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「……ボス。一つお聞きしてよろしいですか?」
城下町のメインストリート。
活気あふれる人混みの中で、私はこめかみをピキピキと引きつらせながら、隣を歩く男を見上げた。
「なんだい、クリム? 街の空気は美味しいな!」
アイザック公爵は、地味な茶色のコートにハンチング帽という変装姿だ。
だが、その無駄に長い脚と、隠しきれない高貴なオーラ、そして輝くような笑顔のせいで、道行く人々が振り返りまくっている。
全く「お忍び」になっていない。
「街の空気以前に、貴方の金銭感覚が心配です。……なぜ、リンゴを一つ買うのに金貨を出したんですか?」
私の手には、大量のリンゴが入った紙袋が握られている。
「え? 小銭を持っていなくてね。店主が『お釣りがないから全部持ってけ』と言ってくれたんだ。親切な国だと思わないか?」
「それは親切ではなく、ボッタクリと言います。リンゴ一つに金貨一枚なんて、リンゴの神様が激怒するレベルの暴利ですよ」
「そうなのか? だが、美味そうだからいいじゃないか」
公爵はシャクシャクとリンゴを齧りながら、子供のように目を輝かせている。
「見てくれ、クリム! あれは何だ? 棒に刺さった肉が回っている!」
「ケバブです」
「あっちは!? 人が火を吹いているぞ!」
「大道芸です。指を差さないでください」
「おお! あそこの店、妙に薄暗くて怪しげな雰囲気だ! 『秘密倶楽部』と書いてある!」
「……行っちゃ駄目です。教育に悪いです」
私は公爵の腕をガシッと掴み、路地裏へと方向転換させた。
まるで、初めて都会に来た幼児の引率だ。
「はぁ……。視察どころか、ただの観光ですね」
「楽しいからいいじゃないか。城の中に閉じこもっていては分からない熱気がここにはある」
公爵は満足そうだ。
私たちは大通りを抜け、少し庶民的なエリアに入った。
石畳は少し凸凹しており、洗濯物が頭上に翻っている。
「……ふむ。確かに、ここの道は補修が必要だな。馬車が通るには狭すぎる」
公爵の目が、ふと為政者のものに戻る。
「下水道の臭いも少し気になるな。排水設備の老朽化か……。クリム、メモを」
「はいはい。脳内ハードディスクに保存しました」
お、意外とちゃんと視察している。
ただの世間知らずのボンボンではないようだ。
その時だった。
「おいおい、そこの兄ちゃん、姉ちゃん」
薄暗い路地の曲がり角から、ガラに悪そうな男たちが三人、ぬらりと現れた。
薄汚れた革鎧、腰には安物の短剣、そしてニヤニヤとした下卑た笑み。
絵に描いたような「チンピラ」である。
「いい服着てんじゃねぇか。ここを通るなら『通行料』が必要だって知らねぇのか?」
リーダー格らしい、前歯が欠けた男がナイフを弄びながら近づいてくる。
公爵がピタリと足を止めた。
「……通行料? ここは公道だぞ? そんな税制は制定した覚えがないが」
「あぁ? なに寝ぼけたこと言ってんだ。俺たちがルールなんだよ」
男たちがジリジリと距離を詰めてくる。
公爵が私を背にかばうように前に出た。
その瞬間、彼から放たれる気配が変わった。
「……下がっていろ、クリム。怪我をさせたくない」
公爵の手が、コートの下に隠した護身用の短剣に伸びる。
その目は、戦場を知る武人のものだ。
(……あら。かっこいい)
一瞬ときめきかけたが、すぐに冷静になった。
ここで公爵が剣を抜けば、騒ぎになる。
身元がバレれば「お忍び」は終了だし、最悪の場合、チンピラ相手に過剰防衛で国際問題になりかねない。
「ボス。ストップ」
私は公爵の背中を叩き、前に出た。
「クリム!? 危ないぞ!」
