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「目標確認、距離三百! ザイン大公領精鋭騎士団、総員五十名。……皆さん、揃いも揃って、錆びた鉄クズのような鎧を着込んでいらっしゃいます」
領主館の屋上。
アンナが冷徹な声で戦況を報告し、巨大な望遠鏡を覗き込んでいる。
その隣には、バドさんたちが徹夜で改良した最終兵器『魔力駆動式・全自動ファッション・キャノン改』が、不気味な唸りを上げて鎮座していた。
「鉄クズですって? まあ、可哀想に。彼らの人生に、今から彩り(カラー)を与えて差し上げますわ! バドさん、装填は完了していて?」
「おうよ、お嬢様! 第一弾は『春の訪れ・パステルピンクのフリル地獄』だ。いつでも撃てるぜ!」
バドさんがニヤリと笑い、巨大なレバーに手をかける。
眼下では、地響きを立てて迫りくる騎士団の姿が、肉眼でもはっきりと見えるようになってきた。
「聞けぇ! 我らはザイン大公領、栄光の第一騎士団である! 辺境の魔女よ、我が君レオナルト大公閣下を直ちに解放せよ! さもなくば……!」
先頭を走る、一番立派な(そして一番ダサい)鎧を着た隊長らしき男が、大声で叫んだ。
魔女? 失礼な。私は美の伝道師ですわよ。
「さあ、開演の時間ですわ! アンナ、照準をあの『一番うるさい男』に合わせなさい! 発射(ファイア)!!」
ドォォォン!!
屋上が揺れるほどの轟音と共に、キャノンの砲口から眩い光の塊が飛び出した。
それは美しい弧を描き、一直線に隊長の元へ吸い込まれていく。
「……なっ、魔法攻撃か!? 防御障壁を展開しろォォ!」
隊長が盾を構えた次の瞬間、光が弾けた。
中から飛び出したのは、無数のピンク色の布地と、大量のレース、そしてリボン。
それらが生き物のように隊長の体にまとわりつき、鋼鉄の鎧の上から強制的に「何か」を形作っていく。
「……え? ……あ、あれ?」
砂埃が晴れた後。
そこに立っていたのは、威厳ある騎士団長ではなかった。
全身をフリッフリのピンクのエプロンドレス(ヘッドドレス付き)に包まれ、呆然と立ち尽くす、ヒゲ面の「魔法少女(物理)」だった。
「ぶっ……! 隊長、その格好は……!」
「き、貴様ら! 笑うな! これは敵の卑劣な罠だ……うわぁぁぁ!?」
後続の騎士たちが動揺した隙を見逃さず、私は次の指示を出す。
「第二射、第三射、続けて撃ちなさい! 次は『真夏の太陽・情熱の全身タイツ』と『森の妖精さん・巨大な花の被り物セット』をお見舞いしてやるのよ!」
「ヒャッハー! こいつは最高の仕事だぜぇ!」
バドさんが狂喜乱舞しながらレバーを引き続ける。
次々と発射される「ファッション弾」。
戦場は、阿鼻叫喚の地獄絵図……ではなく、悪趣味な仮装パーティー会場へと変貌した。
「やめろぉぉ! 俺の体に張り付くな、この奇妙な柄の布はぁぁ!」
「前が見えん! この花の被り物、どうやって外すんだ!?」
「くっ、この全身タイツ、伸縮性が良すぎて、逆に動きが封じられる……!」
屈強な騎士たちが、ある者は花になり、ある者は野菜になり、またある者は謎のゆるキャラのような姿になって、地面を転げ回っている。
「おーっほっほっほ! どうです、私のセンスは! 剣も魔法も使わず、あなたたちの視覚と精神を破壊する、これが真の『美の暴力』ですわ!」
私は屋上の手すりに足をかけ、高らかに勝利宣言をした。
そこへ、ゆっくりと館の扉が開く音が響いた。
「……静まれ」
戦場に、低く、よく通る声が響き渡る。
現れたのは、私がコーディネートした完璧な「戦闘用スーツ(という名の最高級オーダーメイド服)」を纏った、レオナルト様だ。
その圧倒的な美しさと威圧感に、転げ回っていた騎士たちがピタリと動きを止めた。
「か、閣下……!? ご無事でしたか! しかし、そのお姿は一体……」
ピンクの隊長が、震える声で尋ねる。
レオナルト様は、ゆっくりと騎士たちを見回し、そして真顔で言い放った。
「これこそが、私が新たに見出した『強さ』の形だ。そしてお前たち……。その姿、我が領の新しい制服として、なかなか斬新で良いではないか」
「「「ええええええっ!?」」」
騎士たちの絶叫がこだまする。
尊敬する主君に、まさか自分の「魔法少女姿」を肯定されるとは夢にも思わなかったのだろう。
彼らの心は、完全に折れた。
「……勝負あったな、キキ」
レオナルト様が屋上を見上げ、フッと笑った。
その笑顔が、夕陽に照らされて、もう、悔しいくらいに絵になっていた。
こうして、辺境史上最も奇妙な戦いは、死傷者ゼロ、ファッション被害者五十名という結果で、私の圧勝に終わったのである。
領主館の屋上。
アンナが冷徹な声で戦況を報告し、巨大な望遠鏡を覗き込んでいる。
その隣には、バドさんたちが徹夜で改良した最終兵器『魔力駆動式・全自動ファッション・キャノン改』が、不気味な唸りを上げて鎮座していた。
「鉄クズですって? まあ、可哀想に。彼らの人生に、今から彩り(カラー)を与えて差し上げますわ! バドさん、装填は完了していて?」
「おうよ、お嬢様! 第一弾は『春の訪れ・パステルピンクのフリル地獄』だ。いつでも撃てるぜ!」
バドさんがニヤリと笑い、巨大なレバーに手をかける。
眼下では、地響きを立てて迫りくる騎士団の姿が、肉眼でもはっきりと見えるようになってきた。
「聞けぇ! 我らはザイン大公領、栄光の第一騎士団である! 辺境の魔女よ、我が君レオナルト大公閣下を直ちに解放せよ! さもなくば……!」
先頭を走る、一番立派な(そして一番ダサい)鎧を着た隊長らしき男が、大声で叫んだ。
魔女? 失礼な。私は美の伝道師ですわよ。
「さあ、開演の時間ですわ! アンナ、照準をあの『一番うるさい男』に合わせなさい! 発射(ファイア)!!」
ドォォォン!!
