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駐車場で
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「いつまでも泣くなよ。俺が泣かせたわけでもないしな。少し落ち着け。コーヒーでも入れてやるよ」
ムッとしながらソファから立ち上がると、
「わたしが入れます」
泣いていた美穂が即座に反応してキッチンへ向かった。
こういうことは勝手知ったる美穂にまかせたほうがいいと思い、素直にソファに腰をおろした。
美穂は一人分のコーヒーだけをローテーブルに置くと、
「わたし、少し片付けます。散らかってると落ち着かなくて」
と言って、またキッチンへ戻った。
「掃除は明日すればいいだろう。ここに来て座れよ」
相変わらず人のために何かをしてないと気がすまないのだろう。
「気にしないで休んでいてください。生ゴミの臭いが気になって、、」
コーヒーをすすりながら、キッチンで洗い物をしているカウンター越しの美穂を見つめた。
もう、奴のところへ帰るのは諦めたのか?
まだ油断はできない。
美穂は律儀なところがあるから、あの男との約束は破れないと思っているはずだ。
なにか手を打っておかなければいけない。
悠李と雪花を呼び出しておくのがいいかも知れない。美穂は子ども好きだし、頼られていれば無下にはできないだろう。
そうだ、子供たちとの今後の面会を考えても、美穂を手放すわけにはいかない。
あんな若造に取られてたまるか。
明日彩矢に電話して、日曜は子どもたちとの面会日にしてもらおう。
雪花はそうでもないが、悠李は俺に会いたがっているようだから、すぐに承諾してくれるだろう。
「今度の日曜、悠李と雪花が遊びに来ることになってるんだ。美穂が帰って来てくれて助かったよ」
「え、悠ちゃんと雪花ちゃんが?」
「ああ、雪花が喜ぶな。美穂がいないと機嫌が悪くなるからな。間に合ってよかったよ」
「………… 」
美穂は返事もせずに、思いつめたようすでキッチンを片付けていた。
いくら子ども好きと言っても、我が子ではないからな。引き止めるための道具にはならないかも知れない。
美穂にしてみれば子持ちのバツ2男より、年下の学生のほうが未来は明るく見えるに違いない。
ーーもしかして、
俺が美穂に捨てられるのか?
結婚相手に不自由するなど思ってもみなかった。
いくら医者が引く手あまただとしても、結婚相手となると誰でもいいと言うわけにはいかない。
三十も過ぎてバツ2ともなると、若いナースたちからもあまり相手にされなくなる。
あのチャラい研修医の川崎のほうがずっとモテる。
二十代だった頃の俺ほどではないけどな。
齢をとったんだなと、しみじみ感じて気分を悪くしていたところに、スマホの着信音が鳴った。
さっき出て行ったばかりの茉理からのラインだった。
“ ねぇ、いま誰と一緒にいると思う? ”
高校生だけあって、いかにもくだらない内容。
"おまえが誰といようと知ったことか。ガキは歯をみがいてサッサと寝ろ っ”
まったく、こんな時に暇人の相手などさせられてたまるか。
だけど、すぐにきた返信が、
" 茉理はいま、美穂さんの彼氏と一緒にいるんだよーん!"
ふざけている茉理の返信を無視できなくなった。
" なんでおまえがあの男と一緒なんだよ ”
“ だって、玄関のドアを叩いて叫んでたでしょ。管理事務所の人が来ちゃうんじゃないかと思って。警察に通報でもされたら大変じゃない ”
“ 通報されたほうがよかったんだよ。余計なことばっかりだな、おまえは 。今どこにいるんだ? ”
“ マンションの駐車場。彼、明日の朝まで車の中でずっと待ってるんですって ”
“ 何年待っても美穂は戻らないと言ってやれ ”
茉理とそんなやり取りをしていたら、ゴミ袋を両手に下げた美穂が、「明日は生ゴミの日なので出しておきますね」と言って、玄関に向かった。
「あ、いいよ、俺が行く」
美穂からゴミ袋を奪い取り、玄関を出た。
奴は自らを婚約者だと言っていた。
たった一ヶ月の付き合いで。
どこまで本気なのか。
一見、まじめな好青年に見えなくもなかったが、所詮あの年代の男はヤルことだけが目的だろう。
飽きるのも早い。
まだ遊びに夢中なあの年代で、結婚などするわけがない。たとえ、どんなに燃え上がるような恋だとしても。
美穂は遊ばれてるってことがわからないのか。
エレベーターで一階まで降り、不愉快な気分でゴミ収集所へ向かった。
茉理と奴はどこにいるのだろう。
暗闇の駐車場を見まわしたけれど、見つけられるわけもない。
茉理は大丈夫なのか?
