勇者召喚に巻き込まれた(?)私、魔族の元で華咲かす

斑鳩 鳰

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18 衝撃的なことがありすぎて

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通行人の邪魔にならないように、廊下の端に寄って兄様を待つ。
通り過ぎる際に必ず凝視されるが、へらりと笑って受け流す。
地球では見られない多種多様な見た目をした人達をぼうっと眺めていると、急に私の周りだけ暗くなった。上を見上げると、予想通り兄様が立っていた。

「あれ、ノアールは?」

「いしょがしいみたいで、いっちゃいました」

「全く、アイツは。
ひどいこと言われなかった?
悪い奴じゃないんだけど、どうも素直じゃなくてね。」

「なかよくできましぇんでちた」

「ノアールは基本誰に対してもツンケンしているから。
大丈夫、きっとリヴならすぐに仲良くなれるよ。」

爽快な笑顔に紳士的なセリフ、さらには頭なでなでのトリプルコンボと来た。きっと地球にいた頃の私ならキャパオーバーでぶっ倒れてた。こっちに来てだいぶイケメンに耐性がついたようだ。これって喜ぶべきなのかな?

「次はどこに行こうか?」

私を抱き上げ、歩き出した兄様。もう下ろしてもらうのは諦めました。身長差から考えて、並んで歩いた方が彼に負担がかかるしね。
私は顔を上げて、ノアに会ってから気になっていることを聞いた。

「にいしゃま」

「なんだい?」

「ノアちゃんはきじんなの?」

「ノ、ノアちゃん?
ぶふっ、それ本人に言ったらきっと怒るよ」

「あい
なかよくにゃってからよびましゅ」

「仲良くなってからも嫌がると思うけどなぁ」

それが目的です!
って、ノアの呼び方は今はいいのだ。
私は質問の答えを待って、兄様の暖かい橙色の瞳をじっと見つめた。

「ノアールは魔人族だよ。」

魔人族。ごく稀にいる意思疎通ができる魔物の上位種が進化した種族だったかな?
ん?意思疎通ができる魔物?それってうちのひっつき虫もそうじゃない?
まじか、ハクトが人型になったら面倒くさそうだな。
私がそんなこと思っていると、ハクトが''キュ~ッ''と鳴きながら、小さな両手でパタパタと私の頭を叩いてきた。エスパーかよ。

「それに、鬼人族はもっと厳つくて、戦闘狂だらけの脳筋軍団だから。」

やめんか、とハクトを捕まえた時、兄様が再度口を開いた。
それ兄様が言っちゃう?とは流石に口に出さなかった。だって兄様すごく疲れた顔してる。

「ほんと、フラフラしないできちんと自分の仕事片付けてほしいよね。
どうして、あの人は少しの間も椅子に座っていられないのかなぁ。」

あああ、兄様の爽やかなオーラがどんどんくすんでいく。
とりあえず話題を変えよう、と口を開いた瞬間''うおおおおっ!!''と雄叫びが城内に響いた。
声は外から聞こえる。兄様が窓の方へ近づいたので、体を乗り出して私も外を見る。

「にいしゃま、あれなあに?」

「訓練場だよ。
この歓声はたぶん、テオがあの双子の試験をしているからじゃないかな。
見に行きたい?」

私は大きく頷いた。ぜひ双子の活躍を見なければ!あ、あとテオ。

「それじゃあ、次の目的地は訓練場だ!」

「あーい!」

兄様が私を肩車して廊下を走る。
速いのに全く振動を感じない。その静かさ、某車会社の高性能車の如し。



訓練場に着くと、多くの野次馬が集まっていた。

「あ、おやかた!」

「あの人は仕事もせずに何をやってるんだか…」

その野次馬の中に、一升瓶を掲げながら一際大声を出す見知ったおじいちゃんを発見した。兄様は、人混みをすいすいと抜けて彼の元へ向かう。

「おーやーかーたー!」

「おぅ、リヴ!!と、ラー坊か」

「俺のついで感がすごいことにはもう突っ込まないけど、そのラー坊って言うのやめてって言ってるじゃん」

「良いんだよ、俺からしたらお前なんてまだひよっこの豆粒だ!」

「ひよっこの豆粒って何だよ…」

お疲れ顔の兄様の頭を撫でて慰めていると、どっと歓声が沸いた。

「この盛り上がりは何なの?
ただの入隊試験のはずだよね?」

「それがただの試験じゃねぇんだな。
まず、テオが直々に試験官をやっている事がひとつ。双子のしかも女の獣人がテオに張り合っているのがふたつ。最後にその双子がメイドってことでみっつ。」

え、あの子達メイド服で試験受けてんの!?
慌てて訓練場に目を移せば、メイド服で平然と攻撃を仕掛ける双子の姿が。
あのスカートどうなってんだろう。いくらアクロバティックな動きをしても全くめくれる気配がないんだけど。

