15 / 32
15話
しおりを挟む
ヴァルモン公爵の影に気づいてから数日後。
私の元へ、王宮から一通の召喚状が届いた。差出人は、国王陛下ご本人。
「陛下が、私に……?」
一体、何のご用だろうか。
私は少し緊張しながらも、グレイソンに準備をさせ、王宮へと向かった。
通されたのは、謁見の間ではなく、陛下が私的な執務を行う小さな部屋だった。
部屋には、陛下と、宰相閣下しかいらっしゃらなかった。
「よく来たな、ミリアーナ嬢。楽にしてよい」
陛下は、以前よりもずっと親しげな口調で私に話しかけ、椅子に座るよう促した。
「この度は、お召しいただき、恐悦至極に存じます」
私が形式通りに挨拶をすると、陛下は楽しそうに笑った。
「その猫を被った挨拶はよせ。お前の本性は、そんな殊勝なものではあるまい」
「……失礼いたしました」
どうやら、この王様には、何もかもお見通しのようだ。
「お前のカフェの評判は、私の耳にも届いておる。実に愉快なことをしてくれる。先日の騒ぎへの対処も見事であった」
陛下は私の働きを称賛した後、ふっと真剣な表情になった。
「さて、本題だ。ミリアーナ嬢。お前に、頼みたいことがある」
ゴクリ、と私は唾を飲んだ。
「近年、我が国では密輸組織が横行し、国庫に多大な損害を与えている。警備隊を動かしてはいるのだが、トカゲの尻尾切りの連続で、一向に首謀者までたどり着けん」
密輸組織。その言葉に、私の心臓がどきりとした。ヴァルモン公爵に繋がる、あの金の流れだ。
「そこで、お前の力を借りたい。お前には、貴族社会の常識に囚われない、新しい視点がある。その商才と知恵で、奴らの金の流れを追ってほしいのだ」
それは、国王陛下からの、極秘の依頼だった。
公式な任務ではない。もし失敗すれば、王家は何の保証もしてくれない。全ては自己責任。
しかし、成功すれば、それは計り知れない功績となる。
そして何より、この依頼は、ヴァルモン公爵の陰謀を暴くための、絶好の機会だった。
「……陛下。そのお話、謹んでお受けいたします」
私は、迷わず答えた。
「しかし、一つ条件がございます」
「ほう、申してみよ」
「この件に関する調査、采配の一切を、わたくしに一任していただきたく存じます。たとえ相手が、どれほどの大物貴族であろうとも、手心を加えることはいたしません」
私の言葉に、陛下は宰相と顔を見合わせた。そして、次の瞬間、声を上げて笑った。
「ハッハッハ! 面白い! 気に入った! よかろう、全てお前に任せる!」
陛下は、私の挑戦的な申し出を、あっさりと受け入れた。
「ただし、一つだけ忠告しておく。お前が戦おうとしている相手は、お前が思う以上に巨大で、危険な存在だ。決して、油断するでないぞ」
「肝に銘じます」
私は深く頭を下げた。
こうして私は、国王陛下という最強の後ろ盾を得て、国家を揺るがす巨大な陰謀との戦いに、正式に乗り出すことになった。
望むところよ。私の悠々自適ライフを賭けて、この勝負、必ず勝ってみせる。
私の元へ、王宮から一通の召喚状が届いた。差出人は、国王陛下ご本人。
「陛下が、私に……?」
一体、何のご用だろうか。
私は少し緊張しながらも、グレイソンに準備をさせ、王宮へと向かった。
通されたのは、謁見の間ではなく、陛下が私的な執務を行う小さな部屋だった。
部屋には、陛下と、宰相閣下しかいらっしゃらなかった。
「よく来たな、ミリアーナ嬢。楽にしてよい」
陛下は、以前よりもずっと親しげな口調で私に話しかけ、椅子に座るよう促した。
「この度は、お召しいただき、恐悦至極に存じます」
私が形式通りに挨拶をすると、陛下は楽しそうに笑った。
「その猫を被った挨拶はよせ。お前の本性は、そんな殊勝なものではあるまい」
「……失礼いたしました」
どうやら、この王様には、何もかもお見通しのようだ。
「お前のカフェの評判は、私の耳にも届いておる。実に愉快なことをしてくれる。先日の騒ぎへの対処も見事であった」