得体の知れない男の車になんか乗って。
どいつもこいつもバカな女ばっかりだ。
ダストボックスの蓋を開け、ドサリと二つのゴミ袋を放り込んだ。
美穂がいてくれたら、明日からはこんな雑用からも解放されるってわけだ。
ゴミ集積所からマンションの出入り口に戻ると、茉理とあいつが立っていた。
「茉理! おまえはバカか? こんな時間に知らない男の車になんか乗って」
並んで立っていた若い二人は、なんとなく似合いのカップルのように見えた。
そのことに益々苛立ちが増した。
「わー 茉理の保護者みたい。それともヤキモチ?」
茉理はおどけたように可愛い子ぶって、小首をかしげた。
「なんでヤキモチなんか焼かなきゃいけないんだよ。大体おまえなんか相手にもされてないんだろ」
切実な眼差しで俺を見つめている男は、茉理など眼中にないといった感じだ。
「先生はそんなだから美穂さんを取られちゃうんだよ。マジで性格悪すぎ!」
茉理はひどく気分を害したように俺を睨みつけた。
「あの、、すみません。さっきは失礼なことをしました。謝ります。でも少しでいいんです。美穂さんと話をさせてもらえませんか? 彼女がここに残りたいというなら、僕は諦めて帰ります」
真摯に訴える奴の若さとひたむきさを俺は恐れた。
「ここに残るに決まってるだろう。美穂は俺と茉理のことを誤解していただけだ。だから問題はもう解決したんだ。美穂のことは諦めてくれ」
目も合わせずに、マンションへ入ろうとした俺の前に、奴は立ちはだかった。
「待ってください! 僕は彼女の口からそれを聞きたいんです」
「だまれっ! 俺のオンナに手を出しやがって。殴られたいのか!!」
思わず奴のシャツの襟首をつかんでいた。
「殴ってもいいです。美穂さんと話をさせてください!」
男はひるむことなく真っ直ぐに俺を見すえた。
ーーこいつ、マジで本気だ。
本気で美穂と結婚するつもりだな。
「やめて!! お願い、ケンカしないで!」
その時マンションの扉があき、背後から美穂の声が聞こえた。
「美穂さん!!」
喜びに満ちた奴の顔を見て、途方もなく敗北感に苛まれた。
ムッとしながらソファから立ち上がると、
「わたしが入れます」
泣いていた美穂が即座に反応してキッチンへ向かった。
こういうことは勝手知ったる美穂にまかせたほうがいいと思い、素直にソファに腰をおろした。
美穂は一人分のコーヒーだけをローテーブルに置くと、
「わたし、少し片付けます。散らかってると落ち着かなくて」
と言って、またキッチンへ戻った。
「掃除は明日すればいいだろう。ここに来て座れよ」
相変わらず人のために何かをしてないと気がすまないのだろう。
「気にしないで休んでいてください。生ゴミの臭いが気になって、、」
コーヒーをすすりながら、キッチンで洗い物をしているカウンター越しの美穂を見つめた。
もう、奴のところへ帰るのは諦めたのか?
まだ油断はできない。
美穂は律儀なところがあるから、あの男との約束は破れないと思っているはずだ。
なにか手を打っておかなければいけない。
悠李と雪花を呼び出しておくのがいいかも知れない。美穂は子ども好きだし、頼られていれば無下にはできないだろう。
そうだ、子供たちとの今後の面会を考えても、美穂を手放すわけにはいかない。
あんな若造に取られてたまるか。
明日彩矢に電話して、日曜は子どもたちとの面会日にしてもらおう。
雪花はそうでもないが、悠李は俺に会いたがっているようだから、すぐに承諾してくれるだろう。
「今度の日曜、悠李と雪花が遊びに来ることになってるんだ。美穂が帰って来てくれて助かったよ」
「え、悠ちゃんと雪花ちゃんが?」
「ああ、雪花が喜ぶな。美穂がいないと機嫌が悪くなるからな。間に合ってよかったよ」
「………… 」
美穂は返事もせずに、思いつめたようすでキッチンを片付けていた。
いくら子ども好きと言っても、我が子ではないからな。引き止めるための道具にはならないかも知れない。
美穂にしてみれば子持ちのバツ2男より、年下の学生のほうが未来は明るく見えるに違いない。
ーーもしかして、
俺が美穂に捨てられるのか?
