『番はいらないと思ってた。君に出会うまでは』

なの

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番外編 新しい朝

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窓から差し込む陽だまりの中、リアンがよちよちと歩く小さな足音を響かせていた。

「……あっ、リアン、そっちは……!」

ミナトは慌てて立ち上がって、転びそうになるリアンをそっと抱き上げた。腕の中でリアンはキャッキャと声を上げて笑った。

ふわふわとした銀色の髪に、透き通るような瞳。
小さな手がミナトの服をきゅっと掴んで離さない。

「元気すぎるよ、お前は……」

言葉とは裏腹に、ミナトの声には甘い笑みがにじんでいた。少し成長したリアンは、毎日新しいことを覚えていく。笑って、泣いて、また笑って……そのすべてがミナトにとっては愛おしい宝物だった。

「じゃあ、続きを読もうか」

読みかけの絵本を開くと、リアンはぱちぱちと小さな手を叩いた。
絵本の色とりどりの絵に、きらきらとした瞳を向けるリアン。
その純粋な仕草に、ミナトの心は何度でも癒される。

「むかしむかし、あるところに──」

ミナトが語り始めたとき。
屋敷の扉が静かに開く音がした。

「ミナト、リアン、ただいま」

聞き慣れた低く優しい声。
振り向けば、ラザルが微笑みながら立っていた。

リアンは「ぱぁっ」と顔を輝かせ、ミナトの腕から飛び出す勢いでラザルに向かって両手を伸ばした。

「だー!」

その声に、ラザルは思わず笑ってリアンを高く抱き上げた。小さな体は軽く、けれどその存在は誰よりも大きい。

「いい子にしてたか、リアン」

リアンは無邪気にラザルの頬をつかみ、ふにふにと触った。ラザルはわざと困った顔をしながら、リアンの額にそっとキスを落とした。

そんな二人の姿を見つめながら、ミナトは微笑んだ。
温かくて、柔らかくて……
幸せって、こんなにもそばにあったんだと何度でも思える。

ラザルはリアンを抱き直し、もう片方の手をミナトに差し出した。

「さあ、一緒に」

ミナトはその手を迷いなく取りラザルの隣に並んだ。
リアンはミナトの顔を見ると嬉しそうに小さく声を上げた。

「まぁ……!」

「そうだな、ママも一緒だ」

ラザルがからかうように言うとミナトは真っ赤になった。

「だ、誰がママだ……!」

「いいだろう。家族なんだから」

低く囁くラザルの声にミナトは何も言い返せず顔を伏せた。けれどその頬には、恥ずかしさよりも圧倒的な幸福の色が浮かんでいた。

ラザルはミナトの額にそっと唇を重ねた。リアンが楽しそうに手をぱたぱた動かす。

「ありがとう、ミナト。お前がいてくれて、リアンがいてくれて……俺は、心から幸せだ」

真っ直ぐに告げられた言葉に、ミナトの胸が熱くなった。目の前の光景、腕に伝わるぬくもり、響く笑い声。そのすべてが、かけがえのない奇跡だ。

「俺も……あなたと、リアンと、一緒にいられることが何より幸せだよ」

ミナトはそう囁き返し、ラザルに、そしてリアンに笑いかけた。

陽だまりの中、三人は自然に身を寄せ合う。
小さな手が、二人の指をぎゅっと掴んだ。

これからも、どんな日々も……悲しみも喜びも、すべてを分かち合いながら。
この家族で、生きていく。

──愛する者たちとともに、新しい朝を迎えながら。


***


夜、静かな寝室。
リアンはすやすやと、二人の間で眠っている。

ミナトは、そっとリアンの小さな手に触れた。柔らかくて、温かい。生まれてきてくれた奇跡そのものだった。

「……不思議だな。俺、昔は、こんな未来が来るなんて思ってなかったのに」

ぽつりと呟くミナトに、ラザルは隣から手を伸ばし優しく髪を撫でた。

「未来は、お前が手に入れたんだ。誰かに与えられたものじゃない。お前自身が、ここに辿り着いたんだよ」

その言葉にミナトは胸がいっぱいになった。

過去の痛みも、孤独も、もう怖くない。今は、この手の中に確かなものがあるから。

ミナトはそっと目を閉じた。
リアンの寝息と、ラザルの静かな鼓動。すべてを包み込む優しい夜の中で心から思う。

……大丈夫。
これから先、何があっても。
きっとこの手を離さない。

愛しい家族と、共に歩いていく。
永遠に続く、たったひとつの物語を……。





お読みいただきありがとうございました。



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