運極ちゃんの珍道中!〜APの意味がわからなかったのでとりあえず運に極振りしました〜

斑鳩 鳰

文字の大きさ
17 / 38

15 海辺の街アークフォール

しおりを挟む
午前中に用事を済ませ、今日も今日とてAWOの世界にログインする。
ゴンちゃんが現れるのを待って、新しい町探検に出発。

「いらっしゃいっ!!
活きがいいの揃ってるよ!!」

「今朝とれたての魚だよー!!」

『始まりの町』とはまた違った賑やかな声が飛び交っている。
屋台から香る食べ物の匂い、光を反射してキラキラ光る魚の鱗、そして日焼けしたおじちゃんの輝く白い歯。
現代ではなかなか見られない光景に心が踊る。
ゴンちゃんは棚に並べられた魚の目が気持ち悪い、と私の腕の中で顔を伏せている。

「そこの巫女のお嬢ちゃん!
どうだいっ、とれたての蛸で作ったたこ焼きだよ!!
1口食べれば頬が落ちるほどの絶品さ!
お嬢ちゃんの可愛さに免じて安くしとくよ!」

お茶目に片目を瞑って見せたおじさんは、ツルツルの頭に捻ったタオルを巻いた、いかにも屋台の男って感じの人だった。
ソースの匂いが食欲をそそる。

「美味しそうですね!
それじゃあ、2つ貰おうかな。」

「まいど!
ついでのおまけだ。持ってけドロボー!」

たこ焼きと一緒にイカ焼きまで貰った。
お礼を言って料理はアイテムボックスへ。
熱々がいつでも食べられるって素敵だよね。

「すみません、海ってどうやって行ったら良いんですか?」

「この道をまっすぐ行って、T字路を右に曲がったとこだ。
ここんとこ人が多い。お嬢ちゃん小さいから、踏まれないようにな!」

「小さいは余計ですよ!」

「がははははははっ!」

豪快に笑うおじさんに手を振って、屋台が並ぶ道を歩く。
言われた角を右に曲がれば、雪景色と見間違うほど真っ白な砂浜と空が溶けたような色の海がどこまでも広がっていた。
砂浜は冒険者で賑わっており、中には水着を着て泳いでいる人なんかもいる。
壮大な眺めに思わず足を止めて見入る。


『これが海.......
綺麗なものだな』

ゴンちゃんも顔を上げて海を眺めている。
私は小さく頷いた。
砂浜の上に降ろしてあげると、ゴンちゃんは足が砂に捕らわれる感触に顔を顰めていた。
服を初期のものに着替え、海の方へ歩く。
汚れないとわかっていても、巫女服で砂の上は歩きたくない。
澄んだ水は海底を映し、カニの親子がえっちらおっちら移動しているのが見えた。
そっと手を浸せば、水の冷たさが手にしみる。

『む。しょっぱいぞ、この水』

「そりゃあ海水だからね。飲んじゃダメだよ」

ゴンちゃんと並んで浅瀬を歩く。冷たい水が砂の熱で火照った足に心地いい。
周りを見ると釣りをしている冒険者が多く見られる。
私も釣りしたいな。
【料理】スキルをあげるのに釣った魚を使いたい。でもどうやって始めたらいいんだろう。釣竿を買えばいいのかな?

誰かに聞こうと辺りを見渡せば、並んで釣りをしている赤髪と青髪の女性がいたので、そっちに向かう。
さすがに男の人に声をかける勇気はありませぬ。閉鎖的な女子校だから、家族や怜ちゃんぐらいしか男の人と接する機会ないんだよね。

「こんにちは。質問いいですか?」

赤髪を高い位置でポニーテールにした女性に声をかける。耳が尖ってるのと褐色の肌をしているところを見るとダークエルフかな。

「ひゃーっ!
天使があたしの目の前に!!
これ夢じゃない!?
ねぇ、夢じゃない!?」

「ふぎゅむっ!?」

え?え?
なんで私女の人に抱きしめられてるの!?
知り合い…ではないと思うんだけど。
それより前が見えないのですが!
私の視界を覆うのは立派に育った褐色のメロン。
べ、別に羨ましくなんかないよ!ほんとだよ!
私のはまだ発育途中なだけだから!