結婚相手に不自由するなど思ってもみなかった。
いくら医者が引く手あまただとしても、結婚相手となると誰でもいいと言うわけにはいかない。
三十も過ぎてバツ2ともなると、若いナースたちからもあまり相手にされなくなる。
あのチャラい研修医の川崎のほうがずっとモテる。
二十代だった頃の俺ほどではないけどな。
齢をとったんだなと、しみじみ感じて気分を悪くしていたところに、スマホの着信音が鳴った。
さっき出て行ったばかりの茉理からのラインだった。
“ ねぇ、いま誰と一緒にいると思う? ”
高校生だけあって、いかにもくだらない内容。
"おまえが誰といようと知ったことか。ガキは歯をみがいてサッサと寝ろ っ”
まったく、こんな時に暇人の相手などさせられてたまるか。
だけど、すぐにきた返信が、
" 茉理はいま、美穂さんの彼氏と一緒にいるんだよーん!"
ふざけている茉理の返信を無視できなくなった。
" なんでおまえがあの男と一緒なんだよ ”
“ だって、玄関のドアを叩いて叫んでたでしょ。管理事務所の人が来ちゃうんじゃないかと思って。警察に通報でもされたら大変じゃない ”
“ 通報されたほうがよかったんだよ。余計なことばっかりだな、おまえは 。今どこにいるんだ? ”
“ マンションの駐車場。彼、明日の朝まで車の中でずっと待ってるんですって ”
“ 何年待っても美穂は戻らないと言ってやれ ”
茉理とそんなやり取りをしていたら、ゴミ袋を両手に下げた美穂が、「明日は生ゴミの日なので出しておきますね」と言って、玄関に向かった。
「あ、いいよ、俺が行く」
美穂からゴミ袋を奪い取り、玄関を出た。
奴は自らを婚約者だと言っていた。
たった一ヶ月の付き合いで。
どこまで本気なのか。
一見、まじめな好青年に見えなくもなかったが、所詮あの年代の男はヤルことだけが目的だろう。
飽きるのも早い。
まだ遊びに夢中なあの年代で、結婚などするわけがない。たとえ、どんなに燃え上がるような恋だとしても。
美穂は遊ばれてるってことがわからないのか。
エレベーターで一階まで降り、不愉快な気分でゴミ収集所へ向かった。
茉理と奴はどこにいるのだろう。
暗闇の駐車場を見まわしたけれど、見つけられるわけもない。
茉理は大丈夫なのか?
得体の知れない男の車になんか乗って。
どいつもこいつもバカな女ばっかりだ。
ダストボックスの蓋を開け、ドサリと二つのゴミ袋を放り込んだ。
美穂がいてくれたら、明日からはこんな雑用からも解放されるってわけだ。
ゴミ集積所からマンションの出入り口に戻ると、茉理とあいつが立っていた。
「茉理! おまえはバカか? こんな時間に知らない男の車になんか乗って」
並んで立っていた若い二人は、なんとなく似合いのカップルのように見えた。
そのことに益々苛立ちが増した。
「わー 茉理の保護者みたい。それともヤキモチ?」
茉理はおどけたように可愛い子ぶって、小首をかしげた。
「なんでヤキモチなんか焼かなきゃいけないんだよ。大体おまえなんか相手にもされてないんだろ」
切実な眼差しで俺を見つめている男は、茉理など眼中にないといった感じだ。
「先生はそんなだから美穂さんを取られちゃうんだよ。マジで性格悪すぎ!」
茉理はひどく気分を害したように俺を睨みつけた。
「あの、、すみません。さっきは失礼なことをしました。謝ります。でも少しでいいんです。美穂さんと話をさせてもらえませんか? 彼女がここに残りたいというなら、僕は諦めて帰ります」
真摯に訴える奴の若さとひたむきさを俺は恐れた。
「ここに残るに決まってるだろう。美穂は俺と茉理のことを誤解していただけだ。だから問題はもう解決したんだ。美穂のことは諦めてくれ」
目も合わせずに、マンションへ入ろうとした俺の前に、奴は立ちはだかった。
「待ってください! 僕は彼女の口からそれを聞きたいんです」
「だまれっ! 俺のオンナに手を出しやがって。殴られたいのか!!」
思わず奴のシャツの襟首をつかんでいた。
「殴ってもいいです。美穂さんと話をさせてください!」
男はひるむことなく真っ直ぐに俺を見すえた。
ーーこいつ、マジで本気だ。
本気で美穂と結婚するつもりだな。
「やめて!! お願い、ケンカしないで!」
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