「大丈夫です。物理攻撃は服が汚れるので嫌いです」
私はスカートの埃を払うふりをして、優雅にチンピラたちの前に立った。
そして、ニッコリと微笑んだ。
「ごきげんよう、皆様。通行料をお求めとのことですが……領収書は発行していただけますか?」
「あ?」
チンピラたちがキョトンとする。
「りょ、りょうしゅうしょ?」
「ええ。経費で落としますので。但し書きは『カツアゲ代』でよろしいかしら?」
「ふ、ふざけてんのか! 金を出せっつってんだよ!」
リーダー格がナイフを突き出してくる。
公爵が動こうとするのを、私は手で制した。
私は、ナイフの切っ先を人差し指でツンと弾いた。
「手入れがなっていませんわね」
「は?」
「刃こぼれしている上に、錆が浮いています。そんなナクラで人を脅そうだなんて、道具への冒涜ですし、プロ意識の欠如を感じますわ」
私は冷ややかな目で男を見下ろした(背伸びをして)。
「それに、その構え。腰が入っていません。右足に重心がかかりすぎているので、私が左足を軽く蹴れば、貴方は無様に転んで自分のナイフで鼻の穴を拡張することになりますよ?」
「な、なんだと……っ!?」
「後ろの二人もそうです。髪型を気にして前髪ばかり触っていますが、威嚇のつもりですか? 単に『頭皮が痒い人』に見えます」
「ぶっ……!」
後ろのアイザック公爵が吹き出した。
チンピラたちの顔が赤くなる。
「て、てめぇ! 女だと思って舐めやがって!」
「舐めてなどいませんわ。観察し、分析し、事実を陳列しただけです」
私は一歩踏み出した。
チンピラがたじろぐ。
「大体、貴方たち、そんなことをして恥ずかしくないのですか? 五体満足で、健康な体があるのに、やることは路地裏での小銭稼ぎ? お母様が泣きますよ?」
「う、うるせぇ!」
「『うるせぇ』しか言えないのですか? 語彙力が三歳児レベルですわね。いいですか、労働市場は人手不足なんです。北の鉱山では、貴方たちのような体力だけはある無駄飯食らい……いえ、若者を求めています」
私は懐から、先日破り捨てずに保管しておいた求人チラシを取り出した。
「ほら、日給制で三食昼寝付き。筋肉もつくしお金も貯まる。ここで通行人の小銭をせびって一生を終えるか、それとも国の産業に貢献して『真っ当な人間』になるか。……選ぶのは貴方たちです」
私の言葉は、鋭利な刃物となって彼らのガラスのハートに突き刺さった。
リーダー格の男の手が震える。
「お、俺だって……好きでこんなことやってんじゃねぇ……! 就職面接で『顔が怖い』って落とされたんだよぉ……!」
「顔なんてどうでもいいのです。大事なのは中身……と言いたいところですが、貴方の場合、中身もスカスカだから落ちたのでしょう。まずは笑顔の練習から始めなさい。はい、口角を上げて!」
「こ、こうか……?」
男が引きつった笑顔を作る。
「ひどい顔ですね。魔除けのお面ですか? まあ、努力賞としてリンゴをあげましょう」
私は持っていた紙袋からリンゴを三個取り出し、彼らに投げ渡した。
「それを食べたら、ハロワに行きなさい。さもなければ……」
私は声を一段低くし、ドスの効いた声で囁いた。
「次に会った時は、その錆びたナイフで全身の無駄毛処理をして差し上げますわよ?」
「ひ、ひいいいいいっ!!」
チンピラたちは悲鳴を上げ、リンゴを抱えて脱兎のごとく逃げ出した。
「お、覚えてやがれー! ……ハロワ行ってくるぅぅぅ!」
嵐が去った路地裏に、静寂が戻る。
「……ふぅ。野暮用で時間を取られましたね」
私が髪をかき上げると、背後から拍手が聞こえた。
「……すごいな、クリム」
アイザック公爵が、目を丸くして感嘆していた。
