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誕生、そして再誓
静まり返った深夜の屋敷。
静寂を破ったのは、ミナトの苦しげな声だった。
「……っ、ラザル……!」
寝台で寄り添っていたラザルは、すぐに異変に気づいた。ミナトの身体が震えていてシーツの上に温かい水が広がっていく。
「ミナト……!」
慌てて身体を起こし、ミナトを支えながら状況を確かめる。破水している……
一気に血の気が引きそうになるのをラザルは必死に堪えた。
「大丈夫だ、俺がついている……!」
ミナトの手をぎゅっと握りしめてすぐに待機していた侍医を呼ぶために鈴を鳴らした。
駆けつけた侍医たちが慌ただしく指示を飛ばす中、ミナトは痛みに顔をしかめ唇を噛みしめていた。
「……痛い……ラザル……!」
「ここにいる、ミナト……絶対に離れない」
ラザルはミナトの汗ばんだ髪を撫でながら落ち着いた声で繰り返す。どんなに怖くても、どんなに不安でも絶対にミナトを一人にはしない。
やがて本格的な陣痛が始まった。
ミナトの小さな身体が痛みに耐えながら震えている。
その様子にラザルは胸が引き裂かれる思いだった。こんなにも愛しい人に苦痛を与えなければ、新たな命を迎えられないのか……それがあまりにも残酷に思えた。
「……ミナト、頑張れ。もう少しだ……!」
痛みに顔を歪めるミナトの手をラザルは強く握りしめた。できることなら代わってやりたくて、何度も、何度も心の中でそう願った。
ミナトは必死に頷きながら耐えていた。弱音一つ吐かず、ただ、これから産まれてくるリアンを守るために……
その姿にラザルはあふれんばかりの誇りと深い愛しさを覚えた。
「ミナト……俺たちの子だ。リアンに……もうすぐ会える。だからどうか……お前も無事でいてくれ」
絞り出すような声で囁きラザルはミナトの額にそっと口づけた。
ミナトの命も子供の命も何よりも大切だ。すべてを守り抜くと、心の底から誓いながら……
夜は静かに、けれど確実に新しい命の誕生に向かって動き出していた。
ミナトは幾度もの波のような痛みに耐えながら必死に呼吸を繰り返していた。ラザルはずっとそばを離れずに冷たい汗をぬぐい、震える指をしっかりと握りしめる。
「ミナト、大丈夫だ……俺を信じろ」
痛みのあまり意識が遠のきかけてもラザルの声だけは不思議と鮮明に耳に届いた。その声に縋るようにミナトは何度も頷いた。
「さあ、あと少しです!力を……!」
侍医の声にミナトは全身の力を振り絞った。もう限界かもしれない、そう思った瞬間……
かすかに小さな産声が聴こえた。
「……!」
部屋に満ちる初めての命の音。ラザルもミナトも、言葉を失ったまま、ただその声に耳を傾ける。
侍医が大事そうに抱き上げた小さな命を、そっと二人の元へ運んできた。
「お二人の子です。元気な……男の子ですよ」
ラザルの腕の中に初めて我が子が手渡された。
小さくて温かくて、ふにゃふにゃと泣き声を上げるその存在に、彼はこれまで感じたことのない衝動に胸を締めつけられた。
「……こんなに、ちいさい……」
震える声でラザルが呟いた。それでも腕に抱く力はどこまでも優しかった。
「ミナト、見てくれ……俺たちの子だ」
ラザルはそっとミナトの傍に寄り添い、小さな命を見せた。ミナトは疲れきった身体で必死に手を伸ばし、その指先が赤ん坊のほっぺたに触れた瞬間……涙が頬をつたった。
「……生きてる……ちゃんと、生まれてきてくれた……リアン」
声にならないほどの想いがあふれ出した。ミナトは泣きながら何度も何度も小さな命に囁いた。
「リアンありがとう……ありがとう、俺たちのところに、来てくれて……」
ラザルもまたリアンの額にそっと唇を寄せた。
「これから、ずっと守る。リアンも、ミナトも……絶対に幸せにする」
ミナトは弱々しく微笑み、ラザルに身を預けた。ラザルはミナトの頬にキスを落とし、そしてリアンの額にもそっと唇を当てた。
「俺たちの子だ。世界で一番大切な宝物だ」
***
出産から数日後。
リアンは母ミナトの腕の中で静かに眠っていた。ラザルは仕事の合間をぬっては、こまめに部屋に顔を出す。いや、むしろ過保護を極めていた。
「リアン、まだ眠っているのか? 呼吸はちゃんとしてるか?」
「……してる。何度も見てるしラザルも、もう五回は確認してる」
苦笑しながらもミナトはその過剰な心配が愛情ゆえであると知っていた。
ラザルはミナトの手を握り、しっかりと見つめた。
「これからもお前とリアンを愛し守り抜く。何があっても決して手を離さない」
その言葉は、かつて誓えなかった未来への約束だった。
ミナトもまた静かに頷いた。
「俺も……ラザルとこの子と、三人で生きていきたい」
リアンの寝息が静かに響く中、二人の手が、そっと重なった。その中央にある小さな新しい命。
かつて絶望の中にいたミナトが……
孤独だったラザルが……
今、こうして、かけがえのない家族を手に入れた。
温かな夜明けの光が、そっと屋敷を満たしていく。
新しい世界で。
新しい未来を。
彼らは三人で、歩み始めたのだった。
