
「俺も……ゼルが、好き。大好き」
言葉が出た瞬間、すべてが繋がった。キスが再び、深く甘く。
暖炉の火がぱちりと弾ける。外では雪が静かに降り続く。
この夜、俺たちは本当の絆を結んだ。
もふもふの守護獣と、人間の少年。
これからも、一生、守り守られていく。
家に戻ると、暖炉の火がいつもより心細げに揺れていた。
ゼルは黙って薪をくべ、湯を沸かす。大きな手つきが、なんだか頼もしい。
俺は濡れた服を着替えて、毛布にくるまる。体は震えてるのに、心は少し浮ついてる。
「……寒いか?」
「少し。でも、大丈夫」
ゼルは湯気の立つカップを渡してくれる。ハーブの甘い香りがふわりと広がる。
「飲め。体が温まる」
「ありがと……」
カップを握ると、手のひらの温もりがじんわり伝わる。
今日の森でのこと――ゼルの咆哮、尻尾で引き戻される感触、共鳴の白い光――が頭をよぎる。
無意識に、手を握り返す。
「ゼル。あのさ……」
「ん?」
「俺、本当に役に立ったの?魔力共鳴って」
ゼルは静かにうなずき、カップを置いて隣に座る。
「おまえがいると、力が倍になる。……いや、それ以上だ。心まで繋がる気がする」
「心まで……」
少し嬉しい。でも、同時に胸がざわつく。言葉が、ぽろっとこぼれた。
「でもさ、守られるばっかりじゃ……俺、弱いままなんじゃないかって。昔、親に『守られるのは弱い証拠だ』って言われてて……」
声が震える。子どもの頃の記憶が、雪のように冷たく蘇る。
ひとりぼっちで泣いてた日々。誰も守ってくれなかった孤独。
ゼルは俺の手を両手で包み、金色の瞳をまっすぐ向ける。
「弱くなどない。おまえは俺を強くする。それが、おまえの力だ。……守るのは、愛だからだ」
「愛……?」
「おまえが大切だから、守りたい。弱さじゃない。一生の絆だ」
その言葉に、刺が溶けていく。涙がにじむ。
「ゼルは……いつも俺を守ってくれるよね。森でも、里でも、朝も……」
「当然だ。おまえがいなければ、俺の人生に意味はない」
声が低くて、優しい。無意識に、俺はゼルの胸に寄りかかる。
シャツ越しに伝わる鼓動が、速い。
「……あったかい。ゼルのここ、好き」
「もっと近くに来い」
ゼルは獣形に戻り、巨大白狼の姿で俺を包み込んだ。ふわふわの毛並みに埋もれて、今日の恐怖が全部消えていく。雪のような白毛が頬をくすぐる。
ゴロゴロ……喉鳴らしが響き、振動が胸に染みる。
「ゼル……今日、怖かったよ。あの魔物の目、牙……俺、役立たずで……」
「すまん。守れなかったらと思うと……俺も怖かった。おまえを失うなんて、考えられない」
白狼の前脚が、そっと俺を抱く。巨大な体躯なのに、繊細に。
尻尾が腰に巻きつき、体温が全身に染み渡る。指で毛を梳かすと、ゼルが嬉しげに身をよじる。
「もっと撫でていい?」
「好きにしろ。おまえの手は落ち着く」
ふさふさの耳をくにくに。鼻先を撫でる。ゼルの息が甘く漏れる。
「ユナ……おまえの匂い、魔力の共鳴より心地よい」
「バカ……照れるよ」
しばらく、もふもふタイムを満喫。心が溶けていく。
ゆっくり、人型に戻ったゼル。銀髪が火明かりに輝き、金瞳が優しく細まる。
「ユナ」
指先が頬に触れ、そっと引き寄せられる。息が混じり、唇が重なる。
柔らかくて、甘くて、丁寧なキス。最初は触れるだけ。
ハーブの香りと、ゼルの温もりが溶け合う。少しずつ深く、舌先が絡む。
「ん……ゼル……」
小さく声が漏れる。ゼルは少し離れて、額を合わせる。
「好きだ、ユナ。おまえが、運命の番だ。一生、守る」
顔が熱い。心臓が爆発しそう。魔力の光が、二人を優しく包む。
「俺も……ゼルが、好き。大好き」
言葉が出た瞬間、すべてが繋がった。キスが再び、深く甘く。
暖炉の火がぱちりと弾ける。外では雪が静かに降り続く。
この夜、俺たちは本当の絆を結んだ。
もふもふの守護獣と、人間の少年。
これからも、一生、守り守られていく。
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