陛下は私の働きを称賛した後、ふっと真剣な表情になった。
「さて、本題だ。ミリアーナ嬢。お前に、頼みたいことがある」
ゴクリ、と私は唾を飲んだ。
「近年、我が国では密輸組織が横行し、国庫に多大な損害を与えている。警備隊を動かしてはいるのだが、トカゲの尻尾切りの連続で、一向に首謀者までたどり着けん」
密輸組織。その言葉に、私の心臓がどきりとした。ヴァルモン公爵に繋がる、あの金の流れだ。
「そこで、お前の力を借りたい。お前には、貴族社会の常識に囚われない、新しい視点がある。その商才と知恵で、奴らの金の流れを追ってほしいのだ」
それは、国王陛下からの、極秘の依頼だった。
公式な任務ではない。もし失敗すれば、王家は何の保証もしてくれない。全ては自己責任。
しかし、成功すれば、それは計り知れない功績となる。
そして何より、この依頼は、ヴァルモン公爵の陰謀を暴くための、絶好の機会だった。
「……陛下。そのお話、謹んでお受けいたします」
私は、迷わず答えた。
「しかし、一つ条件がございます」
「ほう、申してみよ」
「この件に関する調査、采配の一切を、わたくしに一任していただきたく存じます。たとえ相手が、どれほどの大物貴族であろうとも、手心を加えることはいたしません」
私の言葉に、陛下は宰相と顔を見合わせた。そして、次の瞬間、声を上げて笑った。
「ハッハッハ! 面白い! 気に入った! よかろう、全てお前に任せる!」
陛下は、私の挑戦的な申し出を、あっさりと受け入れた。
「ただし、一つだけ忠告しておく。お前が戦おうとしている相手は、お前が思う以上に巨大で、危険な存在だ。決して、油断するでないぞ」
「肝に銘じます」
私は深く頭を下げた。
こうして私は、国王陛下という最強の後ろ盾を得て、国家を揺るがす巨大な陰謀との戦いに、正式に乗り出すことになった。
望むところよ。私の悠々自適ライフを賭けて、この勝負、必ず勝ってみせる。
41
あなたにおすすめの小説
冷遇された没落姫は、風に乗せて真実を詠う ─残り香の檻─
あとりえむ
恋愛
「お前の練る香など、埃と同じだ」
没落した名家の姫・瑠璃は、冷酷な夫・道隆に蔑まれ、極寒の離れに追いやられていた。夫の隣には、贅を尽くした香料を纏う愛人の明子。
しかし道隆は知らなかった。瑠璃が魂を削って練り上げた香は、焚く者の心根を映し出す「真実の鏡」であることを。
瑠璃が最後に残した香の種を、明子が盗み出し、手柄を偽って帝の前で焚き上げた瞬間。美しき夢は、獣の死臭が漂う地獄へと変貌する。
「この香りの主を探せ。これほど澄み切った魂が、この都に在るはずだ」
絶望の淵で放たれた一筋の香りに導かれ、孤独な東宮が泥の中に咲く白蓮を見つけ出す。
嘘と虚飾にまみれた貴族社会を、ひとりの調香師が浄化する、雅やかな逆転劇。
遊び人の侯爵嫡男がお茶会で婚約者に言われた意外なひと言
夢見楽土
恋愛
侯爵嫡男のエドワードは、何かと悪ぶる遊び人。勢いで、今後も女遊びをする旨を婚約者に言ってしまいます。それに対する婚約者の反応は意外なもので……
短く拙いお話ですが、少しでも楽しんでいただければ幸いです。
このお話は小説家になろう様にも掲載しています。
この度娘が結婚する事になりました。女手一つ、なんとか親としての務めを果たし終えたと思っていたら騎士上がりの年下侯爵様に見初められました。
毒島かすみ
恋愛
真実の愛を見つけたと、夫に離婚を突きつけられた主人公エミリアは娘と共に貧しい生活を強いられながらも、自分達の幸せの為に道を切り開き、幸せを掴んでいく物語です。
夫に君も愛人を作ればいいと言われましたので
麻麻(あさあさ)
恋愛
「君も愛人を作ればいい」と夫に言われたので売り言葉に買い言葉で出会った愛人候補は自分が魔法使い伯爵と言いました。
全15話。プロローグから4話まで一挙公開。
翌日からは20時に2話ずつ公開。11日は最終話まで3話一挙公開。
登場人物
マーリン・ダグラス