双子にも吃驚したが、それ以上に驚いたのは、テオの強さだった。
2人が同時に違う場所から攻撃を仕掛けようと、それぞれで仕掛けようと全て躱している。ネネネが蹴りを入れれば、1度避け、その足を掴んでそのままコココに向かって投げ飛ばす。双子が何度向かってこようと、ちぎっては投げ、ちぎっては投げを繰り返す。
双子は決して弱くないはずだ。なんせ、自分の何十倍もある魔物を振り回すぐらいだから。そんな双子をものともしないテオが強すぎるのだ。

「テオ兄しゅごい…」

「馬鹿っぽく見えても、というか実際馬鹿なんだけど、テオは獣人戦闘部隊の隊長だからね。」

じゅうじんしぇんとうぶたい獣人戦闘部隊?」

「そう。獣人だけを集めた部隊の中でも最規模なのが獣人戦闘部隊で、そのトップがテオ。」

テオってかなり地位の高い人だったんだ。それなのに、皆の扱い結構雑だったような。ま、それがテオのいいところだよね!うん、そうしておこう!

「そういうラー坊も、獣人戦闘部隊よりももっとでけぇ部隊の副隊長だけどな!」

「にいしゃま、ほんと!?」

もし本当なら、そんな偉い人に肩車されているなんて恐れ多すぎる。

「まぁ、一応?
それに副なんて名前だけだよ。実際偉いのは隊長だしね。」

「にいしゃまはなにぶたい?」

「近距離戦闘部隊だよ。」

「かっこいい!」

兄様、武器うんぬんを使うよりも肉弾戦の方が好きそうですもんね。

「そう?リヴに言われると嬉しいなあ。」

照れたように頭をかく兄様の可愛さプライスレス。

「そういやぁ、お前んとこの隊長は?
ここんとこ見てねぇが。」

「あはははは
知ってたら首根っこ掴んで溜まった書類終わるまで拘束してるよ。」

兄様の爽やかオーラが再度枯れ始めた。どうやら、兄様の疲れの種は自由奔放な上司のようだ。

「どうせアイツのことだ。
適当に強い魔物に挑んで、稼いだ金で酒飲んで周りに女でも侍らせているんだろーよ。」

「教育に悪いから隊長の話はリヴの前では禁止。」

すみません、バッチリ聞こえてました。
鬼人は、その場に留まってられない程の脳筋でなおかつ、プレイボーイと。ダメだ、ますます人物像が浮かばない。
首を傾げながら、まだ見ぬ鬼人を想像していると、爆発音のような激しい音が中心部から聞こえた。視線を移せば、壁に埋もれた双子の姿。

「ネネネ!コココ!」

「リヴ、あの双子と知り合いなのか?」

親方の問いに、力強く頷く。

「あい
わたちのおともだちでしゅ」

「そうか、そういうことか。
ガハハハッ。長生きはするもんだな!」

何故か上機嫌になった親方。それよりも、私は双子が心配でならない。この世界には、回復魔法がないのだから。

「にいしゃま、ネネネがコココが」

「そうだね。テオも少し本気になり過ぎかな。リヴ、いい子で待ってるんだよ。」

兄様は私を親方に預けると、高いフェンスをひょいと登り、そのままテオの元へ走っていった。
兄様、このフェンス軽く4階建ての家ぐらいの高さがあるんですけど。

兄様は、少しテオと言葉を交わした後、彼の鳩尾に手刀を入れ、その頭を地面に打ちつけ、テオの上半身を地面に埋めた。
ここまで淡々と描写したけれど、一つ一つ列挙するごとに、私の中で兄様のイメージが音を立てて崩れております。

兄様は、テオを放置したまま悠々と帰ってきた。

「双子は、医務室に運ばれたそうだよ。
テオはちょっとおいたが過ぎたから沈めてきた。」

兄様超いい笑顔。そして私はきっと引き攣り笑顔。

「そろそろお昼の時間だ。混む前に食堂行こうか。
ゴル爺は、訓練場の修復よろしく。」

「あいつ派手に壊しやがって
おいコラ、バカ犬!
てめぇも壁の修理手伝いやがれ!」

どこから取り出したのか、親方はでっかい金槌を持って怒声を響かせながら訓練場の中に消えていった。

「双子は意識もしっかりしているみたいだし、ご飯食べてから医務室に顔だそうか。」

「あい」

本当は今すぐにでも駆けつけたい気持ちだったけれど、素直に兄様の言葉に従う。

「それじゃあ、行こうか。」

「あい!」

この世界のご飯は地球に負けず劣らず美味しい。味覚が優れている魔族が作るとなおさらだ。
お昼ご飯、楽しみだな。



 





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ちなみに、親方は鍛冶部隊隊長です





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