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第一章
アリスの憂鬱
しおりを挟むせっかく命が助かるってなった時に、レン王子はなんと言う爆弾発言を残してくれたのだろう。
神聖な河原とやらに入った事を掘り返せば、話が拗れるのは避けられないというのに。私は助かるの、助からないの。
どっちなのか今ここでハッキリさせて欲しい。
「兄さん、」
「何だ、」
「汝の願い届く時、選ばれし聖女ここに舞い戻らん。…その言葉を思い出せばいい。そうしたらこの女を殺す必要は無いさ。」
命の灯火が消えそうになっていると実感していた頃、レオ王子の口からまるで呪文のような言葉が放たれた。
ーー汝の願い届く時。選ばれし聖女、ここに舞い戻らん…。
何処かで聞いたような台詞だ。
はて、何処だっただろうか、と。
頭の中でレオ王子が口にしたその言葉を唱えた刹那。
産まれた時から今まで、不思議な力に目覚めるなんて、おとぎ話のような事が無かった私。
ごく普通の身体で、貧乏暮らししていて身なりが綺麗になる事も、何ひとつなかった。
「レオ、お前…正気か?
このみすぼらしい女に、そんなものが…」
レン王子がそう言って私を見た時、鋭さを描いていた藍色の目がカッと開かれたのだ。
私もレン王子の表情を見て、何が起きたのか理解出来ず、自分の身体に視線を移す。
「な、に…これ…、」
桃月アリス。
私はごく普通の人間の、はずでした。
普通の人間から産まれた、はずでした。
「…身体が…光ってる…、」
出稼ぎに行って処刑をされそうになった瞬間、普通の人間である事の事実を覆すような事が、起きたのです。
「…決まり、だ。この女は…生かす、」
「…そうだな、兄さん。」
神秘的に光った私の身体を、普通の人間だと証明するものは何も無い。
私を見て納得したように頷いた二人を見つめ返し、助けを求めるものの。返されたのはこっちの話を聞かずに決定づけられた事で。
ひたすらに困惑しながら格子を握り、訴えた。
「私は、どうなるの?」
あんな事を吐いた女を生かすのも凄いと感じた。
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