4 / 38
Another side1 弟の心配
しおりを挟む
―side 大海 in AWO―
明日から第二陣が始まる。すなわち、大空と一緒にこの世界で過ごせる。
いつもの俺なら天にも昇る思いで喜んでいる。いや、実際今も明日が待ち遠しくてしょうがないけどさ。
だけど、俺は自分が犯した重大な過ちに気づいてしまった。
「おーい。カーイー!」
木陰に座って自分の過ちを反省していると、うるさい赤髪の男が手をブンブン振りながら近づいてきた。
名前はリック。俺達のギルメンであり、パーティーの一人だ。さらに言えば同級生らしい。俺は知らなかったけど、向こうが俺たちのことを知っていた。
「うるさい、リック。死ね」
「うおお、いつにもまして塩対応。
さっきまであんなに嬉しそうだったのに、どうしたんだよ。
腹でも壊したか?」
「リックじゃないんだから。
別に、自分の失敗を悔いているだけ」
「え、カイの失敗!
何それ、チョー聞きたい!」
こいつ…!
嬉々として俺の隣に座りこんだリックにしかたなく話始める。
「明日から、俺の双子の姉もこのゲームを始めるんだよ」
「あぁ、お前達が良く話している人な。そらさんだっけ」
「気軽に大空の名前を呼ぶな、ララ姉に頼んでその口縫いつけるぞ」
ララ姉は怜の姉貴だ。本名は尾崎萊。俺たちの3つ上で大学二年生。大空を溺愛しているから快く引き受けてくれるはずだ。
「ララさんならやりかねないからやめて!!
で、それがどうした。楽しみにしてんだろ?」
「ああ。それ自体は嬉しいこと極まりない。
でも、大空にAPとスキルのこと説明し忘れたんだ。
くそ、俺としたことが舞い上がって忘れるなんて」
「は?失敗ってもしかしてそんだけ!?」
「そんだけとはなんだ。
これは重大なことだろ」
「なら、今からログアウトして教えたらいいだろ。
まだ23時だし」
「いや、大空は22時には寝る」
夜更かしは美容の天敵だからな。幼い頃から習慣化させといてよかった。
「子供か!
今どきの小学生でももっと遅く寝るわ!
明日の午前中は?開始は正午からだろ」
「午前中は課題やるって言ってた」
「?課題ぐらいなら電話しても構わないだろ?」
「お前サソリからくらった毒が頭にでも感染しているんじゃないのか。
電話したことで大空の集中力が切れて嫌われでもしたらどうするんだよ!」
「いやいやいやいや!
お前の方がおかしいわ!
何?お前の姉ちゃんそんなことで怒るほど短気なわけ!?
俺の中のお前の姉ちゃん像が音を立てて崩れていくんだけど!!」
「馬鹿野郎。
大空は聖母のように寛大だ」
「もうなんなんだよ!聞いた俺が馬鹿だった!!」
「さっきからうるさいぞ。
何やってんだ」
レイがしかめ面で俺たちの前に座った。
「ゼロ!!
それがさ、聞いてくれよ!」
リックが事のあらましをレイに説明する。
「カイ、それは本当か?」
「ああ」
はあ、と息をつくレイとほらな、と何故か得意げなリック。共感者を得たと思っているらしいが、残念だったな。腐ってもこいつは幼馴染。つまりこっち側なわけだ。
「…とりあえず極振りはするだろうな。
スキルは俺達と会う前に取得してないことを祈るしかない」
「同意。今回は完全に俺の落ち度だ」
「もう22時は過ぎているから大空は寝ているか。
明日の午前中は?」
「課題するって」
「じゃあ無理だな」
「え?え?ゼロもそっち側かよ!
カイが姉ちゃんに嫌われるとかわけわかんないこと言っているから、こいつの代わりにお前が電話してやればいいじゃん。幼馴染なんだろ?」
「却下。大空に嫌われでもしたら軽く死ねる」
「もうやだ。憧れの“王子”と“氷の宰相”がこんなのって知ったら女子がなくぞ」
「なんだ、それは」
「あれ、ゼロしらないの?お前らの呼び名だよ。
絵に描いたような完璧王子に女子を寄せ付けないクールな宰相。お前らいつも一緒にいるから一部ではできてるんじゃねぇえか、って噂まであるんだぞ」
「「俺が、こいつと……??」」
「「それはない」」
「即答だな」
「レイは日ごろ猫かぶってるから王子なのはわかるけど、なんで俺が宰相なんだよ。
レイの臣下とか願い下げだ。
そもそも、俺は大空以外の女に興味はない。あんな化粧と香水で固めた化け物とかマジ無理だから」
「ひでぇえ言い草だな!シスコンの度超えてるぞ!
