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「……いらっしゃいませぇ。……キキ様特製、お肌がツルツルになる『レオナルトの吐息』はいかがですかぁ……」
辺境の街、一番賑やかな中央広場。
そこには、王都の貴族が見れば卒倒し、領民が見れば腹を抱えて笑い転げるような、異様な光景が広がっていた。
特設の販売ワゴンに立っているのは、泥だらけの豪華な服を脱がされ、私がデザインした「石鹸の妖精・特別コスチューム」を纏ったセドリック殿下だ。
全身を淡い緑色のタイツで包み、背中には巨大な石鹸を模した四角いクッション。
さらに頭には、泡をイメージした大量の白いポンポンがついている。
「声が小さいですわよ、セドリック君! そんな弱々しい売り声で、誰が私の芸術品を手に取ると思いますの?」
私はワゴンの隣で、優雅にパラソルを差しつつ叱咤激励(という名の公開処刑)を送る。
「キキ……、いやキキ様……。もう勘弁してくれ……。私は皇太子だぞ、なぜこのような、歩く入浴剤のような格好で……!」
「あら、お似合いですわよ。その四角いシルエット、あなたの融通の利かない性格がよく表現されていますわ。ほら、次のお客様がいらっしゃいましたわよ!」
そこへ、砂埃を上げて一台の馬車が広場に突っ込んできた。
中から飛び出してきたのは、髪を振り乱し、目に涙を浮かべたマリア様だ。
「殿下ーっ! マリアが助けに来ましたわ! ……って、ええっ!? で、殿下!? その、なんとも言えない物体は何ですの!?」
マリア様は、目の前の「巨大な石鹸の塊から生えたナスビ頭の男」を見て、硬直した。
「マ、マリア……! 見ての通りだ、私は今、美の帝国に徴兵されているのだ……!」
「ひどいですわ、キキ様! 殿下にこんな……こんな、王都のトレンドを完全に無視したコミカルな格好をさせるなんて! 悪魔ですわ、センスの悪魔ですわ!」
マリア様が私を指さして叫ぶ。
私は彼女の足元から頭のてっぺんまで、一秒でスキャンを完了させた。
「お黙りなさい、イチゴクレープさん。人の心配をする前に、ご自分のその格好をどうにかしたら? 王都からわざわざそんな、泥はねが目立つ薄ピンクのフリルドレスで旅をしてくるなんて、実用性と審美眼の欠如を露呈しているようなものですわよ」
「な、なんですって!? これはマリアが一番気に入っているドレスですのよ!」
「そのドレス、胸元のリボンが多すぎて、もはや結び目が迷子になっていますわ。まるで『私を食べて』と言わんばかりの過剰なデコレーション。見ていて胃もたれがしますわね」
私はアンナに目配せをする。
アンナは心得たように、マリア様のサイズに合わせた「別のコスチューム」を取り出した。
「マリア様。お一人で殿下を働かせるのは、愛の力に反しますわよね? さあ、あなたには『洗顔ネットの精霊』になっていただきますわ」
「せ、洗顔ネット……? 嫌ですわ! マリアはもっと、キラキラしたものが着たいんですの!」
「キラキラ? いいえ、今のあなたに必要なのは『透明感』ですわ。ほら、その真っ白な網タイツ(特大)を被りなさい!」
数分後。
広場には、石鹸の妖精(セドリック)と、その周りで白い網を振り回す精霊(マリア)という、地獄のようなコンビが誕生した。
「……キキ。……君のやり方は、相変わらず容赦がないな」
いつの間にか横に立っていたレオナルト様が、少しだけ引き攣った笑顔で呟いた。
「あら、レオナルト様。彼らは今、自分の足で稼ぐという『労働の美学』を学んでいるのですわ。ほら、見てください。意外と売れていますわよ?」
実際、王都の皇太子と令嬢がそんな格好で石鹸を売っているという噂を聞きつけ、領民や商人が殺到していた。
「殿下が売った石鹸」というだけで、飛ぶように売れていく。
「キキ様! 石鹸、完売しましたぁ……! なんだか、必死に売っているうちに、この泡のポンポンが愛おしくなってきました……」
セドリック殿下が、汗を拭いながら少しだけ晴れやかな顔で報告してきた。
……あら? この男、まさか労働の喜びに目覚めてしまったの?
「殿下、何を仰っているのですか! 早く王都へ帰りましょう! こんな、恥ずかしい格好……あ、でも、この網、意外と風通しが良くて気持ちいいですわ……」
「マリアまで!? ……キキ、君の洗脳……いや、教育は、国家の根幹を揺るがすレベルだな」
レオナルト様が呆れたように溜息をついた。
「教育ではありませんわ、リフォームです。彼らの歪んだ特権意識を削ぎ落とし、社会の一部として再起動させてあげたのですわ。……さて、完売したことですし、お二人にはお礼として『辺境特製・質素な豆料理』を振る舞ってあげますわね」
「豆……。ステーキではないのですか……?」
「贅沢を言う口には、さらに泡を詰め込みますわよ!」
「ひ、ひぃっ! 豆、大好きですわ!」
こうして、王都のバカカップルは、辺境の広場で一日中汗を流し、労働とセンスの基礎(?)を叩き込まれたのである。
彼らが王都に帰る頃には、きっと誰よりも「石鹸」に詳しい皇太子と令嬢になっていることでしょう。
……私の帝国は、こうしてまた一歩、その勢力を広げたのでした。
おーっほっほっほ!