結婚2年目にして夫の不倫を問い詰めたら黒だった令嬢。母に聞かされた結婚は夫となる人を大事にという言葉を守ってるが夫のギルバートにブチギレてこの度愛人を探すと決める。
デミトリアス・ドラモンドまたはアロン
マーリンが仮面舞踏会で知り合った自称魔法使い伯爵。次の日にマーリン好みの執事アロンに姿を変えて彼女の屋敷に来る。
ギルバート・ダグラス
マーリンの夫で伯爵。ギルと呼ばれている。愛人を作れば発言をした。
シェリー・モーヴ
ギルバートの愛人
エミリー
マーリンの親友で既婚者。
ララとリリー
マーリンの屋敷のメイド達。
宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。
クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。
婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。
そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。
そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯
王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。
シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯
幼馴染以上、婚約者未満の王子と侯爵令嬢の関係
紫月 由良
恋愛
第二王子エインの婚約者は、貴族には珍しい赤茶色の髪を持つ侯爵令嬢のディアドラ。だが彼女の冷たい瞳と無口な性格が気に入らず、エインは婚約者の義兄フィオンとともに彼女を疎んじていた。そんな中、ディアドラが学院内で留学してきた男子学生たちと親しくしているという噂が広まる。注意しに行ったエインは彼女の見知らぬ一面に心を乱された。しかし婚約者の異母兄妹たちの思惑が問題を引き起こして……。
顔と頭が良く性格が悪い男の失恋ストーリー。
※流血シーンがあります。(各話の前書きに注意書き+次話前書きにあらすじがあるので、飛ばし読み可能です)
夫と愛し合った翌朝、一方的に離縁されました【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
美しい公爵夫人マルグリートは、冷徹な夫ディートリヒと共に、王国の裏で密かに任務をこなす“悪女”。
だがある日、突然夫から離婚を言い渡される。しかもその裏には、平民の愛人の存在が──。
失意の中、王命で新たな婚約者・エルンストと結ばれることに。
どうやら今回の離婚再婚は、王家の陰謀があるよう。
「悪女に、遠慮はいらない」
そう決意した彼女は、華やかな舞踏会で王に真っ向から言い放つ。
「わたくし、人の家庭を壊しておきながら悪びれない方に、下げる頭は持っていませんの。
王族であられる前に、人におなりくださいませ。……失礼」
愛も、誇りも奪われたなら──
今度はこの手で、すべてを取り戻すだけ。
裏切りに燃える、痛快リベンジ・ロマンス!
⚠️本作は AI の生成した文章を一部に使っています。タイトル変えました。コメディーです。主人公は悪女です。
「股ゆる令嬢」の幸せな白い結婚
ウサギテイマーTK
恋愛
公爵令嬢のフェミニム・インテラは、保持する特異能力のために、第一王子のアージノスと婚約していた。だが王子はフェミニムの行動を誤解し、別の少女と付き合うようになり、最終的にフェミニムとの婚約を破棄する。そしてフェミニムを、子どもを作ることが出来ない男性の元へと嫁がせるのである。それが王子とその周囲の者たちの、破滅への序章となることも知らずに。
※タイトルは下品ですが、R15範囲だと思います。完結保証。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる