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「なぜ買えないんだ! たかが『純金製のダンベル』一つだろうが!」
王宮の執務室に、ギルバート殿下の怒鳴り声が響き渡りました。
ここは、メロメが去った後の王宮。
かつては書類が整然と並び、静寂が保たれていたこの部屋も、今では泥棒が入った後のように荒れ果てていました。
未決済の書類が雪崩を起こし、床には丸められた紙くずが散乱しています。
「申し訳ございません、殿下。しかし、予算が……」
頭を抱えているのは、財務省から派遣された中年の会計官です。
彼は胃薬の瓶を握りしめ、悲痛な表情で訴えました。
「予算予算と、うるさいぞ! 私は次期国王だぞ? ミミが『黄金のダンベルで上腕二頭筋を鍛えたい』と言っているのだ! 彼女の願いを叶えるのが、私の務めだろう!」
「お言葉ですが殿下。今年度の王宮費は、すでに底をついております」
「は?」
殿下はキョトンとした顔をしました。
「底をつく? まだ年度が始まって三ヶ月だぞ? そんな馬鹿な話があるか」
「事実です。……というより、先日の予算会議で、宰相閣下とメロメ嬢によって予算を半分に削減されたのが致命傷でした」
「ぐぬぬ……あいつらめ……!」
殿下は歯ぎしりをしました。
しかし、すぐに気を取り直して鼻を鳴らします。
「まあいい。ならば『予備費』を使え。どうせどこかに隠し財産があるのだろう?」
「ありません」
「は?」
「予備費も、緊急対策費も、すべて空(から)です」
会計官は、分厚い帳簿を殿下の目の前に突きつけました。
「ご覧ください。これが現在の王家の収支状況です」
殿下は帳簿を覗き込みました。
そこには、赤いインクで書かれた数字がびっしりと並んでいます。
「……なんだこれは。赤色ばかりで目がチカチカする」
「赤字だからです」
「なぜこんなことに? 先月までは普通に回っていたではないか!」
「それは……メロメ様がいらっしゃったからです」
会計官が、遠い目をして言いました。
「メロメ様は、天才的な資金繰りで王宮の財政を支えておられました。無駄な経費を極限まで削り、独自の投資で利益を生み出し、時にはご自身の私財を投じて、殿下の浪費の穴埋めをしていたのです」
「……な、なんだと?」
「例えば、殿下が先月購入された『白馬』。あれはメロメ様がご自身の宝石を売って支払われました」
「……」
「殿下が開催した『夜会』の費用。あれはメロメ様が王宮の不用品をオークションにかけて捻出した利益で賄われました」
「……」
「つまり、王宮の華やかな生活は、すべてメロメ様という一本の柱によって支えられていた砂上の楼閣だったのです。その柱がなくなった今、崩壊するのは当然の帰結です」
会計官の淡々とした説明に、殿下は口をパクパクとさせました。
「そ、そんな……まさか……あいつ、そんなことを……」
「ご存知なかったのですか? メロメ様は『殿下に余計な心配をかけたくない』と、裏ですべて処理されていましたから」
「……」
殿下の脳裏に、メロメの顔が浮かびました。
いつも澄ました顔で、「お金ならありますわ」と言っていた彼女。
「私の仕事ですから」と、淡々と書類を処理していた彼女。
それがまさか、自分の尻拭いのためだったとは。
「……いや、待て! 騙されんぞ!」
殿下はブンブンと首を振りました。
「あいつは『守銭奴』だ! 金に汚い女だ! 私のためになど動くはずがない! きっと、王家の金を横領していたに違いない!」
「調査しましたが、横領の事実は一切ありませんでした。むしろ、メロメ様からの『貸付金』の記録ばかりが出てきます」
「貸付金……?」
「はい。先日サインされた『借用書』以外にも、未回収の債権が山のように……」
「やめろ! 聞きたくない!」
殿下は耳を塞ぎました。
現実逃避です。
その時、執務室の扉がノックもなしに開きました。
「殿下ー! 大変だー!」
飛び込んできたのは、王宮の料理長でした。
彼もまた、エプロンを放り出しそうな勢いで怒っています。
「どうした料理長。騒々しい」