そういや、好き好き言っているのに、なんで同じ学校にしなかったんだ?
姉ちゃん試験ダメだったのか?」
「大空は頭いいぞ。有名な女子高に通っている」
「ああー。今のゼロの一言で全てわかった気がする」
「近くに男子校が無くて、大空が納得してくれそうな女子高探すの大変だった。
そのせいで、大空と別々に暮らすことになってしまったけどな」
「そんなに哀愁漂わすなら、同じにしとけばよかったのに」
「離れ離れなのは辛いけど、大空と同じ高校に通う方がリスクが高い。
大空が変な輩に絡まれるのもあるけど、俺達と一緒にいるのが問題なんだ。俺やレイはお前と違ってモテるだろ
「おい、こら。喧嘩なら買うぞ」
そこでだ、俺達に近づくために大空を利用したり、陥れようとしたりする女どもが現れるのは必然なわけ。大空は優しいから気にしなくても、俺たちは完膚なきまでその女をつぶさないと気が済まない。そんなこと大空に知られてみろ、嫌われるだろ?そうなったら俺は生きていけない」
「あ、うん。やっぱり最後はそこに行きつくんだな」
「だから、大空と長い時間一緒にいられるこのゲームに期待していたのに、俺としたことが……」
「振り出しに戻ったな。
ま、なんとかなるだろ」
「運に極振りだけはしてないといいんだけど」
「やめろ、カイ。それはフラグだ」
そして、俺達は気を紛らわすために一狩りしたあと、それぞれログアウトした。
明日から第二陣が始まる。すなわち、大空と一緒にこの世界で過ごせる。
いつもの俺なら天にも昇る思いで喜んでいる。いや、実際今も明日が待ち遠しくてしょうがないけどさ。
だけど、俺は自分が犯した重大な過ちに気づいてしまった。
「おーい。カーイー!」
木陰に座って自分の過ちを反省していると、うるさい赤髪の男が手をブンブン振りながら近づいてきた。
名前はリック。俺達のギルメンであり、パーティーの一人だ。さらに言えば同級生らしい。俺は知らなかったけど、向こうが俺たちのことを知っていた。
「うるさい、リック。死ね」
「うおお、いつにもまして塩対応。
さっきまであんなに嬉しそうだったのに、どうしたんだよ。
腹でも壊したか?」
「リックじゃないんだから。
別に、自分の失敗を悔いているだけ」
「え、カイの失敗!
何それ、チョー聞きたい!」
こいつ…!
嬉々として俺の隣に座りこんだリックにしかたなく話始める。
「明日から、俺の双子の姉もこのゲームを始めるんだよ」
「あぁ、お前達が良く話している人な。そらさんだっけ」
「気軽に大空の名前を呼ぶな、ララ姉に頼んでその口縫いつけるぞ」
ララ姉は怜の姉貴だ。本名は尾崎萊。俺たちの3つ上で大学二年生。大空を溺愛しているから快く引き受けてくれるはずだ。
「ララさんならやりかねないからやめて!!
で、それがどうした。楽しみにしてんだろ?」
「ああ。それ自体は嬉しいこと極まりない。
でも、大空にAPとスキルのこと説明し忘れたんだ。
くそ、俺としたことが舞い上がって忘れるなんて」
「は?失敗ってもしかしてそんだけ!?」
「そんだけとはなんだ。
これは重大なことだろ」
「なら、今からログアウトして教えたらいいだろ。
まだ23時だし」
「いや、大空は22時には寝る」
夜更かしは美容の天敵だからな。幼い頃から習慣化させといてよかった。
「子供か!
今どきの小学生でももっと遅く寝るわ!
明日の午前中は?開始は正午からだろ」
「午前中は課題やるって言ってた」
「?課題ぐらいなら電話しても構わないだろ?」
「お前サソリからくらった毒が頭にでも感染しているんじゃないのか。
電話したことで大空の集中力が切れて嫌われでもしたらどうするんだよ!」
「いやいやいやいや!