辺境の街、一番賑やかな中央広場。
そこには、王都の貴族が見れば卒倒し、領民が見れば腹を抱えて笑い転げるような、異様な光景が広がっていた。
特設の販売ワゴンに立っているのは、泥だらけの豪華な服を脱がされ、私がデザインした「石鹸の妖精・特別コスチューム」を纏ったセドリック殿下だ。
全身を淡い緑色のタイツで包み、背中には巨大な石鹸を模した四角いクッション。
さらに頭には、泡をイメージした大量の白いポンポンがついている。
「声が小さいですわよ、セドリック君! そんな弱々しい売り声で、誰が私の芸術品を手に取ると思いますの?」
私はワゴンの隣で、優雅にパラソルを差しつつ叱咤激励(という名の公開処刑)を送る。
「キキ……、いやキキ様……。もう勘弁してくれ……。私は皇太子だぞ、なぜこのような、歩く入浴剤のような格好で……!」
「あら、お似合いですわよ。その四角いシルエット、あなたの融通の利かない性格がよく表現されていますわ。ほら、次のお客様がいらっしゃいましたわよ!」
そこへ、砂埃を上げて一台の馬車が広場に突っ込んできた。
中から飛び出してきたのは、髪を振り乱し、目に涙を浮かべたマリア様だ。
「殿下ーっ! マリアが助けに来ましたわ! ……って、ええっ!? で、殿下!? その、なんとも言えない物体は何ですの!?」
マリア様は、目の前の「巨大な石鹸の塊から生えたナスビ頭の男」を見て、硬直した。
「マ、マリア……! 見ての通りだ、私は今、美の帝国に徴兵されているのだ……!」
「ひどいですわ、キキ様! 殿下にこんな……こんな、王都のトレンドを完全に無視したコミカルな格好をさせるなんて! 悪魔ですわ、センスの悪魔ですわ!」
マリア様が私を指さして叫ぶ。
私は彼女の足元から頭のてっぺんまで、一秒でスキャンを完了させた。
「お黙りなさい、イチゴクレープさん。人の心配をする前に、ご自分のその格好をどうにかしたら? 王都からわざわざそんな、泥はねが目立つ薄ピンクのフリルドレスで旅をしてくるなんて、実用性と審美眼の欠如を露呈しているようなものですわよ」
「な、なんですって!? これはマリアが一番気に入っているドレスですのよ!」
「そのドレス、胸元のリボンが多すぎて、もはや結び目が迷子になっていますわ。まるで『私を食べて』と言わんばかりの過剰なデコレーション。見ていて胃もたれがしますわね」
私はアンナに目配せをする。
アンナは心得たように、マリア様のサイズに合わせた「別のコスチューム」を取り出した。
「マリア様。お一人で殿下を働かせるのは、愛の力に反しますわよね? さあ、あなたには『洗顔ネットの精霊』になっていただきますわ」
「せ、洗顔ネット……? 嫌ですわ! マリアはもっと、キラキラしたものが着たいんですの!」
「キラキラ? いいえ、今のあなたに必要なのは『透明感』ですわ。ほら、その真っ白な網タイツ(特大)を被りなさい!」
数分後。
広場には、石鹸の妖精(セドリック)と、その周りで白い網を振り回す精霊(マリア)という、地獄のようなコンビが誕生した。
「……キキ。……君のやり方は、相変わらず容赦がないな」
いつの間にか横に立っていたレオナルト様が、少しだけ引き攣った笑顔で呟いた。
「あら、レオナルト様。彼らは今、自分の足で稼ぐという『労働の美学』を学んでいるのですわ。ほら、見てください。意外と売れていますわよ?」
実際、王都の皇太子と令嬢がそんな格好で石鹸を売っているという噂を聞きつけ、領民や商人が殺到していた。
「殿下が売った石鹸」というだけで、飛ぶように売れていく。
「キキ様! 石鹸、完売しましたぁ……! なんだか、必死に売っているうちに、この泡のポンポンが愛おしくなってきました……」
セドリック殿下が、汗を拭いながら少しだけ晴れやかな顔で報告してきた。
……あら? この男、まさか労働の喜びに目覚めてしまったの?
「殿下、何を仰っているのですか! 早く王都へ帰りましょう! こんな、恥ずかしい格好……あ、でも、この網、意外と風通しが良くて気持ちいいですわ……」
「マリアまで!? ……キキ、君の洗脳……いや、教育は、国家の根幹を揺るがすレベルだな」
レオナルト様が呆れたように溜息をついた。
「教育ではありませんわ、リフォームです。彼らの歪んだ特権意識を削ぎ落とし、社会の一部として再起動させてあげたのですわ。……さて、完売したことですし、お二人にはお礼として『辺境特製・質素な豆料理』を振る舞ってあげますわね」
「豆……。ステーキではないのですか……?」
「贅沢を言う口には、さらに泡を詰め込みますわよ!」
「ひ、ひぃっ! 豆、大好きですわ!」
こうして、王都のバカカップルは、辺境の広場で一日中汗を流し、労働とセンスの基礎(?)を叩き込まれたのである。
彼らが王都に帰る頃には、きっと誰よりも「石鹸」に詳しい皇太子と令嬢になっていることでしょう。
……私の帝国は、こうしてまた一歩、その勢力を広げたのでした。
おーっほっほっほ!
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