屋上が揺れるほどの轟音と共に、キャノンの砲口から眩い光の塊が飛び出した。
それは美しい弧を描き、一直線に隊長の元へ吸い込まれていく。
「……なっ、魔法攻撃か!? 防御障壁を展開しろォォ!」
隊長が盾を構えた次の瞬間、光が弾けた。
中から飛び出したのは、無数のピンク色の布地と、大量のレース、そしてリボン。
それらが生き物のように隊長の体にまとわりつき、鋼鉄の鎧の上から強制的に「何か」を形作っていく。
「……え? ……あ、あれ?」
砂埃が晴れた後。
そこに立っていたのは、威厳ある騎士団長ではなかった。
全身をフリッフリのピンクのエプロンドレス(ヘッドドレス付き)に包まれ、呆然と立ち尽くす、ヒゲ面の「魔法少女(物理)」だった。
「ぶっ……! 隊長、その格好は……!」
「き、貴様ら! 笑うな! これは敵の卑劣な罠だ……うわぁぁぁ!?」
後続の騎士たちが動揺した隙を見逃さず、私は次の指示を出す。
「第二射、第三射、続けて撃ちなさい! 次は『真夏の太陽・情熱の全身タイツ』と『森の妖精さん・巨大な花の被り物セット』をお見舞いしてやるのよ!」
「ヒャッハー! こいつは最高の仕事だぜぇ!」
バドさんが狂喜乱舞しながらレバーを引き続ける。
次々と発射される「ファッション弾」。
戦場は、阿鼻叫喚の地獄絵図……ではなく、悪趣味な仮装パーティー会場へと変貌した。
「やめろぉぉ! 俺の体に張り付くな、この奇妙な柄の布はぁぁ!」
「前が見えん! この花の被り物、どうやって外すんだ!?」
「くっ、この全身タイツ、伸縮性が良すぎて、逆に動きが封じられる……!」
屈強な騎士たちが、ある者は花になり、ある者は野菜になり、またある者は謎のゆるキャラのような姿になって、地面を転げ回っている。
「おーっほっほっほ! どうです、私のセンスは! 剣も魔法も使わず、あなたたちの視覚と精神を破壊する、これが真の『美の暴力』ですわ!」
私は屋上の手すりに足をかけ、高らかに勝利宣言をした。
そこへ、ゆっくりと館の扉が開く音が響いた。
「……静まれ」
戦場に、低く、よく通る声が響き渡る。
現れたのは、私がコーディネートした完璧な「戦闘用スーツ(という名の最高級オーダーメイド服)」を纏った、レオナルト様だ。
その圧倒的な美しさと威圧感に、転げ回っていた騎士たちがピタリと動きを止めた。
「か、閣下……!? ご無事でしたか! しかし、そのお姿は一体……」
ピンクの隊長が、震える声で尋ねる。
レオナルト様は、ゆっくりと騎士たちを見回し、そして真顔で言い放った。
「これこそが、私が新たに見出した『強さ』の形だ。そしてお前たち……。その姿、我が領の新しい制服として、なかなか斬新で良いではないか」
「「「ええええええっ!?」」」
騎士たちの絶叫がこだまする。
尊敬する主君に、まさか自分の「魔法少女姿」を肯定されるとは夢にも思わなかったのだろう。
彼らの心は、完全に折れた。
「……勝負あったな、キキ」
レオナルト様が屋上を見上げ、フッと笑った。
その笑顔が、夕陽に照らされて、もう、悔しいくらいに絵になっていた。
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