運極ちゃんの珍道中!〜APの意味がわからなかったのでとりあえず運に極振りしました〜

斑鳩 鳰

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Another side 2 前編

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小指の爪ほど、糖分追加します!
本編に直接関係ないので飛ばしてもらっても構いません。
これとあと1話だけお付き合いください。
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~side REI~

これは、大空がAWOを始める前のある日の話


四限の終わりを告げるチャイムの音が鳴ると同時に、俺の前に席に座る幼馴染が立ち上がり、足早に教室を出ていった。
俺もそれに続くように立ち上がるが、クラスの女子達に群がられ、なかなか前に進めない。
笑顔が引き攣らないように気を配りながら、昼飯の誘いをやんわりと断って屋上へと続く階段へ急ぐ。
屋上の扉が見える位置まで登ると、いつもなら先に入っているはずの大海がドアの前で立ち止まっていたので、声をかけた。

「入んねぇの?」

「先客がいる。」

「まじかよ。」

屋上は普段、鍵がかかっていて一般生徒は入れない。それなのに俺達が入れるのは、俺らが一応生徒会庶務だから。つっても仕事はほとんどないけどな。まぁ、それは表向きの理由で、実際は大海の馬鹿が教師を脅したからだ。

「鍵は?」

「開いてなかった。」

「どうやって入ったんだよ。」

大海がすっと扉から退いたので、俺がドアノブに手をかける。奴の目が『お前が行け』と語っていたし、何より大海の口からは毒しか出てこないため、問題をややこしくするのはこれまでの経験上目に見えている。
俺はつきそうになった溜息を押し殺し、扉を開けた。

「遅かったな!
ずっと待ってたんだぜー。」

いや、誰だよお前。

そこにいたのは、地面に寝転んだままこちらに手を振る男だった。相当着崩しているが、学校指定の制服を着ていることからして同じ学校の生徒だろう。刺繍が青いということは同級であろうが、生憎誰かわからない。でもうちのクラスではないことは確かだ。赤い前髪をポンパドールにし、自由に弄んだ後ろ髪が金髪なんて非常識な髪色の奴はうちのクラスにはいない。

俺は剥がれそうになった猫を慌てて被り直し、にこやかな笑みを浮かべたままその男に問う。

「屋上は一般生徒の立ち入り禁止だよ。
どうしてこんなところにいるのかな?」

男は一瞬ぽかん、としたかと思うと思いっきり吹き出した。
…何こいつ、超失礼。

「ぶっふっ、何、その、喋り、方っ!
超ウケるー!!」

終いには腹を抱えて笑い出した。
もう殴っていいかな、殴っていいよね?
俺が密かに拳を握りしめていると、待ちくたびれた大海が屋上に入ってきた。

「俺達はお前のことなんて知らない。
邪魔、帰って。」

あーあ、言っちゃった。
絶対零度の眼差しで男に視線を送る大海。
それでも男はまだ笑っている。

「まぁまぁ、そう意地悪なこと言いなさんなって!
今まで一緒に死闘を繰り広げてきた仲じゃん?」

知らねーよ。お前の妄想に俺らを巻き込むな。
つーか、いい加減昼飯食べたいんだけど。
俺がそんなこと思っていると、何かに気づいた大海が男の顔を暫し見つめた後、口を開いた。

「もしかして、リック?」

「ご名答ーっ!
あんたらの守護神リッくんでーす!」

「はぁ!?」

思わず素で聞き返すと、自称リックはまた笑い出した。

「いやぁー、ゲーム内でのゼロに慣れてたからね、紳士的喋り方に違和感ありすぎて、ぶっふっ!!」

リックと分かったらますますうざくなってきた。俺は握りしめた拳をそのまま目の前の頭向けて振り下ろした。

「痛っ!!」

「うるせぇ。
お前がリックなのは分かったからさっさと帰れ。
俺らは昼飯食べに来たんだ。」

「だーかーらー、それに俺も混ぜてって言ってるの!
あ、ちなみに俺の本名は赤羽 陸あかばね りく!おたくらの隣のAクラス
気軽に陸って呼んでちょー。」

どうする?と大海に視線を移せば、奴は既に弁当を食べ始めていた。ほんとお前自由だよな。
俺も腰を下ろして、弁当を広げる。

「カイは大海のままでいいよね?
ゼロは?名字と名前どっちで呼んでいい?それとも王子って呼んだ方がいい?」

「最後のでなければ何でも」

「んじゃ、怜って呼ぶ。
それにしても本当にリアルで会っても気づかないもんなんだなー」

AWOでは元の顔をベースにするぶん、現実世界での特定を避けるために、ヘッドギアから発される特殊な電磁波を脳に当てることでゲーム内での相手の顔の記憶を曖昧にしているらしい。人体に無害なのは実証済み。
最近の技術ってすげぇよな。