「馬鹿か、お前は。
その上半身にぶら下がった脂肪の塊でその子を圧死させる気か」

「痛い、痛いよ、アオイちゃん!
自分が絶壁だからって僻まないで…いいいいたいっ!!!ごめんなさい!ごめんなさい!!耳を引っ張らないで!!」

ぷはっ。もう少しで窒息死するところだった。

「あ、ありがとうございます」

「いや。こちらこそうちの変態が迷惑をかけた」

助けてくれたのは青髪をショートカットにした和風美人さんだった。紺色のローブを纏った姿はとても凛々しく、思わずキュン、と胸が高なるほど。
そして、耳をおさえて涙目になっている女性は、つり目ガチの美人さんで、胸元が大きく空いたTシャツと短パンというラフな格好をしていた。Tシャツの裾を括っているため、顕になった腹筋には縦に線が入っている。
エルフはお淑やかな服を着ているイメージがあるけれど、これはこれでとてもこの女性に似合っている。
スタイル抜群…羨ましいな。


「それで、聞きたいことって?
私たちが知っている範囲で良ければ教えるが」

「ありがとうございます。
釣りをするための道具を売っている場所を知りたくて」

「天使ちゃんは釣り初めてだよね?
なら、ここの砂浜をもう少し行った先に船着場があるから、そこにいるNPCに話しかけて、船に乗せてもらうんだよ。
そしたら【釣り】スキルと一緒に釣竿も貰えるよ!」

赤髪の女性が笑顔で教えてくれた。

「ご親切にありがとうございます!
私、ソラって言います。
最近始めました」

「アオイ。第1陣から」

「あたしはキスミーだよん!
質問のお礼はちゅーでいいよ!」

さあさあ、Kiss Me♡と私に頬を向けるキスミーさん。
状況が把握出来ずに少し困惑していると、下から視線を感じた。足元に目を向けると、ゴンちゃんがキスミーさんを凝視していた。
やっぱりゴンちゃんも男の子だからキスミーさんみたいな女性に憧れるのかな?
ゴンちゃんを抱き上げ、キスミーさんに近づける。鼻先が彼女の頬に触れるほどまでの距離になった時、ゴンちゃんが前足を伸ばしてその頬を遠ざけた。

「アイタタタっ!
首、首が変な方向に!!」

『……主は私のことが嫌いなのか?』

「??現実でも一緒にいてほしいぐらいには好きだよ?」

質問の意図が分からず首を傾げると、ゴンちゃんがキスミーさんの頬を踏み台に私の方に飛んできた。慌ててその身体を抱きとめる。

大丈夫かな、キスミーさんの首.......
ゴキッって音したけど。

「うぅぅぅ。
マジで首取れるかと思った.......
天使ちゃんからのほっぺにチューも貰えなかったし.......」

「ざまぁ」

「アオイちゃんひどい!」

2人はリアル世界でも仲良いんだろうな。大海と怜ちゃんもよく同じようなやりとりをしてる。

「それじゃあ、船着場に行ってみますね。
お邪魔しました」

「あ、待って!
せめて最後にお別れのハグを!」

「わわっ!!」

「ヒギョォエエ!!」

2人に頭を下げて、方向転換した瞬間、後から肩を掴まれたことでバランスを崩し後に倒れそうになる。
キスミーさんの胸がぽよん、とクッションになって倒れることは無かったけれど、私の角が彼女の肩に刺さってしまった。
キスミーさんが肩をおさえて蹲る。
角の殺傷力高っ.......


「ご、ごめんなさい!!」

「今のはこの変態が悪い。
こいつが復活する前に早く行け。
後々面倒なことになるぞ。
それじゃあ、また縁があったらな」

『行くぞ、主。
確かにこの赤髪の女は面倒くさい』

「待ってよ、ゴンちゃん!
色々ありがとうございました!
では、また!」

軽く手を挙げたアオイさんに手を振って、たったか歩くゴンちゃんを走って追いかける。
キスミーさん、美人なのに残念な人だったなあ。







ーーーーーーーーーーーー

ここでまさかのキスミー登場。
また出してほしい、という声が多かったので出してみました。
まだ二人目すらでてないのに( ´・ω・`)


しおりを挟む
感想 156

あなたにおすすめの小説

事情があってメイドとして働いていますが、実は公爵家の令嬢です。

木山楽斗
恋愛
ラナリアが仕えるバルドリュー伯爵家では、子爵家の令嬢であるメイドが幅を利かせていた。 彼女は貴族の地位を誇示して、平民のメイドを虐げていた。その毒牙は、平民のメイドを庇ったラナリアにも及んだ。 しかし彼女は知らなかった。ラナリアは事情があって伯爵家に仕えている公爵令嬢だったのである。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。

重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。 あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。 よくある聖女追放ものです。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!

七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

処理中です...