婚約破棄? 結構です! ついでにこの国のダサいセンスも断捨離!

夏乃みのり

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「……はぁ。やっと、王都の『埃っぽい空気』から解放されましたわね」


揺れる馬車の中、私は窓から差し込む辺境の清々しい風を胸いっぱいに吸い込んだ。
王都でのパーティーから数日。
私たちは今、懐かしき(といっても数ヶ月しか経っていないけれど)我が領地へと向かっていた。


「王都の空気が埃っぽいのではなく、君が会場中に『毒舌の花火』を打ち上げすぎたせいではないか? キキ」


向かいに座るレオナルト様が、可笑しそうに肩を揺らした。
彼は長旅の疲れも見せず、相変わらず「挿絵から抜け出してきたような美貌」を維持している。
本当に、リフォームのしがいがある素材だわ。


「あら、失礼ね。私はただ、澱んでいた社交界の空気を、私の新鮮なセンスで入れ替えてあげただけですわ。……それよりレオナルト様。さっきから私の手、ずっと握ったままですけれど、何か不都合でも?」


「不都合? まさか。……こうしていないと、君がまたどこかへ飛んでいって、誰かのファッションをボロクソに言い始めそうで心配なんだ」


レオナルト様はそう言うと、私の指先に優しく唇を落とした。
……あら。またこの心臓、設計ミスかしら。
バクバクと騒がしくて、自分のドレスのフリルが揺れているのが見えるくらいだわ。


「……お嬢様。お熱いところを邪魔して申し訳ありませんが、まもなく領主館が見えてまいります」


御者席との仕切り窓を少しだけ開けて、アンナが冷徹な声で告げた。
彼女の目は「早く仕事に戻れ」と語っている。


「分かっているわよ、アンナ。……見て、レオナルト様! 私の館が、さらに光り輝いていますわ!」


丘の上に見えてきた領主館は、出発前よりもさらに白く、そして屋根には何やら巨大な「リボン型の装飾」が施されていた。
門の前には、かつての騎士団……もとい、今は「美の守護者」となったハンスたちが、整列して待っている。


馬車が止まると同時に、彼らは一斉に剣を抜き、それを天に掲げた。


「キキ様! レオナルト閣下! ご帰還をお待ちしておりました!」


「……ハンス、その制服の着こなし、さらに磨きがかかりましたわね。そのスカーフの結び目、合格点よ!」


「ありがとうございます! お嬢様に教わった『黄金比』を、毎日三時間は鏡の前で練習しております!」


元騎士団長が、嬉しそうに胸を張る。
その横からは、煤まみれのバドさんが図面を持って駆け寄ってきた。


「お嬢様! 例の『クリスタル・ランウェイ・祭壇』が完成したぜ! 地面から魔力で光を吸い上げて、新婦が歩くたびに七色に輝く仕掛けだ。王都のへぼ職人には一生かかっても作れねえ傑作だぞ!」


「素晴らしいわ、バドさん! それでこそ私の右腕よ! 式当日は、空からラメ入りの羽を降らせる準備も忘れないでね」


「おうよ! 任せとけ!」


館の中に入ると、そこはもはや「結婚式の準備」というよりは「国家プロジェクトの拠点」と化していた。
村の女性たちは、新作のウールで招待客用の引き出物を縫い、若い男たちは街灯をアンティーク風に塗り替えている。


「……キキ、これは本当に結婚式なのか? なんだか、新しい国を建国する準備のように見えるのだが」


レオナルト様が、巨大なウェディングケーキの設計図(全五段、高さ二メートル)を見て、少しだけ引き攣った顔をした。


「あら、同じことですわ。私たちの結婚は、辺境の勝利宣言。そして、新しい美の時代の幕開けなんですもの。……さあ、レオナルト様。休んでいる暇はありませんわよ! あなたのタキシード、さらに百個ほど真珠を縫い付けることに決めましたから、今すぐ採寸をやり直しますわ!」


「……百個か。……分かった、好きにしろ。君の作品になれるなら、石を千個積まれても耐えてみせよう」


「まあ、頼もしい! 大好きよ、レオナルト様!」


私は彼の胸に飛び込み、そしてすぐにアンナの方を向いた。


「アンナ! 王都の父様から届いた『帰ってきてくれ、お小遣いをあげるから』という内容の情けない手紙は、すべてシュレッダーにかけておいて。……あ、マリア様からの『呪いの手紙』は、新作の香水のテスター用紙として再利用してちょうだい!」


「かしこまりました、お嬢様。資源を大切にするお姿、感服いたします」


辺境は、今や世界で一番熱い場所。
私のセンスと、レオナルト様の愛。
そして、ちょっと(?)風変わりな領民たちの情熱。


すべてが混ざり合って、最高のフィナーレに向かって爆走し始めた。
王都でレタス殿下が枕を濡らしている間に、私たちは伝説を作りますわよ!
おーっほっほっほ!
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