「食材が届きません! いつもの業者に注文したら、『前金じゃないと売らない』と言われました!」
「な、なんだと? 王家御用達の業者だぞ? ツケ払いが常識だろう!」
「それが……『メロメ様がいないなら、王家の信用力はゼロだ』と……」
「ぐっ……!」
さらに、メイド長も駆け込んできました。
「殿下! 洗濯係がストライキを起こしました!」
「今度はなんだ!」
「洗剤が切れました! 業務用の強力な洗剤は高価なので、予算が下りないと買えません! 殿下のシルクのシャツは、手洗いでは落ちない汚れ(ワインの染み等)ばかりなのに!」
「私のシャツが洗えないだと!?」
「あと、お風呂の魔石も切れそうです。今夜からは水風呂になります」
「ふざけるな! 私は王太子だぞ!?」
次々と持ち込まれるトラブル報告。
食材がない。
洗剤がない。
お湯が出ない。
馬の餌がない。
庭師が逃げた。
王宮の機能が、音を立てて停止していくのが分かります。
「ど、どうすればいいんだ……! 誰か! 誰か何とかしろ!」
殿下は叫びました。
しかし、誰も動きません。
会計官は胃薬を飲み、料理長は帽子を叩きつけ、メイド長は冷ややかな目で見ています。
かつて、これらのトラブルはすべて、メロメが事前に察知し、解決していたことでした。
「洗剤の在庫管理、見直しておきました」
「業者との価格交渉、終わらせておきました」
「魔石は安い時期に買いだめしておきました」
彼女の『先回り』があったからこそ、殿下は何不自由なく生活できていたのです。
「……メロメ」
殿下は呆然と呟きました。
いなくなって初めて気づく、その存在の巨大さ。
空気のように当たり前にあった『快適さ』が、実は彼女の血の滲むような努力(と金勘定)で作られていたという事実。
「殿下。解決策は一つしかありません」
会計官が重い口を開きました。
「メロメ様に……頭を下げて、戻ってきていただくしか」
「……断る!!」
殿下は即座に拒絶しました。
プライドが許しません。
あんなに大見得を切って婚約破棄した相手に、「やっぱり君がいないとダメなんだ」などと泣きつけるわけがありません。
「私は認めん! あいつがいなくても、私一人で何とかしてやる!」
「具体的には?」
「……えーと、その……」
殿下は泳ぐ視線で部屋を見渡し、ふと目についたものを指差しました。
「そうだ! この壺! この壺を売ろう! これは高価なものだろう?」
会計官がため息をつきました。
「それは贋作です。メロメ様が『本物は倉庫に保管し、執務室には安いレプリカを置きましょう。殿下が癇癪を起こして割るから』と言って入れ替えておいたものです。市場価値は銅貨三枚です」
「……あいつ、そこまで読んで……!?」
殿下は膝から崩れ落ちました。
その時、窓の外から明るい声が聞こえてきました。
「ギルバート様ぁ~! まだですかぁ? トレーニングの時間ですよぉ~!」
中庭で、ミミ嬢が丸太を振り回しながら手を振っています。
彼女の純粋な笑顔が、今の殿下には死神の微笑みに見えました。
「……金がない。ダンベルも買えない。プロテインも買えない」
「殿下?」
「ミミに……何て言えばいいんだ……」
殿下は頭を抱えました。
筋肉フェチの彼女にとって、『筋トレグッズを買ってくれない男』など、存在価値がないかもしれません。
愛(筋肉)の危機です。
「くそっ……! メロメの呪いだ……これはあいつの呪いなんだ……!」
違います。ただの無計画な浪費の結果です。
「おい、会計官! なんでもいいから金を作れ! 税金を上げろ! 国債を発行しろ!」
「無理です。すべての決裁権は、現在宰相閣下(クラウス)が握っています」
「……詰んだ」
ギルバート殿下は白目を剥きました。
王宮の豪華なシャンデリアの下、王太子の絶望の叫びがこだまします。
一方その頃。
ハミルトン公爵邸では。
「ふふっ、なんだか右耳が痒いですわ」
「誰かが君の噂でもしているのだろう。おそらく、王宮の方角で」
「やだ、怖い。お塩撒いておきましょう」
メロメは優雅にアフタヌーンティーを楽しんでいました。
そのテーブルの上には、王宮の混乱など知る由もない、平和で豊かな時間が流れていたのです。
