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第十二話 :断片、そして再起動
しおりを挟むリカが自信満々に作った毒キノコ料理によって意識を失ったダイは、夢とも現ともつかない光景に包まれていた。
***
ここは……?
PCの起動音と、電子機器のかすかなノイズだけが鳴り響いている。
なぜか自分は薄暗い部屋で、俺は機械につながれている女性を見つめていた。
彼女は笑った。あの頃と変わらない、大学の研究室で徹夜した朝方によく見せた、あの笑い方だ。
――あの頃って……?
混乱している俺に、聞き覚えのある声が聞こえてくる。
「ジュン。私たちがやらなきゃ、このシステム理論は一生“データの塊”のままだよ」
―-彼女はイワサキ アキコ――
―-俺はシナガワ ジュン――
情報がまるで洪水のように流れこんでくる。
そうだ!彼女は俺にとっては、戦友みたいなものだった。
学生時代からの付き合いで、喧嘩もしたけれど、いつも一緒に数々の理論に挑んでいた。
仮想空間のモデル開発を共に研究し、実現するためにプログラミングの腕を競い合っていた関係。
お互いのコードに口出しできる存在。
そして、彼女をこの地獄に引きずり込んだのは、間違いなく――オギノ ケイだった。
「君たち二人には、特別なプロジェクトに関わってもらいたい」
そう言って笑いながら誘ってきたあの日の彼を、俺は今でも覚えている。
オギノが誘っているのは、とある大企業の研究所だ。
そこが手掛ける仮想空間開発の先駆けとして大規模MMOに白羽の矢が立ち、多額の研究開発費を投じている……オギノにとって理想の環境らしい。
オギノは当該研究では第一人者だ。実績、ビジョン、学会での自信に満ちた彼のプレゼンは、誰をも魅了する説得力とカリスマ性を兼ね備えていた――
その眩しい背中を、俺は尊敬し、目標にしていた。
それなのに――
「アキコの身体を見ろ! 明らかに限界だ。これはもはや“研究”ではない。拷問だ」
アキコはもう立てない。唇は乾き、手は震え、目の焦点はどこにも合っていなかった。
それでも彼女は止まらなかった。
止めなかったのは、俺が弱かったからだ。世界を変える発見を、この手で証明したかった。でも、夢中になるあまりに……
「実験は続行する。君にも、“参加”してもらう。いい成果がでそうだよ、シナガワくん」
突如、部屋に鳴り響く警報音。
慌てて周りを見渡す。
つぎの瞬間、突然スプレーを吹きかけられ、抵抗も虚しく拘束され、そして意識を失った。
自分の身体がどこかへ運ばれていく感覚。
熱くも寒くもない虚無……
***
だが、俺はダイとしてもう一つの“目覚め”を迎えた。
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