愛する者と、愛する命とともに。
静寂を破ったのは、ミナトの苦しげな声だった。
「……っ、ラザル……!」
寝台で寄り添っていたラザルは、すぐに異変に気づいた。ミナトの身体が震えていてシーツの上に温かい水が広がっていく。
「ミナト……!」
慌てて身体を起こし、ミナトを支えながら状況を確かめる。破水している……
一気に血の気が引きそうになるのをラザルは必死に堪えた。
「大丈夫だ、俺がついている……!」
ミナトの手をぎゅっと握りしめてすぐに待機していた侍医を呼ぶために鈴を鳴らした。
駆けつけた侍医たちが慌ただしく指示を飛ばす中、ミナトは痛みに顔をしかめ唇を噛みしめていた。
「……痛い……ラザル……!」
「ここにいる、ミナト……絶対に離れない」
ラザルはミナトの汗ばんだ髪を撫でながら落ち着いた声で繰り返す。どんなに怖くても、どんなに不安でも絶対にミナトを一人にはしない。
やがて本格的な陣痛が始まった。
ミナトの小さな身体が痛みに耐えながら震えている。
その様子にラザルは胸が引き裂かれる思いだった。こんなにも愛しい人に苦痛を与えなければ、新たな命を迎えられないのか……それがあまりにも残酷に思えた。
「……ミナト、頑張れ。もう少しだ……!」
痛みに顔を歪めるミナトの手をラザルは強く握りしめた。できることなら代わってやりたくて、何度も、何度も心の中でそう願った。
ミナトは必死に頷きながら耐えていた。弱音一つ吐かず、ただ、これから産まれてくるリアンを守るために……
その姿にラザルはあふれんばかりの誇りと深い愛しさを覚えた。
「ミナト……俺たちの子だ。リアンに……もうすぐ会える。だからどうか……お前も無事でいてくれ」
絞り出すような声で囁きラザルはミナトの額にそっと口づけた。
ミナトの命も子供の命も何よりも大切だ。すべてを守り抜くと、心の底から誓いながら……
夜は静かに、けれど確実に新しい命の誕生に向かって動き出していた。
ミナトは幾度もの波のような痛みに耐えながら必死に呼吸を繰り返していた。ラザルはずっとそばを離れずに冷たい汗をぬぐい、震える指をしっかりと握りしめる。
「ミナト、大丈夫だ……俺を信じろ」
痛みのあまり意識が遠のきかけてもラザルの声だけは不思議と鮮明に耳に届いた。その声に縋るようにミナトは何度も頷いた。
「さあ、あと少しです!力を……!」
侍医の声にミナトは全身の力を振り絞った。もう限界かもしれない、そう思った瞬間……
かすかに小さな産声が聴こえた。
「……!」
部屋に満ちる初めての命の音。ラザルもミナトも、言葉を失ったまま、ただその声に耳を傾ける。
侍医が大事そうに抱き上げた小さな命を、そっと二人の元へ運んできた。
「お二人の子です。元気な……男の子ですよ」
ラザルの腕の中に初めて我が子が手渡された。
小さくて温かくて、ふにゃふにゃと泣き声を上げるその存在に、彼はこれまで感じたことのない衝動に胸を締めつけられた。
「……こんなに、ちいさい……」
震える声でラザルが呟いた。それでも腕に抱く力はどこまでも優しかった。
「ミナト、見てくれ……俺たちの子だ」
ラザルはそっとミナトの傍に寄り添い、小さな命を見せた。ミナトは疲れきった身体で必死に手を伸ばし、その指先が赤ん坊のほっぺたに触れた瞬間……涙が頬をつたった。
「……生きてる……ちゃんと、生まれてきてくれた……リアン」
声にならないほどの想いがあふれ出した。ミナトは泣きながら何度も何度も小さな命に囁いた。
「リアンありがとう……ありがとう、俺たちのところに、来てくれて……」
ラザルもまたリアンの額にそっと唇を寄せた。
「これから、ずっと守る。リアンも、ミナトも……絶対に幸せにする」
ミナトは弱々しく微笑み、ラザルに身を預けた。ラザルはミナトの頬にキスを落とし、そしてリアンの額にもそっと唇を当てた。
「俺たちの子だ。世界で一番大切な宝物だ」
***
出産から数日後。
リアンは母ミナトの腕の中で静かに眠っていた。ラザルは仕事の合間をぬっては、こまめに部屋に顔を出す。いや、むしろ過保護を極めていた。
「リアン、まだ眠っているのか? 呼吸はちゃんとしてるか?」
「……してる。何度も見てるしラザルも、もう五回は確認してる」
苦笑しながらもミナトはその過剰な心配が愛情ゆえであると知っていた。
ラザルはミナトの手を握り、しっかりと見つめた。
「これからもお前とリアンを愛し守り抜く。何があっても決して手を離さない」
その言葉は、かつて誓えなかった未来への約束だった。
ミナトもまた静かに頷いた。
「俺も……ラザルとこの子と、三人で生きていきたい」
リアンの寝息が静かに響く中、二人の手が、そっと重なった。その中央にある小さな新しい命。
かつて絶望の中にいたミナトが……
孤独だったラザルが……
今、こうして、かけがえのない家族を手に入れた。
温かな夜明けの光が、そっと屋敷を満たしていく。
新しい世界で。
新しい未来を。
彼らは三人で、歩み始めたのだった。
愛する者と、愛する命とともに。
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