王宮の執務室に、ギルバート殿下の怒鳴り声が響き渡りました。
ここは、メロメが去った後の王宮。
かつては書類が整然と並び、静寂が保たれていたこの部屋も、今では泥棒が入った後のように荒れ果てていました。
未決済の書類が雪崩を起こし、床には丸められた紙くずが散乱しています。
「申し訳ございません、殿下。しかし、予算が……」
頭を抱えているのは、財務省から派遣された中年の会計官です。
彼は胃薬の瓶を握りしめ、悲痛な表情で訴えました。
「予算予算と、うるさいぞ! 私は次期国王だぞ? ミミが『黄金のダンベルで上腕二頭筋を鍛えたい』と言っているのだ! 彼女の願いを叶えるのが、私の務めだろう!」
「お言葉ですが殿下。今年度の王宮費は、すでに底をついております」
「は?」
殿下はキョトンとした顔をしました。
「底をつく? まだ年度が始まって三ヶ月だぞ? そんな馬鹿な話があるか」
「事実です。……というより、先日の予算会議で、宰相閣下とメロメ嬢によって予算を半分に削減されたのが致命傷でした」
「ぐぬぬ……あいつらめ……!」
殿下は歯ぎしりをしました。
しかし、すぐに気を取り直して鼻を鳴らします。
「まあいい。ならば『予備費』を使え。どうせどこかに隠し財産があるのだろう?」
「ありません」
「は?」
「予備費も、緊急対策費も、すべて空(から)です」
会計官は、分厚い帳簿を殿下の目の前に突きつけました。
「ご覧ください。これが現在の王家の収支状況です」
殿下は帳簿を覗き込みました。
そこには、赤いインクで書かれた数字がびっしりと並んでいます。
「……なんだこれは。赤色ばかりで目がチカチカする」
「赤字だからです」
「なぜこんなことに? 先月までは普通に回っていたではないか!」
「それは……メロメ様がいらっしゃったからです」
会計官が、遠い目をして言いました。
「メロメ様は、天才的な資金繰りで王宮の財政を支えておられました。無駄な経費を極限まで削り、独自の投資で利益を生み出し、時にはご自身の私財を投じて、殿下の浪費の穴埋めをしていたのです」
「……な、なんだと?」
「例えば、殿下が先月購入された『白馬』。あれはメロメ様がご自身の宝石を売って支払われました」
「……」
「殿下が開催した『夜会』の費用。あれはメロメ様が王宮の不用品をオークションにかけて捻出した利益で賄われました」
「……」
「つまり、王宮の華やかな生活は、すべてメロメ様という一本の柱によって支えられていた砂上の楼閣だったのです。その柱がなくなった今、崩壊するのは当然の帰結です」
会計官の淡々とした説明に、殿下は口をパクパクとさせました。
「そ、そんな……まさか……あいつ、そんなことを……」
「ご存知なかったのですか? メロメ様は『殿下に余計な心配をかけたくない』と、裏ですべて処理されていましたから」
「……」
殿下の脳裏に、メロメの顔が浮かびました。
いつも澄ました顔で、「お金ならありますわ」と言っていた彼女。
「私の仕事ですから」と、淡々と書類を処理していた彼女。
それがまさか、自分の尻拭いのためだったとは。
「……いや、待て! 騙されんぞ!」
殿下はブンブンと首を振りました。
「あいつは『守銭奴』だ! 金に汚い女だ! 私のためになど動くはずがない! きっと、王家の金を横領していたに違いない!」
「調査しましたが、横領の事実は一切ありませんでした。むしろ、メロメ様からの『貸付金』の記録ばかりが出てきます」
「貸付金……?」
「はい。先日サインされた『借用書』以外にも、未回収の債権が山のように……」
「やめろ! 聞きたくない!」
殿下は耳を塞ぎました。
現実逃避です。
その時、執務室の扉がノックもなしに開きました。
「殿下ー! 大変だー!」
飛び込んできたのは、王宮の料理長でした。
彼もまた、エプロンを放り出しそうな勢いで怒っています。
「どうした料理長。騒々しい」
「食材が届きません! いつもの業者に注文したら、『前金じゃないと売らない』と言われました!」
「な、なんだと? 王家御用達の業者だぞ? ツケ払いが常識だろう!」
