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もう、逃れられない!
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夕方のニュースで、和樹のことが報道されるのではないだろうかと、夕飯の支度をしながらも気になって仕方がなかった。
まだ発見もされずに、あの厨房で横たわったままなのだろうか。
和樹には2歳年下の弟がいるけれど、あまり仲の良い兄弟ではなかったと記憶している。
和樹は父親を毛嫌いしている。
高校生の頃、一時期不登校になり、父親とはかなり激しいバトルがあったらしい。
いつだったか、酔って階段から落ち、顔面を強打して入院したということがあった。
誰もが息子の和樹に殴られたのだと思った。
母親の和歌子だけが、唯一和樹のよき理解者であった。
和樹にしてみれば、私は憎んでも憎みきれないほどの人間だっただろう。
ーー殺すしかなかったのだ。
殺害された和樹のことは、夜のニュースでも報道はされなかった。
客も知人も訪れることなく、和樹はまだ発見されていないのだろうか。
三人もの人間を殺めておきながらも、和樹の人生を哀れに思った。
なんと淋しくも虚しい人生だったのだろう。
でも、生きてこれからの大変な人生を生きるより、和樹は母親の元へ旅立った方が幸せなような気がした。
殺人などを犯した極悪人は、こんな風に自分の動機を悪から善に置き換えて、弁解したがるものかも知れない。
部活を終えた息子の健太と、受験生なのかなんなのか、先行き不明な高3の日菜も帰って来て夕食をすませた。
夜の8時も過ぎて、夫の貴之から電話が来た。
貴之とはずっと不仲なままだったから、電話をしてくるということは、余程のことだと察知した。
「はい、……」
「俺だけど、甥っ子の和樹が大変なことになった」
「えっ、和樹が一体どうしたの?」
ーーとうとう発見されたのね。
「殺されたんだ!」
「な、、なんですって!!」
誰よりも事情を知っているはずなのに、自然と驚きの声が出た。
「俺、今、義兄さんと和樹のラーメン屋にいるんだけど、これから検死なんかが始まるから帰りは遅くなる!」
「わ、わかったわ。じゃあ、気をつけて」
和歌子のときとは比べものにならないほどの恐怖に襲われる。
警察はきっと親族からも何かを聞き出そうとして来るに違いない。
私にはアリバイがない。
あの日は和樹のところへ行く前に、ハローワークへ寄ったけれど、ずっとそこにいたと言うのも怪しい。
証言してくれる人はいないのだから。
むしろ和樹のラーメン屋がある手稲駅には、行ってないことにしたほうが安全だ。
あの日はずっと家にいたということに
出来るだろうか。
手稲まで出かけたことを知っている人は
いないはずだと思うのだけれど。
でも、この嘘がバレたら……
そのときはもうおしまいということになる。
警察は和歌子の事故死と、今回の和樹の事件を結びつけるに違いない。
そうすれば私は間違いなく重要参考人だ。
防犯カメラに、固定電話の履歴……。
ーーもう逃げられない!
まだ発見もされずに、あの厨房で横たわったままなのだろうか。
和樹には2歳年下の弟がいるけれど、あまり仲の良い兄弟ではなかったと記憶している。
和樹は父親を毛嫌いしている。
高校生の頃、一時期不登校になり、父親とはかなり激しいバトルがあったらしい。
いつだったか、酔って階段から落ち、顔面を強打して入院したということがあった。
誰もが息子の和樹に殴られたのだと思った。
母親の和歌子だけが、唯一和樹のよき理解者であった。
和樹にしてみれば、私は憎んでも憎みきれないほどの人間だっただろう。
ーー殺すしかなかったのだ。
殺害された和樹のことは、夜のニュースでも報道はされなかった。
客も知人も訪れることなく、和樹はまだ発見されていないのだろうか。
三人もの人間を殺めておきながらも、和樹の人生を哀れに思った。
なんと淋しくも虚しい人生だったのだろう。
でも、生きてこれからの大変な人生を生きるより、和樹は母親の元へ旅立った方が幸せなような気がした。
殺人などを犯した極悪人は、こんな風に自分の動機を悪から善に置き換えて、弁解したがるものかも知れない。
部活を終えた息子の健太と、受験生なのかなんなのか、先行き不明な高3の日菜も帰って来て夕食をすませた。
夜の8時も過ぎて、夫の貴之から電話が来た。
貴之とはずっと不仲なままだったから、電話をしてくるということは、余程のことだと察知した。
「はい、……」
「俺だけど、甥っ子の和樹が大変なことになった」
「えっ、和樹が一体どうしたの?」
ーーとうとう発見されたのね。
「殺されたんだ!」
「な、、なんですって!!」
誰よりも事情を知っているはずなのに、自然と驚きの声が出た。
「俺、今、義兄さんと和樹のラーメン屋にいるんだけど、これから検死なんかが始まるから帰りは遅くなる!」
「わ、わかったわ。じゃあ、気をつけて」
和歌子のときとは比べものにならないほどの恐怖に襲われる。
警察はきっと親族からも何かを聞き出そうとして来るに違いない。
私にはアリバイがない。
あの日は和樹のところへ行く前に、ハローワークへ寄ったけれど、ずっとそこにいたと言うのも怪しい。
証言してくれる人はいないのだから。
むしろ和樹のラーメン屋がある手稲駅には、行ってないことにしたほうが安全だ。
あの日はずっと家にいたということに
出来るだろうか。
手稲まで出かけたことを知っている人は
いないはずだと思うのだけれど。
でも、この嘘がバレたら……
そのときはもうおしまいということになる。
警察は和歌子の事故死と、今回の和樹の事件を結びつけるに違いない。
そうすれば私は間違いなく重要参考人だ。
防犯カメラに、固定電話の履歴……。
ーーもう逃げられない!
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