「剣を抜かずに敵を制圧し、あまつさえ更生させて就職斡旋までするとは……。君は魔法使いか?」
「いいえ、ただの口うるさい女です。あんな雑魚に、貴方様の手を煩わせるまでもありません」
「『全身の無駄毛処理』には痺れたよ。今度、外交交渉で使ってみようかな」
「やめてください、戦争になります」
公爵は嬉しそうに私の頭をポンポンと撫でた。
「ありがとう、クリム。君を守るつもりでいたが、逆に守られてしまったな」
「勘違いしないでください。私は私の平穏な視察時間を守っただけです」
「素直じゃないな。……だが、君のおかげで分かったこともある」
公爵は真剣な顔で、チンピラたちが消えた方向を見つめた。
「若者が職にあぶれ、犯罪に手を染めざるを得ない状況があるということだ。……鉱山の求人だけでなく、街中での雇用対策も必要だな」
「……そうですね。彼らが『顔が怖い』だけで弾かれないような、職業訓練校を作るのも手かもしれません」
「採用だ。帰ったらすぐに予算を組もう」
公爵はニカッと笑った。
「やっぱり君を連れてきて正解だった。君と歩くと、世界が違って見える」
その笑顔の眩しさに、私は少しだけ目を逸らした。
「……ボス。口説き文句の練習なら、鏡に向かってやってください」
「本心だとも。さあ、次はあっちの市場に行こう! 今度こそ変なものを買わないよう、君が手を繋いでいてくれ」
「は? なんでそうなるんですか」
「迷子防止だ」
公爵は強引に私の手を取り、歩き出した。
その手は大きくて、温かくて。
……振りほどくタイミングを逃した私は、諦めてため息をついた。
「……迷子になったら、館内放送で呼び出しますからね」
「ははは! 『迷子の公爵様、お連れ様の毒舌美女がお待ちです』ってか?」
私たちは手を繋いだまま、雑踏の中へと消えていった。
そんな平和なデート(仮)を楽しむ私たちの背後に、遠くから不穏な影が近づいているとも知らずに。
城下町のメインストリート。
活気あふれる人混みの中で、私はこめかみをピキピキと引きつらせながら、隣を歩く男を見上げた。
「なんだい、クリム? 街の空気は美味しいな!」
アイザック公爵は、地味な茶色のコートにハンチング帽という変装姿だ。
だが、その無駄に長い脚と、隠しきれない高貴なオーラ、そして輝くような笑顔のせいで、道行く人々が振り返りまくっている。
全く「お忍び」になっていない。
「街の空気以前に、貴方の金銭感覚が心配です。……なぜ、リンゴを一つ買うのに金貨を出したんですか?」
私の手には、大量のリンゴが入った紙袋が握られている。
「え? 小銭を持っていなくてね。店主が『お釣りがないから全部持ってけ』と言ってくれたんだ。親切な国だと思わないか?」
「それは親切ではなく、ボッタクリと言います。リンゴ一つに金貨一枚なんて、リンゴの神様が激怒するレベルの暴利ですよ」
「そうなのか? だが、美味そうだからいいじゃないか」
公爵はシャクシャクとリンゴを齧りながら、子供のように目を輝かせている。
「見てくれ、クリム! あれは何だ? 棒に刺さった肉が回っている!」
「ケバブです」
「あっちは!? 人が火を吹いているぞ!」
「大道芸です。指を差さないでください」
「おお! あそこの店、妙に薄暗くて怪しげな雰囲気だ! 『秘密倶楽部』と書いてある!」
「……行っちゃ駄目です。教育に悪いです」
私は公爵の腕をガシッと掴み、路地裏へと方向転換させた。
まるで、初めて都会に来た幼児の引率だ。
「はぁ……。視察どころか、ただの観光ですね」
「楽しいからいいじゃないか。城の中に閉じこもっていては分からない熱気がここにはある」
公爵は満足そうだ。
私たちは大通りを抜け、少し庶民的なエリアに入った。