お前の方がおかしいわ!
何?お前の姉ちゃんそんなことで怒るほど短気なわけ!?
俺の中のお前の姉ちゃん像が音を立てて崩れていくんだけど!!」
「馬鹿野郎。
大空は聖母のように寛大だ」
「もうなんなんだよ!聞いた俺が馬鹿だった!!」
「さっきからうるさいぞ。
何やってんだ」
レイがしかめ面で俺たちの前に座った。
「ゼロ!!
それがさ、聞いてくれよ!」
リックが事のあらましをレイに説明する。
「カイ、それは本当か?」
「ああ」
はあ、と息をつくレイとほらな、と何故か得意げなリック。共感者を得たと思っているらしいが、残念だったな。腐ってもこいつは幼馴染。つまりこっち側なわけだ。
「…とりあえず極振りはするだろうな。
スキルは俺達と会う前に取得してないことを祈るしかない」
「同意。今回は完全に俺の落ち度だ」
「もう22時は過ぎているから大空は寝ているか。
明日の午前中は?」
「課題するって」
「じゃあ無理だな」
「え?え?ゼロもそっち側かよ!
カイが姉ちゃんに嫌われるとかわけわかんないこと言っているから、こいつの代わりにお前が電話してやればいいじゃん。幼馴染なんだろ?」
「却下。大空に嫌われでもしたら軽く死ねる」
「もうやだ。憧れの“王子”と“氷の宰相”がこんなのって知ったら女子がなくぞ」
「なんだ、それは」
「あれ、ゼロしらないの?お前らの呼び名だよ。
絵に描いたような完璧王子に女子を寄せ付けないクールな宰相。お前らいつも一緒にいるから一部ではできてるんじゃねぇえか、って噂まであるんだぞ」
「「俺が、こいつと……??」」
「「それはない」」
「即答だな」
「レイは日ごろ猫かぶってるから王子なのはわかるけど、なんで俺が宰相なんだよ。
レイの臣下とか願い下げだ。
そもそも、俺は大空以外の女に興味はない。あんな化粧と香水で固めた化け物とかマジ無理だから」
「ひでぇえ言い草だな!シスコンの度超えてるぞ!
そういや、好き好き言っているのに、なんで同じ学校にしなかったんだ?
姉ちゃん試験ダメだったのか?」
「大空は頭いいぞ。有名な女子高に通っている」
「ああー。今のゼロの一言で全てわかった気がする」
「近くに男子校が無くて、大空が納得してくれそうな女子高探すの大変だった。
そのせいで、大空と別々に暮らすことになってしまったけどな」
「そんなに哀愁漂わすなら、同じにしとけばよかったのに」
「離れ離れなのは辛いけど、大空と同じ高校に通う方がリスクが高い。
大空が変な輩に絡まれるのもあるけど、俺達と一緒にいるのが問題なんだ。俺やレイはお前と違ってモテるだろ
「おい、こら。喧嘩なら買うぞ」
そこでだ、俺達に近づくために大空を利用したり、陥れようとしたりする女どもが現れるのは必然なわけ。大空は優しいから気にしなくても、俺たちは完膚なきまでその女をつぶさないと気が済まない。そんなこと大空に知られてみろ、嫌われるだろ?そうなったら俺は生きていけない」
「あ、うん。やっぱり最後はそこに行きつくんだな」
「だから、大空と長い時間一緒にいられるこのゲームに期待していたのに、俺としたことが……」
「振り出しに戻ったな。
ま、なんとかなるだろ」
「運に極振りだけはしてないといいんだけど」
「やめろ、カイ。それはフラグだ」
そして、俺達は気を紛らわすために一狩りしたあと、それぞれログアウトした。
21
あなたにおすすめの小説
事情があってメイドとして働いていますが、実は公爵家の令嬢です。
木山楽斗
恋愛
ラナリアが仕えるバルドリュー伯爵家では、子爵家の令嬢であるメイドが幅を利かせていた。
彼女は貴族の地位を誇示して、平民のメイドを虐げていた。その毒牙は、平民のメイドを庇ったラナリアにも及んだ。
しかし彼女は知らなかった。ラナリアは事情があって伯爵家に仕えている公爵令嬢だったのである。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。
よくある聖女追放ものです。
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!
七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる