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癒やしの光と、守り人の誓い
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数日後、僕はカイエンと共に、故郷であるクラウゼン公爵領へと降り立った。
かつて僕を拒絶し、出来損ないと罵ったこの土地は、まるで生命そのものを奪われたかのように荒廃していた。空はどんよりと淀み、雲が重く垂れ込めて、まるで希望を遮るように光を遮っていた。
土はひび割れて、風には乾いた匂いが混じり、かつて緑豊かだった畑は茶色く枯れ果てていた。民たちの顔には疲弊と絶望が刻まれ、かつての活気は影も形もなかった。
父の言葉通り、すべてが死に瀕しているようだった。僕はその光景を見て、胸が締め付けられるような切なさを感じた。こんなにも、僕がいなくなったことで……責任感と同時に、複雑な気持ちが胸をよぎった。
僕は父に連れられて領地の中心にある広場に立った。
集まった民たちは、最初は僕を訝しげに見つめたいた。無理もない。彼らにとって、僕は「無能」と噂され、公爵家の恥として追放された存在なのだから。
かつての記憶、冷たい視線や嘲笑の声が胸を刺した。でも、憎しみも悲しみも、もう僕の中にはなかった。過去は過去として、僕は今、別の場所で新たな居場所を見つけたのだから。
あの頃の僕とは、もう違う。カイエンが教えてくれた、僕の本当の価値を信じようと心の中で自分に言い聞かせた。
僕の隣に立つカイエンが万獣の王としての威厳を放ち、力強い声で宣言した。
「この者は、俺が魂を捧げた番。神子として再びこの地を照らすために戻ってきた」
その宣言に、ざわめきが広がった。民たちの瞳に、ほんのわずかだが光が宿るのを感じた。カイエンの存在が僕に勇気を与え、背筋を伸ばして立つ力をくれる。
君がいてくれるから、僕は頑張れる。
僕は目をそっと閉じた。かつて受けた傷を思い出す代わりに、この土地で優しくしてくれた人々の顔を心に浮かべた。厨房で笑顔を見せてくれた料理長さん。市場でハーブを褒めてくれた薬屋のおばさん。名も知らぬ子供が道端で小さな花をくれた記憶。彼らのために、そして僕を育んでくれたこの大地への純粋な感謝だけを胸に抱いた。今度は、僕が恩返しする番だ。
ありがとう。そして、もう一度、元気になって。そう強く願った瞬間、身体の中心から温かく、力強い光が溢れ出した。それは、一本の枯れ木を蘇らせた時とは比べ物にならない、圧倒的な【癒やしの波動】だった。
光は天へと昇り、やがて優しい雨のように領地全体へと降り注いだ。まるで、僕の心の浄化がそのまま形になったかのような、柔らかくも力強い輝きだった。僕の身体が熱くなり力が全身を駆け巡るのを感じた。
こんなに強い力が、僕の中に……自分でも驚くほどの力の奔流に身を委ねた。
光の雨に触れた民たちの顔から疲労と絶望の色が消えていった。その代わりに生気が戻っていく。枯れ果てた作物は、みるみるうちに青々とした葉を茂らせ、ひび割れた大地は再び潤いを取り戻した。
淀んでいた空気は浄化され、久しぶりに明るい陽光が雲間から差し込んだ。子供たちの笑い声が、風に乗り広場に響き渡った。その光景に僕の心は喜びで満たされ涙が頬を伝った。
「おお……奇跡だ!神子様が我らを救ってくださった!」
民たちはその場に跪き、涙ながらに感謝の祈りを捧げた。僕の父もまた静かに涙をこぼしていた。その瞳には後悔と、初めて僕を誇るような光が宿っていた。
かつて僕を捨てたその手が、今は震えながら祈りを捧げる姿に僕はただ静かに目を細めた。やっと僕を認めてくれたんだと複雑な気持ちが胸をよぎったが、怒りはもうなかった。
役目を終えた僕の手を、カイエンが力強く握りしめてくれた。彼の黄金の瞳が、誇らしげに細められた。僕はその視線に、ただ頷き返した。この瞬間、過去のすべてを乗り越え、僕は真の王妃として、ここに立っている。
故郷での役目を終え、僕たちは自分たちの城、祝福の森へと帰還した。僕たちの帰りを待っていたのは領民たちの熱狂的な歓迎だった。
「神子様、お帰りなさいませ!」
「万歳!」
その声に僕は心から安堵した。この土地こそが僕の本当の故郷。僕が愛し、そして僕を愛してくれる人たちがいる、かけがえのない場所。城の門をくぐる時、僕は深く息を吸って『ただいま』と心の中で呟いた。
その日の夕暮れ時、カイエンは僕を膝の上に座らせ、暖炉の前で一緒に炎を見つめていた。彼の大きな手が僕の白い兎耳をそっと撫でる。その触れ方は、まるで壊れ物を扱うように優しく、けれどどこか独占欲を隠しきれない熱を帯びていた。
「アルヴァ……もう二度と、お前を離さない」
彼の声は耳元で低く響き、僕の身体を震わせた。
「いつも側にいてくれるなら……僕も嬉しい……」
僕がそう呟くと、カイエンは満足げに息を吐き、僕の首筋に顔を埋めた。番の証があるその場所に、そっと額を寄せる。その温もりに僕の心は彼の愛で満たされていく。
「お前は、俺だけの神子だ。誰にも渡さない」
その言葉は、命令でもあり誓いでもあった。僕は、彼の胸の中で、ただ頷くことしかできなかった。この過保護なまでの愛情が、僕を縛る鎖ではなく、僕を守る盾であることを、ようやく理解し始めていたから。