「逆になんでリックは気づいたの?
向こうで会った時から俺たちのこと気づいてたよね?」

「んー。俺さ、雰囲気で人を覚えてるとこあってさー。街中とかで後ろ姿見かければ、『あれって〇〇じゃね?』って雰囲気だけで判断できるんだよ。だからかなー。」

「ふーん。」

「聞いたのそっちなのに、心底どうでもいいって感じッスね、大海さん。」

「実際興味ないしね。
ごちそうさまでした。」

大海が手を合わせたと同時に、携帯の着信が鳴る。大海はワンコールで出ると、俺達のそばを離れていった。それを陸の視線が間抜けな面で追う。

「誰、あれ。」

「天草大海」

「大海ってあんな爽やかに笑えるんだ…。
表情筋と人格死滅しているものだと思ってた。」

「おおむね当たりだな。特に人格に関しては。
大海は今電話している相手以外お前の描く人物像と変わらねぇよ。」

「彼女?」

「いや、双子の姉。」

「もしかして大海さんってシスコン…」

「かなり度を越したな。」

まじかよ、とか陸がぶつぶつ言っているが、無視して残りのおかずを口に運ぶ。

「そういや、なんで怜は学校で猫かぶってんの?言いたくない理由があるなら答えなくていいけど。」

俺が食べ終わったタイミングで、陸がまた話しかけてきた。

「特に理由はねぇな。」

強いて言うなら、便利だからか。
優等生演じとけば、周りや教師からの印象がいい。

「ねぇのかよ!
このご時世、素の方がモテると思うけどなー。ほら、見た目王子なのに中身は俺様的な、ギャップ萌え!」

キャー、と高い声を上げて身体をくねらす陸がキモかったので、とりあえず蹴っておいた。

「痛いっ!暴力反対!」

「別にモテたいわけじゃねぇよ。お前と一緒にすんな。」

「ひっでぇ言い草!
お前らには遠く及ばないけど、俺それなりに告られたことあるんスけどー。」

「じゃあ彼女いるのか。」

「いや、いない。
俺と付き合っても相手は幸せになれねーし。
って俺のことはいいんだよ!」

陸は一瞬苦しげな表情を浮かべたが、すぐにいつも通りのおちゃらけた雰囲気に戻った。このことは触れない方がいいんだろうな。

「怜は彼女作らねぇの?」

彼女、ねぇ

ふと頭に浮かんだのは、もう1人の幼馴染。さっきまで隣にいた方とは違って、いつもにこにこしている。あの笑顔だけは昔からほんと変わっていない。いや、背の方も成長してないか。これ言ったらあいつ絶対怒るな。

「おやおやおや?
その顔は誰か特定の人物を想像していますねぇ?」

「あ''ぁ?」

ニタニタと気持ち悪い笑みを浮かべて俺の顔を覗き込む陸。

「ぬふふふ。
口角上がってましたぜ、旦那!」

「うぜぇ、死ね。」

「照れ隠しですかぁ、青春してますねぇ!
でも、怜の容姿でダメって逆にその子気になるわ。もしかして、アマゾン川をバタフライで渡った人じゃないと嫌ー!とかそういう系?それとも、怜がヘタレなだけ?」

お前の相手に対する想像おかしいだろ。
それと、俺はヘタレじゃねぇ。

まぁ、でも付き合うなら

「魔王ぐらい倒せないと無理だろうな。」

「え?え?
もしかして画面の内側系?相手が出てきてくれないの!的な!?」

「お前なんでそんなテンション高ぇんだよ。
あとちゃんと現実世界の話だから。」

「いやぁ、学校のツートップの恋愛事情が聞けるんスよ!テンションも上がりますって!
あ、俺こう見えて口硬いから、そこは安心してねー。なんなら俺の口封じ用に陸君秘蔵の変顔写真送ろうか?誰にも見せてないやつ。」

「なんの需要があんだよ。」

「ひっでぇ!
それより続き聞かせてくれよ!
もしかしてゲームで知り合った人とか?付き合って欲しかったら、魔王倒してみなさいよ!みたいな。」

「昔からの知り合い。
まだ、ゲームで魔王倒す方が楽だろうな。
経験値貯めて、何度も挑めばそのうち倒れるのはわかりきってるし。」

あれは周りのガードが固すぎる。大空に彼氏を作らせるつもりが微塵も感じられねぇ。特に大海。

「おおう、そこまでなのか。
やっぱり会ってみたいわ。」

「そのうち会えると思うぞ。」

ゲームの方でだが。
そう言えば、もうすぐヘッドギアが届く頃か。出来れば手渡しして、あいつの驚く顔を直接見たかったんだがな。

その時、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。

「また俺もここ来ていい?」

「別に構わねぇが、お前今日どうやって入ったんだよ。鍵閉まってただろ。」

「3階の教室のベランダからちょいちょいと。」

「猿かよ。」

「ムキー!怒るぞー!」

いや、怒り方がまず猿だし。
俺は、大空との電話を切ろうとしない大海を引きづって屋上を出た。
なんか今日は疲れた。早く家に帰りてぇ。


その家でまさかあいつらが待ち構えているなんて、その時の俺は全く想像していなかった。





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次回もう少し甘くなります。

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