石畳は少し凸凹しており、洗濯物が頭上に翻っている。
「……ふむ。確かに、ここの道は補修が必要だな。馬車が通るには狭すぎる」
公爵の目が、ふと為政者のものに戻る。
「下水道の臭いも少し気になるな。排水設備の老朽化か……。クリム、メモを」
「はいはい。脳内ハードディスクに保存しました」
お、意外とちゃんと視察している。
ただの世間知らずのボンボンではないようだ。
その時だった。
「おいおい、そこの兄ちゃん、姉ちゃん」
薄暗い路地の曲がり角から、ガラに悪そうな男たちが三人、ぬらりと現れた。
薄汚れた革鎧、腰には安物の短剣、そしてニヤニヤとした下卑た笑み。
絵に描いたような「チンピラ」である。
「いい服着てんじゃねぇか。ここを通るなら『通行料』が必要だって知らねぇのか?」
リーダー格らしい、前歯が欠けた男がナイフを弄びながら近づいてくる。
公爵がピタリと足を止めた。
「……通行料? ここは公道だぞ? そんな税制は制定した覚えがないが」
「あぁ? なに寝ぼけたこと言ってんだ。俺たちがルールなんだよ」
男たちがジリジリと距離を詰めてくる。
公爵が私を背にかばうように前に出た。
その瞬間、彼から放たれる気配が変わった。
「……下がっていろ、クリム。怪我をさせたくない」
公爵の手が、コートの下に隠した護身用の短剣に伸びる。
その目は、戦場を知る武人のものだ。
(……あら。かっこいい)
一瞬ときめきかけたが、すぐに冷静になった。
ここで公爵が剣を抜けば、騒ぎになる。
身元がバレれば「お忍び」は終了だし、最悪の場合、チンピラ相手に過剰防衛で国際問題になりかねない。
「ボス。ストップ」
私は公爵の背中を叩き、前に出た。
「クリム!? 危ないぞ!」
「大丈夫です。物理攻撃は服が汚れるので嫌いです」
私はスカートの埃を払うふりをして、優雅にチンピラたちの前に立った。
そして、ニッコリと微笑んだ。
「ごきげんよう、皆様。通行料をお求めとのことですが……領収書は発行していただけますか?」
「あ?」
チンピラたちがキョトンとする。
「りょ、りょうしゅうしょ?」
「ええ。経費で落としますので。但し書きは『カツアゲ代』でよろしいかしら?」
「ふ、ふざけてんのか! 金を出せっつってんだよ!」
リーダー格がナイフを突き出してくる。
公爵が動こうとするのを、私は手で制した。
私は、ナイフの切っ先を人差し指でツンと弾いた。
「手入れがなっていませんわね」
「は?」
「刃こぼれしている上に、錆が浮いています。そんなナクラで人を脅そうだなんて、道具への冒涜ですし、プロ意識の欠如を感じますわ」
私は冷ややかな目で男を見下ろした(背伸びをして)。
「それに、その構え。腰が入っていません。右足に重心がかかりすぎているので、私が左足を軽く蹴れば、貴方は無様に転んで自分のナイフで鼻の穴を拡張することになりますよ?」
「な、なんだと……っ!?」
「後ろの二人もそうです。髪型を気にして前髪ばかり触っていますが、威嚇のつもりですか? 単に『頭皮が痒い人』に見えます」
「ぶっ……!」
後ろのアイザック公爵が吹き出した。
チンピラたちの顔が赤くなる。
「て、てめぇ! 女だと思って舐めやがって!」
「舐めてなどいませんわ。観察し、分析し、事実を陳列しただけです」
私は一歩踏み出した。
チンピラがたじろぐ。
「大体、貴方たち、そんなことをして恥ずかしくないのですか? 五体満足で、健康な体があるのに、やることは路地裏での小銭稼ぎ? お母様が泣きますよ?」
「う、うるせぇ!」
「『うるせぇ』しか言えないのですか? 語彙力が三歳児レベルですわね。いいですか、労働市場は人手不足なんです。北の鉱山では、貴方たちのような体力だけはある無駄飯食らい……いえ、若者を求めています」