暖炉の火が揺れる中、僕たちは互いの存在を確かめ合い、故郷での出来事を乗り越えた安堵と、これからの未来への希望を静かに分かち合っていた。
かつて僕を拒絶し、出来損ないと罵ったこの土地は、まるで生命そのものを奪われたかのように荒廃していた。空はどんよりと淀み、雲が重く垂れ込めて、まるで希望を遮るように光を遮っていた。
土はひび割れて、風には乾いた匂いが混じり、かつて緑豊かだった畑は茶色く枯れ果てていた。民たちの顔には疲弊と絶望が刻まれ、かつての活気は影も形もなかった。
父の言葉通り、すべてが死に瀕しているようだった。僕はその光景を見て、胸が締め付けられるような切なさを感じた。こんなにも、僕がいなくなったことで……責任感と同時に、複雑な気持ちが胸をよぎった。
僕は父に連れられて領地の中心にある広場に立った。
集まった民たちは、最初は僕を訝しげに見つめたいた。無理もない。彼らにとって、僕は「無能」と噂され、公爵家の恥として追放された存在なのだから。
かつての記憶、冷たい視線や嘲笑の声が胸を刺した。でも、憎しみも悲しみも、もう僕の中にはなかった。過去は過去として、僕は今、別の場所で新たな居場所を見つけたのだから。
あの頃の僕とは、もう違う。カイエンが教えてくれた、僕の本当の価値を信じようと心の中で自分に言い聞かせた。
僕の隣に立つカイエンが万獣の王としての威厳を放ち、力強い声で宣言した。
「この者は、俺が魂を捧げた番。神子として再びこの地を照らすために戻ってきた」
その宣言に、ざわめきが広がった。民たちの瞳に、ほんのわずかだが光が宿るのを感じた。カイエンの存在が僕に勇気を与え、背筋を伸ばして立つ力をくれる。
君がいてくれるから、僕は頑張れる。
僕は目をそっと閉じた。かつて受けた傷を思い出す代わりに、この土地で優しくしてくれた人々の顔を心に浮かべた。厨房で笑顔を見せてくれた料理長さん。市場でハーブを褒めてくれた薬屋のおばさん。名も知らぬ子供が道端で小さな花をくれた記憶。彼らのために、そして僕を育んでくれたこの大地への純粋な感謝だけを胸に抱いた。今度は、僕が恩返しする番だ。
ありがとう。そして、もう一度、元気になって。そう強く願った瞬間、身体の中心から温かく、力強い光が溢れ出した。それは、一本の枯れ木を蘇らせた時とは比べ物にならない、圧倒的な【癒やしの波動】だった。
光は天へと昇り、やがて優しい雨のように領地全体へと降り注いだ。まるで、僕の心の浄化がそのまま形になったかのような、柔らかくも力強い輝きだった。僕の身体が熱くなり力が全身を駆け巡るのを感じた。
こんなに強い力が、僕の中に……自分でも驚くほどの力の奔流に身を委ねた。
光の雨に触れた民たちの顔から疲労と絶望の色が消えていった。その代わりに生気が戻っていく。枯れ果てた作物は、みるみるうちに青々とした葉を茂らせ、ひび割れた大地は再び潤いを取り戻した。
淀んでいた空気は浄化され、久しぶりに明るい陽光が雲間から差し込んだ。子供たちの笑い声が、風に乗り広場に響き渡った。その光景に僕の心は喜びで満たされ涙が頬を伝った。
「おお……奇跡だ!神子様が我らを救ってくださった!」
民たちはその場に跪き、涙ながらに感謝の祈りを捧げた。僕の父もまた静かに涙をこぼしていた。その瞳には後悔と、初めて僕を誇るような光が宿っていた。
かつて僕を捨てたその手が、今は震えながら祈りを捧げる姿に僕はただ静かに目を細めた。やっと僕を認めてくれたんだと複雑な気持ちが胸をよぎったが、怒りはもうなかった。
役目を終えた僕の手を、カイエンが力強く握りしめてくれた。彼の黄金の瞳が、誇らしげに細められた。僕はその視線に、ただ頷き返した。この瞬間、過去のすべてを乗り越え、僕は真の王妃として、ここに立っている。
故郷での役目を終え、僕たちは自分たちの城、祝福の森へと帰還した。僕たちの帰りを待っていたのは領民たちの熱狂的な歓迎だった。
「神子様、お帰りなさいませ!」
「万歳!」
その声に僕は心から安堵した。この土地こそが僕の本当の故郷。僕が愛し、そして僕を愛してくれる人たちがいる、かけがえのない場所。城の門をくぐる時、僕は深く息を吸って『ただいま』と心の中で呟いた。
その日の夕暮れ時、カイエンは僕を膝の上に座らせ、暖炉の前で一緒に炎を見つめていた。彼の大きな手が僕の白い兎耳をそっと撫でる。その触れ方は、まるで壊れ物を扱うように優しく、けれどどこか独占欲を隠しきれない熱を帯びていた。
「アルヴァ……もう二度と、お前を離さない」
彼の声は耳元で低く響き、僕の身体を震わせた。
「いつも側にいてくれるなら……僕も嬉しい……」
僕がそう呟くと、カイエンは満足げに息を吐き、僕の首筋に顔を埋めた。番の証があるその場所に、そっと額を寄せる。その温もりに僕の心は彼の愛で満たされていく。
「お前は、俺だけの神子だ。誰にも渡さない」
その言葉は、命令でもあり誓いでもあった。僕は、彼の胸の中で、ただ頷くことしかできなかった。この過保護なまでの愛情が、僕を縛る鎖ではなく、僕を守る盾であることを、ようやく理解し始めていたから。
暖炉の火が揺れる中、僕たちは互いの存在を確かめ合い、故郷での出来事を乗り越えた安堵と、これからの未来への希望を静かに分かち合っていた。
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