スターライトパレード

木風

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第三巻 Éternité

第2話「マフラーとチョコ」①

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12時に差しかかる頃。LINEの通知音が鳴る。

『奏? 起きてる?』

スマホ越しに聞こえるセナ君の声は、なんだかやけに近くて……
いつもより少しだけ、色っぽく聞こえてしまった。

パパが言っていた、“音声が聞こえるイヤホン”の話が頭をよぎる。
あのイヤホンで、他の誰かがセナ君の声を耳元で聴くのかと思うと……ちょっとだけ、複雑な気持ちになった。

「うん。もう少ししたら寝ようかなって思ってたところ」
『誕プレさ、用意してくれたって言ってたろ?』

……あっ!
もうすぐ、セナ君の誕生日だ……!

『今、マンションの下』
「えっ!?い、今行くよ……!」
『あーーー、ちょい、たんま』
「え?」
『多分……週刊誌が付いてきてんだわ』

しゅ、週刊誌……!?
なんで、そんなのに……?

『直接会うのはまずいからさ。ベランダからでも……顔、出せたりしね?』

『……っつっても、おまえの住んでる部屋、高すぎっから顔見えねーか』
「えっと……じゃあ、部屋に来てくれても……」
『帰りたくなくなるから、だーめ』

……そんな。
せっかく来てくれたのに……
会って、顔見て、いちばんに「おめでとう」って言えたかもしれないのに……

「あ!いいところある!ロビー開けるから、2階のエレベーター前で待ってて!」

急いで、誕生日プレゼントを入れたプレゼントボックスを手に玄関を飛び出す。
……エレベーター、なんでこんなときに限って遅いのっ!

「セナ君!」
「あー、もう……お前、なんて格好で出てきてんだよ……」

……はっ。
慌てすぎて、上着も羽織らずに部屋着のまま出てきてしまった。

「だ、大丈夫だよ……っ、ハ、ハクション!」

フードを被ろうとしたけど、間に合わず思いっきりくしゃみ。

「ぶっ……しょーがねーな」

そう言って、セナ君は自分が巻いていたマフラーをそっと私に巻いてくれた。

……香水の匂い。
セナ君の香りに包まれて、なんだかすごく……近い。

ちょっと恥ずかしくなって、
私はマンション2階にある住人専用の中庭へと案内した。

存在は知ってたけど、実は入るのは初めて。
色とりどりの植物に、ベンチ。ほんのりライトアップされていて、ちょっとした秘密の場所みたい。

振り返ると、ライトに照らされたセナ君があまりにも格好よくて、
しばらく見とれてしまった。

その気持ちを隠すように、口を開く。

「ね、カウントダウン……しちゃう?」
「いーよ」

ちらりと、腕時計を確認するセナ君。
そんな仕草ですら格好良いの……ずるいなぁ……

「そろそろ、だな」

私たちは並んで、声をそろえてカウントダウンを始めた。

3……
2……
1……

「ん」

と、両手を差し出すセナ君。

「お誕生日、おめでとう」

そっと小さな箱を渡す。不器用にラッピングした、私なりのプレゼント。

「サンキュ……」
「……あの……やっぱり……コーヒーでも……」
「だから、ダメだって。ほら、寒いから中戻れ。
ちゃんと部屋に入ったの、確認しないと安心して帰れねーし」

そう言って、私の肩に手を置き、くるりと背中を向けさせる。

「でも……」
「早く。じゃないと……さらいたくなんだろ」

そう言って背中を押された。
耳元で囁かれた言葉に思わず

「……いいよ」

と言いかけた。

喉まで出かかった言葉を、ぐっと飲み込んで、
私たちは一緒にエレベーターホールへ向かった。


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最後まで読んでいただきありがとうございました!

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第2話「マフラーとチョコ」②は【本日昼】に更新予定です!

ぜひまた覗きに来てくださいね!
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