「それが……『メロメ様がいないなら、王家の信用力はゼロだ』と……」
「ぐっ……!」
さらに、メイド長も駆け込んできました。
「殿下! 洗濯係がストライキを起こしました!」
「今度はなんだ!」
「洗剤が切れました! 業務用の強力な洗剤は高価なので、予算が下りないと買えません! 殿下のシルクのシャツは、手洗いでは落ちない汚れ(ワインの染み等)ばかりなのに!」
「私のシャツが洗えないだと!?」
「あと、お風呂の魔石も切れそうです。今夜からは水風呂になります」
「ふざけるな! 私は王太子だぞ!?」
次々と持ち込まれるトラブル報告。
食材がない。
洗剤がない。
お湯が出ない。
馬の餌がない。
庭師が逃げた。
王宮の機能が、音を立てて停止していくのが分かります。
「ど、どうすればいいんだ……! 誰か! 誰か何とかしろ!」
殿下は叫びました。
しかし、誰も動きません。
会計官は胃薬を飲み、料理長は帽子を叩きつけ、メイド長は冷ややかな目で見ています。
かつて、これらのトラブルはすべて、メロメが事前に察知し、解決していたことでした。
「洗剤の在庫管理、見直しておきました」
「業者との価格交渉、終わらせておきました」
「魔石は安い時期に買いだめしておきました」
彼女の『先回り』があったからこそ、殿下は何不自由なく生活できていたのです。
「……メロメ」
殿下は呆然と呟きました。
いなくなって初めて気づく、その存在の巨大さ。
空気のように当たり前にあった『快適さ』が、実は彼女の血の滲むような努力(と金勘定)で作られていたという事実。
「殿下。解決策は一つしかありません」
会計官が重い口を開きました。
「メロメ様に……頭を下げて、戻ってきていただくしか」
「……断る!!」
殿下は即座に拒絶しました。
プライドが許しません。
あんなに大見得を切って婚約破棄した相手に、「やっぱり君がいないとダメなんだ」などと泣きつけるわけがありません。
「私は認めん! あいつがいなくても、私一人で何とかしてやる!」
「具体的には?」
「……えーと、その……」
殿下は泳ぐ視線で部屋を見渡し、ふと目についたものを指差しました。
「そうだ! この壺! この壺を売ろう! これは高価なものだろう?」
会計官がため息をつきました。
「それは贋作です。メロメ様が『本物は倉庫に保管し、執務室には安いレプリカを置きましょう。殿下が癇癪を起こして割るから』と言って入れ替えておいたものです。市場価値は銅貨三枚です」
「……あいつ、そこまで読んで……!?」
殿下は膝から崩れ落ちました。
その時、窓の外から明るい声が聞こえてきました。
「ギルバート様ぁ~! まだですかぁ? トレーニングの時間ですよぉ~!」
中庭で、ミミ嬢が丸太を振り回しながら手を振っています。
彼女の純粋な笑顔が、今の殿下には死神の微笑みに見えました。
「……金がない。ダンベルも買えない。プロテインも買えない」
「殿下?」
「ミミに……何て言えばいいんだ……」
殿下は頭を抱えました。
筋肉フェチの彼女にとって、『筋トレグッズを買ってくれない男』など、存在価値がないかもしれません。
愛(筋肉)の危機です。
「くそっ……! メロメの呪いだ……これはあいつの呪いなんだ……!」
違います。ただの無計画な浪費の結果です。
「おい、会計官! なんでもいいから金を作れ! 税金を上げろ! 国債を発行しろ!」
「無理です。すべての決裁権は、現在宰相閣下(クラウス)が握っています」
「……詰んだ」
ギルバート殿下は白目を剥きました。
王宮の豪華なシャンデリアの下、王太子の絶望の叫びがこだまします。
一方その頃。
ハミルトン公爵邸では。
「ふふっ、なんだか右耳が痒いですわ」
「誰かが君の噂でもしているのだろう。おそらく、王宮の方角で」
「やだ、怖い。お塩撒いておきましょう」
メロメは優雅にアフタヌーンティーを楽しんでいました。
そのテーブルの上には、王宮の混乱など知る由もない、平和で豊かな時間が流れていたのです。
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