私は懐から、先日破り捨てずに保管しておいた求人チラシを取り出した。
「ほら、日給制で三食昼寝付き。筋肉もつくしお金も貯まる。ここで通行人の小銭をせびって一生を終えるか、それとも国の産業に貢献して『真っ当な人間』になるか。……選ぶのは貴方たちです」
私の言葉は、鋭利な刃物となって彼らのガラスのハートに突き刺さった。
リーダー格の男の手が震える。
「お、俺だって……好きでこんなことやってんじゃねぇ……! 就職面接で『顔が怖い』って落とされたんだよぉ……!」
「顔なんてどうでもいいのです。大事なのは中身……と言いたいところですが、貴方の場合、中身もスカスカだから落ちたのでしょう。まずは笑顔の練習から始めなさい。はい、口角を上げて!」
「こ、こうか……?」
男が引きつった笑顔を作る。
「ひどい顔ですね。魔除けのお面ですか? まあ、努力賞としてリンゴをあげましょう」
私は持っていた紙袋からリンゴを三個取り出し、彼らに投げ渡した。
「それを食べたら、ハロワに行きなさい。さもなければ……」
私は声を一段低くし、ドスの効いた声で囁いた。
「次に会った時は、その錆びたナイフで全身の無駄毛処理をして差し上げますわよ?」
「ひ、ひいいいいいっ!!」
チンピラたちは悲鳴を上げ、リンゴを抱えて脱兎のごとく逃げ出した。
「お、覚えてやがれー! ……ハロワ行ってくるぅぅぅ!」
嵐が去った路地裏に、静寂が戻る。
「……ふぅ。野暮用で時間を取られましたね」
私が髪をかき上げると、背後から拍手が聞こえた。
「……すごいな、クリム」
アイザック公爵が、目を丸くして感嘆していた。
「剣を抜かずに敵を制圧し、あまつさえ更生させて就職斡旋までするとは……。君は魔法使いか?」
「いいえ、ただの口うるさい女です。あんな雑魚に、貴方様の手を煩わせるまでもありません」
「『全身の無駄毛処理』には痺れたよ。今度、外交交渉で使ってみようかな」
「やめてください、戦争になります」
公爵は嬉しそうに私の頭をポンポンと撫でた。
「ありがとう、クリム。君を守るつもりでいたが、逆に守られてしまったな」
「勘違いしないでください。私は私の平穏な視察時間を守っただけです」
「素直じゃないな。……だが、君のおかげで分かったこともある」
公爵は真剣な顔で、チンピラたちが消えた方向を見つめた。
「若者が職にあぶれ、犯罪に手を染めざるを得ない状況があるということだ。……鉱山の求人だけでなく、街中での雇用対策も必要だな」
「……そうですね。彼らが『顔が怖い』だけで弾かれないような、職業訓練校を作るのも手かもしれません」
「採用だ。帰ったらすぐに予算を組もう」
公爵はニカッと笑った。
「やっぱり君を連れてきて正解だった。君と歩くと、世界が違って見える」
その笑顔の眩しさに、私は少しだけ目を逸らした。
「……ボス。口説き文句の練習なら、鏡に向かってやってください」
「本心だとも。さあ、次はあっちの市場に行こう! 今度こそ変なものを買わないよう、君が手を繋いでいてくれ」
「は? なんでそうなるんですか」
「迷子防止だ」
公爵は強引に私の手を取り、歩き出した。
その手は大きくて、温かくて。
……振りほどくタイミングを逃した私は、諦めてため息をついた。
「……迷子になったら、館内放送で呼び出しますからね」
「ははは! 『迷子の公爵様、お連れ様の毒舌美女がお待ちです』ってか?」
私たちは手を繋いだまま、雑踏の中へと消えていった。
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