『ポンコツ主人は実は有能!?レギオン=アーク・オンライン裏戦記』

芥川まのん

文字の大きさ
12 / 14

第十二話 :断片、そして再起動

しおりを挟む

リカが自信満々に作った毒キノコ料理によって意識を失ったダイは、夢とも現ともつかない光景に包まれていた。

***

ここは……?
PCの起動音と、電子機器のかすかなノイズだけが鳴り響いている。

なぜか自分は薄暗い部屋で、俺は機械につながれている女性を見つめていた。
彼女は笑った。あの頃と変わらない、大学の研究室で徹夜した朝方によく見せた、あの笑い方だ。
――あの頃って……? 
混乱している俺に、聞き覚えのある声が聞こえてくる。

「ジュン。私たちがやらなきゃ、このシステム理論は一生“データの塊”のままだよ」

―-彼女はイワサキ アキコ――
―-俺はシナガワ ジュン――



情報がまるで洪水のように流れこんでくる。

そうだ!彼女は俺にとっては、戦友みたいなものだった。
学生時代からの付き合いで、喧嘩もしたけれど、いつも一緒に数々の理論に挑んでいた。
仮想空間のモデル開発を共に研究し、実現するためにプログラミングの腕を競い合っていた関係。
お互いのコードに口出しできる存在。
そして、彼女をこの地獄に引きずり込んだのは、間違いなく――オギノ ケイだった。

「君たち二人には、特別なプロジェクトに関わってもらいたい」
そう言って笑いながら誘ってきたあの日の彼を、俺は今でも覚えている。
オギノが誘っているのは、とある大企業の研究所だ。
そこが手掛ける仮想空間開発の先駆けとして大規模MMOに白羽の矢が立ち、多額の研究開発費を投じている……オギノにとって理想の環境らしい。
オギノは当該研究では第一人者だ。実績、ビジョン、学会での自信に満ちた彼のプレゼンは、誰をも魅了する説得力とカリスマ性を兼ね備えていた――
その眩しい背中を、俺は尊敬し、目標にしていた。

それなのに――

「アキコの身体を見ろ! 明らかに限界だ。これはもはや“研究”ではない。拷問だ」

アキコはもう立てない。唇は乾き、手は震え、目の焦点はどこにも合っていなかった。
それでも彼女は止まらなかった。
止めなかったのは、俺が弱かったからだ。世界を変える発見を、この手で証明したかった。でも、夢中になるあまりに……

「実験は続行する。君にも、“参加”してもらう。いい成果がでそうだよ、シナガワくん」

突如、部屋に鳴り響く警報音。
慌てて周りを見渡す。

つぎの瞬間、突然スプレーを吹きかけられ、抵抗も虚しく拘束され、そして意識を失った。
自分の身体がどこかへ運ばれていく感覚。
熱くも寒くもない虚無……

***

だが、俺はダイとしてもう一つの“目覚め”を迎えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

悪役令嬢の去った後、残された物は

たぬまる
恋愛
公爵令嬢シルビアが誕生パーティーで断罪され追放される。 シルビアは喜び去って行き 残された者達に不幸が降り注ぐ 気分転換に短編を書いてみました。

思いを込めてあなたに贈る

あんど もあ
ファンタジー
ファナの母が亡くなった二ヶ月後に、父は新しい妻とその妻との間に生まれた赤ん坊を家に連れて来た。義母は、お前はもうこの家の後継者では無いと母から受け継いだ家宝のネックレスを奪うが、そのネックレスは……。

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

拾った年上侯爵が甘え上手すぎて、よしよししてたら婚約することになりました

星乃和花
恋愛
⭐︎火木土21:00更新ー本編8話・後日談8話⭐︎ 王都の市場で花屋をしているリナは、ある朝―― 路地裏で倒れている“美形の年上男性”を拾ってしまう。 熱で弱っているだけ……のはずが、彼はなぜか距離が近い。 「行かないで」「撫でて」「君がいると回復する」 甘えが上手すぎるうえに、褒め方までずるい。 よしよし看病してあげていたら、いつの間にか毎日市場に現れるようになり、 気づけば花屋は貴族の面会所(?)になっていて―― しかも彼の正体は、王都を支える侯爵家の当主だった!? 「君は国のために必要だ(※僕が倒れるから)」 年上当主の“甘え策略”に、花屋の心臓は今日ももたない。 ほのぼの王都日常コメディ×甘やかし捕獲ラブ、開幕です。

処理中です...